紙の本
著者の原点が野田さんとは
2022/09/19 13:55
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
デナリ(マッキンリー)の2回の登山経験が最初と最後に置かれ、北極圏の土地ごとに書かれたエッセイ集。
著者が、10代の時に野田知佑さんの影響を強く受けていたということは知らなかった。
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極北への旅をまとめたエッセイ集。
高校生のころに野田知佑や星野道夫の著作に触発されて旅に生きるようになる経緯にはじまる。アラスカ、グリーンランド、ノルウェー北部、スピッツベルゲン島といった北極圏各地への訪問がテーマである。各地に住む日本人を中心とした極北にゆかりのある著名人との交流や故人である植村直己や野道夫の足跡をたどる旅も多く含まれる。
冒頭と最終盤に配された二度のデナリ(マッキンリー)登頂がポイントになっており、著者もデナリ登頂を自身の人生のなかで特別な体験だと明言している。全体に極北のような大自然とそこに暮らす人々への憧れと讃美で一貫している。同時に、「虚構だらけの都会生活」といった表現など、都市生活にたいする疑いの眼差しもしばしば見受けられる。ただ、本書の体験の内容そのものについては、大自然のなかでの出来事が中心になるかと思いきや、デナリ登山を除けば意外と極北の街や村での滞在にまつわるエピソードが多くを占める。
著者の純粋で素直な人柄がうかがえる文章である。照れやてらいとは無縁で、「タンポポのような人生をおくれたら素晴らしい」「ぼくはいまを生きようと思うのだ」といったロマンティックなフレーズにもためらいがない。高校生ごろから終章は2017年、四十歳までの記録だが、常に変わらない純真な若者の日記を読むような印象を受けた。ただ、全体にとりたててユーモラスな表現や出来事の起伏がなく、一本調子といえなくもない。本書のなかでも重要な位置付けにあるデナリ登頂も含めて、著者にとっては印象深いはずのそれぞれの旅も読んでいる限りあまりとっかかりがなく薄味で、悪くいえばあまり工夫を感じない。素晴らしいものを素晴らしいと書くだけでは十分ではないと思わされた。
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旅とは途上にあること
石川直樹の生き方は、それこそ旅だと思う。
その時々の流れと気持ちに正直に動かされ、その時々をぷかぷかと邁進している。
エッセイもぷかぷかしている。どこか、人間くさいというか。強靭な人、すごい人であるのは間違いないけど、僕らの延長線上にいる感じがしてしまう。こんな文章、すごく好きだ。
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石川直樹さんの著作を読むのは初めてだが、何か懐かしい場所に戻ってきた感覚。
タルキートナ、シシュマレフ・・・植村直己さんや星野道夫さんの著作で何度となく目にした地名。そして故河野兵一さん、船津圭三さんら僕らが若いころ活躍されていた冒険家の方々が登場される。青春に帰った感覚。
街に住む僕らが極北のエッセイを読むと、そこだけにしかない極北の時間の流れに没入できる。十分に浸ることができた。
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コロナ禍で海外訪問が難しくなってしまったな中、石川さんの本書で、北極圏を頭のなかで想像しつつグッとくる紙上冒険をさせてもらった。
同世代ということや著者の経験、知識、文書力もあってだが、石川さんは純粋に自身に刺激を与えてくれる一人となっている。
最後のデナリのエッセイが特に読みごたえがあった。長期縦走、自分も心の中で温めていて、日本の山になるが何とかここ数年でチャレンジしてみたいと思っている。(トレーニングと体の鍛えを頑張らなきゃ。。。)
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写真家だけど、冒険家のような一面もあって、好奇心旺盛さを持ち合わせた石川直樹さんのエッセイ。決してうまい文章ではないし、特別ドラマティックな何かがあるわけではない。新たな旅で過去の旅を振り返ることもあるし、身勝手なことを思って見ることもある。極寒の地を好んで訪れるが、雄大な自然のある場所は必然的に不便な土地でもあるわけで、悪天候で飛行機が飛ばないこともあれば、レンタカーでドライブするその道のりがなかなかスリリングだったり、なんで好んでそんな土地に行くのだろうかと不思議に思うが、彼の撮った写真を見ると、荒涼とした土地にある魅力を垣間見ることはできる。
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人間誰しも、安全なところから一歩踏み出して、その外側に身を晒したくなる。不良も、不倫も、そして冒険家も、根っこは同じ衝動から来ている気がする。
もちろん、この方の純粋な好奇心はとても素晴らしく、またこうやって記録に残してくれるからこそ、他の人間も見果てぬ世界を夢みれるのだと思う。