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江戸はいかにして「大江戸」となっていったか
2023/01/31 16:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなり昔のことになりますが、
「大江戸捜査網」という人気テレビ時代劇がありました。
そのタイトルにある「大江戸」、
もちろん今の東京のことですが、
徳川家康がここに入府した頃は単なる「江戸」だったそうです。
では、いつから「大江戸」になったのか。
『家康、江戸を建てる』や『東京、はじまる』などの作品がある
直木賞作家の門井慶喜さんの『江戸一新』を読めば、
「江戸」が「大江戸」に変貌するさまがよくわかります。
時は明暦3年(1657年)1月。4代将軍徳川家綱の時代。
江戸の町を火事が襲います。
のちに「振袖火事」とかとも呼ばれる「明暦の大火」。
この時に江戸城の天守も焼け落ちてます。
その後の江戸復興の担い手となったのが、老中松平伊豆守信綱。
信綱は埼玉の川越藩の藩主でもあり、
才知に長けていたので「知恵伊豆」とも呼ばれていたそうです。
門井さんのこの長編小説は、この信綱が主人公。
おそらく歴史小説という範疇にはいるのでしょうが、
かなり創作めいた箇所もあって、
逆にそれがエンタテインメントになって面白く読めます。
大火のあと、狭い道を拡充して広小路を作ったり、
武家の移転を進めたり、隅田川に橋を架けたり。
そういう復興施策が江戸の町をさらに大きくしていくことになります。
つまり、「江戸」が「大江戸」に変わっていくきっかけとなります。
門井さんは信綱にこんなことを思わせています。
「どうかして自分の生前よりも死後のほうが少しでも結構な国であるようにしたい」
今の政治家に、この信綱の気概があるのでしょうか。
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明暦の大火で燃え尽きた江戸の復興に、叩き上げの天才「知恵伊豆」こと松平信綱が乗り出した。大江戸への建て替えが、始まる――。
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江戸時代、第四代将軍家綱の治世に起こり、当時の江戸のほとんどを焼け野原とした明暦の大火からの復興の舵を取った老中、松平信綱を主人公とした物語。正直、江戸一新の大胆な手口などが詳細に語られるのかと思っていたら、サブの登場人物による語りがダラダラ続いたり、強引な展開で結末に雪崩れ込むなど、エンタメ色がかなり強く、ちょっと期待と違っていた。が、史実としての江戸一新の肝はきちんと表現されていたので、なるほどなという納得感は高い。
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振袖火事で有名な明暦の大火の江戸の地でのその後をテーマにした出来事や登場人物によく知られている由井正雪や幡随院長兵衛などありさながら浪曲を聴いている様で実に面白かった。
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かの江戸の大惨事、明暦の大火。
老中・松平信綱は如何にして復興の難事業に挑んでいったのか。
第一章 大火発生 第二章 復興開始 第三章 米の値段
第四章 復興景気 第五章 抗争 第六章 大移動
第七章 討ち入り 第八章 遷都
江戸城の本丸、二ノ丸の焼失。江戸の町の多くの建物が焼け、
約10万人の死者の被害を出した明暦の大火から始まり、
その三日後から始まる復興への道程。
知恵伊豆(知恵出づ)と称される老中・松平信綱が、
如何にしてこの大事業に知恵を巡らせたのかを描く歴史小説。
御用部屋での酒井忠清、阿部忠秋ら老中たちとの審議を核とし、
当座の、粥施行、木材や米の供給、牢人問題、死者の埋葬。
御三家の屋敷を城外へ移転。新吉原。インフラの整備。
未来への防災への布石としての、広小路や両国橋、火除地、
企画整理と武士の住環境の整備。そして西ノ丸から新本丸へ。
決定した事業は粛々と行われ緩やかに進行するが、
その合間には城外の風雲急を告げる人間模様が。
斥候(ものみ)の町奴・幡随院長兵衛。
信綱の姉・おあんが会いにきたのは、旗本奴・水野十郎左衛門。
それらが絡む事件も発生。
エピソードとして盛り込まれるのは、島原の乱に、
由井正雪による慶安事件。更に、将軍・家綱や天樹院(千姫)、
大老・保科正之、徳川光国が登場する、緩急交えた物語に。
未来を見据えた江戸一新の大事業に関わった信綱の、
人間像が際立っていました。御用部屋や幡随院長兵衛との
遣り取りが面白いし、荒唐無稽な事件も復興の一つの礎に
なっていくのが信綱ならでは。読み易い内容で一気読み!
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明暦の大火からの復興を描いた。大勢の町人が犠牲になり、江戸城も焼け、町が灰燼に帰した。松平信綱が主人公。天守を復興させず、城郭内の大名屋敷を外へ出し、町割りを改めた。登場人物たちの会話、かけあいが楽しい。
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面白かった。ユーモアのある逐次解説にふむふむ。東京の街並み造ったのは、家康と後藤新平くらいしか知らなかった。時代が違いすぎとはいえ、先を見通した都市計画、たいしたものです。大地震に見舞われ、しかも、首都直下地震が予想されながら、欲望のまま肥え太る東京。未来は暗い…。「自尊心というのは、単なる自意識であるうちは美しくも崇高にもなるけれど、他との比較に転じたとたんに浅ましくなる。自尊がそのまま他虐になる」「この時代、人々のもっとも高級な趣味のひとつは本の抜き書き」へー、そうだったんだー。
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とても面白かった。いや、知恵伊豆、すごいわ。とても魅力的に描かれている。他の老中や幡随院長兵衛とのやり取りも面白い。これもぜひドラマにして欲しいものだ。光圀を山本耕史君に演じてもらって、やり込められるとこを見たい
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明暦の大火(1657)からの江戸再建を軸に、「知恵伊豆」と呼ばれた老中松平伊豆守信綱の活躍を描く。
幕閣を除き信綱に絡む人物や出来事はほぼ作者の創作と思うが、その生き生きとした劇画調の描写が楽しく、信綱の人物像に親しみを感じさせる。
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明暦の大火の後の江戸の復興。老中松平信綱、通称知恵伊豆の奮闘を描く。
決して完璧なサクセスストーリーでなく試行錯誤しながらの江戸の復興の過程。知恵伊豆がスーパーマンでない設定に好感が持てる。
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「家康、江戸建てる」の読了からほぼ6年。1657年の明暦の大火を契機とした復興の、いや、後の百万都市、江戸へのアップデートの物語です。続編として手に取りましたが、まったく違う物語で、今回の主人公は老中、松平信綱。知恵伊豆としてなかなか有名人ですが、こういう仕事をした人だとは知りませんでした。自らを「臆病者」と認じ、いろいろ高速シミュレーションしながら一筋ならぬステイクホルダーとディールしていく、という感覚が会社再建物語みたいでとても現代的です。「家康、江戸建てる」が創業者が主人公だとしたら「江戸一新」は変革期のサラーマン社長かな。DXに翻弄される今に相通じています。EX、エドトランスフォーメーションなんて言ったりして。本来なら災害からの復興ストーリーとして3・11からの年月を想起させるものであって欲しいのですが、そういう感慨からは遠かったのが残念。たまたま最近、「地形でみる江戸・東京発展史」を読了したので、その新書の口絵、記述と本書の物語が重なりあって、面白味が倍増しました。未読ですが「東京、はじまる」とか「地中の星」とか著者にとっての大きな意味での主人公は江戸・東京という首都なのかもしれませんね。
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これはちょっと。。。。
門井さんという事で、明暦の大火の後の江戸拡大事業を描いた史実物という位置づけで読み始めたのですが、何かすごく中途半端な物語でした。
主人公は知恵伊豆こと松平信綱。そしてサブに幡随院長兵衛。TVドラマ「暴れん坊将軍」の吉宗とめ組の辰五郎みたいな関係ですね。まあ、ここまでは許せます。しかし、長兵衛の敵役・水野十郎左衛門にまで江戸一新策の起案者といった役割を与えたりしてなんだか話のつじつまが合わず。そもそもこの二人を登場させたのは町奴vs旗本奴のアクションシーンを入れたかっただけなのかなあ。その他にも信綱の実姉のおあんやその弟子・おときについては、ページ数が割かれる割にストーリーとの関連が薄いし。。。結局、全8章中の第5章から第7章までが妙な活劇物になってしまいました。
極端に言えば1-4章と8章で「江戸一新」は語られています。史実物だけでは退屈だろうから歌舞伎や講談の題材を入れたい、読者も知らない信綱のプライベートも入れたいなどと欲張ったのでしょうかね。エンタメ路線ならもっとそっちに振って「江戸一新」は背景くらいにすればそれも一つの方法だと思いますが。。。。中途半端にエンタメを入れた為に、本来の「江戸一新」の中身は薄くなって、結果だけが語られるような中途半端な物語でした。
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時代小説が面白いと感じるようになった。歳をとったということかもしれない。そういえば時代劇も多く見るようになったな。
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明暦の大火後の江戸復興を描いた歴史小説。
松平信綱を中心とした江戸復興物語で、復興ものとしては面白かったです。
ただ、幡随院長兵衛が信綱の江戸市民の声として繋がっているのはいいですが、水野十郎左衛門との確執が通説とは違った結末になったり、聞いたこともない姉の話だったりはちょっと不必要かなと思いました。
むしろ「家康、江戸を建てる」のように、復興当事者のいろんな視点での短編連作にした方が良かったと思いました。
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当時の明暦の大火、江戸の街の再建、川越大名のちえいづこと松平信綱の川越との関係がよく分かる一冊であった。1657明暦大火、1666ロンドン大火、保科正之、札ノ辻、島原の乱、由井正雪の乱、吉原の移転、江戸城の天守台再建、等江戸に関する歴史がわかった気がする。