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電気化学というと専門外の人には分かり難いかもしれないが、この本で説明されるのは、要は「電池」である。マンガン電池とか、リチウム電池とか。それに絡めて、改めて電気というものについて学習できる。以下はメモ書きである。
ー 電子の移動の向きを考えてみましょう。電圧は電流を流す駆動力ですが、それは電圧がかかっている2点間の電位差を意味します。そして、電流は電位の高い方から低い方へ流れます。電流の流れる向きと電子の移動の向きは逆なので、電子は電位の低い方から高い方へ移動することになります。このように、電子の移動の向きを決めるのは電位の差です。
ー 電子はマイナスに帯電しているので、電子が集まるとクーロン力によって、お互いに反発します。同じ材質の金属の場合、電位が低い方は、電位が高い方に比べて、電子が少し多くなっています。そもそもマイナスの電子が少し多いので、電位が低くなっているのです。そのため、電位が低い方は、高い方に比べて、クーロン力によって、より電子どうしが反発しています。
ー 電気機器を動かすためには、電源につないで、電気機器内に電流を流す、すなわち、電子を移動させることが必要です。電子が移動できる金属のような材料を、電子伝導体と言います。そして、電流を流すためには、電子伝導体の間に、電位差(電圧)が必要になります。電位の差は、電位の高低差を意味するので、電源とは、同じ材質の2つの金属(電子伝導体)端子に、ポテンシャルエネルギーの異なる状態の電子を作る装置とも言えます。「同じ材質」ということを繰り返してきましたが、電源から出ている金属端子は、ほとんどの場合、同じ材質でできているので、普通はあまり強調されません。
ー 金属の溶解と析出を伴う反応では、電極と電解液の界面を金属の陽イオンが横切ると考えて、その電気化学的な挙動が理解できることがわかりました。しかし、電気化学の反応は、界面を陽イオンが横切る反応ばかりではありません。
ー 亜鉛は、ダニエル電池でも用いたように、イオン化傾向が大きい、つまり酸化しやすく、エネルギーの高い電子を作りやすいのです。さらに資源量も比較的豊富であり、加工もしやすいので、マイナス極にはもってこいです。二酸化マンガンは、安価で資源量も豊富で、電子のエネルギーが低い状態で、還元反応を進ませることができるので、プラス極として用いられています。
ー マンガン乾電池は棒状のプラス極活物質の二酸化マンガンを、マイナス極活物質の金属亜鉛板で覆った構造でしたが、アルカリ乾電池はマイナス極活物質の亜鉛を粉末にして水酸化カリウムと混ぜてペースト状にして、黒鉛と混合したプラス極活物質の二酸化マンガンで覆うという、正反対の構造になっています。集電体がどちらの活物質と接しているかに注意してください。酸化反応は亜鉛の表面で起こるので、亜鉛を粉末にして用いたアルカリ乾電池の方が、2倍以上の大きな電流が取り出せるのです。