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血と暴力の国含めて3回目。やっぱり面白い。けど、これに関しては映画が素晴らしすぎる(映画も3回見てる)。
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コーマック・マッカーシー『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』ハヤカワepi文庫。
2007年に扶桑社ミステリーとして刊行された『血と暴力の国』を改題、改訂、再文庫化。再文庫化にあたり『No Country For Old Men』という原題の正式なタイトルに戻したようだ。
4年程前に仕事でタイに向かう飛行機の中で本作が原作の映画『ノーカントリー』を観たところ非常に面白く、無性に読んでみたいと思っていた。
強烈な印象を残した映画のシーンを頭の中に描きながら読んでみると、老保安官のエド・トム・ベルも、奇妙な武器を操るマッシュルームカットの太目で残忍な殺し屋のアントン・シガーも、ヴェトナム帰還兵のルウェリン・モスも小説という世界で新たな命を吹き込まれたかのように感じる。
そして、驚いたのはコーエン兄弟の映画が、かなり原作に忠実だったことだ。映画では、モスが若い女性のヒッチハイカーをピックアップ・トラックに乗せる場面は無かったし、カーラ・ジーンがモスに射殺される場面も無かったが……
渦巻く欲望と狂気の中、何故か一人だけ冷静沈着に国が悪にまみれて行くのを憂う老保安官ベルという不思議な構図。非常に面白い。映画では描き切れなかったのであろう細部の描写や登場人物の心情表現が凄い。
極めて文学的なノワール・ハードボイルドといったところだろうか。
1980年、ヴェトナム帰還兵モスは、テキサス州のメキシコ国境付近で麻薬密売人の殺戮現場に遭遇する。男たちの死体と共にブリーフケースに残された240万ドルもの大金を発見し、持ち逃げする。
妻であるカーラ・ジーンの待つトレーラーハウスに戻ったモスは夜中に大金のことが気になり、殺戮現場に向かう。遠くから現場を観察していたモスだが、麻薬密売人の仲間に見付かり、追い掛けられ、ピックアップト・ラックを捨て、命辛々、自宅に戻る。
身の危険を感じたモスは自宅に戻るや、カーラにオデッサの実家に避難するよう命じ、自らも逃亡の旅に出る。
一方、保安官補により逮捕された殺し屋のシガーは保安官補を殺害し、パトカーで逃亡する。途中、無関係の車を停め、運転手を酸素ボンベとホースで接続されたスタンガンで殺害し、車を乗り換えて、モスが目撃したあの殺戮現場に向かう。
ブリーフケースに仕掛けられた発信器の電波からモスの後を追うシガー。
保安官のベルは殺戮現場に残されたピックアップ・トラックからモスの自宅へと向かい、モスとカーラが事件に巻き込まれたことに気付く。
モスの所在を突き止めたシガーは、同じく240万ドルの入ったブリーフケースを追跡していたメキシコ人麻薬密売人らと銃撃戦を繰り広げる。麻薬密売人たちはシガーにより皆殺しとなり、シガーにより銃創を負ったモスは再び逃亡する。しかし、シガーもモスの銃撃により傷を負っていた。
追う者と追われる者、その結末と老保安官ベルの語る後悔……
本体価格1,500円
★★★★★
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個人的に現代アメリカを代表する最も重要な作家の1人と考えているコーマック・マッカーシーの長編第9作。既に単行本時として翻訳されていたが、当時の『血と暴力の国』から改題され、原題と同じ『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』として今回、文庫化で復刊されたのが喜ばしい。
コーマック・マッカーシーという作家の魅力を説明しようとしたとき、「血と暴力の国」というワードは極めてシンプルにその魅力を表している。単行本時にこのタイトルが選ばれたのもよくわかる。本作を10ページほど読むだけで、5名が無惨な暴力で殺され、血に塗れることになるのだから。
マッカーシーの作品は一般的には犯罪小説などの意味合いを持つノワール(暗黒)小説、と括られることがある。しかし、個人的にはその括りには違和感がある。ノワール小説の多くは単に犯罪、血と暴力などの意匠によって記号的に成立するのに対して、マッカーシーの作品においては世界がいかに存在するかを描こうとしてときに不可欠な意匠として犯罪、血と暴力などが存在しているからである。
本作、”NCFOM”では、メキシコの麻薬密売人の金を持ち逃げした男と、彼を追う謎のサイコパス的なシリアルキラーの男、そしてその暴力を食い止めようともがく保安官の男、という3名を主軸に物語が描かれていく。血と暴力はますますとエスカレートしていくなかで、物語のキーマンである保安官の男が見せる内省にこそ、本作の隠れた主題が込められている。
なお、『テスカトリポカ』で度肝を抜く文学世界を見せてくれた作家、佐藤究が本作では解説を寄せている。彼が本作に解説を書くということを知ったときに、個人的には強い納得感を覚えた。現代日本において、コーマック・マッカーシーと極めて近い場所にいる作家こそ、彼である、という両者のつながりを感じたからである。
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ベトナム戦争の退役軍人で今は溶接工をしてるとかのモス、冷徹に人を殺しまくるシガー、老保安官のベルの3人が主な主人公。プロットとは別に、ベルの独白というかインタビュー?が挟まれ、話のテーマ的にもベルが中心に据えられていると考えられる。麻薬取引のトラブルをきっかけに、それぞれの人生が大きく動いていく。
昔とは変わってしまったアメリカに対するベルの悲しさや虚しさが全体を貫いている。ただ、ある観点では昔は平和だったとはいえ、ベルの祖父世代、親世代そしてベル自身とそれぞれ戦争に行っているので、単純に昔が良かったとは言えなそう。
今まで読んだマッカーシーの作品の中では一番分かりやすく、読みやすかった。
コーエン兄弟監督、ハビエル・バルデム主演の映画も劇場公開時に観たけど、細かいところはほとんど覚えていない。また観なくては。
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最初にモスが出てくるシーンからぐいぐいと引き込まれ、シガーとガソリンスタンド店主のやり取りで、たまらん感じになる
しかしカーラ・ジーンが19歳ってどうなのよ、とは思う
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1980年、テキサス州南西部。ヴェトナム帰還兵で溶接工だったモスは、砂漠で麻薬密売組織の凄惨な殺戮現場に出くわす。そこには大金が転がっており、モスは、その鞄を持ち逃げする。金を取り戻すため、非情な殺人者シガーがモスを追う。そしてシガーとモスを追う保安官ベル。しかし物語は次から次へと死者が出ていく…。人生の選択や運名、コイン投げのような要素が印象的。優しさや情けが一切存在しない世界での選択というのは、恐ろしい…。ただこれが現実かもしれない…
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ずっと本の登録だけして、感想は書いていない。
たまたま、一年前にこの本を登録したのを、ブクログから知らされて、もうほぼ忘れているので、感想は書けないが、おぼろなものを書いてみよう。
もともと、「ノーカントリー」という映画を見ていだ.
特にハビエル・パルデムの殺し屋は、印象的。
クライマックスに負傷した体を自分で縫合し、生き残り、消えて行く。
つまり、殺し屋はまだ生きているのだ。
僕の貧弱な語学力だと、「ノーカントリー」は「国ではない」とか「国を持たない」となるのだろうか。
しかし、原作は「ノーカントリーフォーオールドメン」。
「年老いた男達に国はない」「年寄りに安住の地はない」ということだろうか。
善の否定、非情とか、そのようなことしか浮かばない。
コーマック・マッカーシーの原作で「悪の法則」というのがあったが、こちらも救いのない作品だった。
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名作。コーエン兄弟のアカデミー賞受賞作『ノーカントリー』の原作。映画をみてから原作を読んだけれど、映画には映画としての良さがあり、小説には小説の良さがある稀有な作品。映画ではシガーの無表情に殺戮を犯して行くシーンや、アメリカの荒野の印象が深く、またモスの妻の妙な可愛らしさが印象的だったけど、小説ではここの保安官のベルのモノローグが印象的。彼のモノローグに漂う世界に対する絶望感が作品に満ちている。こんな酷い世界に生きる意味はあるのか。それでも人は生きているのだけれど、それって何でなんだろうか、、。そんな思いを抱く。
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荒野に放置された弾痕の残る車輛と複数の死体、多額の現金と麻薬を見つけたら、そのまま放置して警察に連絡するに限る。現金を持ち帰り、再度現場を訪れるようなことをすると、地の果てまで追われることになる。
冒頭から物語に引き込まれ、ストーリーや登場人物の行動、セリフに引っ張られ、終盤まで連れていかれる。章立て冒頭の保安官のモノローグの印象が残っているうちに、主人公と追手が繰り広げる逃走劇が脳内に入り込んでくる。ストーリーが脳内に入ってくるのは、著者の作品『ロード』でも同じだ。その文体がそうさせるのだと思う。
主要な登場人物はすべて戦争経験者だ。オールド・メンの条件が戦争経験のように思うが、アメリカはどこかしらで戦争を継続しており、必ずしも古いタイプの男を指す条件ではないが、本書ではおおむねベトナム戦争経験者までをオールド・メンの対象にしている。2007年に本書の著者は80歳近い年齢であったことから、当然のカテゴライズだと思う。
古いこと、新しいこと、時代がかったこと、今時のこと、いろいろなことが掛け合わさって入り乱れてくるが、ストーリーが立ち整然と物語は流れていく。しびれるほど面白かった。
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もともと『血と暴力の国』というタイトルで翻訳されていたものが改題、改訂、文庫化されたもの。
解説にもあるが、確かに改題後、つまり原題のほうが保安官ベルの独白が物語の間に挟まれることにより意図されることが明らかな感じがする。
犯罪者、というか、シュガーが特異過ぎてちょっと笑える。そして、事件が解決するとかはほんとにどうでもいいもころがマッカーシーぽくて、好きだとわたしは思ったのだ。
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読んだのは「血と暴力の国」というタイトルの文庫 https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594054618 だけど映画化後のタイトルでしかブクログには出てこないんだな マッカーシーは国境三部作とロードを読んだとき情緒的に取り乱すほど感動したから何も記録してないけどこれはふつうの精神状態で読み終えることができた 数々の凄惨な犯罪が淡々と描写されていき説明も心理描写も背景もなく終わる ただ絶対悪(マッカーシーは純粋悪と言ってる)が描かれている これを読むと生き死には運でしかないなと心底思うし他人を理解するなんて実際問題到底無理だなと思う 人を理解するなんて傲慢だ
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洗練された重みのある文章。。。わかっちゃいるんだが。どうにも自分とは相性が悪いようだ。多分四作くらい読んでいるのだが、毎回読後があんまりよくなかった。必要以上に暗い気がする。どうも自分はユーモアとか皮肉とかがないと読んでるのがしんどくなってくるようだ。
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追われる男、追う男、その跡をたどる男
雨と銃と血の匂いのする物語は、ストーリーの矛盾を回避しようともせず、ひたすら“何か”を描き続ける。
作者は、暴力と流血の中に、この世界と人の絶望を、独特の文章で綴る。
「できることが何もないなら、そもそもそれは問題ですらない」
そのことが、また、絶望につながる。
わかったようでわからないこと……唯一無二のこの読後感は、嫌いではない。
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コーマック・マッカーシーの代表作である。
国境での麻薬取引が襲撃され麻薬と金(かね)の奪い合いが始まる。金を横取りするベトナム帰還兵、追いかけ回す密売集団、スタンガンのような特殊な武器を使う殺し屋の執拗で冷酷な追跡、それを捜査し追走する保安官・・・。
独特の表現で、今のことなのか過去のことなのか、状況なのか会話なのか、話ことばに鍵かっこを使わず、凄惨な場面が次々と起こる。めまぐるしい展開に説明がない、何がどうなっているのかわからず読者も振り落とされそうになる。
各章冒頭の随想のような文章で一息入れる。
欲望と殺戮と僅かの日常が混在し、全編を貫くスピード感と虚無感に満ちたテイストの風変わりな小説である。
映画化されてアカデミー賞を受賞する。
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映画を先に見てあまりのインパクトに原作も気になりやっとの思いで購入。改訂前の方?全然売ってなかった!
映画のシュガー訳わからんかったけど原作も訳わからん。普通に話してると思ったら次の行で平然と人殺しててめちゃ怖かった。
第一章のベルの語りがこの恐怖の全てを物語ってるわ…
生きてると何が起こるかわからないけど、こういうサイコパスと遭遇せずに一生を終えたすぎる
ヒッチハイクで出会った女の子とモスの会話だけがこの物語の唯一の癒し