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なるほど、一人殺せば死刑になる世界を軸に
いろんな角度から描いた短編集とは
面白い趣向だった。
とくに「レミングの群れ」がよかった。
「そうきたかっ!」と
貫井さんの想像力の素晴らしさに
ただただ感服。
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佐木隆三さんによる殺人事件の法廷ルポルタージュや犯罪ノンフィクション。加賀乙彦さんによる医学者として東京拘置所で死刑囚と深く接した体験をもとに描かれる小説。両名とも講演を聴く機会を経て、多くの著作を読んできた。千差万別の犯行経緯と動機、反省の欠片も示さぬ犯罪者もいる。被害者遺族の立場に我が身を置いたときのやるせなさ。人の命を奪うことへの絶対的な否定。ならば死刑という第三者による殺人は容認するのか。「復讐するは我にあり」の真意は「仇は人間がとるな。神に任せよ」だとか。この作中の「素朴な感情」論も重い。さて…
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図書館戦争を彷彿とさせる作品だった
殺人すると死刑なんて法律があるとこんな心理になるのね、へえええええええ〜の連続だった
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見ざる、書かざる、言わざる
デザイナーの指、目、舌を切る。二度とデザインはできない。犯人は部下。
自分のデザインは貶された恨み。死刑にはなりたくない。転職の時、デザイナーの作品を自分の作品として紹介しばれる
籠の中の鳥たち
別荘に宿泊する大学生グループ。女子学生が浮浪者に襲われる。庇った男子学生が助ける再に浮浪者を殺してしまった。内偵取り消し。死体遺棄を計画。台風到来。
警察に連絡がとれない。学生が次々と殺されていく。犯人は誰だ?
凶器の農薬を見つけられた人物で犯人特定。色盲の自分では見つけられない。
レミングの群れ
イジメで自殺した中学生。バッシングで虐めた中学生は姿を隠す。ネット社会ですぐに見つかる。イジメ主犯が殺される。犯人は自殺を考えていた無職の男。死刑希望
自殺希望の人間は次々と虐めにからんだ人間を殺害。ネットは殺した犯人に賛同。
イジメされている子供は仇をうって下さいと自殺。イジメの犯人達で簡単に殺せるのは校長。老人の一人暮らし。自殺志願者を操り、殺した後に自首させる。
イジメをした方が、ネットで土下座するようになり、殺人事件はおさまった
猫は忘れない
自分の姉が殺害。犯人は元恋人のストーカーと疑う弟。部屋に忍び込み自殺に見せかけて殺害。男が勝っていた猫にひっかれる。猫が壁に爪をひっかく。DNAでばれる
殺した男は犯人ではなかった。真犯人は泥棒の常習犯。別件の逮捕で判明
紙の梟
作曲家の恋人は殺された。犯人は恋人が昔付き合っていた男の息子。父が若い女(恋人)に金を貢ぎ自殺。その怨恨。被疑者の弁護士から、恋人の実名を知る。
ネットで被疑者の死刑を望まないと投稿。炎上するが恋人の本名がわかる。
父親の借金、ギャンブルのはまりヤクザから借金。母はソープで働き、娘を逃がす。父は失踪。東京で父がホームレスしているのを知った母が父を殺害。死刑。
作曲家の母は自分が幼少の頃、男ろ駆け落ち。すぐに捨てられた。継母とは不仲
恋人は自分の実母を探し、親切にしていた。実母は、その娘が殺されたことを知る
作曲家になった息子にDM。全てを説明。恋人はヤクザの借金を返す母に金をわたしていた。いいよる男達から金をもらっていた。ヤクザの情婦、ソープはしていなかった。
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死刑標準装備の世界
連作かなと思ったら、それぞれ別のお話。猟奇殺人、密室殺人とバラエティに富んでて飽きない。表題作を含めて、スラスラ読めるんだけど、いまいち読後感が薄いのはなぜかな?
一番はレミングの群れ。いや、このラスト数行は久しぶりの綺麗などんでん返しだった。
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短編5篇。世界は死刑廃止を目指す中、日本は独自の道を進み一人でも殺したら死刑。他者に対し不寛容な昨今の風潮はこういう世の中を生む危険を孕んでいると言えるかもしれません。ただハンムラビ法典のような法規範は受け入れられやすいけど…
設定としては極端で面白かったし、死刑の存廃について考えさせられるけど「一人殺したら無差別に死刑」により、却って犯罪抑止を阻害する事象が出ていたら流石に軌道修正されるよなと思いました。あまりにも思考停止状態だろうと…。それも含めて怖い世の中ということか…。
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人を一人殺したら死刑になる世界を描いた5話収録のミステリー。
物語にはこのルールの裏をかいた事例も登場する。
読みながら何度も死刑制度の是非を考えた。
死刑などない世界は理想ではあるけれど、私刑が禁止されている以上、私は死刑制度は止むを得ないと思う。
実際に起きた連続幼女誘拐殺人事件や闇サイト殺人事件など、被害者遺族の苦悩を想像しただけで当事者でもないのに怒りが込み上げ涙が止まらなかった。
もし大切な人が殺されて残虐な殺人犯がのうのうと生きている事を考えただけで胸が苦しくなる。
死刑制度に真っ向から切り込んだ衝撃作。
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人を一人でも殺したら、必ず死刑になる国となってしまった日本が舞台。
短編4作に表題作である中編1作、計5つの事件を追体験しながら、罪とは何か、推定無罪、日本と欧米の違い、いじめ、報復、正義、SNS等々、我々は死刑制度を通して現代社会のあり方を哲学する事になるだろう。
大人の道徳をミステリーを織り交ぜながら描いた良作。
『自らの正しさに疑いを持たない人には、どんな言葉も無力だ』
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いやはや、凄いものを読んでしまった!私的には、確実に貫井さんのベスト5に入ります。
文体としては、いつも通り読みやすく、むしろ淡々としてクールともいえる感じで、スラスラ読んでしまいますが、実は重いのです。だって、”人ひとりを殺したら死刑“って…一見シンプルなように感じそうだけど、いや、そうではない。人が人を裁く限り、歴史が知る通り、冤罪もあるし…。この作品の凄いところは、そんな法律があったら何が起きるのか?という想像力が凄いのだ。いろいろ考えさせられました。
今時のネット社会なら、さもありなん、という部分も怖いし、日本人独特の考え方という部分も、非常に分かりやすく描かれている。
そういえば、題名は忘れてしまったけど、ずいぶん昔、若い頃に読んだ、筒井康隆さんの短編で「家族を殺された人達が、自らその犯人の死刑を行う」という話があり(そういう法律になってる世界)その家族の帰り道での言葉が今でも心に残っています。
ちなみに…短編の1つ目『見ざる〜』は、私、再読でした。おそらく、どこかのアンソロジーに入ってたのではないかな?
『レミング〜』の連鎖を怖く思いながら読んでいて、ラストで思わず「うぐっ」と唸りました。やられた。『紙の梟』の弁護士のセリフだけ一部…。
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「殺人を犯したら死刑という判断は、確かにわかりやすい。目には目をという発想は、受け入れやすいですよ。でもそれは、ただの思考停止だ。(中略)考えることを放棄したら、人は人でなくなるんですよ」
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このレビューをアップするのも、ネットなわけだから、私個人の死刑制度に対しての考え方は述べません。でも、たくさんの人がこの作品を読んで、想像力を持つことが大事なんじゃないかな〜と強く思いました。傑作です!
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一人でも人を殺したら死刑になる世の中という設定で、短編4話と題名になっている中編1話。今回も安定の面白さ。読みやすかった。表題作で、SNSで、匿名で不満をぶつける。不特定多数の人々から罵詈雑言を浴びせられる。改めてネット社会の怖さを感じた。
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人ひとりを殺したら死刑になる世界での5つの話しだ。
被害者のデザイナーは目と手と舌を失っていた。死んだほうがましな状態でも彼は生きてはいた。なので加害者は死刑になることは無い。――「見ざる、書かざる、言わざる」
友人たちと行った山間の別荘は土砂崩れで通行できなくなった。その中で起こった殺人。犯人は仲間の一人に違いないのだが。――「籠の中の鳥たち」
頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。人を殺せば死刑になる。死を願う人は、いじめの加害者を殺すことで社会に一石を投じて死刑になることを選ぶ――「レミングの群れ」
俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ。彼は犯人を殺し逮捕されたが、驚愕の真実を知らされる。――「猫は忘れない」
ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった――「紙の梟」
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人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語。
短編集になっているのだが、特に深く想像することなく読み始めた。そして、1話目でかなりの衝撃を味わった。人ひとりを殺したら死刑になる世界を甘く見ていた。というより、全く想像が足りていなかった。ある程度覚悟をしつつ2話、3話と読み進めるのだが、まだまだ甘かった。どれだけ恐ろしい世界になるのだ。まるで人間味を感じないかのようだ。いや、人間味があり過ぎるのか?衝撃が強くて、しっかり考えるより逃避したい気分になる。たしかに曖昧な判断はなくなり、人を殺した罰の軽重はなくなる。しかし、思考することがなくなるか極端になり、どこにも救いがないように思える。考えることを放棄したら、正義は社会正義に即する。社会正義を盾にすれば、自己欲求の発散もまるで正義かのようになる。これは現代でも当てはまるか?そうか、だからこの物語の世界は現実と突拍子もなく違うとまでは感じなかったのか。ああ、だとすれば、どちらの世界も結局恐ろしい。
短編集になっていることで、少なくとも各話数分の可能性が描かれていて、それぞれにどれも衝撃的だ。なるほど、そういう意味ではこれは短編向きなのかもしれない。
「見ざる、書かざる、言わざる」と「レミングの群れ」はいつまでもザワザワと心に残りそうだ。反面、「紙の梟」は一番穏やかに心に残る。
以下は各話の帯紹介より
「見ざる、書かざる、言わざる」
被害者のデザイナーは、目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目にあったのか?
「籠の中の鳥たち」
孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる。
「レミングの群れ」
頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?
「猫は忘れない」
俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ。
「紙の梟」
ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった。
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1人殺したら死刑になる設定の日本として描かれた短編集で、現代の日本の死刑制度や炎上案件なんかも織り交ぜて、この世界観だからこその内容も。
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いやおもしろ。
まさかの掘り出し物って印象。
死刑制度賛成派だし、目には目を歯には歯を的な考え方だったけど、この本読んだらわりと死刑に対する考えが甘かったなって思ったり…
短編集なんだけど、どれもグロくて痛々しい表現で、ついついのめり込んでしまった。
人を1人殺したら、裁判で殺される制度ができたことで、人の命が最も軽い国になった。
自殺をする勇気がない人が、最後、誰かの役に立ちたいと思い、法で裁けない者を容易く殺すようになり、個人のエゴで殺人がどんどん増えていった。
本当にこうなっちゃうかもって思ったら、今の裁判?ってある意味最終形態なのかも。
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全ての話が完結していながら、ひとつの流れとなり、社会の流れを暗示する。
さすが素晴らしい出来だと思います。
とても面白く興味深く読みました。