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主人公原菜蘋=みちは、秋月黒田藩の儒学者原古処を父に持つ実在の人物で、父亡き後、江戸へ出て勉学に励んだ女流漢詩人だとか。
彼女の詳細に綴られた日記に何故か空白部分があることから、著者は作家の想像力と創造力を駆使し、藩のお家騒動を絡ませた歴史ミステリーに仕上げた。
黒田藩の継嗣問題で父と兄から密命を帯びたみちは、男装して江戸へ向かう。
途上、頼もしい味方や反対派の追っ手、さらには敵か味方かわからない同行者もあり、危難の連続にRPGのようなロードノベルの面白さ(著者には、同じくロードノベルともいえる時代小説『闇の峠』が合ったことを思い出す)。
江戸の着いてからも、幕府老中たちの権力争いに翻弄され、果たしてみちは本懐が遂げられるのか、わくわくドキドキの連続。サスペンス満開で、エンタメの醍醐味が満喫される。
史実にフィクションを織り交ぜ、大胆なエンタメ作品に仕立てた著者の手腕に賛歌。
秋月藩の名に記憶があったと思っていたら、葉室麟氏の『秋月記』があった。猷tという名で記されている漢詩人が菜蘋=みちだろう。