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静岡県立大学准教授のコーカサスに関する概説書。コーカサスについて新書で読める点、また彼女の前著のように限られた地域ではなくコーカサス全体(南北)を概説している点は、非常に評価できると思う。学部生や社会人がコーカサス地域について知る良い本。個人的には、コーカサス研究者の多くは歴史研究ということもあり、濃すぎて一般の人には「マニアック」としかうつらない現状もある中で国際政治や現代の問題意識とコミットする書籍はもっと出るべきだと思う。
但し、廣瀬先生は北コーカサスは門外漢なので、いくつか誤りも・・・。俺の専門とするチェチェンに関する記述では、バーブ教という表記があったけど、これは『アラーの花嫁』の著者ユリヤ(ロシア人ジャーナリスト)自身あるいは邦訳書が間違っていて、チェチェンでバーブ教なるものは浸透していない。バーブ教とはそもそもイスラーム・シーア派で異端視されている宗派の一つで拠点はイラン中心、しかも現在はかなり衰退しており、ほとんどイラン国内外問わず教徒もいない(すでに絶滅したという噂もある)。仮に、イランで異端視されているバーブ教を異端という意味で過激派とするのであれば、まあ理解出来ない事もないが、スンニ派のチェチェンでシーア派のバーブ教が影響を持つことは宗派的にあり得ない。これは単純にワッハーブ教徒(サウジアラビア起源のイスラーム過激派)の誤訳(あるいはユリヤの誤認)である。
またダゲスタンの民族問題や衝突の危険性として、99年のバサーエフとハッターブのダゲスタン侵攻、及びそれと関連したイスラーム過激派の動向のみをあげているが、これは最近見られたものに過ぎず、基本的には他の少数民族間の対立(アヴァール人とダルギン人の対立、アヴァール人とクムク人の対立、アキ・チェチェン人とラク人の対立、レズギン人のダゲスタン及びアゼルバイジャンにおける統一運動等々無数ある民族対立)の方が構造的な問題としてダゲスタンにあるはずである。まあ、北コーカサスを研究する人が日本ではほとんどいない上、現在の紛争を取り扱う事は政治的リスクもあるので、誤認や理解の不足は仕方ないとも思う。
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グルジア対ロシアの開戦直前という絶好のタイミングで刊行されたカフカス情勢の解説本。ジャーナリスティクな視点の目立つカフカス関連本のなかでは、どちらかというと教科書的な書で、だからこそ状況の整理に有用でもある。何故ロシアはカフカス地方にこんなにこだわり、紛争の火種が山のようにあるのか。エネルギー政策の観点から語られることの多いこの地方の事情がうまくまとめらた一冊なので、グルジア戦争でカフカス地方に興味を持った方は、この本をまず手に取ることをおすすめします。
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北京オリンピック直前のタイミングでグルジアが軍事行動を起こした。世界の耳目が集中する時に図ったようににコーカサスや北朝鮮などで騒動が起きた。エネルギー問題などを中心に南北コーカサス地方をわかりやすく説明してくれた入門書。門外漢の自分が驚いたのはその構成。北京五輪のタイミングで出版、弾薬庫のようなコーカサス、そして終章では2014年のコーカサスにある冬季五輪開催地ソチへつなげていく。大きな流れや読みは的確、と思わせる組立てです。
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アゼルバイジャン、グルジア、アルメニアの3国からなるコーカサス地方だが、多様な民族・言語・宗教の交錯するこの地域のありようは、私(たち)の想像を超えて複雑でなかなかに理解がとどかない。アゼルバイジャン国内には〈ナゴルノ・カラバフ共和国〉、グルジア国内には〈アブハジア共和国〉と〈南オセチア共和国〉という「未承認国家」が存在しているということだけでも、この一帯の不安定さを表していよう。さらにカスピ海周辺のエネルギー源をめぐる周辺国の思惑が加わって戦争状態が収まらない現状をわかりやすく整理してくれ、現代世界のありように眼を開かせてくれる好著である。
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地政学の入門書とも思えるほど、懇切丁寧な解説。
コーカサス地域関連のニュースのよくわからなかった点が、この本を読むことで雲散霧消する。
むしろ、政治や国際情勢に興味の無い人にこそ読んでほしい。
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タイムリー.
グルジアなんかに興味がない人でも,
外交という理解し難い営みの催され方について学べるかも
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コーカサスブームでちょと真剣に情勢勉強
まだまだ知らん土地の
知らん問題がこんなにもあるねんなーて
無知さに改めて辟易↓
もっといろんなこと勉強せなな
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現在の南コーカサス3国の相互関係、外国関係のポイントがわかる。ロシア連邦内の北コーカサス共和国の連邦内外の紛争についても説明がある。
登場するのはロ、旧ソ諸国、欧、土、イラン。"謎の国" トルクメニスタンもカスピ海の石油・ガス資源の文脈で僅かながら登場する。
文章中に「前述のように」「(P.~で後述)」や、( )内での文章による補足説明が多く、もとの文が分断されるのが少しだけ気になる。前でも後ろでも「(P.~)」を句読点の前に置くだけの方が分かりやすいと思います。(2009/10/9)
著者の管轄ではないですが、帯の「日本人がいちばん知らない地域」というあおりは首肯しがたい。もっとも、「よその国の人はみんなしっている!いちばんしらないのは日本人だ!」と喝を入れている意味に取ることも不可能ではないが。
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コーカサス地方っていうとチェチェンなんかの問題が特に有名ですね。
世界史の先生の紹介で知りました。
その日の帰り道に本屋で見つけて即買い余裕でした^^
買ってよかった。すごく分かりやすいです。
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[ 内容 ]
コーカサスは、ヨーロッパとアジアの分岐点であり、古代から宗教や文明の十字路に位置し、地政学的な位置や、カスピ海の石油、天然ガスなどの天然資源の存在により、利権やパイプライン建設などをめぐって大国の侵略にさらされてきた。
またソ連解体や、9・11という出来事により、この地域の重要性はますます高まりつつある。
だが、日本では、チェチェン紛争などを除いて認知度が低いのが現実である。
本書では、今注目を集めるこの地域を、主に国際問題に注目しつつ概観する。
[ 目次 ]
第1章 コーカサス地域の特徴
第2章 南コーカサスの紛争と民族問題
第3章 北コーカサスの紛争と民族問題
第4章 天然資源と国際問題
第5章 コーカサス三国の抱える課題
第6章 欧米、トルコ、イランのアプローチ
終章 コーカサスの今後
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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出版後数年を経て各国の情勢は変化しているとはいえ、コーカサスをみる上で基本的考え方を提示してくれるよい本。国際政治を学ぶ人には必読の一冊。
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中東・ヨーロッパ・アジアの挟間の地域、コーカサスの国際問題に焦点を当てています。旧ソ連地域であるため、その中心はロシアとの関係と、それにおける問題。ニュースなどで聞く単語が、一体どのようなものか。
コーカサスと言う単語からして日本になじみの薄い地域ですが、チェチェン紛争、カスピ海ヨーグルトなど意外なところで多くの人に聞き覚えがあるでしょう。
また、2006年当時の外務大臣、麻生太郎元総理が打ち出した外交政策「価値の外交」「自由と繁栄の弧」の中核地点に当たることからも、日本にとって重要な地域であることがわかります。(本作の中にも簡単に解説あり)
同著者の『強権と不安の超大国・ロシア』の方が、日本に良いかかわりのある国々の話が多くて読みやすいですが、そちらが読めた人ならこちらも読めます。
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コーカサス地方といえば,聞いたことはあってもよく知らなかった。コーカサスという言葉を聞くたびに何かオリエンタルな感じがするのはそのためだろう。日本からは遠く,情報も少ない。しかし,最近話題の相撲取り兄弟の出身地もコーカサスなら,南オセチア問題でロシア軍の侵攻があったグルジアもコーカサスにある。後者は今日のクローズアップ現代でもとりあげられていた。
日本語で手に入るコーカサス情報は,断片的すぎたり,専門的すぎたりで,なかなか手頃なものがないが,本書は,この地域の地理や歴史,対外関係をコンパクトにまとめている。刊行は今年七月で上記の事件より前だが,大注目のコーカサス,今になって図らずも売れまくっているに違いない。
旧ソ聯南西部,カスピ海と黒海に挟まれた地域がコーカサスである。周囲を取巻く国々は,北にロシア,ウクライナ,南にイラン,トルコ。カスピ海を挟んで東には,「中央アジアの北朝鮮」の異名をとるトルクメニスタン,世界最大の核実験場跡(セミパラチンスク)を擁する非核国カザフスタン。黒海の向うにはバルカン半島が位置する。
コーカサスは,アジアとヨーロッパの境として古くから多様な人々が住み,今でも民族の展覧会と呼ばれるほど複雑に入組んだ地域である。近代以降ロシアの侵略を受け,スターリンの強制移住政策が民族雑居に拍車をかけた(因みにスターリンはグルジア出身の靴職人の子)。抑えられていた民族運動がソ聯崩潰後に噴出したのも当然で,今もテロや紛争が絶えない地域である。油田があり,油やガスのパイプラインが通る,エネルギー戦略的に重要な地域であることも,問題解決を困難にしている。
この地域はコーカサス山脈によって大きく南北に分れる。南コーカサスはグルジア,アゼルバイジャン,アルメニアの三つの独立国からなる。これらはかつてソビエト聯邦を構成していた共和国が,91年に独立したものだ。これに対し,北コーカサスは今もロシア聯邦に属し,チェチェン,イングーシ,北オセチア,ダゲスタン等の共和国がある。
南コーカサスには,本国の主権が及ばない地域が散在する。民族問題に起因する事態で,アゼルバイジャン内のナゴルノカラバフ(アルメニア人多数),グルジア内の南オセチア(オセット人多数),アブハジアなどが深刻だ。これらを「自治州」,「自治共和国」と呼ぶこともあり,「自治」という語からは,それほど敵対的な感じを受けないが,独自の軍隊をもち,本国に税金も払わず,事実上の独立状態にあるという。その他,アルメニア内にアゼルバイジャンの飛地(ナヒチェバン)があったり,様相は複雑だ。各地でテロが起き,民族浄化の動きもある。
「民族浄化」という言葉には少数民族殺戮のイメージがつきまとうが,必ずしもそれだけではない。要するに地域内の民族を一元化することによって民族間のトラブルに終止符をうとうとすることを指し,追放,住民交換,同化等の手法もとられる。英語では"ethnic cleansing"。90年代のユーゴ紛争に際し,米広告会社が批判キャンペーン用に依頼されて作った語ともいう。もちろん虐殺でなくても,住み慣れた地を追われれば難民が発生し,問題は長期化する。
コーカサス三国にとり,隣国ロシアはいわば旧宗主国。そのロシアは独立勢力を支援するなどこの地の紛争に干与している。三国への影響力を維持したいロシアとしては,南コーカサスにくすぶる民族問題は願ってもない存在だ。調停等を外交カードとして用いて,エネルギー等の政略で譲歩を引出し,欧米に近づきすぎるのを牽制する。もっとも最近のロシアは強硬で,今回のグルジア進軍は新たな冷戦を引起しかねない。
南とは対照的に,北コーカサスの民族問題はロシア自らが抱える問題である。チェチェン紛争に代表されるように,いくつかの民族が分離独立を目指している。ちょうど七年前に,「テロとの闘い」という大義を獲得したロシアは,チェチェン武装勢力をテロリストと呼称し,弾圧を一層強化した。国際社会の批判が小さかったことを見ると,実質はどうあれ「大義名分」の果たす役割は極めて重要である。国家というのは随分とえげつないことをする。ロシアは,反体制的ジャーナリストの暗殺や,モスクワでのアパート爆破等,一部のテロに干与していると噂される。爆破テロを自作自演して,これを独立勢力の仕業とすれば,侵攻・鎮圧の良い口実になるというわけ。プーチン恐るべし。
親ロシアの北オセチアで300人を越す犠牲者が出た小学校占拠事件も記憶に新しい(04年)。この惨劇の背景には,侵略者ソ聯に迎合しスターリンの強制移住を免れたとかで,オセット人が他民族から嫌われていることもあるらしい。民族自決の要求をロシアに認めさせるべくテロ攻撃をするのだが,それなら地理的にも近い,憎き北オセチアを狙えという話だろう。もちろん,民族問題とはいえ,民族内の指導者が必ずしも一枚岩であるわけではない。チェチェンの独立派にも過激派から穏健派まで多様だし,独立を目指さない親ロシア派だっている。ロシアは親ロシア派を支援することで,自身があからさまに介入することを避けることもできる。チェチェン紛争では,戦死ロシア兵の母たちを中心に反戦の機運もあり,「チェチェン問題のチェチェン化」も進んでいるらしい。要するに傀儡政権を樹ててチェチェン人同士でやりあうようにしむける。なんだか70年も前の話のようだが,歴史には進歩ってないのだろうか。
南コーカサスへの諸外国のアプローチもよくまとめられている。三国は歴とした独立国であり,ロシアの影響が大きいとはいえ,経済的・政治的に欧米やイラン・トルコなどとも関係が深い。三国中でもアルメニアの対外関係が特色あって興味深い。
周囲にイスラームが多い中,アルメニア人はキリスト教(アルメニア教会)を信仰する。かつてローマ帝国版図であったためか,ヨーロッパ意識が強く国際的。本国の人口は少ないが,世界中に多くのアルメニア系移民がいて,「ディアスポラ」(もとはユダヤ人についての言葉)と呼ばれる彼らは各国で大きな力をもつ。彼らの政治的はたらきかけは「アルメニアロビー」といわれ,米仏などのコーカサス政策を左右する。アルメニアは隣国と概ね仲が悪く,特に西接するトルコとは,大きな歴史認識の相違を抱える。それはオスマン朝末期のアルメニア人大虐殺で,加害者とされるトルコはこの事実を認めていない。フランスでは「アルメニア人大虐殺否定禁止法」が可決されたとか。ロビー活動��てすごい。
トルコとの間にはこんなよくできた話もある。アルメニアの国旗にはアララト山が描かれているが,この聖なる山はトルコ領。はた迷惑なトルコは,自分の物でもないのに勝手に国旗にするなと難癖をつけたそうな。アルメニアの反論は,「おまえとこだって,国旗に月や星を描いてるじゃないか!」ホントの話かなぁ?
あまりまとまらないが,まだまだ不安定なこの地域,今後も注目していきたい。
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“国際関係の十字路”この副題ほどコーカサスを言い表すのに適した言葉はないかもしれない。ヨーロッパ、中東、アジア。文明と文明がぶつかり合うこの地は、多様な宗教・民族・言葉の入り乱れた複雑な歴史を有し、現在でもその混乱の火は消えていない。大国の意向に左右されてきたコーカサスこそ国際関係論を学ぶのに適した場所なのではないか。本著はそんなコーカサスの入門に適した本であると私は思う。
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ロシアの裏庭であり、ヨーロッパを視界に含めつつ、
中東も意識しなければならないコーカサス地方の
国際関係について記した一冊。
各国各地域の緊迫した情勢や経済関係、政治情勢を
わかりやすく概説している。
大国に囲まれ様々な圧力がかかる中で
方向性を探る背景に少し触れられたように思う。
ぜひ次は個別の国についてさらに掘り下げた一冊を読んでみたい。