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アルコール依存症の父のもと育った千映。
自分の夫もまた、アルコールに溺れようとしている。
夫に父の姿が重なり、『ああなっては欲しくない、娘の恵に自分と同じ道は歩ませたくない』と神経をすり減らす日々を過ごしている。
『全部ゆるせたらいいのに』とは、つまり、ゆるすことができない部分があるということだ。
全部ゆるすことができたら楽になることは理解しているけれど、ゆるすことができない。
許すは、何かを行うことを認めること。
赦すは、既に行った罪や過ちを責めないこと。
平仮名で表すことでそのどちらの意味も含有しているのだとすると、過去も未来もひっくるめてあなたの行為をゆるしたい、ということなのかな?
諦めとはまた違うんだろうし、なんだか難しい。
私が千映と同じ環境に育ち、同じ境遇に今立っているとしたら、絶対ゆるせないけどなぁ。
そもそも、ゆるせたらいいのに、とも思えるだろうか。
気力がないと読めない作品かもしれない。
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アルコール依存症の父親。
娘の千映。
それから千映の夫と娘。
家族の葛藤の物語でした。
アルコール依存症の父親
仕事の付合いやストレスで飲酒が増える夫。
そんな彼らを
許す? 諦める? 認める? 理解る?
どれも簡単には出来ないのではないだろうか。
アルコールでの家庭の崩壊、夫婦間の危機
読んでいて、どちらも恐ろしく気持ちが沈んだ。
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一木けい『全部ゆるせたらいいのに』新潮文庫。
読んでいて、昔懐かしいささやかな家庭の描写に喜びを感じる一方で、切なさと悲しさで心が痛くなるような小説だった。
一種のアル中小説と言っても良いだろう。
酒で憂さを晴らすとか、酒は百薬の長とか、適度な酒ならとか都合の良いことを言うが、酒は一滴でも身体にも、精神衛生にも良くない。本書に描かれている通り、酒は家庭崩壊の原因にもなる。どうして法律で禁止されないのか不思議でならない。
毎晩のように泥酔する夫の宇太郎に自身の父親の姿を重ね合わせ、不安に押し潰されそうになりながらも、何とか家庭にすがる千映。
娘の恵が産まれてから、より一層、仕事に力を入れる夫の宇太郎だったが、その反動なのか日に日に酒量が増え、泥酔し、物を無くしたり、警察の世話になったりと不安を募らせる千映。
千映の父親がアルコール中毒だった。大学院に通っていた時に母親と知り合った父親は子供が出来ると、バイト生活から一転、大学院を辞めて、名の知れた企業の正社員になる。その反動で、酒量が増し、泥酔したり、暴力を奮ったりと家庭崩壊の危機にあった。
宇太郎や千映の父親が酒に溺れる気持ちも解らないではない。自分も会社で仕事が忙しく、毎日のように深夜残業が続き、酒を飲んでいた時期がある。深夜に仕事を終え、飲みに行き、飲み屋から会社に出勤したこともある。記憶を失ったり、物を無くしたり、翌日は起きれなかったりということもあった。あのまま飲み続けていたら、今の人生は無かったかも知れない。酒を止めて10年になる。酒を止めてから、身体も心も楽になった。
本体価格590円
★★★★★
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アルコール依存症の父を持ち、自ら母となった千映の夫も酒に溺れ始める。
その状況に過去の父を思い出し、夫も同じようになってしまうのではと怖くなる。
そんな、千映と夫、母と父、父と娘の様々な視点で描かれていく。
壮絶な父との関係だが、それでも千映が父を思う気持ちも強く、胸が苦しくなる。
家族だから我慢出来るのか、受け入れられるのか…
2024.5.22
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「許す」ことができれば、
と思うことは、日常的によくある。
でもなかなか譲れず、
相手を非難してしまうことが多い。
しかもそれを受け入れてもらえなかったら、
もっと「許せない」気持ちになる。
全部許せたら、どんなことになるのか、
考えながら読み進めました。
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アルコール中毒、のさまをまざまざと見せてもらい、自分もそうでないか、家族に迷惑かけてないか、不安にさせられた。襟を正していこう。
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愛ってなんなのか。
家族ってなんなのか。
他人から見たら異常なものでも、本人からすると普通なのか。
見たいものを見たいようにしか見ていないからなのか。
愛、家族にはどうして人をこんなに執着させるのだろう。
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なにより、アルコール依存というのが
いかに恐ろしいものかが思い知った。
その人の人生、周りの人も含め
狂わされてしまう。完治できた人間はいるのか
と思うほど、悪循環で呪いのような病気
主人公の背負ってきた苦労、
幼少期から父にされてきた事を考えると
泥酔し家庭に影響するほどの
目の前の旦那に対し
信じる、ことが当たり前のように
できないのは、仕方ないよな
難しいよな、と思う
そんな彼女から
許す、諦めることが
いかに難しいかを教えてもらった
お酒で狂うまでの
千映と旦那と子供の生活
と
千映が幼少期の頃の父と母の生活
お話がそれぞれあって
どちらも心がポカポカするほど、暖かく幸せな
家庭があった。
当たり前のように流れていく生活が
いかに幸せか、と思わされるぐらい
描写がすごく素敵で、頭で想像しやすく心地良い時間でした
そこからのアルコールで
一変してしまう家族達を見ていくのが心苦しく
なにより
どんな父親でも、その父に人生を狂わされようとも
心配があって、それを捨てようと前を向いても向ききれず
どこかで父の光を期待をしてしまうような
どうしようもない愛があり、
家族、ってこういう事だよなと
改めて考えさせられた
私ならもう縁を切る。と
縁を切ってどうか幸せになって、と願っていたけど
それでも父に対して、
ごめんね、と悔いを残す千映の心に
感動しました。
想いが溢れまとまりませんが
当たり前だと思っていた事が他人にとっては
異常だと思われてしまうことがある
当たり前だと思っていた事が
他人にとっては幸せに思われることがある
他人と比べるのではなく、
自分の世界にある目の前の幸せにいかに気付けて、
それを大切に味わえるか
後悔を残しながらも、それに気付き前を向く
千映を見送ることができて良かった
わたしもそうして生きたい
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みかける度に気になっていて、今だなと思って手に取りました。
『父がわたしを罵倒したり殴ったりしたのは、わたしのことが憎いからではなく、病気だったからなのだ。』
アルコール依存性の父を持ち、幼少期から苦しみ続け、夫もアルコール依存性になってしまいそうな日々。これほどの境遇に置かれても、父の死に対して、家族の形に対して、もっと違った道があったのかもしれないと後悔する。するんだろうか。全部ゆるせていたら、ざくろの木を見て穏やかに話すことも、ポケットの中で繋がれた手もなかったかもしれない。それでも、後悔するんだろうか。
全部ゆるせたらいいのに。シンプルな言葉だけど、難しいな。ゆるさない選択をしなくちゃいけないときがあるんだろうな。
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どうして主人公はこんなにも夫の飲酒へ過敏になっているのだろう?と匂わせながら次章では父親目線や自分の幼少期の目線で話が進んでいく。
2人のボタンの掛け違い、或いは掛け違いに気付いていてもどうしようもないことへの切なさが読んでいて苦しかった。確かに、愛はあった。選択したことのひとつひとつ、気持ちの弱さや脆さが積み重なり心が壊れていく、家族が壊れていく。
最後まで宇太郎目線で話が進むことはなかったから、主人公が一番大切な人を信じることに気付いたラスト、宇太郎が、今の家族が、どうなっていくかは千映のこれからの"ゆるす"形なのだと思う。
ゆるすことは、酒を許すことではない。
酒を許すことは、"あきらめ"。
あきらめと、ゆるすは似たようで全く違う。
ゆるすことは、寄り添うこと。ひとりの人間として彼の弱さもみとめること。プレッシャーを背負う彼の逃げ場をつくること。それが酒ではないように一緒に考えてあげられること。
自分にも言い聞かせようと思う。
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読み進めていくうちに、タイトルの意味が深く染みてきた。物語の中にきれいごとは一切なく、読み終わってからしばらくは暗い気持ちが拭えなかった。
主人公に影を落としているのは、父親が原因だけではない。家族だからと無遠慮かつ無自覚に人を傷つける祖母、母の存在も心が痛んだ。
でも読んでよかった。何度読んでも苦しくなるだろうと思うけど、また何回も読んでしまう気がする。
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余韻…真ん中ぐらいからぐわっとノンストップで読んだんだけど感情移入してしまって今もくるしい ネタバレしないようにするとなんも書けない
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重度のアルコール依存症の父親をもつ千映。
そして夫にも酒への執着が見られる…
他人から見て、千映が置かれてる状況を考えたら、ゆるすなんて不可能だと思う。だけどそこで「全部ゆるせたらいいのに」と思うのは家族だから、愛がある(あった)からであって…なんとももどかしくて、切ない気持ちになる小説だった。自分の努力でどうにもならないことと向き合うのは、難しいよなあ…。幼い頃、父からたしかに全力で愛されていたのに、本人はそれを覚えていないのも、悲しかったな。
宇太郎と千映の物語だと思っていたら、千映と父親の壮絶な人生の物語だった。
切なく重いけど、目が離せない展開に夢中になって読んだ。
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夫婦の話だと思って手に取ったら、親子の話だった。
なんともしんどい。毒親なんかさっさと見限ればいいとイライラする一方で、親をあっさり捨てることができるって、親に愛されてたってことかもしれないなと思う。
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酒はこわい。酒は人の本性をあぶり出すだけでなく、人の本質まで変えてしまう。愛をストレスという形に変えてしまう。