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わたしはなんだかんだ10年以上櫻いいよの作品を読み続けてるんだけど、そうか、あの秀作乳メスから10年経って、これを書いたのかと頭を殴られたような感覚。すんごいの書いてきたな!
大人の恋の話って、なかなか好みにハマるものがなくて、それは大人になっていろんなことを知ってしまったからなんだよな。恋愛の美しさも醜さも狡さも知ってしまっているからこそ、フィクションで語られる恋のなかに、心を動かされることが難しくなる。
美しさだけを語られたら眉を顰めたくなるし、醜さをリアルに描かれると今度は目を背けたくなる。
狡さと脆さを見せられたら、安心してしまう。
そんななかで、最新の櫻いいよが描く本作は、そりゃもう危うくて脆くて狡いし、決して美しくはないのになぜか穢れも感じない。
奏の弱さも流生の弱さもとても良い。人は強さよりも弱さに惹かれがちなんだよな。そして弱さで惹かれ合うとたいていこういう結末を迎えるんだよね。
欠けた小指に意味はないのかもしれないし、欠けたまま生きていくと決めるのも、それを埋めたくて必死になるのも、正しくもなければ間違いでもない。
この先奏が与えなくとも息ができるようにと願うばかり。
わたしは恋のない愛を肯定派なので、恋をせずとも愛を得た奏と彼に結婚祝いを贈りたいなとおもいます。
友よ、最新刊のコレが、いちばんすきだぞ。