紙の本
日本一ショートショートを書いた作家の作品
2023/01/21 05:06
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投稿者:ゆき - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本一ショートショートを書いた作家、眉村卓氏のショートショート「奇妙な妻」の再販プラス未収録作品三篇を収めた文庫本です。
日本一ショートショートを書いた、というと星新一氏を思い浮かべ、眉村卓なんて知らないぞと思う方々がいらっしゃるかもしれません。
眉村卓氏のショートショートが星新一氏ほど有名でない理由は、そのほとんどの本がどれもこれもすぐ絶版になってしまい現在に至るまで入手困難続行中で、一部の読者諸氏しかその本を手にできなかったためです。
本書はその中で貴重な復刊を果たし、未収録も備えた貴重な本といえます。
作風は全盛期の軽やかさとは違い重厚で文学的形容が多く見られます。
タイトルだけご覧になった方は、就活本か就活の大変さを書いたものだろうと思われるでしょうが違います。
ここにはかつてモーレツ社員という言葉が流行った頃の、昔かたぎのサラリーマンの悲哀が、ある時は詩のように、ある時はSF風に見事に描き出されているのです。
団塊の世代のサラリーマンの胸に去来するものが知りたい方、世にも奇妙な物語風のちょっと変わった短編を読みたい方にお薦めです。
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眉村卓は小松左京・筒井康隆・半村良・光瀬龍・星新一といった日本SF第一世代に所属している。これまで眉村作品は殆ど読んできたという自負がある中、本書「仕事ください」は読んだことがないと思っていたが、実はハヤカワ文庫JA「奇妙な妻」の収載作品とほぼ同じであることが後に判った。SFに感銘を受け、SFにのめり込んでいった時期に読んだにもかかわらず、その内容を殆ど覚えていないことに愕然とした。人間の記憶とはそんなものなのか、それとも単に私の問題なのかは言わないでおこう。
昨年の6月に刊行された「眉村卓の異世界通信」で著作リストが掲載されていたが、それよりも詳しい解説、作品の出典に関する情報が編者である日下三蔵によって纏められている。昨年の10月には、ハヤカワ文庫JA1500番到達記念復刊フェアで「司政官」が刊行され、久々に眉村卓の新刊らしきもの(5刷)を手にして、初版を手にした当時(1975年)の頃を懐かしく思い返した。
そして、各作品を読んでみたが、初めて読んだ頃の感動は得られなかった。それは時代が違うのだからしょうがない。世の中が変化している、私も変化しているのだ。しかし、日本SF第一世代の作品は現在のSF作家に直接・間接問わず影響を与えているのは間違いなく、第一世代の精神は形を変えつつ引き継がれている。
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作品集「奇妙な妻」をベースに単行本未収録作品三篇を含む四編を加えた作品集。
Ⅰ
奇妙な妻
ピーや
人類が大変
さむい
針
セールスマン
サルがいる
できすぎた子
むかで
酔えば戦場
風が吹きます
交代の季節
仕事ください
信じていたい
犬
隣の子
世界は生きているの?
機械
くり返し
ふくれてくる
やめたくなった
蝶
Ⅱ
その夜
歴史函数
文明考
『奇妙な妻』あとがき
変化楽しや?
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昭和中期に書かれた眉村卓さんのSF・ホラー短編作品集。日下三蔵編。
2部構成で、Ⅰ部はショートショート22編を、Ⅱ部は短編3作を収録している。
* * * * *
個人的には Ⅰ 部の方がおもしろかったように思います。特に気に入ったのは、「奇妙な妻」「人類が大変」「できすぎた子」ですが、表題作「仕事ください」も悪くないし、その他も概ねまずまずだったと思います。
けれど Ⅱ 部の作品は首を傾げざるを得ないように感じました。 Ⅰ 部の各作品よりもページ数を割いているのにも関わらず、端折りすぎの感があったからです。まるでダイジェストみたいに説明中心で話を進めているため、こちらもストーリーを追うだけになってしまいました。
眉村さんといえば当時は SF の名手だったように思いますが、やはり ( 科学的な部分の描写は除いても ) 古さを感じるのは仕方ないことなのでしょうか。少し淋しく感じました。