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李鴻章 みんなのレビュー

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みんなのレビュー21件

みんなの評価4.3

評価内訳

21 件中 1 件~ 15 件を表示

中国共産党に迎合したがる日本の「学者」でもへの当てつけも兼ねた名著

2011/12/13 09:07

18人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

李鴻章。清末の科挙官僚で、清朝最後の外務大臣として琉球処分、台湾出兵、日清戦争、露清密約と続く清末の外交を事実上ほぼ一人で切り盛りした「秀才」である。シナ本国における李鴻章の評価は、例によって激しい。学問の自由、学問の政治からの独立が全くない彼の地では、時の共産党首脳部の評価がそのまま李鴻章の「歴史的」評価とされる。李鴻章はつい最近まで「売国奴」であり、唾棄すべき小人物として唾をかけられる存在だった。最近でこそ「英雄」として名誉回復したようだが、なーに、そんなもの一朝にして変わる。それがチャイナである。こうしたチャイナを横目で見つつ、常にシナに迎合したくてうずうずしている「ヒラメ学者」が戦後の日本には多いものだから、驚くなかれ、李鴻章についての伝記が戦後の日本では一切書かれていないのである。著者が李鴻章についての伝記を執筆した最大の動機がここにある。シナへの迎合を旨とするシナ史学会の主流派への当てつけ、挑戦の気概が感じられ、清々しい。

李鴻章を清の大官の座に押し上げたのは淮軍という彼の私兵の存在だった。同じく私兵集団たる湘軍を率いて太平天国軍を鎮圧するのに成功したのが、李鴻章の師匠曽国藩で、彼と同じビジネスモデルで故郷のゴロツキどもを中心に編成したのが淮軍なのだが、事実上、この私兵ゴロツキ集団が清朝における最大最強の軍団となってしまったところに、ある意味で清の限界があった。昔も今もチャイナでは、こうしたゴロツキ集団を大きくした私兵集団が軍事力の中核を成していたのだが、こうしたシステムは19世紀には、明らかに時代遅れになっていた。ナポレオン戦争以降、ヨーロッパに誕生した国民国家は「国民軍」という新たな組織を生み出し、「ナショナリズム」という新たな統合原理をバックに「逃げない軍隊」という、それ以前の常識では考えられない強力な軍事システムを生みだした。それ以前の軍隊はプロの殺し屋による賞金稼ぎの寄せ集めみたいなもので、各自カネ儲けが目当てで身体が資本だったから、戦況がやばくなると蜘蛛の子を散らすように戦線は崩壊するのが常だった。ところが「国家の存亡を担う国民軍」は違った。お互いが同じ釜の飯を食った仲間であり、戦う目的は国家の生存であり国家の栄光であったから、命を賭してでも彼らは戦うことが出来たのである。実はシナやトルコ、インドが欧米の侵略者の前に次々と敗北を重ね植民地へと転落していった最大の理由がここにあった。彼らは欧米の火力に負けたのではない。組織力に負けたのである。そして大清帝国を含むアジア中近東アフリカの諸国の大半は、その滅亡まで、ついにこうした新しい組織を生みだすことが出来ずに終わったのである。

例外が日本だった。日本は黒船の来襲を知るや朝野をひっくり返す大騒ぎとなって300年続いた徳川幕藩体制を一新し明治維新を断行。大日本帝国を組織してアジアを覆い尽くさんとする帝国主義の大海に漕ぎだすことに成功する。それまで「世界の中心」を自負した清が逆立ちしても為し得なかった「それまでの国家体制を国民国家として再編成する」という大業を、いともたやすくやってのけた日本を目の当たりにして、心底日本を羨み妬み、そして恐れたのが李鴻章その人だった。彼は日本を指して「中国永遠の大患」と呼び、おそれている。日本との軍事的緊張が高まると李鴻章はドイツから巨大な軍艦、定遠と鎮遠を購入し、日本近海を遊弋させた。目的は日本を脅迫しおびえさせ、戦わずして跪かせることにあった。シナの常套手段はいつもこの脅迫にある。なまじ自国の軍隊の練度も士気も弱く、いざ戦争となると使い物にならないことを知りぬいているからこそ、平時に自らを必要以上に巨大に見せ、虚勢を張ろうとする。この虚勢に驚いて相手が引き下がれば良し。シナ人はこれを以て孫子以来の伝統「戦わずして勝つ」作戦なんだという。しかし日本人にはこれが通用しなかった。日本の伊藤博文も陸奥宗光も実は脆弱な清の足元を見透かし、逆に戦争をしかけ、これを撃破する。この日本の壮挙により「眠れる獅子」と世界を欺いた清の化けの皮が剥がれ、以後、シナは欧米列強による瓜分の辱めを受けることになるのだ。それにしても定遠は艦の大きさに比べ大きすぎる大砲を積み、砲を旋回させただけで艦が傾き照準が狂って照準をやり直し、いざ大砲を撃つと、また艦が傾いて照準が狂うという状態だったとはしらなんだ。英語ではこういう使い物にならない高級品をホワイトエレファントという。

清の悲しいところは、アジアのみならず世界の中心は彼らであり、ゲームのルールは彼らが作った旧来のモノが全てだと言い募ったが、世界の大勢は欧州帝国主義の世の中であり、ゲームのルールは清ではなく欧州が決める状況となっており、いち早く、この空気を読んだ我が日本も欧米のルールに従って試合を挑んだので、清の虚勢は脆くも崩壊せざるをえなかったというところである。清のルールの中核を為すのは「属国自主」である。これはどういうことかというと、ベトナムも韓国も、清の周辺国は全部清の属国である。ただし、これは清を宗主国とあがめ属国としての礼を取るということのみを指し、いざ、属国が何か欧米諸国や日本との間で不始末を犯しても、宗主国たる清は何の責任もとり必要が無いという、いわば清にとって都合のよいダブルスタンダードな屁理屈なのである。シナの経済力・軍事力が圧倒的な場合は、このシナに取って「良いとこ取り」の屁理屈を周辺に押し付けることが出来た(丁度、いまのアメリカのように)。しかし、もはやそういう条件が消滅したにも関わらず、この屁理屈に固執したところに清の愚かさがあった。欧米の理屈では属国の不始末の処理をするのは、宗主国の責務である。支配する以上、責任も発生すると言うのが国際法のルールである。これを清は受けつけようとしなかった。いざとなったら「俺がルールブックだ」を軍事力で日本や欧米に押し付けるほどの力を19世紀末の清はもっていなかった。だから「それなら戦争だ」となったとき、清はズタボロに負けたのである。この清のみじめな状況を福澤諭吉は「世界国盡」で朗々と歌い上げている。「そもそもシナの物語、往古陶虞の時代より年を経ること四千歳、仁義五常を重んじて人情厚き風なりと、その名も高く聞こえしが、文明開化後ずさり、風俗次第に衰えて、徳を修めず知を磨かず、我より他に人なしと世間知らずの高枕、暴君汚吏の意にまかせ、下を抑えし悪政の天罰のがるるところなく、頃は天保12年、英吉利国と不和を起こし、唯一戦に打ち負けて、和睦願いし償いは洋銀21百万、五処の港を打ち開きなおも懲りざる無知の民、理も無きことに兵端をみだりに開く弱兵は負けて戦いまた負けて、今の姿に成り行きし、その有様ぞ憐れなり」。

李鴻章は、最後は自暴自棄になったのか、ニコライ二世の葬儀でペテルブルグに赴いた際、莫大なわいろをロシアから受け取り、東清鉄道以下の利権をロシアに売り渡したようである。時代と環境に恵まれない秀才の末路は、何時もこんなものかもしれない。

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2011/12/20 05:54

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2011/12/20 13:47

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2013/01/29 10:58

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