紙の本
歴史の視点
2023/05/20 12:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史の事実は何か、それを究明することも重要であるが、それをどのように評価するかもそれにもまして重要である。E.H.カーも彼の著書『歴史とは何か』の中でそう述べている。
そのときに大切なのが視点である。視点によって、ある事実はプラス評価にもマイナス評価にもなる。コロンブスのアメリカ大陸到達は、西洋史の視点では概ねプラス評価だが、アメリカの先住民にとっては、ほとんどマイナス評価となろう。本書は、そのことを思い知らせてくれる一冊である。
投稿元:
レビューを見る
僕らの知ってる世界史が近代西欧型文明を至上としてるのだと痛感し、文字を持たず滅びた新大陸の先住民の歴史に想いを馳せる
いやー面白かった
ジャレドダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」と双璧を成すと思う
投稿元:
レビューを見る
「コロンブスの交換」という言葉に違和感を持った著者。長く中南米の先住民と暮らしを共にしてきた著者からすると、それは先住民側からの視点を全く欠いた、欧米中心の見方であると考えたから。
そこで著者は、具体的なモノに焦点を当てて、このコロンブスの交換という問題を検証することとした。
第一部は、ヨーロッパに与えたものとして、トウモロコシ、トウガラシ、ジャガイモが取り上げられる。トウモロコシやジャガイモはヨーロッパの人口増加に大きく貢献したが、これらは栽培植物として、長い間の中南米先住民の努力の賜物であったことが具体的に示される。
第二部は、先住民にもたらされた災厄として、まずサトウキビ。これは、ヨーロッパでの砂糖需要の急増を受けて、サトウキビ栽培や砂糖生産がこの地域で行われることになったが、必要な労働力不足を解消するために奴隷貿易が行われ、アフリカから非常に多数の者が奴隷として送り込まれた事態を指す。
次に、馬と牛。当時、牛の用途は皮を取ることで、当時皮革は鎧やズボン、ロープなど様々な用途を持つ材料で、ヨーロッパ、アメリカで大きな需要があった。これらの家畜を育てるため土地が占有され、インディアンとの衝突や先住民の土地が奪われていった。
そして、疫病。天然痘やはしか、インフルエンザなどの疫病が抵抗力のない先住民を襲い、このため先住民人口が激減してしまう。ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』でも有名になったとおりである。
ずいぶん昔に習った世界史では、1492年のコロンブスの新大陸発見と習ったような記憶がある。しかし、コロンブスが新大陸に到達したことが、これほどの大きな悲惨を先住民に与えたことに、暗然たる思いである。
投稿元:
レビューを見る
209
「コロンブスが15世紀に持ち帰った中南米原産のトウモロコシや、その後に伝わったジャガイモは、ヨーロッパの人口増加に大きく貢献した。他方、アメリカ大陸へ持ち込まれた疫病は、先住民の急激な人口減少を引き起こす。世界の食卓を豊かにした作物の伝播は、のちに「コロンブスの交換」と呼ばれるが、先住民にとっては略奪や侵略に他ならなかった。南米アンデスをフィールドに農学と人類学を研究する著者が描く、もう一つの世界史。」
目次
第1部 ヨーロッパに与えたもの(トウモロコシ―コロンブスが持ち帰った穀類;トウガラシ―世界各地の食文化をになう;ジャガイモ―ヨーロッパの飢えを救う )
第2部 先住民にもたらされた災厄(サトウキビ―砂糖の生産と奴隷;馬と牛―生活を破壊したヨーロッパの家畜;天然痘―先住民の凄惨な悲劇)
終章 コロンブスの功罪
著者等紹介
山本紀夫[ヤマモトノリオ]
1943年、大阪府生まれ。京都大学大学院博士課程単位取得退学。国立民族学博物館名誉教授。農学のちに人類学を専攻し、農学博士(京都大学)、博士(学術、東京大学)。1968年の学生時代からアンデスを中心に、ヒマラヤ、チベット、エチオピアなどの高地で50年あまりにわたって、環境と人間の関係の人類学的調査・研究に従事
投稿元:
レビューを見る
#2024年に読んだ本 33冊目
#5月に読んだ本 4冊目
主に扱われてるのは
中南米のインディオとコロンブスの話
歴史の本なんだけど
植物学とか農業とか感染症についての
知識がかなりつく内容だすなぁ…