関ヶ原の戦いを巡り人々の揺らぎ
2022/11/08 22:16
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
関ヶ原の戦いに至る人々の心の動きは、様々であり、大いに揺れたようだ。徳川家康の凄みは、幾度となく己が凡庸であることを知らされる経験を積んだことであろう。凡庸だからこそ慎重になり、苦難を乗り越えることが出来た。失敗は挫折に遭遇し、そこから学び、同じ過ちを繰り返さなかったからこそ、最後に笑うことが出来たのだろう。一方、石田三成らは、己の知に驕り、希望的観測にまみれ、勝つ機会を見失ったのだ。自らの強みではなく、弱みを知る者こそ、勝者になれるのかもしれない。
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「御予約受付中」(=近日発売)という様相で発見し、発注して入手した。そして早速に紐解いて愉しんだ。好かった!
本作は「関ヶ原合戦」を背景にした時代モノの小説である。
「関ヶ原合戦」ということになると、物凄く知られている戦いである他方、色々と小説家の想像の翼が羽ばたく余地も多々在るかもしれない出来事であると思う。旧いモノから近年のモノまで、合戦そのもの、合戦の前後のこと等を色々と取り込み、様々な人物を中心視点人物とする小説等の作品が在ったと思う。が、本作はそれらの何れとも「似ているようでいて、全然似ていない」という面白さが在る。
本作は2人の主要視点人物が設定されている。そして2人の視点による物語の一部が交互に綴られ、そして事態が少しずつ展開している。
2人の主要視点人物というのは、徳川家康と毛利輝元である。東西の各陣営が形成されて争ったとされる「関ヶ原合戦」だが、徳川家康は東の、毛利輝元は西の“総大将”である。東西各々の「最高指揮官」の目線で語られる戦いの物語ということになる。
物語は、豊臣秀吉の病床に呼び寄せられた徳川家康というような場面から起こる。そういう場面の後には、太閤薨去の報に触れている毛利輝元という場面が続く。本作は、こういう様子で「東西交互」という感じに展開している訳だ。
太閤薨去の後、色々な出来事が在って、徳川家康が「五大老と五奉行による統治」というような体制を蚕食し、加賀の前田家を屈服させ、会津の上杉家を討伐しようかという動きが続く中、「次はこちら?」と思案する毛利輝元が在る。そして「反徳川家康陣営形成の構想と挙兵」という話しに身を投じる、または巻き込まれる。更に様々な思惑で動く、色々な人達が在る。
本作は東西各々の「最高指揮官」の目線で、進行中の出来事や回想も含めた作中の時代や、様々な思惑で動く、色々な人達の様子が分厚く語られている。
「関ヶ原合戦」に纏わる物語は多々在るのだが、本作のように「毛利輝元」に大きな光を当てた小説等は、過去例が思い浮かばない。或いはそこが「新しい!」かもしれない。
本作の徳川家康は、長く苦楽を共にした、または台頭した少し若い世代の家臣達に支えられ、相談しながら次々に断を下すと同時に、当時として最大の知行地を有する最有力大名として求心力を持つ人物と描かれていると思う。
この徳川家康に対する毛利輝元である。過ぎる程に偉大な祖父の後継者であるが、中国地方の領国は「諸勢力の連合体」という様相で、その“神輿”というような存在感で、一族、一門という近しい人達の間でも何かと軋轢が在る中で色々と考えている。そして毛利輝元が代表ということになる西の陣営は、様々な思惑が行き違い勝ちになる。そういう様子が或いは劇的だ。
少し「ネタばれ」に近くなってしまうかもしれないが、本作では「毛利輝元の目線で語られる豊臣秀頼」という劇中人物が少し面白い存在になっている。また、両陣営が夥しい軍勢を動員した他方で「1日の決戦」というような様相にもなった合戦だが、その「何故?」に答えるような内容も本作には含まれていると思う。
古くから多く取上げられている題材である「関ヶ原合戦」だが、「それでも新しい」と��う本作であると思う。本作は“変化球”のようなモノを駆使するのでもなく、力の籠った“直球”で真正面から挑むような空気感が在る。
非常に愉しかったので、広く御薦めしたい。
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秀吉の死から関ヶ原に至るまでを、「正史」を忠実にトレースしながら、その裏で交わされていただろう家康と本多昌信や、毛利輝元と安国寺恵瓊などの会話を通じてストーリーが進んでいく。
「知っているお話」がなんでそうなったのかを、会話で追っていくので、つまんなくはないんだけど、途中かなりかったるい場面があったり、いやさすがにそういう話しにはならんだろうとツッコミたくなるシーンが積み重なっていき、だんだん読むのが億劫になってしまった。
しかし、解説的な文章も多いため、戦国ものを読み始めたばかりの人には入門編としては、親切な内容と言えるのかもしれない。そもそもの物語自体は骨太だから、もちろん読み応えはあるのだけど。
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秀吉没後から天下分け目の戦い関ヶ原までの東方西方との心理戦駆引きが細かく語られて楽しく読ませて頂きました。登場人物もよく知る人物が多く関ヶ原の戦さは軽く描いてあるのも良かった。流石伊東 潤作品だ。
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面白い。心理戦がいい。司馬遼太郎の関ヶ原も似たような感じですが。司馬遼太郎の方は長く感じて一回読んだらいい。こちらの方は何回読んでもいい
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伊東潤作品の中でも、圧巻の作品!(他に何作も圧巻はあるけれど)
歴史にifはないけれど、もしも正信が家康と一緒にいたら、もしも立花宗茂が関ヶ原に参戦していたら、もしも本当に秀頼が関ヶ原に参戦できていたら……と考えると、色々考え手を尽くしても、紙一重の戦いだったのだなぁと感じる。
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天下大乱 伊東潤
大将が一つの城の攻め方や女たちの救出まで口を挟んでいては、大局に立って物事を判断する者が居なくなる。
戦略と戦術・作戦
物事には階層レイヤーがある
毛利元康 奮闘したが天下取りのリーダーではない
豊臣秀頼までのつなぎ
徳川家康は天下を取る決意・胆力がある
軍事力の優位性は西軍にあっても、実際の実力はリーダー次第 リーダー不明では発揮できない
淀殿の弊害 女が国政・軍事に口を挟む 視野は狭い
結局、豊臣家を滅ぼした
秀頼8歳が年長なら? タイミングは待てなかったか
この後、大阪冬の陣1614・夏の陣
結局、家康の策謀に嵌まる豊臣家
ただし当時「天下の構想」を持っていたのは家康のみ
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関ヶ原に至る流れや登場人物それぞれの立場などがすごく分かりやすく書かれていて、これまでいまいち理解できていなかったものがストンと腑に落ちた。
それにしてもこの物語では人間という生き物の性とその悲しさ愚かしさが描かれ、多くの教訓が示されているように思う。
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関ヶ原に至るまでの駆け引きを、徳川家康と毛利輝元の視点で描いた作品。
家康目線や石田三成目線の小説はあまた存在しますが、毛利輝元は珍しいですよね。一応西軍の総大将なのですが…。
作中の「戦は戦う前に勝敗を決してなければならぬ」という家康の言葉が印象的でした。そして毛利家臣の吉川広家が本多正信ばりに頭がきれっきれなところも面白かったです。
この本についてツイートしたら、伊東潤先生ご本人が引用ツイートしてくださって感激しました。
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秀吉の死の前後から、関ヶ原の終結までの物語。秀吉から家康に権力が移行している流れ。それに抗おうとする西軍の諸将。どちらにつくか日和見を決め込む大名も少ない中、虚々実々の駆け引きが行われる。強いものが勝つわけでもないし、頭が良い人、誠実な人、忠義に溢れた人が生き残るわけでもない。駆け引き、騙し合い、天下を取るのも、取った後も、人って本当に面倒ということがよくよくわかる。
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関ケ原の戦いで終わる本作品、多くの最新研究書から
アップデートしている内容(選択はあるが)を、読破
済みのアタクシにとっては「サザエさん」を読むがの
如くスイスイと3日かけて読んだ
つい、乃至政彦・高橋陽介先生の本や渡邊大門先生の
本を横に置いて読んだので時間がかかったのとドレの
内容か曖昧になったものの、淀君と奉行たち大阪方の
「両張り」が原因で秀頼の命令や出馬が無かった等が
新鮮だったのと、毛利輝元の行動の謎が、家中の統制
が古き国衆集合体故の鈍重さがの一面も加味する必要
があると気づく作品だった・・・毛利主体の行動は素
早く、受け身の時は合理的には見えない
(=この部分
は現代の政治的パワーゲームと同じで、アチコチ忖度
するものだから合理的視点から見ると落第政策ばかり
になっている現代にも見られる)
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本の雑誌が選ぶ、2022年度時代小説第2位
に挙がっていたため購入。
天下分け目の決戦までの輝元、家康の総大将
の心の動きや取り巻く知将たちとの交わりが、
テンポ良く場面ごとに繰り広げられていて、
何とも面白い。
これを機に他の伊東作品もチェックしたいと思った。
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関ヶ原の戦い前後を、家康目線、毛利目線で交互に語られる。後半はスピード感が増して一気に読んだ。信長は、家来を牛馬の如く扱い、挙句に家臣に反乱されて命を失った。秀吉は甘言を言う家来しか好まなかった。というような文が心に残る。家康には葉に絹着せぬやり取りをする家来があり、最後は家康が決断したようだ。また読み返す時は、正信、広家に注目して読みたい。
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関ヶ原の戦いの全てが解る、決定版に間違い無しでした。家康は凡庸だったから天下人になれた、という考え方に深く共感してしまいました。輝元にも惹かれる所がありました。
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面白かったです!話が進んでいく中、毛利輝元と、徳川家康の二人の視線から描かれた物語。どちらかと言うと毛利輝元側の視点の方が面白かったです。関ヶ原の戦いが始まる前が主に書かれていたけど、お互いに色々な仕掛けや作戦などを考えていて、やはり関ヶ原の戦いは他の戦いと違ってスケールが大きいんだと実感しました。【小5】