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七十四秒がとても素晴らしかったので
作者さんの次の作品を手に取った。
表題作「わたしたちの怪獣」は大いに期待を外し、怪獣ものではなかった。しかしながら、怪獣のイメージが斬新でよかったかも。
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」はタイムパトロールものなんだけれど、パラドクス含め、すっきりしない展開。
「夜の安らぎ」がなかなかの力作で、きれいなエンディングも楽しめるし、どうやら続編もありそうな雰囲気だ。
「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」が一番多い気に入りかな。スラップスティック一歩手前の終末物語は天候が鬱陶しい週末の読書にぴったりかな。
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怪獣の表現が明確で想像しやすい。
大胆な発想で面白かったが短い。
登場人物それぞれの背景がもっとわかると感情移入できたと思うが、この短さだからこそ面白かったのかもしれない。
怪獣、タイムトラベル、吸血鬼、ゾンビ。
4つとも面白かったが、ラストの『キラートマト』は、映画の名前がたくさん出てきて興奮した。長めの短編集。ひとつひとつが際立っていて、映画になってもいいくらい面白かった。次作にも期待したい。
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どの物語も、社会の中で苦しんでいる人たちの目線から世界を描こうという姿勢で一貫しているが、文体は軽やかで読みやすくすっと入ってくる。
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面白い!
暴力を振るっていた父親を殺してしまった妹。どうしようと思っていると、千葉に突然巨大怪獣が現れたという。父親の遺体を怪獣で被害にあった場所に捨ててくれば、妹の罪を隠せるのではないか?と考えて行動を始める姉を描いた表題作。
事故で亡くなった人を助けるために、その事故の直前にタイムトラベルして、当人に「声かけ」して助けるという「仕事」を担当する主人公。仕事自体は担当する事故を機械的に割り振られて、時事通りにこなすだけ。そんな時、同僚からルールを破って行動することを誘われる「びびび・びっぴぴ」。
両親を事故で失い、閉塞的な街で従兄弟の家で暮らす主人公の女生徒は、ある時吸血鬼と思われる男性を見つける。いっそ吸血鬼に血を吸われ、自分も吸血鬼になって、この街を出て行きたいと願い始める…「夜の安らぎ」
Z級カルト映画「アタック・オブ・ザ・キラートマト」が上映されている小さな映画館にたまたま入った主人公。その映画館には一癖も二癖もある「キラートマト」ファンが集まっていた。しかし、映画館の外では頭が大きく膨れあがって血まみれになったゾンビが人々を襲い始めていた。「『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を観ながら」
荒唐無稽な設定に巻き込まれた人たち。その人たちは様々な過去や、境遇を抱えているが、それらは今の世の中でよく見聞きするものばかり。暴力的な親、いじめ、理解できない悪意を向けてくる人、パワハラ、、、その普通の人々が荒唐無稽な設定の中でもがくうちに、何かに気づいていく、目覚めていく。
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社会の基盤から漏れてしまった人たちの叫びを描くメッセージ色の濃い中短編集
思うようにならない生を重厚でシュールなファンタジーにのせて描いた作品
ラストの映画の話はちょっと怖いエンドでした…
前作に続くコアなSFを勝手に想像していたため、やや肩透かしを喰らいました
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どっかで誰かが絶賛してた気がして
勢いで買った本
そして読むの忘れてた本
今、読み終わったところなんだけど
短編4つあったのに
2つしか思い出さなかった
タイトル見返したら思い出したけど
個人的には
記憶に残らない本だなぁという感想
最後の映画の話はおもしろかった
でもたぶん覚えてられない
己の記憶力が呪わしいが
好みじゃなかったから仕方ないよな!
と諦めよう
星はフツーの3つ
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「発掘王への道#4」は久永実木彦さんの『わたしたちの怪獣』です
王を目指してますからね
SFも発掘していきますよ
そして一Qさんに先を越されちゃいましたが、あまり知られていない作家さんということに変わりありませんので、元気に作者紹介から!
2017年に「七十四秒の旋律と孤独」で第8回創元SF短編賞を受賞
2020年に上記受賞作を表題作とした初の単著『七十四秒の旋律と孤独』を上梓
自ら愛妻家かつ愛猫家と名乗ってらっしゃいます
本作はデビュー2作品目となる短編集です
うん、正統派だな
正統派SFって感じだな
いやー是非とも一度長編を書いて欲しいなー
設定はいいんです
設定は面白いんです
だけどこのくらいの長さだと設定だけで押し切れちゃうんですよね
しかも終わり方が全部フワッとしてるし
あえて揃えてるのかもしれないんですが、やはり作品数が少ない段階だと、どうしても「それしかできねんじゃね?」疑惑が…w
あと、文章に色というかクセがなさすぎる
最初のうちは稚拙でもうざいくらい主張してくる文章書く人の方が大成するイメージあるんよね〜
とにかく間口の狭い作家さんなのは間違いなさそう
好きな人はとことん好き、そうでない人はポカーンみたいな
ブクログで言うと★2と★5で平均★3.5ってタイプですね
あれ?なんかすごい厳しい感じになっちゃった
ま、いいか
発掘って難しいな〜
それでは締めます!
「はっくつ!はっくつ!」
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SF,現実ではありえない設定
非日常を味わい脳を刺激
1.怪獣:襲来現場に死体置去り
2.ぴ:事故直前にタイムリープ,声かけ
3.夜:吸血鬼に憧れる少女
4.キラートマト:ゾンビ襲撃,映画館籠城
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図書館本。
、、、みんな怪獣だ。わたしたち一家はだれもが、傷ついてできた心のひだに怪獣を住まわせている。わたしたちの怪獣は、自分を守るためなら世界を壊したっていいと思う思っている。
この文に集約されている。
SF短編集。
愛妻家で愛猫家の著者さんの後書きがまたよし。竜の水浴びに遭遇したい
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SFを4遍収録した短編集。作者の小説ははじめて読んだのだけど、4編どれもがさらりとした手触りでありながら、サブカル愛や映画愛を感じるもので、馴染みの店で定番のメニューでも食べているかのような安心感がありました。
表題作「わたしたちの怪獣」は父親を殺した妹の罪を隠蔽するために怪獣が出現している最中に死体を遺棄しようとするお姉ちゃんのお話。主人公の心情にフォーカスしつつ、突如出現した怪獣によって社会が混乱する様子を描くという、小さな「個」と大きな「社会」を対比させた物語。最終的にそのふたつが重なる瞬間をとらえることで、主人公が「世界」とコンタクトする瞬間を描こうとしたのかなと思いました。つまりこれはかたちを変えたファーストコンタクトSF。展開は荒っぽい部分もありますが、主人公の情緒の流れがわかりやすく、絵的な強さもあり結構好き。
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」では歴史改変された世界の秩序を守る仕事に就いている者の話を、「夜の安らぎ」では吸血鬼に魅入られた少女と実在した吸血鬼の出会いを。二編ともさくさくと読めちゃうわかりやすいお話で、やはりここでも個と社会の対比みたいなテーマが読み取れる。
「『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を観ながら」はZ級映画である『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を映画館で観ている最中に街がゾンビに襲われ、館内に残っていた8人が映画についておしゃべりしながら籠城するというお話。映画についてのあれやこれやな知識が披露されつつ、軽妙な会話によって登場人物を掘り下げ、Z級映画に対する愛をさく裂させます。オチの付け方はなんだか投げやりっぽい気もしましたが、登場人物の会話ややり取りがコミカルで楽しい。『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』観たくなっちゃった。
現実の中に突如虚構が侵入し話を駆動させるという、ティーンが好きそうな話が多く、この前読んだばかりの『SFの気恥ずかし』に書いてあった”若気の至り”的な妄想譚はある意味ただしく「SFやってんなあ」という印象。話の飛躍具合からすればサイエンスの要素は少ないので、SFに「科学」を求めている方からすれば物足りなさを覚える可能性があるけれど、過重労働やパワハラ、家族間の問題、いじめ、経済格差といった部分がテーマとして用いられているため、社会学SFという観点からみるともっと色々掘り下げがいがありそう。
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SF世界の四編。
表題の話がいちばん面白かったな。
吸血鬼に憧れる子の話は面白いけど、主人公が身勝手で辟易してしまった。
どの話も現実にあったらやだなぁ。
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怪獣、タイムスリップ、バンパイア、ゾンビ。
どれも、にっちもさっちもいかなくなった人たちが突然の何者かの襲来によってカオスにほうりこまれる話。
カオスは暴力であり不幸であるんだけど、一面、福音じみたものでもあって、じつはひっそりとそれを待ち望む人たちがいるという。そういえば相川英輔さんの彗星の話とかもそうかなあ。
でも、待ち望んだカオスが襲来すると、それはやっぱり悲惨なんだよな。最後のキラートマトの話なんかはまさにそういう1編でした。
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怪獣、タイムリープ、吸血鬼、ゾンビと歴史的ど定番なテーマを扱いながら、物語としてわざとらしくなく、最後にはしっかりと哀しみやほのかな希望を感じさせてくれる。キワモノ感のあるタイトルからは想像してなかった、小説を読んだ満足感を得られた短編四篇。
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ぶっ壊したくなる時があるよね
その時非日常的なものが出てくれば、そのせいにできるよなあと思った
夜安さんがいいなあ
小説完成しないよね
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『このホラーがすごい!2024』にランクインしていた本作。前から気になっていたのですが1Q84O1さんがお勧めして下さったので拝読。
ひまわりめろん師匠も「正統派SF」と書かれていましたが、確かにSFです。怖!とはならないけれど、どのお話も意外性が強くて楽しかった!
なので今回は伯方の塩の出番は無しでした。(私の除霊アイテム。ちょうど天ぷらにまぶして食していたのに)
では短編集での恒例、それぞれのお話を簡単にご紹介。
【わたしたちの怪獣】
わたしは18歳になって免許証を習得。これで遠くまで行ける。家にはボロボロになっているが父親のトヨタ•カローラがある。妹のあゆむにも友達にも免許証を取った事は内緒。
公園で時間を潰して帰宅してみると、父親が自殺…いや、妹のあゆむが父親を殺害していた!それと同時に東京湾に突如として気味悪い怪獣が出現!自衛隊も歯が立たない!
あゆむが父を殺したのは自分のせいだと責任を感じた彼女は、そうだ、お父さんを怪獣の側に捨てて、怪獣に潰された事にしよう!と思い付きカローラのトランクに死体を乗せてレッツゴー!
踏み潰されても構わない、真の怪獣はわたしなのだから…。
内容はぶっ飛んでますが、文体に癖が無いので(この手の作家さんにしては珍しい?)するすると読めます。
怪獣が何者なのか、彼女の中では答えが見つかったようですし、内容も中々重たいのですが…
お父さん!アホすぎるだろ!!
謝って!主人公とあゆむと妻に謝ってー!!
怪獣の描写が細かくて、既にSF好きな空気がビンビンのスタートです。最後の話でも分かるのですが、久永さんは相当映画がお好きなんだと思います。明確な答えは出ないのですが、概念の具現化という設定はSFでは面白くなりますからね。
でももう一度言わせて欲しい…
お父さん!アホすぎるだろ!!
【ぴぴぴ•ぴっぴぴ】
最初にタイトルを見た時は、一体何が始まった?!と面食らったのですが、これが1番好きな作品でした。完全にSFです。ぴぴぴの存在はある意味ホラーでしたが。(いや、名前じゃないんですけども)
主人公の椎名はパッとしない人生を惰性的に生きています。今の仕事は『声かけ』。ブラッド•ボトルと呼ばれる銀の円筒形をした機械の蓋を操作し、過去へと戻る。そしてうっかり死にそうな人に声をかけて助ける。
粛々と仕事をこなしていた椎名ですが、『パイプス』(YouTubeのような動画投稿サイト)にあげられる、とある投稿者の過激な映像を中毒のように観続けています。爆発するわ、人は無惨に死ぬわ、どう考えてもタイムスリップして『声かけ』が防ぐ前の事故を垂れ流しにしているとしか思えない。
そんな折に同僚の小栗に〈ブラッド•ボトル〉を自由に使う方法を吹き込まれる。
これは長編でじっくりと読みたい作品でした。短編で終わってしまうには勿体無い世界観ですし、タイムリープの方法を発見したのが科学者ではなく精神科医というのも面白い解釈ですので、その辺の経緯ももっと読みたかったな。
SFでよく見られる哲学的な要素も盛り込まれていますし、是非とも���の路線で長編を書いて頂きたい。
終わり方も非常にSF映画的で私は好みでした。
ぴぴぴ•ぴっぴぴとは一体なんなのか?是非ともご自身の目で確かめてみて下さい。(と、大袈裟に書いてますがわかりやすいタイトルです)
【夜の安らぎ】
その血を飲みたい程に愛している人はいますか?
吸血鬼をヴァンパイアではなくブラッドサッカーと読ませるかっこよさ。
レズビアンの悲哀も描かれた吸血鬼になりたい女子高生の物語。
楓は両親を飛行機事故で亡くし、従兄弟の未佳の家に引き取られている。学校では虐められ家では気を遣い、高校を卒業したら早く自立して遠くへ行きたいと願っている。その為にバイトをしてお金を稼ぐ日々。
勿論、それが理由の一つだけれど、1番の理由は望みの無い恋の相手、未佳と一つ同じ屋根の下で暮らすのが苦しいから。
ある日、夜の病院で小説家を目指しているのに一度も書き終わった事のない男、夜安と出会う。血液パックを盗もうとしていたのではないか、彼は吸血鬼なのでは無いかと期待をして、こんな現実からはおさらばしたい楓は自分を吸血鬼にして貰おうとストーキングを開始。
楓のバイト先の店長がクズすぎて笑えてくる。当事者の楓は最後の方、世の中の全てが嫌になりとんでもない事に。もう滅茶苦茶。
でも、こういう風になりかけて、寸手の所で堪えている人は多いのじゃ無いかな。かくいう私も何度、目の前のパソコンを持ち上げて投げ付けてやろうかと思った事か(やらかしたあかつきにはSNSに載せますのでご覧下さい)
吸血鬼と疑わしき夜安の正体は?果たして本当に吸血鬼であり、楓は愛想を尽かした世界から抜け出せるのか?不思議と希望のもてるラストシーン、こちらの終わり方も好きでした。
【『アタック•オブ•ザ•キラートマト』を観ながら】
映画好きは無条件でこの短編がベストになると思います。実際にぴぴぴと並んでこちらが同率一位でした。
まあ出てくる出てくる、大好きな映画達のタイトル!『ゾンビランド』が出てきた時は私自身も大好きな映画だったので嬉しかった。
読んでいて『ショーンオブザデッド』を始め、エドガーライト作品の空気を感じていましたが、彼の作品は1タイトルも出なかったのが残念。
主人公の犬居はブラック企業で盛大にやらかしてシネマ一文というミニシアター系の映画館に逃げ込む。
この日は『アタックオブザキラートマト』(この映画、Z級なのに何作も出ているらしいです)のリバイバル上映の日。コスプレしたコアな映画マニアが大集合していた。中でも私が好きだったのは自身を「戦場の天使」と称する変人、忍成さん。
いや、全員変人なんだけど、この中に入っても馴染める自信がある自分が怖い。
犬居はたまたま入っただけなので映画には詳しくありません。それでも横に座っていた星乃さんのお陰で見るのが楽しみになってきた犬居でしたが、突然の爆音と衝撃で映画は中止。一体外で何が起きたのか?!
これは書いても大丈夫だと思うのですが、最後はゾンビです。しかも風刺が効いているのですが、そもそもジョージ•A•ロメロがゾンビ映画を作ったきっかけは、社会風刺の為だったのでそこも��ちんと踏襲している訳ですね。やりますなあ!
閉鎖された空間、外はゾンビ、侵食されていく街。ありきたりなゾンビものの設定ですが、逆にそれが良い!
閉館していくミニシアターの悲哀もうまく絡んでいて、一本の映画を観たような気持ちに。
ここでも凄い母親が出てくるのですが、子供に放った一言が予想の斜め上を行くものだった。ぶれないキャラ設定が素晴らしい(最低だけど)
このお話だけ『わたしたちの怪獣』と時系列が繋がっています。分かった時には軽く声が出てしまいました。
とは言えそこまで関連性は無いのですが、あるとすればこれもまた概念の具現化なのかと考察するのが楽しかったです。
それにしても『アタックオブザキラートマト』に売れていない頃のジョージクルーニーが出ているのを知って、是非とも観てみたいと思うのですが、配信になさそうだなあ。
星乃さんが犬居に投げかけた質問「ジャー•ジャー•ビンクスのことはどう思っているの?」に対しての私の意見は一言。
「要らない子」
全編を通して、行き詰まった人達がとんでもない世界に足を突っ込んで行く構成です。
踏み込んだ先の方が救いなのか、ろくでもない現実の方がマシなのか…。
こればかりは体験するしか分からないのですが、擬似体験は出来たような気がします。
ここまで行き詰まると、いっそ世界なんて壊れてしまえと思うかも知れない。
本作は後書きも独特で素敵でした。1番癖が強かったかも知れない。
最後の最後までこの世界観を崩さない久永さんの徹底ぶりが気持ち良い。
ぜひとも後書きまで楽しんで頂きたいです。
猫ちゃんと暮らしてるの羨ましいなあ。
久永さんはまだまだこれからの方みたいで、2021年に日本SF大賞候補に残った作品も短編集との事。
次がとても楽しみなので、是非とも長編をお願いしたいです。もっとこのおかしな世界を長時間、味わいたいです。
1Qさん、どれも面白かったです、ありがとうございました♪あと、『1Q84O1』も本作に登場していましたね、なんか笑ってしまいました笑