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実在する粗屋というお店のノンフィクションだと思ったまま最後まで読んだら、解説で小説だったことが分かる。人々の負の側面が、別れた奥さん以外ほとんど描かれないのは、ノンフィクションだから実際あったとしても書かないのだろうと思ったが、フィクションなら書けるのではないだろうか。フィクションだとしてもモデルとなるお店があるから書かないのかもしれない。主人公は築地でマグロの解体の名人だったが、それを辞めて粗だけを扱う料理店を始める。素晴らしい出会いに恵まれ、順調に開店してどんどん繁盛してつまずきが一切ない。そのため物語としてのコクが足りない。
民間伝承で粗を使った薬を自作して、店員の体調不良で人体実験をするところが面白い。
僕自身、粗がスーパーで売られていると買って圧力なべで粗汁などを自作する粗愛好家であるため、出てくる料理が食べたくて仕方がない。ただ、自分では最低の手間しか掛けない手抜き料理なので真似しようとは思わない。粗が一番うまいというのは非常に同感だ。その上安い。