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本書は、中東政治を専門とし
現在は、東京大学准教授である著者が
現代中東政治について論じた著作です。
主要な新聞、テレビニュースのほか
学術誌や学会での発表、個人的な体験をもとに
近年のの中東・イスラムの主要なトピックスについて
評価・分析を加えます。
取り上げられるのは
イラン、イラクはもちろん
イスラムへの対応にゆれるヨーロッパ諸国
ソマリア、東南アジア、そして中国など
日本のニュースでも取り上げられる話題なので、
特に予備知識がなくても、読みにくさは感じません。
また、わかりにくい国際法や政治学などの用語もほとんど登場せず
具体的なエピソード中心に論じられることが、読みやすさを増します。
欧米における多文化主義・寛容と価値観の闘争
アフマディネジャドの挑発的な言説の真意
欧米とイスラムに対する、日本ならではの戦略
など、どの記述も興味深かったのですが、
著者がモスクを訪れた際に肌で感じた空気を皮切りに、
フィリピンの現政権とイスラム社会の緊張を論じた箇所や
ゲーツ国防長官の『ミネルヴァ・コンソーシア』を取り上げた箇所は
とりわけ印象深く、より深く知りたいと感じました。
書かれた順に従って読むのもよいでしょうが
個人的には、何気なく開いたページをパラパラと読む方が
いっそう長く、深く付き合えるように思います。
幅広いトピックスを論じながらも
統一的な評価・分析を知ることができる本書。
アルジャジーラ等をチェックしている方はもちろん、
国際問題等に関心がある方には、強くおススメしたい著作です☆☆