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毎日新聞2022123掲載 評者:中島京子(小説家)
日経新聞20221210掲載 評者:山崎佳代子(詩人,翻訳家,文学博士,アバンギャルド詩,比較文学)
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どんな感想を書いたところで、本書に書かれている現実に比べればあまりに軽薄なものになってしまう。読んでいてどれもこれも非常に厳しい話で、読み進めるのが辛い。「私の中のあなた」以来の辛さだと感じた。
にわか雨が降るように爆弾が落ちてくる。あっけなく人が亡くなる。それも子供が。
生まれた性別が異なるだけで人とは思えない扱いを受ける。
どうしてこうなってしまうのだろう。
それでも、一人でも多くの人に現地の状況を知ってもらい、寄付なりなんなりできることを行動に移してもらえるよう、微力でも書かねばならないと思う。
日本でも、形は違えど本質的に同じような問題は現在もなおある。それらも併せて頭に置いておく。
第四章はかすかな希望があり、それだけがかすかな救い。
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アフガニスタン(以下、アフガン)の女性作家18名による23篇の作品が収められている。
紛争などによって疎外された現地の作家を発掘するプロジェクト〈アントールド〉により集められ、更に英語圏の読者に読んでもらうべく現地の翻訳者が英訳。アフガンの人々によって彼女達のペンは翼へと姿を変え、世界中に羽ばたいたのである。
装丁・タイトルに惹かれて手に取ったが、想像以上に意義のあるもので本を持つ手に力が入った。
「みなさんの心を引き裂くような文章も本書にはあります」
「思わず息を殺してしまうような文章も記されています」
こんな文言がまえがきにあったら、その先は覚悟を決めて読んでいくしかないだろう。(どうしても投げ出す気にはなれなかった)
予想を裏切らず、というか上回って、どのストーリーも重くのしかかってきた。1話終えるごとにページを閉じ、時間を置いてから再開する調子。彼の地ではどれも現実あるいは起こりうる話で、中には実際の事件を題材にしたのも含まれているから辛いのなんのって。
ストーリーのシチュエーションは様々だが、おおよそはテロや家庭内暴力、男尊女卑問題が背景に横たわっている。
「死は平等に訪れる」と言うけれど、いつどこでテロに巻き込まれるか予測できない日常でもそんなことが言えるのだろうか。秒/分/時間刻み、その場所にいるか・いないかで運命が決まってしまう。『エアコンをつけてください』のハミード校長みたいに妙な胸騒ぎがしたりと、生きた心地のしない日々を過ごさなければいけない中で。
「あの人たちが気にしてるのは、人からなんて言われるかということばかり。片方の耳を壁に、もう片方をドアにくっつけて暮らしてる」
身近に戦争がない時も、女性は家庭や社会において厳しい視線に晒されている。
親から充分な教育を拒まれ勝手に婚約者を決められる。男子の出産を強制される。かと思いきや、『虫』のゾフラーのように芸術家志望を否定される。(否定した校長曰く、「アフガンでは女性の指導者や技術者が必要とされている」んだとか…)
そのうえ本書の刊行はタリバンが政権に返り咲く直前であって、現在女性の立場はますます悪化の一途を辿っているという。
女性の生き方を決めつけている点は日本も変わらない。
しかし我々と違うのは、彼女ら18名の作家は各々の現実を一切オブラートに包んでいない。ペンの力を通して、男性社会(男性によって歪められた社会)に屈しない確固たる姿勢を示している。村を水没の危機から救った女性の物語『アジャ』では、正しいことを遂行する役割に男も女も関係ないという強いメッセージ性が発信されており、何より勇気づけられた。
これほど「ペンは剣よりも強し」を肌で感じるこってなかなか無い。各シーンの断片が、まだ記憶に刺さっている。
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戦争やテロ、デモが当たり前に存在すること、そして家父長制もまた当然として存在することそれが大前提として物語が進むために、展開や心の動きの何もかもが予想できず衝撃的だった。
アフガニスタンの女性がそれらを受け入れてて諦めているのではなく、当然苦しんでいて足掻いているということが痛いくらい伝わって、苦しい物語も多くあった。
一方で、子の安全を願う気持ち、働くことに生きがいを感じることといった同じ気持ちも感じることもできた。
また、アフガニスタンではどのような食器でどのようなものを食べ、飲み、どんな家に住んで、買い物は、学校は、などの暮らしが目に浮かぶような描写が素晴らしかった。
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アントールド(紛争地域の作家育成プロジェクト)の企画編集によるアフガニスタンの女性作家18人の23の短篇。ダリー語(アフガン・ペルシア語)とパシュトー語で書かれたものを英訳し発行(2022年2月)それを日本語に訳したもの。
文学的表現を求めて読むとなると粗い部分もあるものの、愚直であっても伝えたいという気持ちが読み手に伝わってくる。
風習や宗教は私たち日本人とは違うもののまったく理解できないということもなかったのは昔の日本の「家」といくらか似ている部分もあるからでしょうか。どの作品にも重苦しい空気が充満していて、いつ何時でも飛来する爆弾、家庭での抑圧、貧困、死…希望を見つけるのは暗闇で砂粒を探すようにとても難しい。
それでも本書ではフィクションだとしても
「アフガニスタンは女性の指導者、女性の政治家、女性の技術者、女性の経済学者を必要としている。」(P148)と言う先生が存在していたのに今はタリバンに女性の教育が非常に制限されてしまっている。胸が痛い。
小学館の紹介ページ↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09356742
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ものすごく良かった。
苦しく、悔しく、やるせない。衝撃と絶望。総じて漂う女性の不自由さ。社会通念の呪縛。そして、沸々と湧き起こる怒り。
産後病院から戻ると、男の子が産まれないからという理由で夫が新しい妻との宴を開いている「八番目の娘」、セクハラに文句を言ったら給与未払いで解雇された「共通言語」、暴力を振るう姉の夫を殺めた弟と彼をかばい有罪となった先生の物語「ダーウードのD」。
一方で、希望や清々しさを感じる作品には心救われた。
タダでバスに乗せてくれた運転手さんの優しさが沁みる「冬の黒い烏」、女性のリーダーシップと女性たちが力を合わせて団結力の強さを輝かせる「アジャ」、心ときめく赤いブーツを選択することが出来、自分を貫いたことで合唱のリーダーになれた「赤いブーツ」、愛する夫に先立たれ、義兄に結婚を強要されるも未亡人を貫き、クッキーを売ることで、経済的自立を果たした「ハスカの決断」。
それに、失明と共に失恋したラヒーマと彼女のために情報とお金を集めたアリーの切ない恋を描いた「巡り合わせ」。
故郷が心休まる場所だったということを、枕を介して描写する「わたしの枕は一万一八七六キロメートルを旅した」が作品としては一番好きだと思った。
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同じ地球上にこういう世界があるのか、と頭を殴られたような衝撃を感じる。
ただ、これでアフガニスタンの人々を「理解した」と安易に言うことはとてもできない。きっと、どこまで行っても私は完全に理解できていない。
厳格なイスラム社会での家父長制、女性の抑圧などを知識として理解はしていても、そこで生きる人々がいることを、心の動きを知ってリアルに感じるのは初めてだった。
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男の子の子供が生まれなくて頭から熱湯をかぶった女性の話が頭に残っている。そしてその女をみて哀れまれたのは彼女の旦那が可哀想、というのも。
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アフガニスタンの女性達が書く短編集。1つ1つの話が苦しかった。現実に起こっていることなんだろうけど、とてもじゃないけど想像もしたことがないことばかり。人権とは、と考えさせられました。。
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アフガニスタンの女性たちの生きにくさが本当に生々しく描かれてて、読んでいて何度も耐え難く感じた。その文化が全く理解できないのではなく、日本の現在にもつながる話だからこそ痛々しい。小津作品につながる話も多い。
こういった作品が世に出るために尽力されてる方々に心から敬意を表する。
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アフガンに生きる女性たちは想像を遥かに超える恐ろしさの中に生きていることを知り、今この日本でいろんな悩みをそれぞれ抱えながら過ごしていることは平和であるからこそあるのだと改めて感じこれは毎日に感謝しないといけないことなんだと実感した。
同じ人間でおなじ女性として生まれてきたのにこんなに違うのだと、自分がいかに幸せな環境で生きているのかしみじみと感じた。
また、言葉を繋いで日本まで届けて下さった訳者の方々がいるからここまで届いたのだとよく分かった。
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暴力、性暴力、男性優位、家父長制、縁故主義、テロ、貧困…考えつく限りの苦難に直面する、アフガニスタンの女性たち。
フィクションだが、元になった物語はきっと、かの国の女性たちが多かれ少なかれ体験してきたものと考えて外れではあるまい。
ダリー語、パシュトー語からの重訳の本書。あとがきにも書かれていたが、収録されている作品はすべて、アフガニスタン国内に暮らす女性作家から、ショートメッセージやSNSを通じて英国に暮らす同胞に送られたらしい。身に危険が降りかかるのを避けるために、作者名はすべて仮名である。
英語からの翻訳もとても安定しており、文学作品としても十分に読みごたえがある仕上がり。
配列が重い物語から希望の持てる物語という順番になっており、最初の方は1話読むだけでいったん本を閉じてしまっていた。
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アフガニスタンの女性たちが受けている理不尽はまさに筆舌に尽くし難いものだ。
21世紀の今も、これほどの人権蹂躙が国是とされるような社会で希望を温めながら生きなければならないとは、何と言ってあげても足りないことだろう。
死なずに生き抜いてほしいと思う。
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アフガニスタンの女流作家18人による23篇の短編小説集。長い歴史を持つ国であるが、長年の紛争地でもある。テロ、貧困が日常的にある中で、女性たちは特に自由が制限されている。
この短編集を読むと、私たちが普通に生活している世界とは全く異なる世界で、アフガニスタンの彼女たちは生きていると痛感する。これが同時期に地球に生きる女性たちの現実なのかと驚く。
ニュース等でしか知ることがない国の日常生活を、如実に伝えてくれる。
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BSテレ東で放送されている番組「あの本、読みました?」を毎週観ているのですが、ちょっと前にゲストで出た宇垣アナが紹介していて読みたいと思った本。
著者はアフガニスタンの女性作家たち18人。
抑圧されている社会の中でも、小説を書きたいという女性たちを募って、イギリスで出版されたこの本。
当然、彼女たちの言語での出版はいまだに叶っていません。中には、身の危険を感じて国外退去をしている作家もいるそう。
命がけで書いた短編(長編を書く余裕も安全もない)は、小説のはずなのにノンフィクションかと思うほどリアルで悲惨な内容ばかり。
女性差別、家父長制、貧困、さらにテロや暴力、死。。。
もしかしたら、登場人物がフィクションなだけで、内容はノンフィクションなのかもしれません。
重かった。