本格と社会派の無意味な融合
2002/04/16 14:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「本格推理と社会派推理が融合した傑作」と呼ばれ、世間でもかなり高く評価されている作品。でもそんなに面白いかなぁ。「本格推理と社会派推理の融合」って、なんで「融合」なんてしなきゃならないのかよくわからない。本格は本格のままでいいと思うんだけど……
この作品も、個々のトリック自体は良く出来てるのに、そこに著者お得意の「日本人論」みたいなのが出てくることによって、ただの説教くさい話で終わっている。それに、どこにリアリティの基盤があるのかが曖昧で、中途半端。たとえば、タイトル通り、天を動かすような奇跡の(つまり現実には起きないような)トリックが出てくるんだけど、これは明らかに「本格ミステリ」らしい虚構としてのリアリティ。しかし他方、「昭和の時代を象徴するような」事件であると読者に思わせるために、冤罪事件や、朝鮮で日本人が犯した罪などが問われている。これは現実に極めて近い「社会派推理」のリアリティ。この二つのリアリティが乖離しているため、本格ミステリの作り物めいた面白さは半減し、社会派のテーマは説得力をなくしている。
一番ひどいのは、「日本人が戦争で犯した罪を問う」という難業を、本格ミステリの面白さを際立たせるための「要素」として使っていること。戦争の哀れな被害者を犯人に仕立て上げ、「可哀想にねぇ」という読者の安易な感動を誘うために、「ついで」に書いてみました、というのがまるわかり。これじゃ現実の被害者に失礼だと思う。本格ミステリの付属品として使われるほど、そんな簡単な問題じゃないと思うんだけど……
島田さんには、「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」の頃の、けれん味たっぷりの大トリック作品をもっと読ませてもらいたいなぁ。
投稿元:
レビューを見る
重いテーマだったが、一気に読んだ。
島田氏の絶頂期に書かれた野心作ではなかろうか。
テーマや設定などは、好き嫌いの別れるところでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
吉敷シリーズ、初めて読みました。悲しかった。物凄く辛かった。
人間や平和と云う事について、深く考えさせられる社会派要素の濃いお話。
こういった難しい題材であっても、ある種ファンタジーとも取れる展開が組み込まれて読み易く、世界観が拡がる。
犯人(犯人じゃないのだけれど)が、初めて口を開く場面が心に残ります。
投稿元:
レビューを見る
吉敷シリーズ。これが読みたくて吉敷シリーズに手を出したといっても過言じゃない。社会派ミステリなのだけど、御手洗シリーズを髣髴とさせるトリック。テーマはとても重く考えさせられるもの。でも面白かった。
投稿元:
レビューを見る
吉敷竹史モノ(通子とは関係ない)の最高傑作と聞いて読んでみました。消費税が元で老人が店主を殺害。と思われたが、吉敷は納得できず老人の過去を洗ううちに、過去の大がかりな犯罪に行き会う。これも「占星術殺人事件」と同じでマンガ「金田一少年の事件簿」がトリックを拝借。先に「金田一少年」を読んでいたので、「あ、これあのトリックだ!」と気付いてしまって十分堪能できませんでした。吉敷はなんか正義感が強いヒーローというより、底の浅い信念を振りかざして自分だけが正しいと思ってるような印象でどうしても好きになれない。もうこれ以上読まなくていいや、と思いました。
投稿元:
レビューを見る
おもしろかった。でも、かなり読むのが苦しかった。人間の運命の悲惨さ。向き合わなきゃならないことだけど、へこんでるときには自分への恐るべきパンチになる。いてて。でも、本としてはなかなか読み応えありました。
投稿元:
レビューを見る
ストーリーを見ただけだとなんだかつまらなそうだったんだけど、にちゃんで好評だったのでまたしても購入。
ジャンルはミステリィでも「Why done it?」
そう、わたしの嫌いな系統。
だけど、飽きずにすんなり読めた。
犯人の過去の出方が多少強引なものの、タイミングがいいんだな。
だけど悲しいなぁ。
一つのことや物に執着(悪い意味で)した生き方って、やっぱり損だと思う。
気持ちを切り替えればもっと違う生き方が出来たのにって思っちゃう。
読み終わるとかな〜り気分が重くなります。
投稿元:
レビューを見る
2007/4頃
二日くらいで読んだ。これもまた、日本を批判するのに飽くことない頃に読んでいたら、大感動だったかもしれない。小中学生の頃だ。読む時期を逸した感あり。場面場面はわるくないとは思いながらも、やっぱり御手洗ものは初めのころの短篇がいいよと思う。
投稿元:
レビューを見る
これの前に「占星術殺人事件」を読んでいたせいか、感動がイマイチ。
途中でトリックよめちゃうし・・・。
でも社会派推理小説としては成功なのかな?
一応飽きることなく読めたので、星4つ。
投稿元:
レビューを見る
浅草で浮浪者の老人が消費税12円を請求され、店主をナイフで刺殺した。老人は痴呆症のようで名前すら名乗らずただ黙秘しつつげる。単なる衝動殺人と片付ける事に矛盾を感じた捜査一課の吉敷は単独で事件を追う。その老人は、23年間も刑務所に入っており、一昨年仮出所したばかりの行川郁夫だと判明する。所内では模範囚で殺人を犯す人物では無いと彼を知る人は口を揃えて証言をする。しかも彼には冤罪の疑いもあった。
突発的な始まり方をするのがとても印象的だった。読み進めて行くと、その文体が何であるか解ってくるのだが、その部分がちゃんと説明され最後につながって行くのが、いい意味で期待を裏切った。犯人は覆らないのだが、奥行きがあるので、そんなものは全く気にならなかった。
最初、このタイトルの意味(狙い)が全く解らなかったが、読んで納得。とてもいいタイトルだ。
投稿元:
レビューを見る
吉敷竹史シリーズ
消費税12円を請求されたことで桜井佳子を刺殺した行川郁夫。事件に不振を抱いた吉敷の捜査。行川が書いた童話。列車の中で踊るピエロ。列車のトイレから消えたピエロの遺体。白い巨人に脱線させられた列車。飛び込み自殺の遺体が甦り逃走する。牛越刑事の捜査であきらかになる実際に起きた事件。サーカスから駆け落ちした呂兄弟と桜井佳子。函館本線で射殺されたチンピラの荒井。札沼線から消えたピエロ。冤罪で服役していた行川の過去。
新装版 2007年3月25日初読
投稿元:
レビューを見る
久々吉敷刑事。列車のからくりとかあんまり好きじゃないんだけど(時刻表とか照らし合わせたりね。。)続きが気になって面白かった。
読後はなんだか悲しい気分。
投稿元:
レビューを見る
何の関わりもないようなことが、読みすすめるにつれて、少しずつ明らかになってくる過程が最高です。
真犯人の正体を知ったときの衝撃は忘れられません。また、動機には涙しました。
投稿元:
レビューを見る
館シリーズ&島荘を勧めてくれた先生いわく、島田荘司の中で最高傑作のトリックとのこと。
トリックは、説明されれば確かにそれしかない、と納得。しかし、全然 予想もつかなかった。
主人公が違うから当たり前かもしれないが、占星術殺人事件とはまったく雰囲気が違い、面白かった。
投稿元:
レビューを見る
初、島田作品。島田氏の作品の中でも、評判がよかったので(ほんとは占星術殺人事件が読みたかったけど)まずはこれから手を付けてみました。
もう、トリックの規模がでかい。昭和初期のくすんだ部分と、乱歩を思わせる奇怪な出来事、単なる衝動殺人がここまでスケールがでかくなるとは。。
恐れ入りました。
満足。