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紙の本
濃厚でほろ苦いココアをゆっくりと味わう
2010/12/08 18:31
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧版を持っていた。
そしていちおうひと通り読んだ記憶があるが
当時のわたしには
この芳醇なココアを味わうことができなかった。
時を経て、かわいらしい表紙に生まれ変わった
2010年バージョンにめぐり合い、
読んでみて文字通り「胸が熱く」なった。
ここに出てくるのは
ほとんどが20代の女性たち。
まるでおしゃべりを聞いているかのように、
鮮やかに紡がれる彼女たちの物語。
女たちのせりふばかりでなく、
男たちのせりふの、なんと粋なこと。
恋ばかりでなく、日々の仕事や些事が
きちんと描きこまれていること。
むずかしい言い回しなどまるで使っていないのに
なんだか感心させられる表現の多いこと。
知らなかった。こんなに深い小説だったなんて。
一瞬、損をしていた気分になったが
このタイミングのめぐり合いに感謝しようと
思い直した。
12編のお話には
ハッピーエンドばかりでなく、ほろ苦い余韻を残すものもある。
カカオが多めの、ビターなココアは、心に沁みる。
立ち上る湯気と香りが、全身を温めてくれる。
そして、もう一杯、おかわりしたくなるのだった。
紙の本
ふと思い浮かべたものは。
2010/08/19 20:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクヤマメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
しんとした静けさのなかにある、心をあったかくするもの。
この本のタイトルを見て私が思い浮かべたのはこんなイメージだ。
「孤独な夜のココア」というタイトルの作品は、実はこの本には納められていない。
12の心がきゅっとする物語が収められている。
著者の描く女性たちは皆、しっかりとした芯を持っているように思える。
恋愛も、仕事にしてもそう。自分なりのスタンスで日々を生きているのだ。
芯はあるけれど、たまにぶれたり惑わされたりもする。
その気持ちの揺れが繊細に表現されていて、心をつかまれる。
一番好きなのは「エープリルフール」だ。
大切な用件をちゃかしてはぐらしたものの、相手のほうが一枚上手。
最後の最後の場面で、グッと来た。
「春つげ鳥」も淡々と描かれている分、主人公の気持ちが浮き彫りになっている。本当は彼女が抱えているのは深い悲しみなのかもしれないと感じさせる。
冷静に自分の心と向き合っている彼女達。
そんな女性になれたらといつも思っているのだけど。
なかなか上手くいかない。
紙の本
タイトルが良いですね
2023/11/30 11:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
当時の社会情勢や労働環境、職場慣行など昭和の香りたっぷりで書名が素敵すぎます。男女のほのかな感情交流から濃やかなものまでさまざまに切り取った十二編が心地よいです。
紙の本
寄り添ってくれるお話たち
2020/07/19 12:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏凪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに惹かれて。
この本に出てくる女性たちというのは本当に自分の周りにもいそうな方ばかりです。そのみずみずしい空気を持ちながらも、実際にこのお話が書かれたのは昭和の年。私よりも遥かにお姉さんです。
そういえば、女性たちの雰囲気はとても身近に感じられるのに、ふと出てくる言葉の中には聞き慣れないものがありました。それでも、このお話に出てくる女性たちに親近感を覚えたり、共感できたりするのは、女性を取り巻く人間関係や悩みというものがいつの時代も変わらないものだからなのかもしれません。
それが良いことか、改善すべきことかはわかりません。でも、夜にひとりで過ごすとき、傍にいてくれるような、ほっと一息つけるような、そんな一冊でした。
気に入ったタお話は『エープリルフール』、『ひなげしの家』、『ちさという女』、『中京区・押小路上ル』。