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紙の本
衝撃を受けました
2023/06/10 10:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
(上下巻)
ここに出てくる病には知っていましたが、それが絡む殺人事件の小説です。
この病は治る病気であるにもかかわらず、ずっと、差別が続く問題です。
悲しい父子の分かれ。恩人である人に仇をしてしまう。自分の過去を隠したい。それぞれが絡み合い複雑な話になっていく。
根底にあるのは、人の無理解なのではないかと思いました。
紙の本
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2012/12/20 13:51
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投稿者:ねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読まなければ知らなかったハンセン氏病問題。
無知ほど恥ずかしいものはない。
紙の本
ドラマは終わってしまったけれど。
2004/04/03 00:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日まで放送されていた同名ドラマの原作本である。
テレビでドラマ化されたとき、私はなるべく原作にあたるようにしている。目的は二つ。一つは、原作で書かれた一つ一つのシーンがどのように解釈され、どのように映像となっているのかを見たいということ。そして、もう一つは、ドラマとの違い。勿論、完全に再現するのはつまらないので、多少違いが生まれてくる。新しい登場人物を出したり、違う行動をさせたり。しかしそれによって、原作の良さが失われてしまったら、ドラマ化の意味は半減する。それを確認するため(少し意地悪だが…)。
私にとって、ドラマ化作品の原作を読むメリットは、実はもう一つある。それは、「速く読めること」。私は読書のスピードに恵まれていない。しかし、この類の小説はストーリーが予めインプットされているため、分かり易い。「和賀」と書いてあれば、「あぁ、中居くんね」という具合に進むのだ。その逆に、自分自身でイメージを作るのが難しくなるというデメリットはあるのだが…。
原作を読み終えた感想は、さすがは松本清張、の一言。そして、日頃、新刊ばかりに目を奪われ、名作と言われる本を読まないことを反省した。
以下に、簡単に述べていくと…
まず、犯人が見えないこと。ドラマで先に犯人を知っているにもかかわらず、本書を読んでいると、「本当に彼が犯人なのか、実は関川が…」と何度も疑ってしまいそうになった。また、今西刑事は、様々な推理をたてては、彼を追うことを試みるが、あと一歩のところで先手を打たれる。その苛立ちが松本清張のペンを通して、読者に伝わってくる。
次に、言語学や音響学といった専門知識を使い、しかもそれを読者に分かり易く説明している点。また、主人公和賀の出生について、戦後の混乱の中で認められた戸籍の特別な扱いを使っているトリックは、驚いたと同時に勉強になった。
この本の一つのテーマに「ハンセン病」がある。根拠のない差別であったことが裁判所によって認められた現在でも、悲しい事件が起こっているのだから、過去には極度の恐怖心から激しい差別がなされていたのだろう。それを思うと、過去を消し去りたかったであろう和賀の気持ちも分かるような気がしたし、「宿命」とは何と過酷なものであろうかと、考えさせられる。時代に流されない、いつまでの読み継がれていく本というのは、本書のようなものをいうのだろう。
ドラマは終わってしまったけれど、いや、終わった今だからこそ、読むというべきか。とにかくおすすめの1冊です。
紙の本
社会に蔓延る矛盾と闇を読む、日本の推理小説における金字塔。
2004/01/19 17:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:元高角三 - この投稿者のレビュー一覧を見る
砂の器は、数ある松本清張作品のなかでも『点と線』、『Dの複合』、『ゼロの焦点』などと並ぶ社会派長編推理小説の代表作であるだけでなく、日本の文学史においても傑作中の傑作である。
周知のとおり、作者はそれまでの非現実的な推理小説ではなく、日常的な犯罪動機と着実な謎解きを作品の中で行い、世に推理小説ブームを起こした人物である。ただ、この作品はあくまで才能と悲運の両方を持つ人間の極限心理を浮き彫りにした文学作品であり、内容を見てみても言語学や超音波といった新味の謎解きトリック、社会的な偏見につながる暗い過去を消し去ろうとする犯人の殺人動機、またそれを追い詰めていく老練刑事の執拗な捜査活動、これらの要素が巧みに織り合った作品であることは、推理小説ファンならずとも周知の事実であると思う。
ここでボクが触れておきたいのは、この作品を読む上での2つの特徴点である。一つは、先日より放送開始になったSMAPの中居くん主演のドラマ『砂の器』の中で彼が演じ、この作品においても非常に重要なキーパーソンである天才ピアニスト和賀英良の持つ過去の「闇」と疎外感である。なぜ、彼が自らの戸籍を変えてまでその過去を隠し通さなければならなかったのか。それを知るには、「ライ病(現ハンセン病)」について知ることが必要になってくる。この作品が発表された昭和35年当時、ハンセン病患者の多くが疎外者であり、孤独を持って生きていた。決して顔を背けることの出来なかった事実に対して、作者は推理小説という武器を使い、戦いに挑んだのではないだろうか。
また、この作品だけに限ることではないが、作者の作品を彩るもう一つの特徴に作者の「言語学」と「民俗学」への傾倒がある。この作品の全体像は知らなくとも、「カメダ」という言葉をキーワードに、この作品が進行していくことは、先日初めてテレビで『砂の器』に触れた人でも、もう感じているかもしれない。
犯人と被害者が残した言葉、カメダ…。日本には様々な地方に「方言」が存在する。その方言は、ほとんどの場合、その地域特有のものであることが多い。本書が面白いのは方言に含まれる微妙なニュアンスの相違を使い、巧みに読者を騙している点である。ここが作者の博学多識なところであり、読み始めたら本書に没頭してしまう読者の多さからもそれが理解できる。
因みにこの有名なフレーズは、昨年公開されたお台場が舞台のある映画のなかでも、似たような形で使われており、この作品が与える影響力の強さを改めて感じることが出来る。
結局もって、この作品を通じて作者が読者に問いかけたかったことは、ハンセン病患者に対する社会の言われなき偏見と差別でもあるだろうし、言語学や民俗学的見地から見る推理小説の面白さ。特に言葉のニュアンスの違いを指摘するところなど多識な部分ももちろんあると思う。
だが、ボク個人として考えるに、結局本書もミステリーなのである。砂で作られた器が、風が吹くと跡形もなく流れ去ってしまうのと同様に、ボクは人間の持つ「虚像」はいずれ時と共に崩れ落ちるということを作者は言いたかったのではないかと考えるのだ。上辺だけの、見栄で塗りつぶされた人間の本質は、いつか必ず露呈される。タイトルの意味する『砂の器』とは、果たして作者にとってどういった意味を持つものだったのかと問われても、ボクにはわからない。ただ、一ついえることは、この作品はドラマや映画(かつて加藤剛が出てた気がする…)で見る作品ではないということだ。これは、あくまで読む作品であり、現在も社会に根付く「矛盾」を読んで感じ取って欲しいと思う。