紙の本
日本史上最も熱き敗者
2023/02/27 20:33
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の時に読んだマンガ日本の歴史では、木曾義仲は戦には強くても粗野で不作法に描かれていたような記憶ですが、この本では「日本史上最も熱き敗者」として描かれ、特に最後は胸が熱くなりました。もしも頼朝ではなくて義仲が天下を取っていたら、とつい考えてしまいました。
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類い希なる軍略で平家を破り、男女貴賤隔てない登用で頼朝や義経より早く時代を切り拓いた武士。「朝日将軍」木曽義仲の鮮烈な生涯。
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木曽義仲は源平合戦の先駆けで千運に恵まれず一敗地で生涯を閉じるまでの一生を語った物語は人の心を鷲掴みにして離さない。時代が違っていたら人格者で人望もあったろう。登場人物も多士済々時の経つのも忘れて読み終わってしまった!
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にて強烈な印象を残した源義仲の太く短い生涯。
どうしても大河ドラマと比べてしまうのだが、この作品がドラマと違う一番の点は女軍師がいたこと。
村山義直の娘・葵は書物好きで、歴史書で培った知識で数に劣る義仲軍を勝利に導いていく。
だが彼女は『今の今まで、自分の頭の中だけで戦をしていた』ことを般若野の戦いで知る。
もう一人、義仲といえば忘れてはいけないのが巴。イメージ通り強いこと強いこと。
義仲との関係は、ドラマのようなプラトニックどころか恋愛関係はない。そもそも巴には生き別れた夫がいて、その夫が何と敵方にいるという設定になっている。そのことが義仲の最期のシーンにも絡んでいるというのは興味深い。
そしてもう一人の女性、山吹。義仲の正妻で、悲劇の少年・義高の母だ。山吹についてはドラマでもそうだが描かれているのを初めて読んだので新鮮だった。そして彼女は愛息・義高を取り戻すために戦に同行する執念の女性でもある。
この三人以外にも敵方にも女性ながら参戦する女性もいて、本当なのかどうかは分からないが女性がこれほど出てくる戦記というのも珍しい気がする。
義仲の勢いが良かったのは僅か4年弱。
彼には平家を倒すとか、権力を手にするとかそういうことはどうでも良かった。
ただ懸命に頑張っている人たちが穏やかに幸せに暮らせる世界を創りたかっただけだった。
だがそんな世界はどこにもなかった。
法皇や公家は自分の地位や権力や財政を守ることしか考えていなかったし、頼朝は武家の頂点に立つことしか考えていない。叔父の行家はドラマ同様、小者なのに自分を大きく見せ人を振り回し、逃げ足だけは早い。
どこでどう間違えたのかと言えば、『魔都』・京に入ったことだろうか。葵の最期の言葉がこんな結末に繋がるとは。
京は彼が育った木曽とは全く違う秩序、価値観、考え方の土地だった。
だが木曽地盤に領地を広げていたとしても、それはそれでいつか頼朝や法皇とぶつかっていたような気がする。
もっと平和な時代であれば、木曽のよき領主として生きられたかも知れない。
義仲の勢いが良い時はすり寄り、勢いが失われたと思いきやさっさと離れていく人々と違い、共に育った義仲四天王や巴らとの絆の強さが光った。
また義仲の真っ直ぐな気性を作った養父・中原兼遠も素敵な人だった。
最後はドラマでの巴のその後を見た感じでホッとした。
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木曽義仲を描いた歴史小説
前半、信州の豊かな自然の中でおおらかに育つ義仲と中原兄弟との絆が印象的
決起してからは、歴史にifはなく、散りゆく哀しい結末
エピローグに救われます
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祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の華の色、盛者必衰のことわりをあらはす。奢れる者は久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者もつひには滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
人は塵みたいなものかもしれないけど それぞれ 色んな色で光ってる。
この物語の義仲さんの生き様は せつなすぎます。
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よかった。結末を知っている後半がつらいけれど、仲間の結束が揺らがないところが、また泣ける。子どものくだりは大河ドラマと重ねて...ついでに行家も大河と重ねてしまった
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木曽義仲の小説。会話の口調など、文体が少し現代に寄り過ぎている感はあるが、良い作品ではあった。1000年余りが経った今、義仲の求めた世の中になっているかな?
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「俺は、源氏の世など望んではいない。源氏も平氏も、百姓も貴族も無い。すべての者が、人として等しく生きられる。そんな世を、俺は望んでおります」
木曾義仲(源義仲)。私欲や野心もなく、常に"正しい"漢。
人としてはいいのだけれど、天下を取るような武将としてはだめなのだろう。天下人は毒を持ち周囲を欺く位聡い漢でないと。
もう少し要領良く立ち回ることができたなら…けれどこの要領の悪さが義仲の人としての良さなのだろう。だから配下の者たちにこんなにも愛されていたのだろう。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で巴御前のことが気になっていたので、巴御前がたくさん出てきてとても嬉しかった。特に『鎌倉殿』以前のことが知りたかったので、今作で巴御前の生い立ちや人となりも分かって良かった。思った通りかなり波乱万丈な生涯。
葵御前の存在にも驚いた。しかも実在の人物だったなんて。この時代に複数の女性を戦に登用する義仲の手腕にはとても驚いた。
適材適所に配下の者たちを配置する。それぞれの性格を見抜き、得意分野等をよく理解しているから出来ること。義仲の組織のリーダーとしての素質は申し分ない。
まさに理想的なトップ。
それなのに、一体どこで間違えてしまったのか。
平家や源頼朝、朝廷の間でもっと巧く駆け引きできていれば。けれどこの真っ直ぐさがあったからこそ、最期までよき仲間に愛されたのもまた事実。
あれから何百年経とうと、人の心を今尚揺さぶる漢。戦の上では敗者であったけれど、歴史上の漢としては勝者であったと思う。
かなりの頁数だったけれど、読みやすくて夢中になった。他の作品もまた読んでみたい。
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読み終えて呆然としている。ものすごくよかった。木曽義仲と、それから同時代に生きた人々が、それぞれの生を生き、それぞれの戦いを戦い、それぞれの死を死んでいく。読みながらメモをとった登場人物が全部で百四名。それぞれが血肉を持った人物として眼前に浮かぶ。あの日本史の教科書では「以仁王の令旨」との文字でしかなかった王までもが(場面に登場しないものの)人間としての匂いを持っている。義仲と今井四郎兼平の最期はもう、涙無くして読めなかった。そして義高あわれ。いや、いい歴史小説だ。
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「面白そう?」と入手し、少しの間置いて在って、紐解き始めた。「面白そう?」ではない!「面白い!」と思った。
所謂「源平合戦」の時代を背景とした物語だ。少し夢中になって読み進め、読了後に深い余韻に浸ってしまうような感だ。
本作は、章毎、または章の中での部分毎に適宜視点人物が切り替わる体裁で綴られているが、最も主要な視点人物は「木曾義仲」である。木曾義仲は、「源平合戦」の時代の武将である。信濃国から身を興し、平家との抗争に身を投じた木曾義仲は北陸方面で平家の大軍を打ち破り、都に入り「朝日将軍」を号するようになるが、やがて源頼朝麾下の軍勢との戦いに敗れて討死している。この木曾義仲を巡る挿話を参考に、作者の想像の翼が大いに羽ばたいて、活劇と関係した人達のドラマが大胆に展開している。
冒頭、視力を喪っている年老いた僧が、弟子の補助も受けながら山間の草庵に在る人物を訪ねようとしているような場面が描かれる。所謂“琵琶法師”であることが示唆されている。演奏と共に語るべき物語の取材をしようとしている訳である。
そういう場面から、木曾義仲を巡る物語に踏み込んで行くのである。
本篇は木曾義仲が「駒王丸」と呼ばれていた少年時代から起こる。直接に血が繋がる肉親の縁が薄い駒王丸は、信濃の豪族の家で「義父上」(ちちうえ)の庇護の下、義父の息子達と実の兄弟同然に育っている。或る時、「信濃の旗頭」にもなるべき人物ということが示唆され、駒王丸はその出自の秘密を知ることになる。
そして長じて、色々な人達との出逢いを重ね、信濃にも影響が出始めた源平の争いという中で、仲間達や兵達と共に起ち上がり、戦いの渦中に身を投じて行く。
巨大な平家の軍勢に立ち向かう他方、源頼朝陣営との抗争のような状況も生じ、息子の義高を“婿”として実質的な「人質」に出すようなことにもなった。やがて都に進撃するが、平家が西へ去って混乱する最中で法皇や公家等との争いも生じる。
そういうような感じなのだが、「驕る平家」によって虐げられる人々を救わなければならない、誰でも各々に幸せになれるように統治しなければならないとの一念で、その人柄を慕って近くに在る仲間達との闘いを進める木曾義仲の様子は痛快である。そして最期を迎えるような辺りは目頭が熱くなる。
更に本作では、巴御前のような周辺の人達の各々のドラマも実に興味深い。本作では、木曾義仲と出逢い、共に闘い、そして別れる迄が描かれるのだが、物語のキーパーソンであり、「もう1人の主人公」という感でもある。彼女も「驕る平家」によって虐げられる人々の一人だった。
そして本作の終盤の方に在る、木曾義仲の息子である義高の挿話も、何か心揺さぶられるものが在った。
単純に愉しく読む時代モノということで一向に構わないのだが、何か「示唆的」と感じずには居られなかった物語だ。如何いう訳か定まったという、支配側の仕組を押し通そうとするばかりで、支配側の一族の中での争いに血道を上げるようなことまでもしてしまっていて、「多くの人々」は如何なるのか?そういうことを「何とかしたい」とする勇者が、木曾義仲であり、残念ながら彼は敗れてしまう。
何か夢中になることが���来る熱い作品だ!御薦め!!
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平家物語に鮮烈な楔を打ち込んだような生涯。源義経もそうだが、木曾義仲の生涯も頼朝と後白河法皇の薄汚い謀の前に消されてしまう。
真っ直ぐで輝くような生命の迸りが眩しい。平家との和睦がなっていればとか行家をもっと早く切り捨てていればとか義仲を惜しむ気持ちは強い。軍師として登場した葵という女子の存在も面白く、これが歴史物ではなく空想であれば義仲に天下を取ってほしかった。
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最初の方は色々描写が丁寧だったのだけど、義仲が戦に出始めてから各派閥ごとの動きが複雑になるのもあって、
戦の臨場感や各々の気持ちの描写が軽く触れる程度になってしまってあまり感情移入が出来なかった。
読んでいてきっとここは凄く泣ける場面や胸を打たれる場面なのだろうと言う所もいまいち盛り上がりにかけてしまってちょっと置いてけぼり感があった。
帯に【この男日本一の敗者】と言う煽り文句があったけど正直読んだだけではそこまでその事を実感出来なかった。
もっと歴史に詳しければ面白かったのかもしれない。