紙の本
エログロナンセンスものではありません
2022/04/25 23:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こゆき - この投稿者のレビュー一覧を見る
猟奇殺人犯の告白でもなければ人肉食思考の変態小説でもなく、なぜか気品漂うカニバリズム研究文学になっているのがスゴい。
(当時はセンセーショナルな背徳小説だったのかもしれないけど)
主人公は穏やかで優しく、被食者(美しいひと)も食べられることに愛情を感じており、つまりはこれはロマンス小説という感じ。怖くないし、気持ち悪くもない。訳文も綺麗。
漫画ファンとしては、藤子・F・不二雄「ミノタウロスの皿」、諸星大二郎「美少女を食べる」、また大和和紀「レディー・ミツコ」のファンにオススメしたい。
後ろ三分の一は著者とその一族の解説。著者の母親は日本人で、オーストリア貴族と明治時代に結婚して渡欧したミツコ・クーデンホーフ=カレルギー。ミツコ伝説は知っている物の、その前の家系やその子孫の事は知らなかったので、ここにまとめて下さっていて嬉しい。(がまさかハンスがカニバリズム小説を書いていたとは。しかも面白い!)
表紙のイラストもちょっと病的な書き込みで品があってぴったり。と思ったらヒグチユウコさんで納得。
紙の本
恐ろしくも美しい愛の話
2023/02/28 09:49
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投稿者:豆大福 - この投稿者のレビュー一覧を見る
妻が不倫し、その不倫相手とどれだけ自分たちが愛し合っていたか、どのようにして妻は死んだのかということを、不倫相手から夫が延々と聞かされるという話。
カニバリズムの描写が多いため、読む人は選ぶが、とても原初的な愛の話なので、気分を害しない人は読んでみる価値有り。
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タイトル通り、食人の話。主人公である「僕」が愛人であるイザベルの夫ジョージに事の顛末を語る、という形式で物語が進んでいく。作中にはこれでもかと食人の話のオンパレード。どんなふうに食べるのか、何処が美味しいとか、また宗教的儀式としての食人も滔々と語られる。物語のクライマックスは「僕」がどんなふうにイザベルを食べたかだ。彼女を食べることは至高の愛の発露であり、愛の秘儀、秘蹟でもあるのだ。読んでいると人間美味しそう、とうっかり思ってしまった。グロいのが苦手な方は要注意。大変面白く読みました。ヒグチユウコさんの装丁も素敵。
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知らない人名バンバン出てくるし、大量の脚注あって読むのめちゃめちゃ大変でしたが、ほぼ食人について語っていてすご
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徹頭徹尾、食人の話と言う点で好き嫌いが分かれるとおもいます。
グロテスクの中にエロティシズムがり、奇書の名にふさわしい一冊です。
驚いたのは著者が、あのクーデンホーフ光子の長男だと言うことでしょうか。
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ずっと人を食べることについての歴史のお話が続くかと思えば急にあなたに食べて欲しいから自殺しますという、、、。
愛する男に食べてもらいたいってどういう感情なんだろうなぁ、、、。
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タイトルと装丁に惹かれて読破しました!「食べてしまいたいほど好き」をこれまでに体現している本は今まで読んだことがなくとても新鮮な気分でした。
ただドラマパートが思ったより少なかったのが...
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西洋人と東洋人のあいだに生まれた「僕」と、西洋人でありながら中国で生まれ育ったイザベルは惹かれあい、夜ごとに古今東西の食人文化を語り明かした。ウィットに富んだカニバリズム薀蓄トークの果てに、イザベルと「僕」が選んだ愛のかたちとは。
イザベルの死の謎にまつわる導入をササッと終えたあと、澁澤の手帖シリーズかと思うくらい、おもしろカニバリズムエピソードが上流階級の男女の小気味いい寝物語というテイで延々と続く。原題は「僕は白い中国人を食べた」だったといい、「白い中国人」とは中国育ちの白人であるイザベルを指すのだが、恋愛(不倫)関係以上にこの周縁的アイデンティティによって語り手とイザベルが強く結びついているというのが本書のキモだ。
この小説における食人文化はヨーロッパから見れば「未開」の「野蛮」な生き方をシンボリックに表しており、イザベルと「僕」との会話のなかでは徹底的に肯定される。「僕」の先祖が食べられたという話すらもカニバリスト視点から語り、ブラックな笑いに変えているところは特に印象に残った(テンペストを下敷きにしたエピソードで、この二人は完全にキャリバンの味方なのだ)。カニバリズムを嬉々として語る二人のやりとりは、「文明的」な態度で自分たちを締めだす西洋社会への密やかな復讐だったということが読み進めるうちにわかってくる。
そして、本編と同じくらい面白いのが訳者による著者紹介。恥ずかしいことに私はクーデンホーフ光子という女性を知らなかったので、著者ハンスの来歴に驚くことばかりだった(EUの父と呼ばれている弟のリヒャルトも知らなかった!)。著者の人生を小説に重ね見るのはそんなに好きではないけれど、解説を読んだあとは語り手「僕」の優雅な物腰の裏にある切実さがより迫って感じられるような気がした。自身も複数のルーツを持つ訳者のハンスに対する思い入れの強さが伝わってくる文章だった。