二つのインフレーションを学ぶ最高のテキスト
2023/02/26 17:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
二つのインフレーション(デマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ)を学ぶ最高のテキスト。難解な経済理論はカットし、誰もが理解できる平易な言葉で解説。しかも現状の世界経済をケーススタディとしているので、世界経済の現状を知ることができ、一粒で2度美味しい本に仕上がっています。「2020年代のインフレを深く理解することで、グローバリゼーションの終焉という世界の構造変化の本質が明らかになる」そして、日本は、中国の暴力的な覇権に屈しないで、国家として存続できるかの分岐点に立っていることは確かなようです。
投稿元:
レビューを見る
同様のテーマを扱った書に「世界インフレの謎」という本があるが、それと比較して本書の方がよりシンプルですっきりと理解しやすい。しかも本書では経済学にとどまらず政治学、社会学、地政学など幅広い分野から総合的に分析を行い迫力ある警鐘を鳴らしている。我々は新自由主義、グローバリゼーション、リベラリズムといった既成観念から1日も早く脱却すべき時に来ている事を痛感させられる。
投稿元:
レビューを見る
.
#世界インフレと戦争
#恒久戦時経済への道
#中野剛志
22/12/14出版
需要増によるインフレであれば賃金上昇はいい影響与えるのだろうけど、政情不安による場合はどうなんだろう?そんな疑問に関して書いてあるかな?
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/3XdVqzF
投稿元:
レビューを見る
現在もっとも信頼している論客の一人である中野剛志氏の新著。この方の主張はずっと追いかけているが、見事に近未来を予測している。
背景にあるのは、時の試練をくぐり抜けた天才たちの思想。明るい未来は必ずしも示されていないが、無責任な楽観論より余程心に響く。現状を知ること、まずはそれからだ。
投稿元:
レビューを見る
2種類あるインフレ。「消費意欲が旺盛で生産が追い付かず値段を上げる」「資源など生産のベースとなるものの調達手段が突如失われ、品薄となり物価が上がる」。前者は比較的経済が良好な状態。政府は消費が過熱な時のみ財政と金融を引き締めればよい。後者は危機的な状況。棄損した生産力をカバーすべく積極財政で投資を促す。対策は真逆だ。両者の区別がつかず誤った判断に至ったFRB。その行くつく先は世界の混とん。経済学は未発達な学問。人々を幸せに導けていない。”節約”が常に正しいとは限らない。財政赤字は経済が健全である証拠。
投稿元:
レビューを見る
恒久戦時経済、これこそが21世紀の日本経済のあるべき姿である。
藤井聡と同じ考え方と勝手に思っていたが、どうやらWikipediaで見ると非常に仲が悪いようだ。
投稿元:
レビューを見る
昨年の夏(2023.7)に読み終えた本です、日本では長く続いたデフレ経済ですが、いよいよインフレの時代になってきたようです。そのような状況変化を踏まえて、インフレの歴史も解説してくれています。読み終わってから時間が経っているので、読み返して需要なポイントを確認しておきたく思います。
以下は気になったポイントです。
・2022年3月に、資産運用で最大手のブラックロックCEO(ラリー・フィンク)は、ロシアのウクライナ侵攻で、我々が過去30年にわたり経験してきたグローバリゼーションは終わりを迎えた、と記した。ポール・グルーグマンは「我々は、1914年(鉄道・蒸気船・電信ケーブルによる第一次グローバリゼーションが終焉した年)の経済的な再現を見ていると言って良い」と指摘した(p14)過去30年にわたりグローバリゼーションを前提としてきた、その前提が崩れたのだ、これからの国家政策は、これまでの30年とは全く異なる、それどころか正反対のものにならなければならないだろう(p15)
・グローバリゼーションの終わりは、いつから始まっていたのか。世界の有識者の認識はほぼ一致している、それは2008年のリーマンショックである。グローバリゼーションの進展度合いは、世界の貿易解放度(世界のGDPに占める輸出入の合計の比率)によって計測できる、1870年に17.6%であったが、1913年に29%、しかしこれは第一次世界大戦の勃発によって終焉した、1945年には10.1%にまで低下、戦後1980年には39.5%、1989年には冷戦終結によりさらに進展して2008年には61.1%に達した(p17)リーマンショックが収束しても、かつての水準に戻らず低下した。2020年のコロナパンデミックは、すでに進んでいた「スローバリゼーション(グローバル化の鈍化)」に追い打ちをかけたに過ぎない、グローバリゼーションは、2022年でなく、2008年に終わっていた(p18)
・1997年2月に、ジョージ・ケナン(戦略家)は、NATOの東方拡大は、ポスト冷戦時代全体を通じて、アメリカの政策の最も致命的な過ちとなるであろう、と嘆いた。恐るべき洞察力である(p28)
・金融市場のグローバリゼーションは、金融資産バブルを発生させたに過ぎない、バブルで膨張する債務に依存して拡大した消費が経済成長を牽引したので、人々はグローバリゼーションが成功したと錯覚した、しかしそのような偽りの繁栄は、金融資産バブルが崩壊すれば終わる(p30)人のグローバリゼーションについても言える、アメリカやヨーロッパで起きている排外主義的なポピュリズムの高まりは、移民労働者などのグローバリゼーションが招いたもの、イギリスのEU 離脱もそうである(p31)
・台湾有事のリスクは、ウクライナ戦争とも連動している、中国はウクライナ戦争を見て、アメリカは核を保有する大国との戦争は避け、介入するにしても、せいぜい経済制裁と武器供与ぐらいだと確信したから(p33)
・日本の送電システムは地域間の連携が脆弱(南北に細長い島国、山がちで平野が少ない、送電線の立地場所が少なく用地取得が難しく送電インフラの整備は容易でない)で、この弱点を克服するために、発電と送電を一体で整備・運用する責任を電��会社に一元化させてきた(p42)電力市場の自由化を限定的にしか行ってこなかったのは、電力の安定供給(=エネルギー安全保障)の要請からであった(p43)
・グローバリゼーションが終わった世界はどのような姿になるのであろうか、第一次グローバリゼーションの終焉の後に現出したのがブロック経済化であることを考えると確かにその可能性は否定できない、ただしブロック経済を形成できるのは、周辺国を経済的に依存させるほど国内市場が大きく、かつブロック内に戦力を投射できる「地域覇権国」のみ、東アジアにおいては残念ながら中国である(p46)
・2020年代に入り、グローバリゼーションの終焉は誰の目にも明らかになった、それとほぼ軌を一つにして、インフレーションが世界を襲った、実はこの2つの現象は、深く関連している。結論を急げば、グローバリゼーションが終わったから、インフレが起きたのである(p50)
・インフレとは「需要過剰・供給過小」の状態によって引き起こされるが、同じ状態であっても、その主な原因が需要の増大にある場合(適正水準より大)には、デマンドプル・インフレであり、供給の減少にある場合には、コストプッシュ・インフレである。対策はその両者で異なってくる(p55)戦争がインフレを起こしやすいのは、デマンドプル(軍事需要の拡大)とコストプッシュ(徴兵戦争により労働者が不足)の両方を引き起こし得るから(p59)コストプッシュインフレは、財政支出の拡大を必要とする(p69)、デマンドプルインフレ対策は、政府が財政支出を削減(=公共需要の減少)増税、利上げにより民間需要が減少が対策となる(p67)
・産業資本主義が未発達の経済では、需要の増加に応じて供給を増やすことが容易にできない、このため、デマンドプル・インフレが経済成長をもたらさず、ただ物価の高騰が国民生活を圧迫するだけにとどまる、産業資本主義以前の経済や開発途上国が、しばしばインフレに悩んできたのは、このためである。また突発的・大規模な戦争により軍事需要が急激に膨張するような場合には、先進国といえども供給が追いつかず、物価が高騰して国民生活を圧迫するだけに終わる場合もある(p75)戦争のような例外を除けば、発達した産業資本主義の下では、デマンドプル・インフレは、需要増→供給増→需要増のスパイラルを働かせて経済を成長させる、逆に物価が経済的に低下するデフレになると、正反対のスパイラルが働いて経済は縮小する(p75)デフレスパイラルにおいては、需要のみならず、設備。労働力といった供給能力(=国民経済の潜在的な成長力)も破壊される(p77)
・2022年2月以降のインフレの主たる原因がコストプッシュ・インフレであるとしたならば、金融の引き締め(利上げ)は、誤った政策と言わざるを得ない。インフレ自体は抑制できるかもしれないが、その結果として、パウエル自身も認めるように、家計や企業が犠牲になるからである(p90)主な原因は、パンデミックやウクライナ戦争によるエネルギーや食糧のサプライチェーンの寸断にある、このサプライチェーン問題を解決する上で、利上げは何の役にも立たない、それどころか景気後退、高失業率、発展途上国の債務問題の悪化などをもたらす���p93)
・日本は他の先進国に先んじて少子高齢化を経験し、労働力不足や社会保障費の増大に直面していた、それにも関わらず日本は、インフレに悩むのではなく、その逆にデフレあるいはディスインフレに苦しんでいた、なぜ生産年齢人口の減少という人口構成の変化にも関わらず、これまでの日本はインフレを経験しなかったのか、その答えを、グットハートらは「グローバリゼーション」に求めている、日本の企業は海外投資を進め、生産拠点を積極的に中国など新興国に移転することで、国内の人口減少にも関わらず、豊富で安価な労働力を享受していた(p107)
・政府がインフレ政策(完全雇用政策)を取るか、デフレ政策を取るかは、資本家階級と労働者階級のパワーバランスに影響を及ぼす決定だと言える(p121)
・19世紀後半になると、重化学工業や電気による「第二次産業革命」が進展して供給能力を飛躍的に向上させ、加えて、鉄道・蒸気船・電信などの発達と普及により、世界市場の統合が急速に進んだ。この時期は「第一次グローバリゼーション」と呼ばれている、これは海外からの安価な資源、製品あるいは労働力の流入を促進し、デフレ圧力を発生させた。これは、インフレ抑止にも貢献したものと考えられ、全体を通して見れば、概ねデフレ基調であった(p175)
・ユーロ加盟国は、予算年次ごとの財政赤字をGDP 3%以内に抑えるとともに、債務残高がGDP 60%を超えないことを求められていた、しかし2020年3月、コロナパンデミックを受けて、この適用を一時停止した、これは2023年には適用再開の予定であったが、ウクライナ戦争の勃発を受けて、2023年も運用停止となった(p185)
・大規模な積極財政による資源動員、産業政策による資源配分、資本規制、価格統制、まるで、戦時経済体制である。いずれもその体制において、典型的な制作手法に他ならない(p203)21世紀の日本経済のあるべき姿は、恒久戦時経済である(p204)
2023年7月13日読破
2024年12月6日作成
投稿元:
レビューを見る
昨年12月に刊行されたので、もうすぐ1年というところである。著者の書籍は初めて読んだが、その指摘がその後に起こった変化を含め現状をよくとらえている点に驚いた。
まず冒頭に「グローバリゼーションはリーマンショックで終わっていた」という衝撃的な主張が。確かにリーマンショック後、ロシアのジョージアやクリミア侵攻や中国の南沙諸島や尖閣への介入が強まる。この間、北朝鮮も核実験を加速させていた。一方のアメリカはオバマの下で融和政策を取り続けた。10年以上に渡る前段階があってから、ウクライナ戦争や習近平独裁確立によって現実的な脅威となった。グローバリゼーションが世界を平和にする、という主張は空想的だったことが明らかになった。
とはいえ、この本のメインは経済の話である。インフレがコストプッシュなのかディマンド・プルなのかで対応策が変わるはずという主張は、渡辺努『世界インフレの謎』でも指摘されていた通り。この本ではグローバル化はデフレを、インフレは世界の大変革を引き起こすという経験則を、歴史から導いている点が目を引いた。インフレは格差を増大させ社会を不安定にし、反乱・内戦・革命・戦争を招き寄せるのである。
70年代以降に起こったインフレを、共産圏諸国は配給制によって乗り越えようとしたが失敗し、冷戦が終結する。その後はグローバリゼーションが加速、旧共産圏の安価な労働力が入ることでインフレが抑制された。
ところが現在のインフレは格差が増大し国際情勢が不安定化する中で襲ってきたものであり、アメリカもEUも国内・域内に政治的分断や難民問題・債務問題などの多くの悩みを抱えている。その影響はこれまでのインフレよりも深刻なのだ。
ではどうするか。筆者の主張は「恒久戦時経済」への移行である。戦時経済とは総力戦を遂行するために、経済のあらゆる面に政府が介入し統制するということだ。もちろん現状で日本は戦争状態にはないが、エネルギー、食糧、技術、労働力までもが希少化する現状では、そうした統制をかけなければ我々は生き残れない、と著者は主張する。確かに中国は今、自由主義経済を捨て戦時経済に移行していると見れなくもないだろう。これから軍事力をかさに様々な材を横取りしようとしてくるはずだ。
しかし著者の主張に一つだけ反論するとすれば、統制経済などという国民に不自由を迫るような政策を、今の日本政府が実行できるかという点である。そのような気骨のある政治家がいるのか。残念ながら、未来はあまり明るいとは言えないようだ。
投稿元:
レビューを見る
先ず、現状の日本をどのような状態と捉えているか。その原因は何か。状態が良くない場合、その対策は。このような論旨で解決策まで提起するのが本著。論理展開を開始する第一の切り口が、リベラルなグローバリズムの終焉という事だ。
データの説明が分かりやすい。貿易開放度とはGDPに占める輸出入合計の比率だが、つまりグローバル化の傾向を示す。1870年には世界で17.6%、1913年29%、1945年10.1%、1980年39.5%、冷戦終結し更に加速。2008年に61.8%まで。しかし、リーマンショック以降にこれが鈍化。更に、ウクライナ情勢がアメリカによるグローバリズムに終わりを告げる。
2014年アメリカの国務次官補であるビクトリア・ヌーランドがウクライナに親米政権を樹立しようと画策したことが情報流出。更にその後バイデン政権はヌーランドを国務次官に任命した事でプーチンの警戒は高まる。NATO東方拡大に先鞭をつけた責任者オルブライトはウクライナ侵攻一ヶ月後に死亡。ロシアによるウクライナ侵攻が、アメリカのリベラル覇権戦略の破綻を示すというのが著者の主張。
アメリカは中国に240万人の雇用を奪われた。ブレグジットは東ヨーロッパからの低賃金労働者流入によりイギリスの賃金低下も主因に。日本における別のデータで見てみる。1990年代半ばに1割程度だった日本に海外投資家比率は、2006年には4分の1へ。外国人株主の影響が強い企業ほど賃金抑制圧力を受け、賃金が低くなる傾向だという。つまり、先進国はグローバル化により賃金や物価が抑えられていた。それが終わりなら、インフレ傾向は自明。このインフレは、需要増が導くディマンドプル型ではない。
コストプッシュインフレは、生活基盤物資に対する支出の割合が大きい。低所得者層や労働者階級の生活を圧迫する。従い国民は高インフレに対して不満を抱くものであり、高インフレを放置する政府を支持しない。インフレ悪しき、だ。
で、恒久戦時経済へというのが著者の主張。少し乱暴な要約だが、こんな感じか。戦時経済体制での肝は政治介入による特定物資の価格統制。しかし、ガソリンや電気代、鋼材や食料品など、競争原理など働いておらず、談合を禁じても価格が上がる時には横並びで上がるのが現状。既に自由競争はあまり機能していない。コストを支配する水道の蛇口がエネルギーコストのように共通なら、自然とそうなるのだろう。売価をコントロールしても仕方なく、結局、根本は輸入材料・輸入資源の価格次第ではないのか。故に、個社任せにせず関与すべきは売価ではなく調達ではなかろうか。
投稿元:
レビューを見る
2022年末に書かれた本だが、2025年を迎えアメリカ大統領がトランプ氏に交代する。この歴史的瞬間に、読むべき一冊。世界の危機に臨む覚悟で。
投稿元:
レビューを見る
一時的なコストプッシュインフレの有効な対策を教えてくれるのかと思いきや、80年台からの新自由主から、安倍政権時代までの政策を比較しながら経済を学ぶことができる。MMT論者からネオリベラリストまでみんなに読んでほしい