紙の本
粒ぞろいの12話
2009/04/08 14:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブルガリアの昔話というのは珍しいと、とりあえず読んでみた。モチーフとしてはともかく、全体の流れとして知っている話はなかった。けっこう昔話は読んできたつもりだが、まだまだ世界はひろいのだと実感。
困っている生きものを助けて不思議なものをもらう話は諸国にあるが、ブルガリアにもP.35「パーベルじいさんの光る石」がある。また、何かを決めるときにものを投げてその転がる方向に進んでいく話も、収録された12話のなかに複数見られたし、ロシアの民話にもそういった話は多いようだ。
ちょっとした教訓めいた話、悪い人に財産をとられても努力や協力により取りもどしてから、自分の身の程にあった暮らしをする話、P.75「たまごを売って子ブタを買って」のように、どこの国にでもありそうなうっかり屋の笑い話など、なかなかの粒ぞろい。
タイトルとなっている「吸血鬼の花よめ」は、吸血鬼の呪いにかかってしまった青年が、花嫁となる愛する娘を手にかけないで済むように姿を見られまいと努力し、娘は青年の呪いをなんとか解こうとする話で、怖い話ではなかった。
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1996年、単行本として出版されたものが、福音館より今回文庫本として出されました。
日本ではあまり紹介されることの少ないブルガリアの昔話12話が入っています。
青春時代にブルガリアに留学経験のある八百坂洋子氏の文章と、高森登志夫さんの美しいモノクローム画の表現で、中世の時代に迷い込んだような錯覚を覚えます。
表題の「吸血鬼の花よめ」では、昔話としては珍しく勇気あるお姫様が主人公で、ブルガリア女性が持つ心の強さを垣間見たような気持ちになりました。
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ブルガリアといえばヨーグルトしか思い浮かばないのですが、こうして昔話を読むと親近感も沸きます。古今東西昔話には似たようなパターンが多くあります。子どものいない老夫婦に何かの化身が子どもとしてやってきたり。助けた動物に恩返ししてもらったり。結婚した相手が実は人間じゃなかったり。その中で出てくる動物や道具立てにお国柄が表れて面白いです。
また割と行動的な人物が多く登場するんですね。幸せは自分の手で掴み取るもの。それが国民性なのかも。
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「吸血鬼の花嫁」はちょっと他国を知るのに面白かったです。こんな考え方するんだな。って大人目線。子どものとき読んだらもっと別の目線でみれたのかな。
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「ブルガリア発、選りすぐりの12の物語
ブルガリアはヨーロッパのバルカン半島に位置し、古くから東西文化交流の場でした。昔話もオリエントとヨーロッパ相互の影響をうけた独自の楽しいものが多くあります。青春時代にブルガリアのソフィアに留学していた編者が、選りすぐりの物語を集めました。「石灰娘」「パーベルじいさんの光る石」「吸血鬼の花よめ」「ふしぎな小鳥の心臓」など全12話収録。」
メモ:
「悪魔とその弟子」
・・「息子が悪魔のもとでの三年の修行を終えた時、手元に引き留めて殺そうと計る悪魔を前にして母親は「もう一日だっていやですよ。むすこがいなくては、これから先、わたしは生きていけないんです」と訴えて、息子を連れ戻す。この母親の言葉にこそ、怠け者の息子を自立させるキッカケがあったのではないか。「自分を必要とする誰かがいる」と実感した時、息子はなんとかしようと立ち上がり、息子と母親の関係は逆転する。」(『お話とともに育つ喜び』下澤いずみ p29)