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「鎌倉殿の13人」ロスの方にオススメの短編集
2022/12/20 15:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2022年のNHK大河ドラマが北条義時を主人公にした鎌倉時代を描くと聞いて、
正直面白いのかなと半信半疑だった。
何故なら、鎌倉時代といっても有名なのは幕府を起こした源頼朝とか
平家を破った義経とかの名前ぐらいで、
義経が何故頼朝から嫌われることになったか、
その背景すらよく知らなかった。
三代将軍実朝が雪の鎌倉八幡宮で殺害されたその相手公暁との関係も
実はほとんど知っていなかった。
そんな鎌倉がどんなドラマになるのか、
一年間見終わった今、とっても満足している。
鎌倉時代の初期はこんなに面白かったのか。
もっと日本史を勉強しておけばよかった。
もっとも日本史の教科書だけでは
この面白さは体験できなかったに違いない。
となれば、
やはりその功は脚本家三谷幸喜さんにあるし、
演じた俳優さんたちの熱演によるものといっていい。
そして、そのドラマの余韻を楽しむのにうってつけの一冊が
複数の書き手による歴史小説アンソロジー『鎌倉残影』だ。
刊行が2022年11月だから、
まさに「鎌倉殿の13人」ロスになった人向けに編まれたといっていい。
書き手は5人。
朝井まかてさんの『恋ぞ荒ぶる』、諸田玲子さんの『人も愛し』、
澤田瞳子さんの『さくり姫』、武川佑さんの『誰が悪』、
そして葉室麟さんの『女人入眼』。
面白かったのは、朝井まかてさんの作品で、
北条政子と義時の姉弟の半生を短い枚数ながらうまくまとめている。
大河ドラマは一年にわたる作品であるから細部まで書くことができるが
短編小説はやはり焦点をあてる描き方となる。
そのあたりの妙が、さすが朝井さんはうまい。
武川佑さんの作品は、和田義盛が起こした戦いを描いたもので、
大河ドラマでも印象に残る場面であったから
これも面白く読んだ。
私にとって、この本は「鎌倉殿の13人残影」になったといえる。
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朝井まかて、諸田玲子、澤田瞳子、武川佑、葉室麟、5名の作家による鎌倉時代アンソロジー。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の影響で、今年ほど鎌倉時代にハマった年はなかった。
こんなにたくさんの作家陣が鎌倉時代を描いていたとは。同じ人物のことでも、各作家さんの視点も少しずつ異なって、読み比べることも面白かった。もちろん大河ドラマの脚本家・三谷幸喜氏とも少し異なる。
当たり前のことだけれど、現代を生きる我々が鎌倉時代に起こった出来事を実際に見た訳ではないので、残されている書物を自分の視点で読み解くしかなく、もうそれは想像の世界。だから余計にこちらの想像力も掻き立てられる。
そもそもの始まりは、一人の女性の恋だった。
そこから女性の家族を巻き込み、更には周りの男たちも次々に巻き込まれていく。
私利私欲に走る者も当然出てきて、大勢の人たちが騙し騙され殺し殺されて。良い意味でも悪い意味でも日本の歴史に名を残し…とこんなに波乱万丈な生き様をした女性もなかなかいないのではないだろうか。
そして元は朝廷を守る立場の武士が、朝廷に刃を向けて勝利を収めるなんて、今考えても驚くべきことで、それが史実だなんて、更に信じられないこと。
大河ドラマもいよいよ佳境。皆さんの行く末をしっかり見届けていきたいと思います。
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手頃なボリュームでサクッと読めるアンソロジー。「恋ぞ荒ぶる」(朝井まかて)と「女人入眼」(葉室麟)は、政子・義時中心の鎌倉殿ダイジェスト版のよう。頼朝の妹・有子が仏画師に願いを託す「さくり姫」(澤田瞳子)、隠岐島へ配流された後鳥羽上皇が大姫との儚い出会いを思い返す「人も愛し」(諸田玲子)、和田合戦を義盛の視点でミステリー風に描く「誰が悪」(武川佑)は、いずれもこれまでの鎌倉ものにはない切り口で興味深かった。
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5人の作家による短篇集。
北条政子を描いた朝井まかてと葉室麟、和田義盛を主人公とした武川佑、後鳥羽上皇の回想による大姫の姿が印象的な諸田玲子。絵師の姿を描いた変わった切り口の澤田瞳子が面白かった。
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鎌倉殿の13人観てなかったし
鎌倉時代ってそんなに興味がないんですけど
さすがうまい人のアンソロジーなので
どれを読んでも面白かったです
読む前は 朝井先生目当てだったんですが
武川佑先生の 「誰が悪」
和田義盛一族の凄惨な最期が哀しかったですね
ドラマで見たら 辛くって泣いちゃったと思う
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複数の著者の鎌倉時代初期の歴史小説を集めたアンソロジーである。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』と重なる。
澤田瞳子「さくり姫」は絵師の目を通して源頼朝の同母妹・有子を描く。坊門姫と呼ばれ、一条能保の妻となった人物である。後藤基清が有子の乳兄弟として登場する。基清は能保の家人と知られているが、ここでは忠誠心は有子にのみ向けられている。史実の基清は讃岐守護を務め、一条家に仕え続けた。嫉妬深さや悪女と伝えらえる北条政子の人間味が明らかになる。これは『鎌倉殿の13人』と重なる。
武川佑「誰が悪」は和田合戦を描く。和田合戦の前に畠山重忠が冤罪で滅ぼされた。和田義盛は畠山重忠を討ちたくなかったとする。「次郎(重忠)のときはわしも悲しかった。どうして討たねばならぬと、悔しく思ったさ」。これは『鎌倉殿の13人』と重なる。三浦一族は畠山重忠に衣笠城の戦いの遺恨を抱えていたと説明されることが多いが、ここでは異なる。
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大河ドラマを見ていなかったので、新鮮に、政子の尼将軍の事が、いろんな方向から、描かれていて楽しんだ。
5人の作者!
失礼ながら、竹川佑氏の本を読んだ事が無かったので、次回には、探して読みたいと思う。
どの作品も、歴史的背景がよくわかる。
澤田瞳子氏の 頼朝の妹 有子の仏画に対する想いが、鎌倉時代を思わせる?
短編のようで、読み甲斐のある本だと、思いながら、本を閉じた。