紙の本
天変地異のサイクル
2022/10/11 16:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
天変地異となると今の異常気象や火山の噴火を即思うが、この本は現在の異常気象などを主題にしているのではない。もっと大きな地球自体の変動を取り上げている。地質学から見た変動。その教科書的本かもしれない。地球外の要因と地球自体の要因が重なった時に大きな変動や動植物の絶滅までが起こっていると。考察の年代単位が大き過ぎてなかなかピンとこないが、地球自体の基礎を学ぶには良い一冊。
投稿元:
レビューを見る
地学は高校で習わなかったせいか、化石や岩石や地形といった動かないものを対象とした、歴史や考古学のように静的なイメージ。でも、この本を読み、災害がとみに身近になった昨今、実は非常に激しく変動してるものを対象としてる学問だと再認識。
現代の科学・学問は細分化されているはずなんだけど、この本のように地球システム自体を捉えようとすると、おそらく地球科学という学問体系の知見を総動員しないといけないんだろう。巻末の参考図書がえらく多いのをみてそう思った。
時間軸のスケールが大きすぎて、何のためにやってんの?って感じもするけど。まあ学問ってそんなもんで、はやぶさプロジェクトの生物の起源は宇宙からなのかとか、素人じゃ見分けのつかない新種の発見とかよりは、防災だったり気候変動への示唆があるだけ良いのかな?
地球システムに棲む生物は、銀河のメリーゴーラウンドに翻弄される、儚くも逞しい存在。種の9割上が絶滅するような環境激変が起きても、数%は生き残ったってどういうことだったんだろう?
投稿元:
レビューを見る
著者の藤岡先生は過去にブルーバックス「フォッサマグナ」「三つの石で地球がわかる」といったわかりやすい本を書かれている方なので、さっそく新刊を読んでみました。
けど藤岡先生の専門は海底とか岩石とかプレートテクトニクスなので、気象災害については説明がおかしいと感じる箇所もあります。人間の寿命を超える周期の災害は専門のプレート運動に結びつくものが多いので違和感は減るのですが。
あと周期性を見出そうとしますが、10年単位と10万年単位のでは周期として許容できる誤差が違う気がして、周期と言っていいのかと思ってしまいます
投稿元:
レビューを見る
読み終わるのに苦労した。そしてレビューを書くのに今また苦労している。
ブルーバックスも売らなければいけないんだとは思うのだが、あまりに煽るような帯をつけすぎである。
「激変は束になってやってくる」
「なぜいま天災が続くのか?46億年の地球史から謎を解く!」
嘘ではない、嘘までは言っていないのだが……電波に乗っていたらJAROに訴えたいレベルである。
この帯を見て多くの人が思うのは、ここ数年、長くて数十年の災害の多さであり、地球温暖化なのか、他にも何か理由があるのか、といったことではないだろうか。そんな短いスパンの話に46億年の地球史から謎が解けるわけはないので、まんまと引っかかった私も確かに悪い。
本書の筆者は地球科学がご専門ということであるが、最終的な結論である銀河の「腕」の粗密が関係している可能性の話はあまりに専門外のところへ振りかぶったという印象が否めない。しかも最後のまとめは、千年、万年、億年単位で激烈な天変地異は繰り返すし、50億年先にはどうせ地球は太陽に飲み込まれちゃうんだよ、っていうのは如何なものか。だから今年大雨が降っても大地震が起こっても大した問題ではないのか。
海底に関してはエキスパートな方なのだと思うので、ご専門の範囲内での有益な著作を期待したい。
投稿元:
レビューを見る
藤岡換太郎(1946年~)氏は、東大理学系大学院修士課程修了、東大海洋研究所助手、海洋科学技術センター・グローバルオーシャンディベロップメント観測研究部長、海洋研究開発機構(JAMSTEC)特任上席研究員等を経て、静岡大学防災総合センター客員教授。専門は地球科学。「しんかい6500」に50回以上乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋初潜航を達成。海底地形名小委員会における長年の功績から海上保安庁長官表彰。ブルーバックスで、地球科学に関する一般向け書籍多数執筆。また、著書『フォッサマグナ』は、伝説的書評サイトの「松岡正剛の千夜千冊」(1720夜)で取り上げられている。
我々の住む日本列島は、地震、台風をはじめ自然災害の非常に多い場所である。つい最近起こった輪島半島地震については、日々報道が続いている通りである。そうした自然災害(≒天変地異)は、概ね一定の周期で起きていると考えられているが、本書の狙いは、その周期は何が作っているのか、そのサイクルを次々と遡り、天変地異の究極の原因を明らかにすることである。
私なりに理解したポイントは以下の通り。
◆日本列島は、地球システムの中で、4つのプレート(太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート)、4つの気団(オホーツク海気団、シベリア気団、揚子江気団、小笠原気団)、4つの海流(黒潮、対馬海流、親潮、リマン海流)の影響を受けているため、世界でも稀な自然災害多発地域になっている。
◆日本では、平安時代の9世紀(貞観の富士山噴火、貞観の三陸地震、仁和地震等)と江戸時代の18世紀(宝永地震、宝永の富士山噴火等)に自然災害が多発しており、概ね1,000年間隔での集中が見られると言える。
◆「ミランコビッチ・サイクル」は、地球と太陽の関係から、①2.3万年(地球の自転軸の向きの変化の周期)、②4.1万年(地軸の傾きの変化の周期)、③10万年(地球の公転の軌道の変動の周期)の周期で、地球の寒暖が繰り返されるとする仮説。
◆古生代から中生代において、生物は5度の大量絶滅に見舞われた。6,600万年前の最後の大量絶滅(恐竜が姿を消した大量絶滅)は、直径10kmの隕石の衝突が原因とされているが、その他の原因ははっきりしていない。ただ、その周期は凡そ3,000万年程度と考えられる。
◆地球上の大陸はこれまで形成と分裂を繰り返してきた。3~2億年前に形成された、最も新しい超大陸パンゲアは、2億年前頃に再び分裂をはじめ、それにより、3,300万年前に南米大陸とオーストラリア大陸が分裂したことによる南極環流の成立(→南極大陸の寒冷化)、1,700万年前にインド・オーストラリアプレートがインドネシアンゲートウェイに衝突したことによる黒潮の発生、300万年前に南北アメリカ大陸の衝突によるパナマ海峡の閉鎖(太平洋と大西洋の遮断)、分裂したインド亜大陸がアジア大陸に衝突したことによるヒマラヤ山脈の形成(→モンスーンの発生)等が起こった。こうした超大陸の形成と分裂の周期を3億年とするのが「ウィルソン・サイクル」。プレート・テクトニクス理論によれば、大陸を動かしているのはプレートであるが、そのプレートの動きを作っているの��、「プルーム」と呼ばれる、温度差によって生じるマントルの対流である。
◆地球の気候は、地球上に氷があった時期(アイスハウス)と、氷がなかった時期(ホットハウス)が繰り返されており、その周期は3億年である。先カンブリア時代に2、3度起こったスノーボール・アースも、アイスハウスの時期に起きたと考えられる。直近の氷期はわずか2万年前に終わったばかり。
◆太陽系は、天の川銀河の中を2億5,000万年かけて一周するが、その間に、恒星の密度の高い場所と低い場所を4回ずつ通るため、約3,000万年毎に恒星分布の変化の影響を受ける。
◆結論として、地球の天変地異は、プルームによる3億年のサイクルと、銀河による3,000万年のサイクルによって、生み出されている。
このスケールのシステムは、人間の力で変えることは不可能であり、ミランコビッチ・サイクルによれば、あと2,000年経てば地球はもはや温暖化に向かうことはなく、ウィルソン・サイクルによれば、2億5,000万年後には日本列島を中心に超大陸ができている。。。そして、いずれにしても、50億年後には地球は太陽に吞み込まれ、仮に、人類が火星や木星の衛星エウロパへ移住していたとしても、やがては太陽そのものが爆発して無くなってしまうのだ。。。
そう考えると、一抹の寂しさも感じるのだが、だからと言って、刹那的に生きることが肯定されるわけではなく、むしろ、人類はもっと謙虚になり、自分たちは地球・太陽系・銀河系・宇宙というシステムの一部であり、それを維持するための出来得る限りの努力をしなければならないことを、再認識させてくれるのである。(地球が2,000年後に寒冷化に向かうからといって、それが、人類が今引き起こしている気候問題や環境問題を放置していい理由にはならない)
(2024年3月了)
投稿元:
レビューを見る
ブクログのプレゼント抽選で当たった。
この本を読み始めたとき、折しも記録的な台風が日本に近づきつつあり、その中心気圧910hPaが、これまでの記録907.3hPaに匹敵する凄さであることを知った。また、過去最大の津波が85mに達していたことも知った。これらの記録は地球の歴史では直近のことであり、人類の歴史を辿れる有史以前の地質時代にまで遡ると、百万年どころか億年単位で地球の動体的活動が説明され、そのスケール感には圧倒される。しかも、最後は地球を飛び出して、銀河系レベルにまで話が及び、それが地球の現象と因果関係をもつ推測まで展開される。事実関係は謎のままだが、その考察の深さには説得感がある。
最後に、驚きの数字を紹介したい。
太陽系は、秒速240kmという想像を絶する超スピードで銀河の中心を公転しているが、一周するのに2億5千万年かかるらしい。こんな宇宙の中で生命を育まれた人類が愚かな未来に突き進まないことを願うばかりである。
投稿元:
レビューを見る
気象、海洋、プレートなどの動きはある程度知っていたが、プルームとか銀河系の動き(太陽系の公転)はほぼ初耳だった。地磁気って反転するの?
人間のスケールじゃ想像も難しい。しかし、回転木馬説は流石に空想成分が強い気もする。