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少し読みにくい表現もあったが、登場人物の心理や人間の悪意、悲劇の描写など、圧倒的な密度に心を奪われっぱなしだった。ただ余りに救いが無く、読んで悲しい気持ちしか残らなかったので星4。
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大江健三郎作品は短編以外では初でした。大江健三郎さんの文章を読んで自信を無くし小説を書くのを諦めた人も多いと言う話を聞きました。
少し回りくどく慣れるのに時間がかかったのですが、慣れてしまうと、こんな事まで文章で表現出来てしまうんだと驚きます。
自然の描写、人間の心の動き、複数の人間の間に流れる空気の変化など。
動物の死骸の描写や、戦時中の貧しい人達の見窄らしさ、惨めさが内面も含めて、とても細やかに描写されており、何だか堪らなくなりました。
始終陰鬱な雰囲気に包まれた話ですがそれだけでは終わらないよい意味での裏切りもかい見えて読後感は予想よりは悪くなかったです。
第二次世界大戦終結直前の山村が舞台との事ですが、どことなく架空の世界のような雰囲気が漂っていることに関してはあとがきを読んで腑に落ちました。
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地獄の十五少年漂流記!?
大江文学の中では読みやすい作品ですが、救いようのない吐き気を催す表現。戦時ものはやっぱりキツかった。
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伊坂幸太郎の好きな小説ということで初の大江健三郎作品。文体が古いことを除いても、ページが進まない話だった。自分の好き嫌いはラスト次第というのを理解した。
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個人的に、大江健三郎の小説はどれもタイトルがめちゃくちゃ素敵だなと思うのだが、「芽むしり 仔撃ち」はその中でも最もカッコいいと思ってい、笑わせるつもりは大江健三郎自身におそらくなかろうと思われど
"彼はいつも南の地方について憧れており、それについて語ることで自分の日常を埋めていたので、僕らは彼を《南》と呼んでいたのだ。"
だとか
"馬跳びにあきた南たちは円く輪になって、それぞれズボンをずり落し、彼らの下腹部を風にあてはじめた。卑猥なくすくす笑いと、やかましい嘲り。彼らのセクスは明かるい陽をあびてのろのろと勃起し、やはりのろのろと萎み、再び勃起した。欲望の荒あらしい生命感も、充足のあとの優しさもないセクスの自律運動は長いあいだみんなの注視のもとにつづいた。そしてそれはおもしろくなかった。"
なんていうセンテンスにあたるとやはり笑ってしまって、そんな箇所ばかりを思い出してしまう。でも、そういうことを思い出したっていいじゃないかね。この徒労だけが実存なんだ……のテーマをいよいよ陰惨に描いたこの小説でも、やはり楽しかった五日間のことを、せめて読者が思い出すのは、時間芸術でない文学の、なんというか許されている領域だと思うから。
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閉鎖的な環境に閉じ込められるが朝鮮人の友人や少女との出会いにより、青春小説のように希望を持てる瞬間もあったがそれらがとても脆いもので簡単に壊れてしまう様が悲しく読み応えがあった。
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ちょっとクレージーな男の子の自立の物語。と言っても、読書会で賛同は得られなかった(^_^;)
凶暴化した社会は主人公の凶暴と呼応している。その中で、純粋なものを失っていくのは、暴力と直接リンクしているわけでなく、暴力の周縁で発生し、主人公を揺さぶる。
現代の10代にもそうしたことがあるのか、私には分からない。
しかし仮にあったとしても、ある小説家としてのその一部にあったと思えば、やり抜ける気がしてくるんじゃないだろうか。
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小説における舞台としては現実から遠い感じはするが、世間から一方的な印象で除外されてしまう少年たちの姿はいつの時代にも通じる。
置かれた状況から否応なしに犯してしまう行動は残酷なのだが、登場する少年たちには仲間意識、心底にある強さや優しさがある。
そしてところどころにみられる詩的な表現に動揺しながら、樹木や土、腐蝕した(何者かの)匂いまでもが漂う錯覚があり、疫病を恐れて無人になった山里の陰鬱な情景の中に引き込まれていく。
リアルな表現なだけに不快な気分になりながらも、差別問題や疫病に対する意識などの重大なテーマがあり、必要な読書ではあった。
大江健三郎さんが「監禁状態」をテーマにして描いた小説であると割り切って考えれば客観的に読み進めることはできた。
だが『変身』や『砂の女』のように閉じ込められた状況から生じる中での人間的な面白さは感じられなく、絶望的な読後感が残るのは、主人公が子どもであるということや、追い込まれた状況から仕方なくであれ、動物を殺してしまうシーンに耐えられない自分がいるからだろう。
大江健三郎さんの小説では『死者の奢り』『飼育』を読んだことはあるが、この機会に何か読もうと思って出会った本小説が私に与えた影響は、詩的な文章表現であり、その感動を大切にしたいと思う。
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舞台は戦時中。「やっかいもの」として扱われる感化院の少年たちは、疎開先の村でも虐げられる。疫病を恐れた村人たちが逃げ出した後の村で、取り残された弱者たちと貧しくも希望のある山村の共同生活を作り上げるが、戻ってきた村人たちにそれは破壊されてしまう。物語は極限状態での人の関わりや集団の関係性の難しさ・醜さを描いているが、今の時代でも変わらないかな。「芽むしり仔撃ち」の意味は最後にわかる。
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疫病などに接した際の人間の暴力性が見事に描かれている。最近のコロナの中の同調圧力でも分ったように人間は閉塞された環境ではこういうことをする生き物なんだなぁと、そういう本質を突きつけられた。
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過去課題本。ストーリーは全くのフィクションだが、日本社会に今も厳然として存在する排他的な村社会の縮図がリアルに描かれていて、これが著者が20代の時に書かれた作品なのに驚く。タイトルの意味は最後まで普通に読めばわかる。
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大江健三郎さんの本は亡くなってから読み、これがまだ4冊目だが、こんな面白いとは思わなかった。難しくて自分には合ってないと思ってたのかもしれない。恥ずかしい。
この作品も、人間の嫌なところ、人間の習性を、独特の文体でこれでもかと、読み手の心に刻み付ける。
大江さんはそんなに人物に感情移入させないので、少年たちが虐げられるシーンも第三者の目で読める。
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ー 土間の焚火は殆ど消えかかろうとし、谷を囲む森の獣の吠え声、鳥の不意の羽ばたき、そして樹皮の寒さにひびわれる音が響いた。僕は眠るために苦しい努力をしながら、腹立たしく絶望的に重苦しい死のイメージに圧倒されていたので、安らかに天使的な弟の寝息が聞えはじめると嫉妬のあまりに弟への優しい感情をすっかり無くしてしまうほどだった。村の内側では見棄てられた者らと埋葬されない死者があるいは眠り、あるいは不眠に苦しみ、村の外側では、悪意にみちた数しれない者らが、これは一様にぐっすり眠っていた。 ー
何となく大江健三郎が読みたい今日この頃。
初期の作品は面白いよね。味わい深い。
反抗的精神というか、客観的にはちっぽけな自由意志の問題とか、服従すべきか自分の価値観を守るべきか、そんな意固地な少年の葛藤が今となっては新鮮。