紙の本
この感情を何と呼ぶのだろう
2015/09/25 23:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくまりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この感情を何と呼ぶのだろう。ひとり受け流すこともできず、かと言って、誰に話すこともできない、胸の中に広がっていくこの感情を。もし、しいて言葉にするとしたら、「もう二度と食べたくないあまいもの」。そんな心象を、井上荒野が丁寧にすくいとった短編10ピース。
例えば、美紗の場合。二年越しで逢瀬を重ねてきた恋人を失おうとしている午後、それまで、夫を残して外出するための単なる口実だった朗読会に、その日はふと、本当に足を運んでしまう。すでに裏切りに気付いている夫に電話を掛けるとき、美紗は、自分とらえて離さない、ある感情に包まれる(「朗読会」)。
「もう二度と食べたくない」はずなのに、もう一度、もう一度、とページを繰ってしまう。静かで、それでいて気がかりな印象を残す一冊。
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以前にも同じようなこと書いたような気がするけど、
この作者の書くものは、「だから、何?」的な終わりが多い。
大きな事件があるわけでもないし、日常的な感じ。
でも、そんなシレ~っとした文章が割と好き。
タイトルに遣われている表題作はないが、
短編集を読み終わると納得できる。
恋愛を”あまいもの”と表現するところが女っぽい。
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思ったより感情移入できず。
しいて言えば…「犬」が、一番感情移入したかな。
相手にも周りにも気づかれていない自分の心の中だけの揺らぎ。こういうのってあると思う。
時間が経ち、いつかこの想いを「あー」なんて懐かしんだり物思いにふけたりするんだろうな。
何も変わらないけれど、自分の中だけの小さな旅…んーちと違うか(^_^;)表現力が乏しいから上手く表現できないのが悔しい。
こういう時間って誰しもありうる時間だよね。
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日常の延長にある恋愛をテーマにした掌編小説集。日本語が明瞭で、ちょっと硬い印象だが読みやすかった。
幽霊
手紙
奥さん
自伝
犬
金
朗読会
オークション
裸婦
古本
収録
解説/吉田伸子
カバーデザイン/坂川事務所、カバーイラスト/宮原葉月
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恋愛感情の終焉をテーマにした短編集。
どの話も何てことのない終わりかたで、それで?って感想を抱く人も少なくないはず。それでも、個人的には、この話のあの人の描写に共感したり、ドキッとしてしまった。
特に裸婦って話のラストと、奥さんに登場するカレー屋さんの表現は印象に残った。こんなのがうまい作家さんなんだよね。
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微妙、いや絶妙なんだ。
一見なんでもないようでいて心が動いている、自身も気がつかない程の、わずかな心の動き。感じているようだけど無かった事にしちゃってる、あの感情をなんとなしに思い出した。
繊細でもドライ、そんな不思議な雰囲気の物語達に案外スルスルと吸い込まれてしまった。
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本の雑誌のランキングから、かな。10短編集なんだけど、正直なところ、一つも印象に残っておりません。やっぱり短編集は苦手、ってことかな。
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*自宅で料理教室を開いている亜希子のもとに、ある日、不動産屋が訪ねてきた。近所の家にまつわる悪い噂について知りたいという。亜希子は結婚していた頃、かつてそこに建っていた古い家の男と、いちどだけ関係を持ったことを思い出していた(「幽霊」より)。男と女の関係は静かにかたちを変えていく。人を愛することの切なさとその愛情の儚さを描いた傑作小説集*
何年かぶりの再読。
ああ、やっとこの世界観がわかる歳になったなあ・・・としみじみ。
恋の終焉、もしくは恋とも呼べない何かの終わり。
捉えどころのない、諦めと安堵を織り交ぜた名のない感情。
ひと歳重ねた大人にこそ響く物語なのかもしれません。
とにかく、まとめて読むともったいない。一つ一つ丁寧に、大人の情緒を味わいながらゆっくり読むのがお勧め。