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自分の知らない情景や仕事を描いたお話が好きで、描写されている光景がありありと思い浮かばれた。
主人公が少しずつ前に進もうとするのを焦らすことなく見守る祖父。その接し方が素敵だった。
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素朴な優しさに何度も涙が溢れた。いつもは大人に感情移入しやすいが、今回は美緒の気持ちに自然に寄り添えてページを捲る手が止まらなかった。宮沢賢治のことが時々出てきてとても心が躍り、岩手山を思い浮かべながら清々しい気持ちで読むことができた。
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最高でした。同時に読んでいた同じように母と娘が対立する小説は陰鬱で最悪の読後感でしたが、伊吹さんのこちらは感動の涙が溢れて心が洗われる思いでした。しかも舞台は盛岡!このよう本を読みたいといつも思っています。お父さんはまるで今の私のよう。いつかお祖父さんのように、あの人柄や教養に少しは近づけるようになりたいと思いました。終盤からエンディングにかけては少しあっさりだったかも知れません。
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「雲を紡ぐ。光を染めて、風を織る。そうして生まれた布は人の命をあたたかく包んで未来へと運ぶ。」
これほど読書の至福、想像力で五感を満たしてくれる小説に出会えて幸せだ。
色鮮やかな盛岡の景色、羊毛、ホームスパンのあたたかな手触りと美しい色、おじいちゃんが吸うタバコの甘い匂い、コーヒーのいい香り、機を織る音、おじいちゃんが集めた色とりどりの鉱物、栃の木の蜂蜜、岩手山の伏流水、数え上げるときりがない。
盛岡行ってみたいなぁ。
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温かくて切なくて、背中をそっと押してもらえる一冊。
岩手の人の温もり、盛岡の街の息づかいを身近に感じます。
匂いや味や風、情景が今自分が経験しているような気持ちになりました。
親から子、子から孫へ、時間をかけて紡がれる糸のように、大切な繋がりを想い心に光が灯る物語。。。
盛岡を訪れる時は、素晴らしいガイドブックに!
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ホームスパン
毛糸を紡いで、布を織る。
その中で 自分を見つける。
盛岡の街の素晴らしさを思い出します。
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泣きながら読んだ。こんなに涙こらえた本、いつぶりだろうか。
主人公にも親にも祖父にも、共感や思うものが深すぎた。
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ホームスパンと呼ばれる手紡ぎの羊毛織物とそれが生み出される岩手という土地を舞台に繰り広げられる家族とバトンのお話。
主人公は高校生の美緒という少女。
東京で父母と一緒に暮らしていたが、家では母の顔色を窺い、父は無関心。
そんな家庭であったから学校でも周りに受け入れられようと必死に振舞っていた。
そのためにはいびつな微笑の仮面も身に着けて。
しかしそれでもある日、学校の同級生からいじめを受けて初めは耐えていたが、いつか心が持たなくなり、引きこもりになった。
家にも学校にも居場所はなく、ただ絶望の殻の中にいた。
そんな時に唯一自分を現実に引き留めてくれたのは、美緒が生まれた時に父方の祖父母が手紡ぎし贈ったという赤いショール。
それにくるまれているときだけ、心底安心できる。
これが作られた場所・人はどんなところなんだろうと夢に見ていた。
そんなある日、母がそのショールを捨ててしまった。
怒りに駆られた美緒は、家出を決行する。
目指すは夢に見た土地、岩手の工房。
そこから新しい人生が始まる。
という始まりの小説。
導入だけでも引き込まれるが、岩手に行ってからの本書の魅力はかなりの物。
おじいちゃんが完璧すぎて、笑えてくるレベル。
文化、芸術に精通し、教養深くて、センスも抜群。
そして仕事には誇りと矜持を持って臨んでいる。
これが本当に豊かな人なんだろうと思えた。
おじいちゃんの人柄だけでも読む価値があるが、
物語もとても面白い。
完全に積んでると思われた美緒の家族も、
美緒が岩手に行ったことで変化が起こり、
かけがえのない関係になっていく。
というのも凄く良かった。
久々に読んだとても良い小説です。
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不登校になった女子高生の主人公が祖父が営む羊毛の織物の仕事と出会ったことで、自分の生き方を見つめ直す物語。
主人公である女子高生の壊れやすい心情が丁寧に描かれており、自分の娘と重ねつつ読み進めました。
羊毛を織り込むホームスパンという布の不思議な魅力とともに、その織物に関わる人たちの心のつながりも強く感じることができました。
そしてそれは横の人間関係の糸だけでなく、祖父や祖母から父、そして娘までの縦の糸を紡いでいくものなのだと強く思いました。
読み終わった時にとても温かい読後感を味わうことができました。
一歩を踏み出す勇気をもらいました。
ぜひ娘にも読ませたいです。
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とても深い、素敵な作品。
祖父、父母、主人公の美緒(高校生)、それぞれの世代の立場で、それぞれの想いで読める、とても丁寧な物語。また、伝統工芸と、新しいデザインの息吹や可能性を、身近なものとして、肌で感じることもできる。
読み手が、歳を経てから改めて読み返すと、違うとらえ方ができそう、何度読んでも面白そう、という意味では、「赤毛のアン」などを彷彿とさせる。
作中に登場する、「ナルニア国」や、カール・ニールセン、エロール・ル・カイン、宮沢賢治など、好きな方にはまた違う、格別の余韻を残す作品だと思う。
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優しい言葉がいっぱい
雲のような糸を紡ぐ人たちの話
不登校になったみおはホームスパンと呼ばれる美しい糸を作る祖父の家にいく、そこから繋がる物語。
学校教師であるが、娘のことでひどいことを言われ、崩れて行く母、思っていることはあっても言葉に出さずうまくいかない父
色々な人の話が絡み合って、でも美しい。
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五感刺激。
読み終わりたくなくて、ゆっくり。ゆっくりと。
朝陽や夕陽を浴びて、
バスに揺られながら本を読む時間が好き。
行ったことのない盛岡の風や匂い。草花の色、太陽の光、清流の音、冷たい伏流水の味。橋から見下ろす鮭の遡上。喫茶店の静けさ。珈琲の香り。温かいリンゴジュースの味。おじいちゃんが蒐集した鉱物や匙の佇まい。おじいちゃんの甘い煙草の匂い。羊毛の手触り、頬の感触。ホームスパンの温かさ。人の温かさ。
「大事なもののための我慢は自分を磨く、
ただつらいだけの我慢は命が削られていくだけだ」
様々な色の糸で織り上げて一つの色を作るって世の中みたいだ。
福田パン食べたいなあ
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現実のおばあちゃんは大半が真紀のお母さんのように学校に行きなさいって言うと思います。盛岡のおじいちゃんのようにそっと見守ってあげる人の方が珍しいです。でも読者としてどちらの意見もわかってしまうからこそ、もどかしいというか。盛岡の人達に出会い、美緒は確実に成長し、自分の気持ちを相手に伝えられるようになる。急がなくていい。この言葉を自分の胸に刻みながら、美緒のように一歩ずつ進んでいきたいなと思いました。
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予想以上に傑作で、好きな作品の1つになった。
機織りのことは全然詳しくなかったけれど、情景が浮かび上がるくらい細かく描かれていたのでおもしろかった。
祖父の美緒への思いやりや、優しさがすごく心地よかった。祖父の存在によって美緒は自分と向き合うことができたと思った。
この話は単純に美緒の成長を描いたものだけではなく、壊れかけた家族の再生を描いたものでもあった。
美緒のように自分の意見が言えなくなることや、上手く言語化できないことが私自身とも重なり少し苦しかった。母はすぐに答えが欲しくて何か言いなさいと迫るのだろうけれど、美緒の気持ちがわかる自分からするともう少し待ってほしい、そんなに焦らせないでほしいと思った。
母や祖母は美緒のことを思っているのはわかる。しかし、美緒の気持ちを聞かずに自分たちのことを押しつけているように感じた。
祖父は美緒の祖母のことも丸く収え、少し言い合いになったにもかかわらず彼女は聡明だと褒めていてすごく心が広い人だなと思った。
もう1度読みたくなるような読後感で、余韻に浸ってしまう話。
いつか盛岡に聖地巡礼に行ってみたい。
【心に残ったフレーズ】
「相手の言い分を聞いたら、少しは歩み寄る用意はあるのかね。それがなければ誰も何も言わない。言うだけ無駄だからだ」
「美緒について言えば、相手を従わせようとして黙っているわけではない。気持ちをうまく言葉にできず……。あるいは人に言うのがつらくて、何も言えないでいる。ただ、それだけだ。せき立てずにゆっくり見守ってやれば、あの子の言葉は自然にあふれてくる」
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女子高生山崎美緒はいじめで学校に行けなくなる。教師をしている母は美緒をコントロールしようとするし、父は無関心風。美緒は一度も会ったことのない父方の祖父のいる岩手へ行く。羊毛をほぐし、染めて、織物にする行程に魅せられる美緒。
なかなかの逸品。少女の成長物語としてある程度、プロセスや結末は予想できるのものであってそれを大幅に上回るものではないのにかかわらず、読後に爽やかな風が吹いてきた。
こういう本を中学から高校辺りに読んでいればもっと健全な子になれたんだろうな。