紙の本
未来とは、はたしてAなのかBなのか
2023/05/01 09:51
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
A系列時間(現在からみれば、未来はたくさんの可能性を含んだ円錐に広がっている)、B系列時間(過去と現在と未来は互いにあまり違いがない地図上に各領域にすぎない)、未来とは、はたしてAなのかBなのか
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哲学、生物学、歴史学、宇宙物理学と、様々な学問から「未来」というものを触れており、1つのキーワードを巡る様々な解釈の差なども現れていた。「未来とは何か」という難解な命題に簡単に答えはでないだろうが、生物や人はどのように未来と向かい合ってきたか、は描かれていた思う。
あらゆる生物は未来を操ろうとするものであり、①どんな未来を望むかという目標、②起こりうる未来を見極める予想、③目標に向かうための行動、という3ステップによって未来操作が行われる。未来予想では現在目に見えるトレンドから帰納的に推測するしかなく、そうした意味で未来を見ることは過去を見ることに等しい。
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◾︎生命は意志を持って「未来を操作する」という視点が目からウロコ
138億年のビッグヒストリーをベースに未来予想をする本。宇宙や太陽・地球の創成は無機的で意志などない。
だが生命は明らかに生存や繁栄の意図を持って未来を作って行こうとしている。それゆえ複雑で不確定要素が多いが、意志を持って未来を操作できる。この視点はすごい。
一方遠未来では、地球や太陽、宇宙が終わることは不確定要素なく分かっている。
このスケールだからこそ見えることで、非常に面白かった。それだけに、いまの我々の意志と行動で、近未来・中未来が決まるということは改めて考えさせられる。人生についても同じだなと思った。
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宇宙誕生以降の全歴史を学際的な視点から掘り下げることによって理解を深める研究・教育手法である「ビッグヒストリー」の提唱者が、過去から未来に目を転じて、人類を含めたすべての生物にとっての未来思考の意味を探求するとともに、現時点で予測可能な未来像を描き出した一冊。
著者は、人類を含めたすべての生物が意識的か無意識的かに関わらず、自らの「目的」を達成するために、発生することが確実な領域と予測不可能な領域の間にある「重大なことが起こるかもしれない不安領域」即ち「レッドゾーン」について、相関やサンプリング、因果の分析等を駆使して未来を予測し行動していることを、微生物や動植物の例を挙げて解説する。
さらに人類は、脳の巨大化と言語の発明によって他の生物とは一線を画し、旧石器時代から農耕時代を経て「人新世」に至る中で、知識の保有範囲が個人から社会集団へ広がるとともに、時間に対する認知も過去・未来の両面へと拡大したことに伴い、未来思考も占いや宗教的なものからより科学的・機械論的なものへと高度化してきたが、それでも政治経済的な動向を予測することは困難なままであるという。
そのような認識の上で著者は、今後百年の近未来、数千年〜数百万年の中程度の未来について、「崩壊」「成長縮小」「持続可能性」「成長」という4つのシナリオによる予測を立てるとともに、宇宙の終焉まで見通した遠い未来にも思いを馳せる。考古学や哲学から進化論や量子物理学まで様々な学術的視点を網羅しており、多くの学びが得られる「未来論」となっている。
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宇宙誕生からのビックストーリーが未来を予測する。
マルチな未来をどう予測するかは過去のストーリーが導いてくれるようです。
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未来とはどういうことかを考え、その上で100~億年レベルでの未来のシナリオを取り上げる。
哲学的で400ページくらいあるのでざっと読んだ
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特に理由もなく書店で目についたので購入しましたが予想以上に面白かったです。本書の著者は歴史学の先生とのことですが、生物学、物理学の領域にもかなり踏み込みつつ、私が感じた書籍全体の印象は、人類がこれまで「未来」をどのように考えてきたか、言い換えると「未来感の歴史(未来感史)」を扱った本、というものでした。
まずパート1で「未来について考える」ということで、A系列時間:川の時間、B系列時間:地図の時間、という未来に関する2つの概念について解説していますが、この2つが本書を通じて何度も登場する大事な概念です。さらにアインシュタインの相対性理論と光円錐を用いて過去と現在、未来のイメージも紹介してくれています。
パート2は「未来を操る」ということで、生物学の領域に踏み込み、細胞、植物、動物は未来をどう操っているかについて説明しますが、さすがにこのパートのボリュームは流石に少ないです。
パート3は「未来に備える」ということで、こちらは文化人類学および歴史学ということで、人類の歴史を振り返っています。ここでは古代ギリシャの予言(アムトラムサイコスの予言)などの紹介もあり、なかなか興味深かったです。このあたりから未来を決定論的ではなく確率論的に見る見方が出始めた、ということになります。個人的にはこのパートが一番面白かった。やはり著者の専門性に一番近いからかもしれません。
最後にパート4「未来を想像する」ということで近未来(今後100年)、中程度の未来(1000年先)、そして遠い未来(宇宙の終わりまで)について書かれていますが、あまり印象には残りませんでした。おそらくこの手の話はSFのようにストーリー性がないと頭に残らないからでしょうか。
扱っている領域の広さに驚いたのと、本書のタイトルからは予想もしていなかったコンテンツも多数含まれていて(例えば古代ギリシャ時代の占い)、知的好奇心を十分満たしてくれる本でした。
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過去から未来に向かって、いろいろ寄り道しながら宇宙の終わりまで解説してくれます。個人的にはだいぶ冗長だと思いました。宇宙の終わりを知りたいなら、ブルーバックスの宇宙の終わりには何が起こるか、の方が、すっきりしていて読みやすいです。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12818211571.html
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【感想】
「2030年:すべてが『加速』する世界に備えよ」「2040年の未来予測」「2050年衝撃の未来予想」「2060未来創造の白地図」……。書店には様々な未来予測本が並ぶが、書いてある内容はまちまちである。テクノロジーや地球環境の変化は未来に行くほど拡散的になり、予測にはどんどん幅が出てくる。未来を見通す試みはいかなる分野においても困難で、予測を正確にやり遂げた例はほぼない。
そんな中で、本書の著者、デイビッド・クリスチャンが行う未来予測は、従来よりもっと広大――100年後、数千年後、数億年後にまで及ぶものだ。著者はその壮大なパノラマを、自身の研究分野である「ビッグヒストリー」を足掛かりにすることで描き出している。
著者の専門分野は歴史学だ。従来の歴史学は、有史以来起こった人間世界のさまざまな出来事を物語にまとめる営みだといえる。政治、経済、宗教、戦争といった人類の文明史を総ざらいし、ヒトが荒野に誕生してから現在に至るまでの足跡を辿る。いわば「過去の地図」を描き出す学問分野である。
一方で、著者が提唱する「ビッグヒストリー」は、人類史に物理学や生物学、宇宙学といった様々な分野の知識を結合させ、宇宙誕生以降の全歴史を一つの流れにまとめあげようとする分野である。現在の学問はバベルの塔だ。同じ学問系統を研究していても、専門が異なれば専門家同士でも全く話が通じなくなる。そうした「学問間の分断」を解消し、多様な情報と研究の結びつきによって起こるシナジーを最大限生かそうとする試みが「ビッグヒストリー」ということだ。いわゆる文系だけでなく、地球科学や進化論、量子力学、天文学といった幅広い学問にまで範囲が及び、過去のさまざまな出来事の因果関係を多角的に深く掘り下げていく。
そして、ビッグヒストリーによって歴史がより鮮明になるとすれば、それを拡張し「未来」に目を向けることも可能になる。私たちは未来を予測するために過去を活用している。パターン、トレンド、共有知識といった過去の事象から手がかりを得て、起こりうる未来を予想し、望ましい一つに舵を切る。こうした一連の取り組みにビッグヒストリーを活用することで、より精度の高い予測が可能になるのだ。
では実際、本書でどのようにビッグヒストリーを未来につなげたのか?
本の構成をざっとまとめると次のようになる。
パート1:「時間とは何か」「未来とは何か」という定義から考察していく。多くの分野で「未来は予測不可能だ」という結論が出ているが、少なくともB系列時間に関しては、未来に関する選択を実際にある程度おこなうことができ、ほとんどの場合、因果性の概念に頼って起こりそうな未来を予測することができる。
パート2:細胞や微生物、植物や動物がどうやって未来を予測しているのかについて語る。
パート3:人類が発揮してきた「未来思考」について考察する。狩猟採集時代(基礎時代)→農耕時代→技術革新以降の近代、というように、人類は社会と科学の変遷に合わせて未来思考能力を変化・拡張させてきた。歴史の時々で人々がどのように未来を予測してきたかを確認していく。
パート4:いよいよ本題。これからの未来を大胆に予測していく。今後100年、1000年、数億年というスケールで、人類、地球、宇宙に起こる出来事を書き出していく。
さて、実際に本書を通読した感想だが、生物学や歴史学の知識を動員して未来を予測するという試み自体は面白いのだが、残念なことに350ページの本向きではない。各パートでは学問分野ごとの基礎的な要素を取り上げ解説しているのだが、かなり駆け足で、あれやこれやと情報をつまみ食いするあまり議論がとっ散らかっているように感じる。一般教養や各専門分野の基礎知識をしっかり固めた後、各情報を統合して一つにまとめあげるという手法が必要で、より厚い本ないしは大学の講義には向いているテーマだと思う。
また、近未来について述べ始めるのは270ページを超えてからとかなり遅く、かつその未来予測も「ビッグヒストリーを使った割には……」と感じてしまうほど、漠然としていてありきたりだ。未来予測に期待を持つのではなく、ビッグヒストリーという学問の概要に触れることができる本、と捉えながら読むのが適切かもしれない。
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【まとめ】
1 ビッグヒストリー
本書の狙いの一つは、過去思考(すなわち歴史)と未来思考を結びつけることによって、過去をもっとうまく生かし、起こるかもしれない未来に光を当てることだ。
筆者の提唱する新たな学際分野、「ビッグヒストリー」の多角的なレンズを通して、起こるかもしれない未来に関する私たちの考え方を探っていく。ビッグヒストリーでは、過去をあらゆるスケールとさまざまな学術的観点から見つめる。さまざまな領域の知識の糸を撚り合わせることで、より大きな情報の流れを作り、革新的な考え方を生み出すのが目的だ。
2 未来とは何か
「未来」の定義は2種類に分けられる。
・「川」としての時間…A系列時間における未来
→動的で絶えず変化する世界。未来はある決まった方向に伸びているが、それは確定しておらず、確率論的でぼんやりしている。
・「地図」としての時間…B系列時間における未来
→過去、現在、未来は位置にすぎない。宇宙はブロック上であり、物体や出来事で満ち溢れている。現在の瞬間はなんら特別ではない。「いつ起こったかと関係なしにすべての出来事は等しく完全に現実的であり、それは、それぞれ異なる空間的位置で起こった出来事が等しく完全に現実的であるのと同じことだからだ」
B系列時間では決定論と因果性をめぐる問題が立ち現れるが、これらの問題は、私達の直感的感覚を守る次のような形でうまく解決することができる。
(1)未来は過去によって完全には定められていないので、私たちは未来を方向づけることができる。
(2)多くの形の変化は過去から未来へという一方向にしか起こらないので、原因は結果の前に起こる。
事象がすでに定まっているB系列時間に対しては、「未来は予測不可能である」という反論が起こる。しかし、時間には方向性があるとみなせば、たとえB系列時間の中であっても、因果性の概念を利用して未来に何が起こりそうかを予測することができる。
要するにこう��うことだ。B系列時間のブロック宇宙では、選択や因果性に関する私たちの考え方は成り立たないように思われるかもしれない。しかし現代科学によると、たとえブロック宇宙であってもあらゆる事柄があらかじめ定められているわけではなく、私たちに影響をおよぼすほとんどの変化は方向性を持っており、実際に原因の後に結果が生じる。したがって私たちは未来に関する選択を実際にある程度おこなうことができ、ほとんどの場合、因果性の概念に頼って起こりそうな未来を予測することができる。
過去を未来の道しるべとして用いる方法の中でもっとも重要なのが、「トレンドハンティング」である。トレンドハンティングでは、過去の事象のうち未来にも続くものと期待される一般的なパターンを探す。
トレンドハンティングの方法はおもに4つ。
①相関…過去のパターンやトレンドを直接検知して分析する
②ランダムディッピング…ランダムにサンプリングして調べる
③共有した知識の活用…他者と知識を交換する
④因果…トレンドの「因果関係」を調べる
3 人間の未来思考
地球上に存在するあらゆる動植物が未来思考を持っているが、その中でも人間は並外れている。
ヒトの脳は身体に比べて例外的に大きく、計算や計画立案に特化した前頭皮質に飛び抜けてたくさんのニューロンが収まっている。前頭皮質の中でももっとも急速に大型化したのが、時間変化の感覚、感情、そして目的や計画の観念を扱う各領域だ。それらの領域はまた、視覚情報などの感覚情報を統合して周囲の環境のモデルを作ったり、想像上の出来事を想像上のタイムライン上に並べたりするのにも役立っている。これがまさに未来のモデルを立てるのに必要なスキルだ。加えて、言語と社会性を獲得したことにより、集団的学習が可能となり、知識の蓄積を行えるようになった。
●基礎時代の未来思考
基礎時代(旧石器時代)における未来思考の推測モデルでもっとも重要なのは、個々の社会に特有の知識(ローカルノレッジ)であり、そのため基礎時代の社会はきわめて多様だった。何世代にもわたって蓄積されて検証され、物語や歌や儀式を通じて繰り返し伝えられ、ときに近隣の共同体と交換されたローカルノレッジは、実用的で経験に基づき、詳細で正確、そして多くの意味で科学的だった。この時代の時間と未来は以下のように捉えられていた。
・未来は個人的なもの
・世界は支配するものではなく共生するものであり、人間の欲求を満たすために未来を操作するといった感覚はない
・世界は本質的に安定している
・世界は超自然的な力に支配されており、それと人間の関係性が未来思考や未来計画を方向づけていた
●農耕時代の未来思考
時は進み、紀元前約8000年から紀元後約1800年まで農耕時代が続いた。
この時代、集団的学習の影響を受けた3つの主要なトレンドが勢いを増した。
まず、新たなテクノロジーが人間による環境の支配につながった。農業というテクノロジーを手にした人類は、さかんに環境を改変していき、世界や未来に対して支配的な立場に立つようになった。
次に、大規模な交易ネットワークが集団的学習を活性化し、社会的時間の重要性を高���た。交易ネットワークの広がりでさらに入手できる情報が増え、イノベーションが促進された。
最後に、変化の加速によって時間がより動的に見え、未来予測がより難しく思えるようになった。交易儀式、戦争、統治などの進化するネットワークの社会的リズムについていく必要があることに人々が気づくと、時間そのものに変化が訪れた。時間の速度は加速し、安定した世界を信じる人々の気持ちは薄れていった。
この時代の未来と時間に生じた変化としては、
・庶民の未来思考の他にエリートの未来思考が生まれた
・紀元前においては、エリートは戦争や国家の未来に関して占いを頻繁に用いた
・その後エリートは、個々の共同体の知識ではなく普遍的なトレンドや原則を追求するようになった
・近代に進むにつれ、徐々に「助言」から「科学」を重視する方向にシフトし始めた
●近代の未来思考
1800年以降は人類史における「近代」だ。化石燃料から得られる安価なエネルギーによって数々の実験的試みが可能になると、テクノロジーと科学のイノベーションが急増した。グローバルな交易ネットワークのおかげで、人々は新たなテクノロジーや新たな考え方に触れるようになった。しかも、変化のペースは以前とは比べものにならないほど速くなった。これほど短期間で、人間の未来思考はあらゆる過去の時代に比べて大きく変わったのだ。
近代の未来思考は、人類が地球全体とその多様な住人たちの運命をどう操作できるかという点に偏ってしまった。生じた変化は次のとおりだ。
・グローバル化が進み、時間と生活リズムが一義的なものに統一された
・変化が指数関数的に加速し始めた
・科学革命によって世界の仕組みを機械論的に捉えるようになった
・霊魂、悪魔、神々の力が排除された
近代の未来思考は、以前の未来思考と主に次の4点において異なる。
(1)因果性…因果性のよりよい理解は、物理学、化学、医学をはじめとする多くの分野において確信に満ちた正確な予測を可能にする。
(2)確率…確率は、特定の事象は予測できないが、多くの事象を予測できるプロセスをより正確に理解させてくれる。
(3)データ収集と統計…入手可能な統計学的情報が格段に増え、新たな確率論的手法も登場した。これによって、起こりうる未来に関する手がかりを提供してくれる確率論上のトレンドを検知し、分析し、理解し、測定する私たちの能力が強化された。
(4)情報技術とコンピューティング…近代のコンピュータ技術によって、統計学的な情報を以前なら想像もできなかったスケール・速度・精度で保存し解析することが可能になった。
4 近未来(この先100年)
近未来を想像するにあたり、私たちはあらゆる未来操作に共通する3つの基本的な問いを立てる。
(1)私たちはどんな未来を望むのか?
(2)どんな未来がいちばん起こりそうか?
(3)どうやって望ましい未来に舵を切ることができるだろうか?
(1)…人類にとってどのような未来がいいのかについて共通認識を図るのは困難に思えるが、21世紀に入ってから、「近代の利点を維持しつつ、生態系の破綻を避けられる未来を築こう」と大筋で合意が得られ始めている。
(2)…①人口増加は120億人で頭打ちであり、その後に長い減少期間に入ると考えられている。これによりグローバルな資源と環境への圧力が減り、経済成長の減速が始まる。②気候変動(温暖化)、種の絶滅が進行する。③格差の拡大が進む。
●この先100年に起こりうる4つのシナリオ
①崩壊…飢餓、戦争、パンデミック、人間のテクノロジーと経済成長の行き過ぎから破局を迎える。人間社会は生物圏を操作するという複雑な試練に十分に取り組むことができず、数世紀にわたって続く暗黒の時代に突入する。戦争が地域全体を覆い尽くし、パンデミックと飢饉によって数百万人が命を落とし、生存者の大半は最低限の生活を余儀なくされ、裕福なエリートは保護された特別居住区で暮らす。人権など近代の利点はほぼ失われ、奴隷制と人種ならびに性別に基づく厳 格な不平等が息を吹き返すかもしれない。
体罰や拷問が日常茶飯事になり、食糧不足が死に物狂いの生存競争をもたらす。食べ物に事欠く人々は医療を断り、麻酔薬や基本的な医薬品の不足によって寿命は近代以前の水準に逆戻りするだろう。
②成長縮小…社会は持続可能性の目標に集中し、多くの成長トレンドを厳しく取り締まる。このことは贅沢が許されず家族の人数まで制限されたスパルタ式の世界を意味する。庶民の平均的な物質的生活水準は21世紀初期より低くなるが、裕福なエリートは保護されたバブルのなかで優雅に暮らす。
そのような環境ではリベラルな民主主義は育たない。資源が細れば、合意にたどり着くのは難しいからだ。したがって成長を縮小した社会は往々にして独裁主義に陥りがちになる。
③持続可能性…持続可能なテクノロジーによって高い生活水準が維持されるが、終わりなき消費の望みは放棄されている。集団的学習によってテクノロジーのイノベーションが進み、エネルギーを持続可能に発生させる新技術、低コストで高効率の輸送・製造手段などによって、生活水準は21世紀初頭より高く維持される。一方で、進歩は安定した平衡状態で継続される。世界総人口は80億人未満で安定し、万人のためのヘルスケアと教育、物質的保証を当然のものとして享受できるようになり、大半の人は週に20時間を超えて働くことはない。人々は時間に追われず、「よい人生」とは何かについて生態学的に現実的な考えを持つ。
④成長…持続的な経済成長と新たなテクノロジーが大半の人の消費レベルと物質的な生活水準を高く維持する一方で、より危険な生態学的な問題を解決してくれる。実業家は持続可能なテクノロジーによって利益を得られることに気づく。きわめて競争の激しい経済環境で不平等のレベルが間違いなく増大し、社会が不安定になる。
いずれのシナリオでも、世界は今日の基準から見ても生物学的に貧弱になる。
多くのシナリオの結果が政治に依存する。2100年の世界は今後の数十年で下される予測不可能なあまたの決定によって形作られる。私たちは現在の段階ではグローバルな種だが、この先私たちと同じ関心を持つ人々の輪が広がり、惑星の操作に成功するためにグローバルな協力を持続できるかどうかはわからない。
これが可能かどうかによって、今日、地球に生まれつつある新しい複合体、つまり意識を持つ惑星の運命��定まる。新しい複合体の健康と運命は私たちの子孫の未来を何世紀にもわたって形成し、人類の系統がどれほど長く存続するかを決めるだろう。
5 中程度の未来(数千年〜数百万年後)
・エネルギーを持続可能な方法で作り続ける方法(ただし太陽が放つエネルギーの上限まで)の確立
・ナノテクノロジーの確立
・人工知能による人間の拡張
・トランスヒューマニズムの発達による、人間そのものの改造と強化
・宇宙移民の登場と宇宙コロニーの建設
6 さらに遠い未来(数億年後)
・地球では各大陸が衝突し、ひとつの超大陸「アメイジア」が誕生する(数億年後)
・海洋の蒸発と岩石の融解(30-40億年後)
・太陽の終焉(50億年後)
・宇宙の終焉