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人ひとりを殺したら死刑になるという前提をもとにした思考実験。
人間が人を殺すまでには、いくつもの偶然が重なり合う。その中には本人には抗うことが難しいものもあり(家庭環境や貧困など)、それらを無視して「目には目を」と分かりやすい判断に飛びつくのは、あまりにも動物すぎないか。いや、人間は動物なんだけど。
ただ、この論にしても、自分の身内が被害者になったら、はたまた自分自身が殺された時、どこまで変わらずにいられるのか。いろいろ考える機会になる。
文章について、読みづらく感じた。広がりがなく、硬い。直接的で引っかかりがあり、行間に余裕が無い感じが読みにくい。あと、全てのエピソードが男性が主人公で、なんかそれぞれにプライドが高いのが透けて見える感じが苦手。女性像もテンプレで魅力を感じない。
死刑については、それぞれのエピソードはあまり深くないが、リアルで面白い。
死刑になりたくないために死よりも厳しい罰を与える人間、死刑を絶対的に支持し正義にとりつかれた人間。死刑を利用し弱者を叩きのめす人間。悪は死を持って裁かれるべきというデスノートみたいな話が万人に受け入れられる社会とか。
死刑は犯罪を抑止するためにあるのではなく(というかその効果はほとんどなく)、被害者のためにあるのか。また死刑を易々と実行することは、加害者から更生の機会を奪うことになるということが、最後の「紙の梟」では割と丁寧に描かれていた。説教臭くはあったけど。
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人一人殺したら、必ず死刑になる世界の連作集。そんな世界だから起こる様々な事件。
Ⅰ部は面白かった。
Ⅱ部は、死刑廃止論が絡んできて、事件もよくわからなかったし、なんだかいまいちでした。
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(図書館)
死刑制度をテーマにした連作短編。
テーマは面白いし、描きたいことは何となく分かる気がするけど、掘り下げ方が浅いし表現力が足りないと感じた。
・見ざる、書かざる、言わざる
死刑制度に対する考えや状況の現在の前提をまずは提示するための1作目。ミステリー仕立てになってるけど、指1本が必要なだけのために残忍過ぎる所業、容疑者は1人しかいないので犯人当ては無し。
・籠の中の鳥たち
これはちょっと面白い。過剰防衛でも殺しちゃったら死刑確定だから、あと二、三人やってもかめへんやんってなんか軽さが、確かに死刑制度に対する評価基準ががらっと変わるよね。
・レミングの群れ
大したこと言ってないのにやたら偉そうな義父なんなの、と思ってたら(笑)
・猫は忘れない
猫は爪とぎ以外でもどこでも爪とぎしますよ
・神の梟
これだけ別立てなのなんで。
笠間は仕事中だったので恋人紗弥の電話を無視する。それは殺される時の電話だった。あっけなく犯人は捕まる。過去に紗弥が騙して捨てた男の息子だった。当然死刑だが、紗弥が悪い女ではないと信じたい笠間は犯人に悔いて紗弥を許してほしい思いで、世間の風潮に抗って死刑反対を宣言する。
なんか、いい感じに話終わってるけど、結局いい子だった彼女を見殺しにした悔恨に戻るよね…。自分だけは騙されてなかった、愛されてた、良かったーって、あんまりじゃないか?
あと、ヤクザの借金が金利膨らんで返し切れないって、設定が甘過ぎる。
全編通して、死刑制度に対する考え、世間の受け止め方、風潮などテーマを扱うに関して考察が浅すぎると思う。前提として、情状酌量とか感覚的でよくわかんないから、1人でも殺したら死刑!って世界観を作るためには、なんで情状酌量を無視できるのか、っていうロジックも成立させないといけない。読んでる側はずっと腑に落ちないままなんだよね…。
個人的には、冤罪の可能性がほぼなく、身勝手、残虐、再犯性があれば1人でも死刑だと考えてる。
明らかにNGか、それ以外か、というところ。逆の視点だからむしろかもしれない。
ああ、貫井さん、好きな作家さんだったけど。もう少し実社会に触れて、考察を深めて欲しいなと思った……。
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人ひとり殺したら死刑になる世界の物語。あながち今の日本の感覚とズレてる訳でもないような。そこに逆に恐怖を感じました。貫井さんの作品はミステリーでありつつも、社会的メッセージも込められている。
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評価は3と4の狭間くらいです。
痛そうな描写があるとテンションが下がる気がするのでこういう系統の本はあまり手に取らないのですが、つい怖いもの見たさで購入してしまいました。
読んでみると新鮮で、先が気になりつい読み進めてしまいました。
怖い…けど続きが気になる、そういうタイプの話です。
考えさせられる系
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最初は悪くなかったけど、後半
つまらない。
女性として、生き様が浮かんでこない。
どうしてそうなったのか、どういう思考回路だったのか、説明不十分。
しっくりこない。
腑に落ちない。
そうしたら、そうなる、という未来がみえて、なるほどとは思った
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「人は、悔い改めるのですよ。人は変われるのです。だから犯罪者であっても、更生の機会は与えられるべきだ。殺人を犯したら死刑という判断は、確かにわかりやすい。目には目をという発想は、受け入れやすいですよ。でもそれは、ただの思考停止だ。…考えることを放棄したら、人は人でなくなるんですよ」282ページ
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これは久々自分ヒットの本になった
死刑がテーマが故読みにくいかと思いきや
イヤミスありグロあり涙ありで面白い本だわ