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紙の本
悪の凡庸さ
2016/03/02 15:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時中に行われた人体実験という重いテーマを、無駄のない引き締まった文体で描いている。人を生きたまま解剖し、死に至らしめるという猟奇的な行為に手を染めたのは、異常者の集団ではない。ヘドが出るほど卑近で、ありふれた医師、医学生、看護師たちである。ハンナアレントが指弾したアイヒマンの凡庸さに似て、保身や嫉妬、思考停止やニヒリズムといった我々にお馴染みの感情が大それた犯罪をならしめる。抗っても抗っても黒い海に引き込まれるというメタファーが象徴的だ。悪は我々のすぐそばに、ぽっかりと口を開けている。
紙の本
小説として、
2023/02/17 00:14
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投稿者:いしかわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件小説としてもっと面白おかしく狂気に満ち溢れたキャラクターたちを書こうと思ったら書けたと思うけど、そうはしなかったんだなあ、そういうことを書きたいのではなかったんだなあ、と感じた。
倫理や哲学の本だと思ったほうが良いけど、それにしては文章が凄まじすぎて、体験したことをそのまま書いたとしてもここまで五感を丁寧に描写できないだろと思う。
紙の本
短いけど凄みがある小説
2022/05/14 07:45
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平洋戦争中に捕虜の米軍兵士で生体解剖実験をした事件を素材にして、罪悪感とはどういうものかを問う小説。世間から糾弾されることにしか恐れを感じず、それがなければ恐れない自らが不気味という戸田の独白が印象に残りました。割合短い小説ですが描写に凄みがあって、最近のしょうもない分厚い小説よりずっと読み応えがありました。
学生の頃から遠藤周作の名前も著書の存在も知っていましたが、小説をきちんと読んだのは初めてでした。遠藤周作というと冗談のきついおじさんというイメージですが、小説は至極真面目に書いていたんですねぇ。
紙の本
日本人
2002/07/21 21:19
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投稿者:アセローラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米軍捕虜の生体解剖という事件を、解剖に立ち会った人間の過去や思いを通して日本人への罪の意識を問いかけている。社会に対する後ろめたさはあるが、自分に対しての後ろめたさはない…。
自分がどう感じるか、それが本当は一番大切なことのように思うが、その自分に対しての問いをしてこなかった人間が日本人には多いのだろうか…。事件そのものよりも、日本人像が浮き彫りになり、考えさせられる作品です。