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立花隆と竹中労にあこがれライターの道に進んだ左翼青年の著者は、『噂の眞相』に記事を執筆していた先輩ライターにみちびかれて、当時裏本の世界で「帝王」にのし上がった「新英出版」の会長・草野博美、のちのAV監督村西とおるに出会います。その人物の熱量が著者を動かし、新英出版が出資して刊行されたサブカル雑誌『スクランブル』の編集長を引き受け、二人三脚でスキャンダルとトラブルに立ち向かっていきますが、会長の放埓な経営のために、やがて『スクランブル』は休刊へと追い込まれていきます。
村西とおるという人物のコミカルでパワフルな人物像が活写されていることが本書の一番の魅力ですが、往年のエロ業界のアンダーグラウンドっぷりを知る著者の証言という意味でも興味深いノンフィクション作品です。まだ駆け出しのライターだった当時の著者が暴力団とわたりあう場面などもあり、その胆力にも驚かされました。このあたりからも、お行儀の良い現代のサブカルチャーが元来こうした来歴をもっていたことがうかがわれて、おもしろく読みました。