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江戸の藩邸で差配役(何でも屋)を務める里村に持ち込まれる難題の数々。藩主の息子が行方不明になる。出入り商人の入札不正疑惑。邸の厨房に妙に色っぽい女が入ってきた。藩主の正室の飼い猫行方不明など。
すごく良かった。中間管理職小説としても江戸時代小説としても人間ドラマとしても素晴らしい。
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時代小説家はそれぞれ架空の藩を作り上げ、自らの想像力で登場人物たちを自由に羽ばたかさせ、独自のシリーズを構成する。
藤沢周平氏の海坂藩、葉室麟氏の羽根藩や扇野藩しかり。
著者の場合は神山藩、そして本書では神宮藩。
5編の短中編からなり、それぞれ独立した話であるが、全編に通奏低音の如くお家騒動の兆しが漂う。
神宮寺藩江戸藩邸の差配役里村五郎兵衛は、なんでも屋の異名があり、様々な揉め事が持ち込まれる。
その対応に追われるうち、最終編で、江戸家老と留守居役の対立が表面化する。
主人公にも絶体絶命の危機が訪れ、苦渋の決断を迫られる。
そして最後に、予想外の秘事が明かされ、読み手も思わず唸ってしまう。
格調高い語りと、自然描写の静謐な文章に、藤沢周平著『三屋清左衛門残日録』を思い出す。
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この作家の小説は、読んでいて心が温かくなる。
「何でも屋」と蔑称される江戸藩邸の左配役、里村五郎兵衛。それこそ、正室の飼い猫の行方探しから、世子の行方不明の捜査まで。
いくつかの事件や出来事を通して、藩の中の事情が明らかになってくる。
結末には、藩主と抱えた秘密が明らかに。
人となりが美しい。
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移り変わる季節の情景のもと藩邸差配役の五郎兵衛を中心に様々な事件が描かれる。
「人が死ぬのは好みませぬ」という五郎兵衛はじめ登場人物もみな人間くさくていい。
清々しい物語であった。
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ゆったりとした時代小説でした。
政権争いが思ったよりあっけなく収束した感じですが、シリーズ化したら読み続けたいです。
亀千代君が大人びすぎていて、さすがお世継ぎなんでしょうがいじらしく思いました。
里村家の秘密…読んでいて腑に落ちなかったこともこれで納得でした。
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砂原さんの諸作は、
善く言えば、時代小説の王道
悪く言えば、時代劇·時代小説のあるあるネタを繋ぎ合わせている
ように感じます。
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短編なので読みやすかった。
あいかわらずどの登場人物も面白そうなバックグラウンドがありそうで、続編を読んでみたい。
とくに安西主税はけっこう剣の腕がたちそうで気になる。
それにしても「秋江賦」のまさかの結末に仰天した。
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失礼ながらよくある武士の連作短編集かなと読んでいたけど、終盤の展開がとても面白く全体の印象ががらっと変わり輝いた。登場人物たちが魅力的だったので是非続きが読みたい!
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P8
〈里村の家は代々、神宮寺藩七万石の江戸藩邸で差配役をつとめている〉
影では「何でも屋」と・・・。
里村五郎兵衛も障子の修繕の手配から人事まで何かと忙しい。
この時代、ひとつの間違いから「切腹」という事態になりかねない。
背中を冷たい汗がツーと流れる。
緊迫した様子もページの端々から伝わってくる。
世子・亀千代の物語でホッとひと息。
最終章「秋江賦(しゅうこうふ)」
亀千代はきっといい主君となるでしょう。
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一行目:里村五郎兵衛は耳をうたがった。
この著者の作品は全て読んているが、似た雰囲気の小説なので、どれがどれだったか分からなくなってくる。
ただ、すごいなぁと思うのは、読むたびに、今回がいちばん面白いかもと毎度思わせられるところだ。
あと、装丁の色がきれいで、それも今回がいちばん綺麗かもと思う。
いつもだと、前のほうが良かったなとか、今回のほうがいいなとか割とはっきり判断できるが、ぼんやりした感じで毎度今回のほうがいいとずっと感じ続けられる、私にとっては不思議な作家さん。
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2年前に『黛家の兄弟』を読んだ以来の砂原さん。その時は強い印象を受けたが、今回はまだるっこさを感じながら読み進んでいた。しかしラストの”秋江賦”の展開で、差配役の頭として取りまとめをしていた里村五郎兵衛の存在感がぐんと増す。次女の澪の出生の秘密が明かされ、ミステリー仕立てに甘酸っぱさが加わり、終盤で本作を盛りたてたと思う。
藩主世子・亀千代の年齢設定はいったいいくつなのだろう。亀千代がおしのびで市中を出回った時『どれほど人出が多かろうと、結句、おのれ 一人いちにん であることにも変わりはなかった』と、こぼした言葉が忘れられない。亀千代が、時折り時代劇で描かれるようなぼんぼん風情でなく、藩主世子としての厳しさも窺え期待が増す。これほど粛々とした深い境地に辿り着ける聡明さを持つ彼はきっと立派な藩主になることだろう。
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「差配役」って今で言えば会社の総務に当たるんやろうか。「何でも屋」らしい。理不尽な仕事やお家騒動に巻き込まれながらも、季節の移ろいやふと見える路地の佇まい、居酒屋でのちょっとした酒の肴などの描写が静かに染み渡りリアルに感じる作品だ。砂原さんのこのシリーズはかなり好きだ。
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神宮寺藩江戸藩邸差配役・里村五郎兵衛。陰で「なんでも屋」と揶揄されながら、人がやらない仕事を諸々引き受けるお役目。そんな里村の元には大小様々な藩邸内の揉め事が持ち込まれる。
日日控という表題どおり、里村の業務日誌のような短編4篇に、藩邸内に蠢く謀略の行方が描かれる最終話を加えた5つの話。
なんといっても里村の佇まいがいい。「なんでも屋」と揶揄され、中には腐るものもいる下役たちに差配役の仕事の何たるかを諭す姿。里村の仕事に対する矜持に触れることで下役たちも自然と学んでいく、正に理想の上司。
前半の藩邸騒動記のような短編はそれぞれが気軽に読め、最終話「秋江賦」では全ての話が一つに繋がり重厚な長編のような構成に。
最後には全ての伏線が回収され、さらに驚きの事実も明らかに。里村が10歳の世子・亀千代に告げなければならなかった事実と、若君の尊厳を守るためと主君にさえ貫いた秘密には胸が熱くなった。
里村はさることながら、亀千代、澪、安西、曽根など脇を固める登場人物も皆魅力的で読み終わっても藩邸を去り難く後を引く感じ。
心がホッと温かくなる作品でした。
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2023.12.12
穏やかな筆致がさえているという印象が一番。主人公の役職は目の付け所が良いという印象。やはり、主人を持つサラリーマンはストレスたまるよなという印象
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神宮寺藩江戸藩邸を舞台に何でも屋の差配役里村五郎兵衛の誠実で思いやりのある働きを描いている。登場人物も味のある面々で、物語もきな臭さはあるものの淡々と進み最後の章で一気に弾ける。読んでいてハズレのない書き手で、この本も面白かった。