紙の本
最上質のミステリー小説のような実話
2020/12/16 21:54
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく面白い、読む前からイギリスで本当にあった話であると読売新聞の書評にあったので(紹介してくださった三中氏に感謝)知っていなかったら、最上級のミステリー小説として読むところだった。綺麗な羽がルアーに使われているのは知っていたが珍鳥のものが日本円にして何十万、何百万の値打ちがあることまでは知らなかった。おそらく犯人のエドウィンはアスペルガー症候群のふりをして罪を免れたのだろうが、少年時代、切手収集家だった私はよく「世界の珍しい切手という切手を手にできたらどんなに幸せだろう」と空想していた、だからあのころ、そんな切手が保管されている博物館というのがあったら、ひょっとしたら忍び込んでいたかもしれない、あのころ私はアスペルガー症候群だったのかも知れない
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タイトルに惹かれたが、ノンフィクションとは買った時には思っていなかった(無知)
ある標本盗難事件(解決済み)の真相、というよりは、解決の際に消えた標本を著者がインターネットを駆使して追っていく話。純粋に読み物として面白い。
ミステリっぽさもあって、和訳も読みやすい。
博物館での標本盗難が意外と多いこと、
盗む側と、その周囲の人間(本作だと領域はだいぶニッチではあるが)と、博物館や関係者、そして自然科学が好きな人たちとの認識の齟齬が未だ多いことに驚きはあった。
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音楽院のフルート奏者による鳥の標本盗難事件のノンフィクション。
1850年ごろアルフレッド・ラッセル・ウォレスは、何年もかけて命がけでマレー諸島でさまざまな生物を採取し、標本を作成した。そしてそれらはその都度英国に送られ大英博物館に買われた。
ダーウィンら科学者たちは、自然選択による進化論を確立しようとしていた。
19世紀末には珍しい鳥の羽を帽子に飾るファッションが流行し、羽毛産業が栄え大量の鳥が殺されていった。
今も毛針にとらわれた人たちは、違法だとうすうす感じながらも珍しく美しい羽を手に入れようとする。
博物館は、自然標本を収集・保存して未来につなぎ、新たな知見が得られると主張する。
標本の由来や博物館の成り立ち、毛針の歴史など分かりやすく丁寧に書かれていて、引き込まれるように読んだ。いろんな立場があるけれど、どの時代も人間の欲って深いなぁと思った。
写真で紹介されている盗難が起きたトリング博物館の外観の美しさや鳥類の仮剥製のリアルさにびっくりした。
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鳥の標本の盗難事件を扱ったノンフィクション。
『釣りに使う毛針を作るために、貴重な標本を盗む』という行為もさることながら、『こんなに簡単に盗み出せるのか』というのも衝撃だった。そして案外、バレる時はあっさりバレるのだ……と、色々と絵に描いたような展開が寧ろ面白い。これ、売る相手を選んでいれば、逃げおおせたんじゃないだろうかw 色んな意味で客は選ぶべきであるw
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原題を訳すと。ただの「羽根泥棒」となる。邦題の付けかたは、漢字16文字で推理小説を連想させるもので、購買意欲をそそらせる。もちろん推理小説ではない。学術的に貴重な鳥類の標本が、博物館から盗まれる。その羽根を、フライフィッシングで使う毛針の材料にするためだ。本事件の犯人は本の中盤で逮捕される。その後の展開が非常に面白いのだ。結局、何も解決しないのだが、人間の持つ心の闇、偏執狂、強欲といったものが、筆者によってさらさせる。
科学系の出版社からの発行であるが、よくこの本を出版してくれたものだ。感謝。
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ノンフィクションだけど、フィクションみたいな話。
タイトル通りの事件だけど、冒頭でその鳥の羽の標本をウォレスなどの学者が命がけで収集してきた事が描写されているので、それが簡単に私利私欲の為になきものにされてしまうのがあまりにも切ない。
毛針というものに魅了されてしまう気持ちも分からなくもないけれど、それでもあまりにも身勝手な行動、そして全くの反省のなさになんだか気持ち悪さを覚えた。
結局真実が解明されたとしても、羽は戻ってこない訳で、モヤモヤは残る。最後に一人の青年が改心する所だけが唯一の救いかな。
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★相容れないタコつぼの趣味の世界★鳥の標本が博物館から大量に盗まれる。一般の人には使途の想像がつかないが、観賞用の毛ばりづくりには美しい羽根がたいへんな価値を持つ。自然科学の重要性をまったく理解しない趣味の人々はは、博物館に放置されていることこそ問題だとさえとらえる。相容れない世界観を持つ人々を追いかけた。
糸口は世間ではさほど話題にならなかった窃盗事件。そこから、鳥の標本集めを通じてイギリスの植民地の歴史をたどり、鳥の羽を生かしたファッションの盛衰といった歴史をふまる。盗難事件に舞い戻り、毛ばりづくりの関係者に嫌われながらも追いかける。時間軸の深みと現実のビビッドさを縦横無尽にからめた語り口が素晴らしい。
ある分野に異常な熱量を持ったいわいるオタクにはある意味、常識が通じない。窃盗事件の犯人である学生をアスペルガー(それも曖昧な判定)という理由で執行猶予にしか問わなかった裁判所の常識もまた、世間には通じないものかもしれない。常識の在り方にもいくつも疑問を投げかける。
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面白かった
長期的な利益(標本を後世へ受け継ぐ)と短期的な利益(死蔵された美しい羽根を集める)の問題は考えさせられる
蒐集家の気持ちは分かるが、ロクに反省していない連中ばかりなので腹立つ。最後に改心した人が出たのは救いか。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2883781X
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大英自然史博物館のトリング別館で、非常に貴重な鳥の標本が大量に盗まれた。警察が解決出来なかった事件をアメリカのジャーナリストが解く。
物凄く面白かった。ドキュメント+ミステリー。(以下若干ネタバレ)犯人は留学中のアメリカの音大生で、フライフィッシングの毛針製作で有名。盗んだ羽や鳥を高値で売っていた。しばらく事件は発覚しなかったが、ある偶然から発覚し、逮捕され裁判にかけられる。しかし執行猶予がついてしまう。(なぜかまではネタバレしない)
という所までが本の半分。以降は著者が犯人にアプローチし、盗まれた鳥の行方を追う。インターネット時代らしい捜索が新しいドキュメントだなと感じさせる。
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基本フォーマットは、タイトル通り、珍鳥の標本が大英自然史博物館から大量に盗まれるという事件の犯罪ルポ。でも、この事件、蓋を開けたら予想以上にいろいろな問題のてんこ盛り。
珍鳥の羽毛をめぐる歴史的・文化的背景から始まって、その羽毛を使って作られる毛針のマニアックな世界、毛針愛好家たちによるエゴと不法取引、絶滅危惧種保護の問題、そして博物館の存在意義まで。どれを取っても重量感があって、それだけで本が一冊書けてしまいそうな問題ばかり。これらが300ページ余りの単行本の中で次から次へと立ち現れるのだから、息つくヒマがない。
しかも、この疾走感あふれるルポを書いた著者は、これまでに犯罪調査の経験もルポライティングの経験もゼロ、鳥の生物学や博物館学についても素人だというのだから、驚愕もの。最初はちょっとした好奇心から始まった調査が、徐々に正義感に燃えるようになり、警察と裁判所が見切った事件を切り崩すに至る。著者の熱量がどんどん上がっていく様は、前述した問題のてんこ盛りと並ぶ、本書の読みどころだ。
ところで、本書の発行者は京都に本社がある科学同人社。全く知らない出版社だったのだけれど、本書に挟んであったチラシを見ると、なかなか面白そうなラインアップを揃えている。今後、要watch。
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大英自然史博物館から貴重な鳥の剥製が盗まれた実話を追ったノンフィクション。
盗み自体は、なんて事はない内容だが、共犯者の存在、盗まれた剥製の追跡など、面白い。
特異な毛針コミュニティの存在も初めて知った。
ただし、真相究明という点では若干消化不良の感あり。
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最初に標本窃盗シーンから入り、鳥受難の歴史になる。昔は帽子などファッションに鳥の羽が使われていたんですね。そしてようやく、犯人の生い立ちに入る。親がなんでもさせるという意向で、毛針づくりを始めるのだけど、フルートの練習をし、こちらはエリート校の入学が叶う。そのままで有名楽団員になれるところを軽い気持ちで毛針盗難に走る。しばらく不安になるが、すぐにいいフルートを買うために、大胆に売り始める。それでもしばらくは捕まらないのだが、数年してちょっとしたことで不信を持たれ逮捕される。それから裁判の話に移る。犯行は認めたが、精神的病気ということが通って、刑務所には入らなくすむことになる。なかなかドラマチックな展開。また熱狂的な毛針の世界の話が面白い。もう少し短くて良かった気もするが。
Amazon.com、BuzzFeed、Forbesなどで、2018年の年間ベストブックに選出! ?2019年アメリカ探偵作家クラブ賞ノンフィクション部門、 2019年英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞ノンフィクション部門にノミネート! ?『ネイチャー』、『サイエンス』、『ニューヨーク・タイムズ』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』などでも絶賛レビュー掲載
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いや、これも凄い本だった。
ミステリー好き、博物館好き、鳥好き、あらゆる方におすすめしたい!
感想をどう書けばいいのか、しばし悶絶…。
最初は推理小説だと思っていたのだが、とんでもない、実話のルポだった!
著者であるカーク・ウォレス・ジョンソン氏は、イラク戦争後のファルージャで、アメリカ政府系組織の都市再開発計画に携わっていたが、PTSDによる夢遊病状態で、窓から転落し大怪我をする。
アメリカに帰国後の回復期に、現地で共に働いていたイラク人通訳、翻訳者、医師などが、アメリカに『協力した』ことを理由に迫害されていることを知ると、アメリカに亡命させるためのNPOを立ち上げる。
その活動において、数千人の避難者をアメリカへ迎え入れたものの、全員を救えるわけではなく、資金集めもままならず、精神的に追い詰められてしまう。
そこで出会ったのが、渓流釣り(ブラピの若い頃の映画「リバーランズスルーイット」を思い出す…内容はほとんど忘れたが…)。
これが彼にとっては、無心になれ、非常にリラックスできる最高の気分転換だった。
渓流釣りは、素人がいきなり出来るモノではなく、ガイドを頼むのだが、そのガイドのスペンサーと意気投合。スペンサーから、美しい毛針を見せてもらう(彼のは合法的な鳥の羽を使っている)。
そして、この本の本題である、「大英自然史博物館珍鳥標本盗難事件」の触りを聞かされる。
大いに興味を持ったジョンソン氏は、ままならないNPOのストレス解消手段として、この事件について調べ始めるのだが、毛針世界の闇と、神秘的な美しさを放つ希少鳥の奥深さを調べることにハマってしまい、本業そっちのけになってしまう(いや、その探究心たるや尋常じゃない)。
本書は三部仕立てで構成されている。
第一部は、19世期ダーウィンの時代まで遡り、自然回帰主義が隆盛し、人類がアマゾンやインドネシアの密林で希少生物を次々と発見し、進化論などの生物学の新しい見地に辿り着く経緯を追っている。
特に、この本で取り上げられている毛針に多用される希少鳥を採集し、人類による乱獲と絶滅を危惧し警鐘を鳴らしたウォレス(著者のミドルネームと同じ!)について詳しく書いている。
また同時代は、ご婦人方のお帽子に鳥の剥製が丸々乗ってたりするファッションが大流行する(なんて残酷!)ほど、乱獲されまくりだったことも書かれている…正直この一部はなかなか読み進まなかった。
第二部は、盗難事件について、犯人の証言をもとに経緯を書いている。
犯人は、子どもの頃から毛針製作に夢中になり、その世界では、希望の星と言われるほどの存在だったらしい。
毛針と言っても色々あるが、中でも「ヴィクトリアン・サーモン・フライ」なる王道レシピがあり、それには現在は絶滅危惧種に指定されているような鳥達の羽が用いられている。
現在はワシントン条約など様々な法制度によって、希少動物は守られている。が、象牙やサイの角に比べ、珍鳥の取締りは甘く、闇で恐ろしいほどの高値で流通している。
どう考えてもこの犯人、用意周���な犯行に見えるのだが、結局アスペルガー症候群による突発的な犯行とされ、執行猶予のみとなる。
第三部では、ジョンソン氏がコトの真相を知ろうと、犯人の交友関係や、裁判に関する資料、毛針交流サイトなどを根気よく調べた経過が書かれている。いや、もう探偵ですかってくらいに調べまくっている。
犯人とも直接会って、8時間以上に渡って話しているのだが、犯人の周囲から聞いた話でも、会った印象からもアスペルガー症候群とは思えなかった。
恐らく、診断を出した精神科医(後にこの医師の診断方は、否定的な捉え方をされている)の前では、アスペルガーの特徴的な振る舞いを真似たのではないか?と結んでいるが、確か医師もそれは可能だと半ば認めている(アスペルガー症候群ではなく、サイコパスだったのでは⁉︎と中野信子さんの「サイコパス」を思い出してしまった)。
犯人に刑が下されても、下されなくても、珍鳥標本の多くは戻らず、例え戻っても採集年と地理的情報が書かれたタグが外されていたら、標本としての価値は無くなってしまうのだそうだ。
予算が貰えない博物館は、警備の厳重化が難しいことも書かれておりました。
まだ交通手段も、通信手段も発達していなかった時代、黄熱病やマラリアに苦しみながら、地球の神秘を集め、種の進化と絶滅危惧を説いた人々の努力を顧みず、渓流釣りなど全くしないくせに、ヴィクトリアン・サーモン・フライ作りに夢中になる輩(失礼)には、呆れるばかり。そういった人の中には、進化論など全く信じないカルト宗教を信じる人もいる…。
そんな愚かしさも、人類の悲しい性なのかなぁ…。
この本は、TBSラジオのsession22で、「外出自粛の今、あなたのおすすめの過ごした方は?」というような企画が3月にあり、その中で、リスナーの方が紹介していたのだ。
荻上チキさんの著書を読んで以来、ラジオも愛聴しているが、知らない事、知るべき事を教えてもらえるオススメ番組である。2020.5.4
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実際に起こった標本盗難事件を追ったルポルタージュ。
単に事件を追いかけるだけでなく、なぜそもそも大量の標本が博物館に所蔵され続けているかについても詳述している点が好感が持てた。
生物地理学のきっかけを作ったアルフレッド・ラッセル・ウォレスがメタデータをつけることの重要性を説いた時から、標本の科学的価値はそれに付与されたタグの情報と切っては切れないものだった。逆にいうと、タグが外された瞬間に標本は未来まで続くはずだった価値を失う。
そのような人類の知への貢献という価値観とは別に、ビクトリア時代という世界中の資源を搾取した時代に考案された毛針を希少鳥類の羽で作りたいという価値観が存在する。そのような価値観を持つ愛好家にとって、標本の盗難や破壊は魅力的な行動なのだ。
ネットサーフィンを駆使して真実に迫るスリリングさもあり、とても面白い作品だった。