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よき。きちんと具体的な対案を出すの、とてもよい。褒めるだけ、傾聴だけじゃあだめ、というのは、小栗氏の主張にも通ずる。それ以上にソーシャルスキルトレーニング(SST)に対する批判もよい。認知行動療法は、認知が適切であることを前提とした介入というのはものすごくわかる。いちおう、認知の歪みに対するプログラムもあるけどね。あと、グループワークだいじ、みたいなのもサラッとある。よきよき。
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『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治
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罪を犯した少年のうち、知的障害や発達障害を持つこどもたちが集められる医療少年院で児童精神科医を努めてきた著者の本。
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軽度知的障害による認知のゆがみが引き起こすトラブル、原因が把握できず間違った支援や教育をしてしまい、よりこじらせてしまうプロセスを解き明かされ、あの子この子の色んな場面を思い出して胸が詰まる。
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「障害を持った子ども達は本来、大切に守り育てないといけない存在です。それなのに加害者となって被害者を作り、矯正施設に入れられてしまうのです。まさに『教育の敗北』と言っていい状況です。」
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表題の「ケーキが切れない」というのは「3等分」が理解できないということ。丸いケーキを後先考えず、半分に切ってしまい「あっ、3つやった」と半分をさらに2つに切る。等分にはなっていない。
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先が予測できない。形の認知ができない。そんな若者達に出会い、著者は「気づかれないこどもたち」の存在を認識し、予防の必要性を訴えている。
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サインの出し始めは小学校2年ぐらいから、と著者は指摘する。わかる。不真面目なわけではない、わざとじゃないのに、指示が聞こえない、理解できない、漢字の形が正しく見えない、行動の先の相手の気持ちが想像できない……。
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医療少年院に来るこどもの多くが、いじめられた経験を持っている。身体的に不器用な子も多く、ボール遊びやダンスができず、からかわれたり排除されたりする。リコーダーやピアニカも苦手な子がいる。教科学習以前の「認知機能」をトレーニングしなければならないのに、見落としてしまう。
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「学習以前」の部分は家庭の役割とも言えるが、家庭に気づきや力が無ければ学校教育に取り入れていく必要がある。現場の負担を増やすのかと言われそうだが、原因を気づかないまま教室でその子を取りこぼし、荒れることで発散したり、来なくなったりする方が大変とも言える。
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本来の教科指導や学級運営に注力するために、一日5分でできるトレーニングが紹介されている。「コグトレ」については、以前から耳にしていた。
http://www.cogot.net/custom.html
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この本の最もいいところは、学校現場の取り組みやよかれと思ってやっている取り組みを、少し離れて考え直すきっかけをくれることだ。
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なかでも「『自尊感情が低い』をいう紋切り型フレーズ」の章にはビクッとさせられる校長は多いと思う。学校運営の方針には、必ずと言っていいほど入っている。アンケート項目が指標になっているから。
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そもそも自尊感情って大人でも高くなったり低くなったりするでしょう、という問いかけに、アップダウンの激しい自分は納得する。
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「問題なのは自尊感情が低いことではなく、自尊感情が実情と乖離していることにあります。(中略)要は等身大の自分を分かっていないことから問題が生じるのです。(中略)無理に上げる必要もなく、低いままでもいい、ありのままの現実の自分を受け入れていく強さが必要なのです。」
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大人でもこの「強さ」が持てなくて���むのだけれど、「付き合い方」と考えれば理解できる。いじめられたストレスを解消できず、後先考えずに非行に向かうこどもがいる。大人だって、それなりの立場の人が「イライラしていたから」という理由で罪を犯すニュースがしょっちゅう流れている。
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褒めるだけではだめ、根本原因を把握してトレーニングする、そして「自分の状態」に気づくきっかけを集団の中で作っていく。困難を抱えるこどもを、加害者にしてしまわないために。
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就労支援や若者支援の現場でも活かせるので、多くの人に読んでほしい。「やる気がない」「言うことを聞かない」のではなく、説教が長すぎる、指示がわかりにくい、手先が動かないことが原因かもしれない。
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そして前回紹介した『むこう岸』にあったのと似たフレーズがこの本にも出てくる。「犯罪者を納税者に」……「教育の敗北」を繰り返さないために。区として機会を作って、現場の先生達と一緒にもっと学びたいと思った。
※この感想はインスタに掲載したものの転載です。
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『ケーキの切れない非行少年たち』という妙なタイトルの新書本を立ち読みしてみた。精神科医の宮口幸治さんが医療少年院勤務時、重大犯罪や非行を繰り返す少年たちに接してきた記録だ。彼らは素行が悪かったり性格が歪んでいるというより、軽度の知的障害が原因であると。
「少しだけ勉強ができない」「少しだけ社会性に問題がある」という事で、まっすぐに各個人の問題点に向き合わないのがダメだと。筆者が少年たちにさまざまなテストを行ったが、彼らはみんな積極的に取り組む。通学している間も先生によっては、社会に馴染めていた子もいるとの事。
本書に登場する「非行少年たち」も受け入れる側が助けを必要とする者をどういう風に取り扱えば良いかが判っていないのでは。受け入れ側の「知的想像力の欠如」も問題なんだろう。本書の内容からは外れるが、ネグレクトとかいじめとか、ヘイト感情とか共通するような。
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認知機能の問題、反省以前の問題、軽度の知的障害と言っていい状況。
ある意味、それが非行、犯罪の元になっていると言う啓発は、人権云々という立場から言えばかなり勇気のいることではなかったか。
ただ、こういうところから目を背けることはできないわけだし、もちろん、幼少の頃からその視点で子供達に接し、本気の対策をして行くべきなのだろう。
ただ、環境や社会のせいではない。
人の能力に差があることをきちんと、差別なく認めて対応していかなければいけない。
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現場で起こっていることについての医学的な観点からの分析、具体的な制度の改善点・ケアの手法、著者の仮説が示されており、一気通貫した学びができる。
やや過激な主張や、フロイト精神分析のごとき(と見えてしまう)グループワークについての記述など、個人的にひっかかるところはあったが、問題提起・説得材料としては熱意と具体性があって良い本だった。
このように問題を起こす子供たちについて、軽度障害として施設等でケアを行うのか、教育の現場や地域でケアを行うのかについては、かかわる主体の人々が彼らへどのように理解を示しているか、人々がどういう性質かに大きくよるところがあり、施策の根拠としては一概には言いづらい。
そのような中で、学校での朝の会5分を用いた教育というひとつの現実的な解決策を導きだし、納税者を増やすという公共への説明手段も用意しているのは良い。
今後彼らのパーソナリティの分析が進めば、児童養護など、より幼少における教育・訓練が重要になってきそうである。
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文字も読めない、言葉も理解せずパターンで対応している、といった人々と相対する医者の話。身近でない世界のことがうじゃうじゃ書かれているので気分は落ち込みますが刺激になります。そしてゲーミフィケーションは勉強できない人にとっても大事なんだなーと認識。
9歳の壁という概念は知りたくなかったー...
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なぜ非行少年が減少しないのか、それは認知機能の障害等により、反省以前の少年たちがいっぱいいるからだという著者の視点には、今までにない新たな気づきを教えてくれた。
現在の学校教育では、少年たちの助けてほしいというサインを見逃してしまっていること、非行を防ぐ教育としては不十分であることを知り、非行少年だけでなく、社会全体の課題を感じた。
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ネットニュースであがっている発達障害やグレーゾーンの切り口で書かれている犯罪をしてしまったことが書かれていた。
発達障害なのかなと思う人、人から知的障害だと陰口たたかれる人にあって、本にもかかれているような、わかったフリをされた経験があったので、心拍数が上がりながら読みました。
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児童精神科医の著者が医療少年院で出会った「反省以前の少年たち」とはどういう子たちなのだろうか…反省を促しても態度が悪い、とかそういう意味だろうか?と思っていたが、全く違った。
軽度知的障害や境界知能の少年たち(この本では少女も含めて少年と呼んでいる)。
日常生活の中では、その問題点は目立たない。
しかし、勉強となると、認知能力(見る力、聞く力、身体を動かす力)が低いため、小学校2年生辺りからついていけなくなる傾向が見られるそうだ。
この時点で、家庭がしっかりしていれば、子どもの様子に気づき、療育系の相談窓口に出向くなどして適切な処置がなされていく。
が、取りこぼされてしまう子たちもいる。多くは機能不全の家庭で育つ子たちだ。
学校では、忘れ物が多い、何度注意しても変わらない、口より手が出る…などの傾向が見られ始め、問題児のレッテルが貼られてしまう。
義務教育のため、ついていけなくてもとりあえず中学卒業まで学年だけは上がっていく中、そういった子たちが、スクールカーストの最底辺にいることや、イジメの対象になることは容易に想像できる。
そして、不登校から引きこもりになってしまったり、非行に走ってしまったりするそうだ。
そんな立場に、幼い頃から立たされて来た少年たちの自己承認度が高いわけもなく、注意されても反省を促しても、真の意味での効果はあるはずもない。
著者は、コグトレという独自の認知機能訓練を開発し、少年同士で教え合うことにより彼らの自己承認度を上げ、続ける意欲を持たせ、効果を上げてきた…。
早い時期に彼らの困難に気付き、適切な指導がなされていれば、引きこもりや非行少年になることなく社会の一端を担える人材になれる。
著者は、彼らは税金によって救済される側ではなく、納税する側になれるのだ。少子高齢化で財源確保が厳しい今、政府が真っ先に取り組むべきは教育改革であろう、と訴えていた。
教育現場で悩む先生たちに是非読んでもらいたい本だった。
もう少し、コグトレなどの実践について書いてあると良かったが、それはコグトレの本を買ってくれということか…。
2019.12.14
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久々に夢中になって読めた本。
この本が提示している課題をきちんと解決すれば、日本はかなりいい国になると思うんだよな。
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気になってた本を読みました!TVでカズレーザーさんも紹介してました。分かりやすく書かれているのであっという間に読み終えました。教員にはぜひ読んでほしい一冊。本当読んでほしい。学校生活の中でできることは取り組みたいと思いました。読みながら何人かの子どもたちの顔が浮かびました。。私にも子どもたちのためにできることはあるのかな。
以下個人的メモ。
○サインは小二くらいから出てくる。
〇如何に早くサインをキャッチするか。
〇問題は自尊感情が低いことではなく自尊感情ぎ実情と乖離していること。
〇自己への気づき
教師が子どもを「あなたをみていますよ」とサインを送る
グループワークで子ども同士
〇様々な教育や体験を受ける中での自己評価が向上
〇子どもの心に取手があるとしたら、内側にしかついていない。できるだけ多く気づきの場を提供する
〇社会面、学習面、身体面での支援
〇コグトレ
〇犯罪者を納税者に
→そのために「困っている子ども」の早期発見と支援。それが最も効率的にできるのは学校。
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夜に一人の時間で読むと大分気持ちが持ってかれる。
精神科の管理栄養士で働いてたけど、そんなものじゃないね。
免疫ない人は昼に読んだ方が良いかな。
警察24時が好きな人はいつでもどーぞ。って感じ。
読んで良かった。
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○表題の通り、ケーキをまともに3等分できない。
足し算、引き算もできない。
漢字も読めない、書けない。
文がスラスラ読めない。
複雑な図形を写させてみると、全く違う図形になってしまう。(衝撃を受けた!)
認知機能が弱く、知能指数も低い少年達が、凶悪な非行に走ってしまうケースが多い。
○本来は、大切に守られ、支援を受けなければならない障害を持った子ども達が、気がつかれないまま、虐待、イジメを受けて、そのストレスから犯罪者になってしまう場合もあると知り、とても悲しくなった。
○認知力が低いと、自分のしたことも相手の気持ちも正しく認知できず、反省することもできないし、更生も難しい。
○非行少年だけではなく、学校でも、認知機能が弱いのに気付かれずに困っている子がいる。
昔はIQ85以下が知的障害者と定義されていたが、現在はおおむねIQ70以下。
その70〜85の境界知能の子どもは、障害者として支援を受けることもなく、ただ理解力がない問題のある子どもとして周囲に扱われ、生きにくさを感じてしまう。
だいたい小学校2年生くらいから、サインが出始める。
感情表現が苦手ですぐカッとなる、人とのコミュニケーションが苦手、集団行動ができない、忘れ物が多い、やりたくないことをしない、体の使い方が不器用、嫌なことから逃げる、漢字が覚えられない、計算が苦手…など
○自信を持てない子どもを根本から救うのは、褒めることではなく、勉強を分かるようにしてあげること。
○基礎学力を高めるのにも、認知機能を強化することが大切。それが叶うトレーニング方法(コグトレ)も紹介されている。
ゲーム感覚で、「写す」「覚える」「見つける」「想像する」「数える」をすることで、見る力、聞く力、想像する力が鍛えられる。文字を覚えたり、計算したりするためにも、大切な力。
気持ちを溜め込むことがよくないことを理解するためのワークが、とてもいいと思った。
○知能指数が高くても、認知機能の低い人はいる。
○犯罪者の中には、脳になんらかの異常があって、認知機能がおかしくなり、異常な思考になっていることも多い。宅間守死刑囚も、脳機能の異常が見られた。
○ 印象に残ったところ
想像する力が弱い→未来に向かって目標を立てられない→努力しない→成功体験、達成感がない→自己評価が低い
努力しない→人の努力も理解できない→簡単に人のものを盗んでしまう(人が一生懸命働いて手に入れたことが分からない)
→後先を考えられず、周りに流されてしまう。
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インパクト 2
かかった時間 60〜70分くらい?
ツイッターで、本書の帯にもある「ケーキの切り方」の画像を見て、これはすごい本が出たなあと思い、さっそく買って読んでみた。
しかし、中身は、帯以上のものではなかった。
本書の主張は、「発達障害は社会的な理解も支援の方法も広がりつつあるが、とくに軽度とみなされる知的障害は、幼少期に見いだされにくいし支援もほとんどされていない。適切な支援のなさから、適切な自己評価がてきなかったりストレスが不適切な出方をしたり周囲とコミュニーケーションがとれなかったりした末に罪を犯してしまう、というケースも多いのではないか?」というもので、それ自体は、なるほどなあと思えるものだったが、話の運び方やケースの選び方は必要以上に煽情的だと感じたし、その道の研究者・実践者として不適切な言葉づかい?表現?なのでは?と感じるところもあった。紙幅を稼ぐために不必要に箇条書きにしたり、行間をあけたりしているところも多くて、「ハイハイ、水増しした本なのね、わかるわかる」という感じがした。
さいきん、編集者?というか出版社?について時々考えるけど、筆者の問題はもちろんあるだろうが、新潮社ならもう少しちゃんと体裁を整えたり、もう少し中身のある本になるようにエピソードを求めたりという仕事ができそうなもんだけどな、と思った。
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2019年8月読了。
本書の帯にある「非行少年が“三等分”したケーキの図」が衝撃的だったので購入。
さらに本書20ページには「Rey複雑図形の模写」という複数の図形の組み合わせを非行少年が模写した者を著者がそのまま書き出した絵が掲載されているが、もっと衝撃的。ほとんど全くと言っていいほど図形の組み合わせや位置関係を認識できていない。「認知する能力」がこのレベルだと、おそらくは人がどんなことを言っているかという言語コミュニケーションだけでなく、表情を読み取るといった非言語コミュニケーションにも相当の難しさがありそう。
非行やそれを矯正するために“反省”させる一連のプロセスは、当人の性格的な資質や生育環境が根元にあるというよりは、そもそも他者とか自分以外の何かを認知する能力に何らか問題があり、「反省」することの前提がそもそも崩れているので諸々の問題があるという指摘。
教育というとつい知識/技能/技術の伝達に関心が向きがちだが、そもそもそれに堪え得る認知能力が備わっていることを前提としているわけで、いよいよ人に物事を伝えることの難しさを感じずにはいられない。