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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻邦夫の読んでいなかった小説は、これが最後です。佐藤義清すなわち西行の生涯を、弟子の藤原秋実が、関わりのあった人を訪ね歩く形で描く。時には西行自身の言葉・手紙の形をとるけれど、和歌が散りばめられて、歌びとらしい物語である。保元平治の乱の前後から鎌倉幕府初期に至る73年の人生に、鳥羽院、待賢門院、崇徳院、平清盛、源頼朝、慈円などと歴史上の有名人物が西行とかかわっていく。若くして出家した西行は、世間から無関係になったのではなく、俯瞰するように世間と関わっていたようだ。人の宿命に意味を与えるために、歌に生きた。
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桜にこめた辻の複雑な思い。
構想に年月を掛け、何度も吉野に足を運び書き上げた。
辻の書く文章は本当に美しい。
西行と魂を交感させながら書かれた西行の世界。
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色とは何か、華とは何か、別れとは何か。
その全てが詰った珠玉の1冊、辛い別離の後に読むのがオススメ。
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平安時代の僧侶 西行の「みちのくひとり旅」。
「願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」という最期の和歌に込めた西行の気持ちがわかる故・辻邦生さんの名著です。
一度、読んでみてください。
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言葉や歌の意味づけが興味深く、出家の意味をあらためて考えさせられた作品です。
(参照;http://blog.so-net.ne.jp/shachinoie/2007-09-20)
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西行法師の生涯を、周辺人物・時には西行自身の独白というカタチで追うフィクション。700ページという読み応えある本でした。
風流に生き、恋に生き、詩歌に生き、遁世の身でありながらこの世を愛し続けた西行。彼の世界観はまさにこのようであったのではないかと、フィクションながら感動させられます。
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ずっと気になる存在だった西行さん。
そしてずっと気になっていた小説。
櫻とともに生きた方ですね。
西行さんが出家する前後が
一番興味があったので、ぐんぐん読めましたが
それにしても新院がもう…。
あそこの文章の壮絶さがもうね。圧巻でした。
美しい言葉や、色々な意味で胸に刺さる言葉が沢山でした。
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日本語の美しさが心地良い。西行がなんでもできすぎなのが鼻につくが。。。しかしとても優美な世界。再読したい。
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長期間、ちびちびと読んだ。元はと言えば、夢枕獏の朝日の連載小説が似てる話だったので。構想はこっちのほうがよほどしっかりしている。重厚で読み応えあり。
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初めてのレビュー。記憶に新しい去年を振り返って、2012年は辻邦生を知ったのが大きな収穫。
「西行花伝」を読んで、それよりずっと以前に書かれた「背教者ユリアヌス」も知った。
平安末期から武士社会に移る時代に「もののあはれ」の美意識を求めた西行と、キリスト教が台頭し始めた時代、純粋さゆえ裏表を使い分けるキリスト教を受け入れられず古代ギリシャ・ローマに美を求めたユリアヌス。勝ち負けで片付けるなら、どちらも時代を生きる中で易くない道を選択したようにみえる。
「西行花伝」の最終章近くで、平家を倒し後白河院から権勢を奪い勝ち進む鎌倉殿の幻影を夕刻の大磯で西行の夢に現れさせている。その時の西行のつぶやきが「心なき 身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮」の歌で、頼朝とて飛び立つ鴫に涙したであろうと西行は幻の中で思ったのだとこの作中では構成されている。かつて大磯の鴫立つ沢に行って教科書で習ったような感慨にひたったけれど、こんな見方もあったのか・・。作者は西行を描くにあたって、この歌を単に世捨て僧の心の情景にはしていない。
勝利や成功に役立たない心を切り捨てるのは「心なき心」であり、『人は常にあらゆる動機で心を失う。』 のであれば、西行にも 『世を捨てたいという思いで、私とても、もののあはれに震える心を失っているのかもしれない。』 と言わせている。その矛盾を埋めるのが西行の多くの歌なのだろうか?
純粋さゆえ、周囲に利用され、キリスト教と対峙し、背教者の汚名を着せられながらも自分の哲学に従って突き進んだユリアヌスが、若くして戦死するのも哀れ。 次第にゾロアスター教や原始的儀式にひかれていくユリアヌスだが、それは西行にとっての歌と同じなのかしら。洋の東西も時代も違うけれど。
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学生のころに読みました。日本の古典に憧れて、大学受験はほとんど日本文学科を受験。とくに和歌の世界には強く惹き付けられ、西行が大好きでした。今思えばなんにもわかってなかったですが。さて、この本は、同じ辻邦生さんの「背教者ユリアヌス」同様、辻さんの古い時代への愛情と憧憬に溢れいて優美です。
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平安末期から鎌倉時代にかけて活躍した歌人西行の生涯を描いた超大作。西行は歌を精神の中心に据えた隠遁生活を送りながらも、政変など世の中の動きに敏感であり続けた。「できることなら桜の下で春に死にたいなぁ」と詠んだ人ということぐらいしか知識がなかったので、鳥羽院や待賢門院、崇徳院、その他朝廷の要人と関係はとても興味深いものとして読んだ。しかし“歌による政治”などというものを本当に彼等は考えていたのか。当時の人々にとって和歌がどれほどの価値を持ったものなのかが分からず、すべてにおいて雅過ぎる思想に戸惑う部分もあった。
☆谷崎潤一郎賞
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(2013.01.25読了)(1999.11.04購入)
【平清盛関連】
内容は、単行本で読んだので、最後の高橋英夫さんの解説だけ読みました。
●『背教者ユリアヌス』と双璧(709頁)
『西行花伝』は、流麗そのものでありながらしかも雄偉であるという重層をもった辻邦生の大作のなかでも、ひときわ作者の語りの力量と、人物に移入された想念の高さとにおいて、輝いている。個人的な印象の中に還って思い返すと、それはもう三十年近くも以前の長篇『背教者ユリアヌス』と双璧を形作る作品のように見える。
●秋実はフィクションか(713頁)
最初の「語り手」藤原秋実とは、何者なのか。
秋実は果たして史上に実在した人物であろうか。おそらく作者のフィクションではなかろうか。
(実在の人物だと思って読んだのに、・・・まいった。)
●「花」(714頁)
作者は西行の本質を「花」と見定め、いかにそこを言い表すかに長い時をかけたのに違いない。その沈潜と構想の果てに、弟子の視点から師西行を望み見るという人物の配置が閃いた。弟子の視点を加えることで、その他もろもろの人物たちの目で見定められた西行という多面体に、フィクティシャスな焦点が成立する。
【目次】
序の帖 藤原秋実、甲斐国八代荘の騒擾を語ること、
ならびに長楽寺歌会に及ぶ条々
一の帖 蓮照尼、紀ノ国田仲荘に西行幼時の乳母たりし往昔を語ること、
ならびに黒菱武者こと氷見三郎に及ぶ条々
二の帖 藤原秋実、憑女黒禅尼に佐藤憲康の霊を喚招させ西行年少時の
諸相を語らしむること、義清成功に及ぶ条々
三の帖 西住、草庵で若き西行の思い出を語るを語ること、
鳥羽院北面の事績に及ぶ条々
四の帖 堀河局の語る、義清の歌の心と恋の行方、
ならびに忠盛清盛親子の野心に及ぶ条々
五の帖 西行の語る、女院観桜の宴に侍すること、
ならびに三条京極第で見る弓張り月に及ぶ条々
六の帖 西住、病床で語る清盛論争のこと、
ならびに憲康の死と西行遁世の志を述べる条々
七の帖 西住、西行の出離と草庵の日々を語り継ぐこと、
ならびに関白忠通の野心に及ぶ条々
八の帖 西行の語る、女院御所別当清隆の心変りのこと、
ならびに待賢門院の落飾に及ぶ条々
九の帖 堀河局の語る、待賢門院隠棲の大略、
ならびに西行歌道修行の委細に及ぶ条々
十の帖 西行の語る、菩提院前斎院のこと、
ならびに陸奥の旅立ちに及ぶ条々
十一の帖 西行が語る、陸奥の旅の大略、
ならびに氷見三郎追討に及ぶ条々
十二の帖 寂然、西行との交遊を語ること、
ならびに崇徳院の苦悶に及ぶ条々
十三の帖 寂然、高野の西行を語ること、
ならびに鳥羽院崩御、保元の乱に及ぶ条々
十四の帖 寂然の語る、新院讃岐御配流のこと、
ならびに西行高野入りに及ぶ条々
十五の帖 寂然、引きつづき讃岐の新院を語ること、
ならびに新院崩御に及ぶ条々
��六の帖 西行、宮の法印の行状を語ること、
ならびに四国白峰鎮魂に及ぶ条々
十七の帖 秋実、西行の日々と歌道を語ること、
ならびに源平盛衰に及ぶ条々
十八の帖 秋実、西行の高野出離の真相を語ること、
蓮華乗院勧進に及ぶ条々
十九の帖 西行の独語する重源来訪のこと、
ならびに陸奥の旅に及ぶ条々
二十の帖 秋実の語る、玄徹治療のこと、
ならびに西行、俊成父子に判詞懇請に及ぶ条々
二十一の帖 秋実、慈円と出遇うこと、
ならびに弘川寺にて西行寂滅に及ぶ条々
「声」と化した「花」 高橋英夫
☆関連図書(既読)
「西行-魂の旅路-」西澤美仁編、角川ソフィア文庫、2010.02.25
「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
「西行」白洲正子著、新潮文庫、1996.06.01
「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
「西行と清盛」嵐山光三郎著、集英社、1992.04.25
「西行花伝」辻邦生著、新潮社、1995.04.30
(「BOOK」データベースより)
花も鳥も風も月も―森羅万象が、お慕いしてやまぬ女院のお姿。なればこそ北面の勤めも捨て、浮島の俗世を出離した。笑む花を、歌う鳥を、物ぐるおしさもろともに、ひしと心に抱かんがために…。高貴なる世界に吹きかよう乱気流のさなか、権能・武力の現実とせめぎ合う“美”に身を置き通した行動の歌人。流麗雄偉なその生涯を、多彩な音色で唱いあげる交響絵巻。谷崎潤一郎賞受賞。
(2013年1月26日・記)
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この世のあらゆるものは変成する、それが宿命であり我執をすてながら常世をみとめる。
そんな道理をしたがいながら、歌として世界の
姿をかたちとしてのこす
素敵だね。確かに勅撰集とかで歌が残されていなかったら日本文化はいまのままだったのだろうか?
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西行の歌の弟子藤原秋実が記す形を取った西行の物語。序の帖に始まり二十一帖に至るまで、西行を時代の流れの中心におき、彼の秀歌と併せて語ってゆく。//前半は物語の筋が読めず少し退屈感を覚えた。中ほどから、平安末期の乱れた世の激変を活き活きと描き面白くなる。皇族・女性・僧侶・源平の武士達が、史実にフィクションを織り交ぜて西行と係ってゆく。西行の人生観も深みを示す。//西行は十五帖で、「我を捨て、この世の花とひとつに溶ける」と説き、二十帖で「歌こそが真言、森羅万象の中に御仏の微笑を現前するもの」と現す。この生き方の基本は終生変わらない。しかし西行は浮世を捨てたわけではない。我を捨ててこの世の花に染み込んで浮世を楽しんでゆく。//西行の歌は、浅学な私でもまだ分かり易い。「ゆくへなく 月に心のすみすみて 果てはいかにか ならむとすらむ」//しかし歌にて世の中を変えるという本書の中の西行は、非現実的で理想主義。