復讐は甘美。装丁も甘美。
2020/10/21 23:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分でそれを生きてみな、な生きざまの三者三様。
特に金子文子が凄まじくて、とにかく伸び伸びしているんだな、これが。
悲惨があっても違う世界はあるという確信。真のアナーキストだ。
また、残した文章が心に響いて、豊か。国家権力はなんて惜しい人を奪ったのだ。
抵抗者、敗者の事績をきちんと残すのは市井の文筆家の大きな仕事だと思う。
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映画『金子文子と朴烈』で気になり(結局観られていないけれど)、こちらを読んで更に気になり。自伝や寂聴さんの小説も読もう。
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金子文子については最近2冊ほど読んでいて、そしてブレイディみかこ好きとしては、文子のことを姐さんのパンクな語りでまとめて読めて嬉しい。しかし、強制摂食のことは知らなくてショックだった。なぜレイプが暴力なのか、強制摂食のことと並べれば男性には想像しやすいのではないか。それは支配の問題だが、なにより文字通り、暴力なのだ。その暴力が、国家の名の下に行われるとき、私たちはどう向き合うのか。立ち向かうとなれば、それは命がけである。女の端くれとして、彼女たちがそこまでしなければ声を聞いてもらえなかった事実を思う。
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勇敢で逞しい日本とイギリスの女性達の話が、交互に同じ様なキーワードで繋がって語られる。頭ではなく身体で哲学を知っている女性の潔さに感服。
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女性3人命をかけて戦っていた。
残念ながら私は誰も知らなかった。
その中でも金子文子に心引かれる。
死に至るまでの心情が悲しい。
もし生きていたなら
どんな影響を私たちに与えたであろうか。
今もきっと世界の何処かで戦っている女性がいると思う
世界にもっと目を向けなければと思う
作者の文体がちょっと飛んでて面白い❗
他の作品も読んでみたい。
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アナキスト金子文子や英国のサフラジェット(女性参政権を主張する団体メンバー)エミリー・デイヴィソンの信念と彼女たちの闘いを深く知ることができる。エミリーは映画「未来を花束にして」でも登場した競馬場で馬の前に飛び出して(後に死亡)活動をアピールした女性。100年前の彼女たちから、私たちが学び行動すべきことは?色々考えさせられます。
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世界のあちこちで自分に敵対する陣営をテロリストと呼び合い、そして2020年のビックイベントへのテロ対策の名のもと個人データを照合され、一方、深夜のグルメ番組を「飯テロ」とカジュアルに表現し、重いも軽いもテロテロしている世の中ですが、やっぱり個人的には「テロはいかんでしょう、テロは…」ぐらいのいわゆる平和ボケ人間だったりします。しかし、本書はテロ、いやテロルという言葉は顕在化されていないはずなので、今日におけるテロ的な行為、いや行為にすらなってない思考、に至らざるを得なかった100年前の3人の女性のシンクロニシティの物語です。著者は「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」とBREIXTで今、引っ張りだこのブレイディみかこ。相変わらずのパンキッシュなノリで3人の女性のストラグルとアクションをリミックスしていきます。金井文子、エイミー・デイヴィソン、マーガレット・スキニダー、それぞれの全く関係ない人生が、巧みにキーワードで編集され、社会の構成員とされていなかった女性の社会参加への扉を開けていく、いや、閉ざされた扉への体当たりを蘇らせています。松本清張「昭和史発掘」の「朴烈大逆事件」の章で金井文子の名前だけは知っていましたが、アイルランドイースター蜂起のマーガレットもサフラジェットのエイミーも本書で初めて知りました。フィンランド34歳女性首相の誕生を以って、100年経ってここまで来たのか?100年経ってもここまでしか来れないのか?そして、自分は「テロはいかんでしょう、テロは…」ぐらいのレベルなのか?いやぁ〜ブレイディさん、いつも投げ込んでくるよなぁ…
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金子文子のことは映画「金子文子と朴烈」の予告編を見るまで知らなかった。「誰なんだろ、この人」と思いつつ、調べもしなかったところへ、初めてのブレイディみかこさんの本に登場して、こんな凄い人がいたんだと知った。映画も見たい。
エミリー・デイヴィソンに関して、気にはなっていたが見ていない映画「未来を花束にして」を見ようと思った。
扉に「100年前の彼女たちから、100年後を生きるあなたへ」とある。しかと受け取った。
"実際、その生涯を通じて、こうした文子の楽天性は、どん詰まりで返すきびすのような、砂が下に落ちきった砂時計がひっくり返る時のような、起死回生の裏返りを見せる。" 6ページ
"のべつ幕なし愚痴るほど家父長制の犠牲になっていながら、それが女の生きる道なのだと自らそこにはまり込んでいく。そんなに嫌ならどうしてその呪いのテンプレートからさっさと抜け出そうとしないのか。母と喋っているとなんかこう、無駄にちんたらしてる感じでムカついてくるのだった。" 34ページ
"道徳とは、強者が弱者を支配するためのツールであり、支配される階級とされる階級を固定させ、維持していくための「階級道徳」なのだということを文子は見抜いていた(略)。文子にとって階級とは富者と貧者のことだけではなかった。男と女、親と子、支配関係が存在するところには、すべて階級が存在するのだった。" 35ページ
"家という鋳型は人間を資産だの負債だのといったカネに変える仕組みなのに、みんな疑いもせずそこに喜んではまり込むから、靴の値段が高いだの安いだのと言っていつまでもカネの話で揉めることになる。" 39ページ
"私が私自身を生きることは、誰かにとっての「いい子」になることではない。" 40ページ
"主人がいないと生きていけずに何度も隷属先を変え、再婚を繰り返しながら年を取った母親。美しくさばけた女だった叔母もいつしか不倫相手だった義兄の奴隷となり、父親に殴られながら勉強していた弟も彼の奴隷であることになんの疑問も感じていなかった。こうした家族の姿にうんざりしていた文子は、人間が一緒に暮らすのはヤバイことだと知っていた。だからこそ自分は誰にも仕えないし、気に入られるための忖度もしないよと宣言しているのだ。" 113ページ
"どれだけ多くの女性たちが、経済的・社会的に男性に庇護されて生きるために自分自身であることを捨て、また庇護されていることが幸福だと思い込み、自分自身を生きないでいることだろう。それは生きていることにはならない。それは生きているように見えるが、死んでいることだ。そんな死人の生は彼女には生きられなかった。" 138ページ
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金子文子、エミリー・デイヴィソン、マーガレット・スキニダー
それぞれに壮絶な三人の人生。さらりと紹介されるエピソードがハードで途中何度も本を閉じる。
三人を象徴する花の挿絵、「ガールズ・コーリング あとがきに代えて」…印象的な表紙とともに忘れられない一冊になる予感。
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朝日新聞2019727掲載 評者: 斎藤美奈子(文芸評論家)
東京新聞2019811掲載 評者: 梯久美子(ノンフィクション作家)
日経新聞2019817掲載 評者: 山崎ナオコーラ(作家)
読売新聞2019825掲載 評者: 藤原辰史(京都大学准教授、農業史研究者)
朝日新聞2021911掲載
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これをどう感想にまとめるか、、考えながら読み終えた。
最近話題になっている「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の作家でもあるブレイディみかこさんの作品。
二人の女性を軸に描かれているノンフィクション。
くだけた言葉も多用し、エキセントリックな女性たちの気分を表現している。
アイルランド独立運動と女性参政権運動のエミリー・デイヴィソン。その頃のアイルランド、ダブリンは世界中で一番貧困の底辺に喘いでいた。常にイングランドに搾取される民族だった。
本当の両親から戸籍も作ってもらえず、いないものとして育つ金子文子。
育児放棄、暴力、大人の都合で日本を離れ朝鮮に渡り、そこでも女中として学校へもいけず、奴隷のように働かされる。8歳で自死しようとするが、急に耳に聞こえてきたセミの声で自分にかえる。
金子文子は知識としてではなく、そんな過酷な経験から、体で確立した平等感覚を持っていた。何ものにも、隷属しないという気概を培っていくのだった。
壮絶な1冊ですが、読むのと読まないのでは、確かに何か違うと思わせてくれるような1冊です。
頭の隅にチラチラとあった歴史の事実。
遠い傍観者であった自分から、違った目を持てるかなと、感じる読後感。
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3人の女性活動家、金子文子、エミリー・ディヴィソン、マーガレット・スキニダーの評伝。
金子文子については、昨年(2019年)彼女をモデルにした映画が公開されたこともあり、名前だけは知っていたが、残りの二人については本書で初めて知った次第。
ちなみに、金子は反体制の活動家、ディヴィソンはサフラジェットと呼ばれる女性参政権の活動家、そして、マーガレット・スキニダーはアイルランドの独立を目指した活動家である。
本書の構成は各人のエピソードを順番に一人づつ紹介する形ではなく、細分したものをそれぞれ一人一章とし、3人分をそれぞれ交互につないでいく形になっている。
また、各省の終わりに次の章のキーワードとなる語が大きいサイズで、かつ太字で記載され、次の章ではそのキーワードが言い方を変えて、しかし大きいサイズでかつ、太字で繰り返される、という非常にユニークなスタイルがとられていることも印象的。
金子の悲惨な生い立ちや、まだ23歳の若さで絶命するまでの壮絶な生きざまは、前述の映画ではどのように描かれているのか、非常に観てみたくなった。
また、デイヴィソンのサフラジェットについては、本書を読んでその詳細を知り、こういうことがあったからこそ、ディビッド・ボウイが「サフラジェット・シティ」という曲を歌ったり、ポール・マッカートニー&ウィングスが彼らの大ヒット曲「ジェット」の中でサフラジェットについて言及していたのかと、数十年たって初めて理解した。
加えて、スキニダーのアイルランド独立運動についても、やはり音楽ネタになってしまうが、ジョン・レノン、ポール・マッカートニーをはじめとする数々のミュージシャンが歌にしてきたアイルランドに平和を求める内容についての下地はここら辺にあったのか、と深く納得した次第。
著者の文章のうまさもあり、しっかりと読ませる良書。
ただ、できれば3人の肖像写真くらいは載せても良かったのではとも思った。
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ブレない軸を持った女性のストレートな行動言動の数々に、何ともあっぱれだなと思う作品でした。金子文子さんの存在を教えてくれた本になりました。
構成が面白い反面、頭がこんがらがってしまう恐れがあります。
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『女たちのテロル』レビュー
朝鮮の錦江の岸辺で自殺を試みるが、頭上で鳴く油蝉に、自分を取り巻いている世界の美しさ、静けさを気付かされ、もう一度、国家の構成人員としてはカウントされていない『もぐり』の人生を歩んでいく。
しかし、そこから感じる生きることの抵抗感覚はすべて『違う世界はある』という実感であり、それが彼女の生きている原動力になって、雪ダルマのように自然児金子文子を膨張させていく。そしてその野性味が時代を巻き込んでいく。
‘死の淵’から戻った人には‘信念’の貫徹を支える強い力が備わる。
それは逆から見ると運命がその人に与えた試練のようにも思えるし、その人の使命をスーパーパワーに転化する必然のようにも思える。
この様に‘死の淵’から戻った人に先日読んだ『だから、あなたも生きぬいて』(大平光代)に見ることができる。
そして、読みながら常に意識していたのが作者‘ブレイディみかこ’という人物だ。
『子どもたちの階級闘争』→ 『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』と読んできて、彼女の選ぶ言葉、そして社会の底辺で生きる者の姿を、読む者にしっかり手渡す様な表現を目にしてきた。
こんな表現をする人はどうやって作られるのだろうと考えながら、次々と彼女の作品を遡って読んでいる。ちょっと変わっている。そこがまた魅力で、親が知的な環境を与えてくれなわけでもない、真面目に学んだわけでも、高学歴でもない(高校は名門だが)、裕福な成金でもない。…。なのに、言葉は豊富に持っている。
自ら好んで裕福にはなりそうなタイプでもない。
彼女が金子文子を追ってこの本を書いた様に、私もしばらくブレディみかこを追っかけてみる。
そんな彼女は
いまの私のマイブームだ
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P78「不平等、という問題に本気で取り組む人々が現れた百年前は、様々な分野でそれを行おうとする人々が、優先順位を争って対立した時代でもあったのだ」
P160「マイノリティーを上に置いてマジョリティーより尊重すべきものとして扱わない代わりに、劣るものとも見なさない」
P164「生まれながらに蔑まれる人が存在しないのなら、生まれながらに敬われるべき人だって存在するわけない」