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アレサ・フランクリンの「リスペクト」を聴きながら読み終わった。
2014年、ロンドンで起こった公営住宅占拠事件。ホームレスシェルターを追い出された若いシングルマザーたちが空き家のままになっていた公営住宅を占拠、社会問題となったこの事件をもとにブレイディみかこが「人間の尊厳」を描き出す。
誰もが安心して住む家が欲しい。ただそれだけを求めているのにお上はもっと家賃の安い場所に行け、という。
日本ではそのことに違和感がない。都会は家賃が高いから、もっと家賃の安い不便なところ、あるいは田舎の方に行って住めばいい、と思ってしまう。けれどそれが「当たり前ではない」といことをこの小説を読んで初めて知った気がする。
彼女たちが公営住宅を占拠し始めたとき、元から住んでいる人たちから反感を買うのではないか、という懸念は、働かずに生活保護を受ける人たちに対しての、安い賃金で底辺の暮らしをしている人たちからの妬みと根は同じだ。
けれど彼女たちが公営住宅を占拠したあとたくさんの人たちが集まってきた。それぞれに「持っているもの」を「あげる」ために。
差し入れであったり、技術であったり。食べ物やおもちゃを持ち寄ったり、住めないほど痛んでいるトイレをあっというまに直してくれたり。
何も知らなかった若いママたちの直接行動が直接民主主義の芽を生み出した、そして現在のトップダウンの政治システムがいかに機能していないかということまで暴き出したいったのだ。彼女たちの純粋な気持ちが多くの人や、メディアを動かしていった。そして占拠に対する裁判を迎える。
生活保護を受けることを恥ずかしいと思うこと、その恥によって自分を壊していくこと。そこには人間の尊厳を奪われた背中があるだけなのだ。
彼女たちが手に入れようとしたこと、いや、取り戻そうとしたこと、それは自分への本の少しのRESPECT。
人は誰もが安全で温かいところで眠り安心して子どもを育てる、その当然の権利。
この小説を読むと心の奥底から何かがわきだしてくる。あきらめていた何か、見て見ぬふりしていた何か。そんな何かを取り戻すために、やるかやらないか、ではなく、やるしかないんだ、という熱い気持ち。
ブレイディみかこが日本に住む私たちにぶち投げたこの一冊。確かに受け取った。
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みかこさんの本は相変わらず自分が全く知らなかった世界の事を教えてくれる。
読んで普段なら絶対考えない事を沢山考えて、読む前とちょっと世界が違く見えてくる。
まさに実のある読書と言う感じ。
ロンドンで起こった事だけど、これも日本の東京とか都市部で起きてないとは言えないだろうし、実際自分が知らないだけで元から住んでた人を追い出して高級マンションばかりを建てると言う事はあるのだろう。
高所得者だけしか住めない都市は街として成り立っていくのか…そこのバランスはとても難しいと思った。
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英国で実際に起きた公営住宅地を巡るホームレスの去就騒動を題材に、住まいを求めるシンママとロンドン郊外への移住を求める行政側の対立を描く。
こうした解放区の問題を論じる際に、アナキストたちは空間の現出それ自体に拘り、その持続にさほど興味を示さないのが常であるが、そうした不真面目さが本作でもやはり解消されずに現れている。
作者もやや自覚的なように、公営住宅地占拠の成果は”他の真面目に働く労働者の血税にただ乗りした”住宅の局所的無償供与であり、こうした活動を敷衍した際に持続的でないのは明らかである。
結局活動を広く有意味なものにするには体制側に回りベターなシステム設計を段階的に進めるしかないのであるが、アナキストたちはパフォーマンスにばかり拘泥して何も生み出さない。
こうした活動家の矛盾に関して新たな示唆を与えてくれる描写は残念ながら本作には見当たらなかった。
あと、これって小説である必要ある?
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admiration felt or shown for someone or something that you believe has good ideas or qualities.
politeness, honour, and care shown towards someone or something that is considered important.
A feeling that something is right or important and you should not attempt to change it or harm it.
the feeling you show when you accept that different customs or cultures are different from your own and behave towards them in a way that would not cause offence.
エンパシーからリスペクトへ。
あなたはあなたでぼくはぼくでバランスが取れたら
それは、ナイスだと思う。予想より良かった。
何かを守るとき、想うとき、人は強くなる。
移動中で、読み終わり。
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イギリス ロンドンで暮らすシングルマザーやホームレスの女性たちが住んでいたホステルの退去を命じられるところから始まる。
最初は役所やら政治的な話だなぁとなかなか読み進められなかったのに、気がつけば夢中になっていた。
自分は何かに対して仕方ないと諦めていないか?と何度も思いながら読んだ。自分の周りにはない状況ではあるものの、知らない、関係ないという考えではいけないなとも思った。
日本の大手新聞社のロンドン事務所に勤める日本人の史奈子は本当に日本人の感覚を持っていてすごく感情移入できた。史奈子の最後の選択が格好良い。
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支配されるのは実は楽。何も考えなくっていいから。
仕事を始めてからの2年間、私はずっと支配されて生きてるなーと。それが楽だし、それで生きていけてしまうから。
それじゃだめだー自分で自分の価値を下げている!!!
と思わせてくれる本当だった
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英国に住んでいる著者ならではの視点で英国の低所得者への緊縮財政の影響を描いた小説。ロンドンのホームレス用の公共施設で生きているシングルマザーが立ち上げた運動を軸に話しが進んでいき、「自分たちを可哀想な人」としてアピールしたいわけじゃないのにと運動が広くし周知される中で悩むシングルマザーのジェイドと女性ながら日本の新聞社のロンドン支局で働き仕事にも食べ物にも困ったことがない史奈子の対比も面白い。
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実話を元にしたシングルマザーたちの連携と闘い。公的権力に声を上げて大きなうねり運動に発展していく。まず不当なことには声を上げることだと教えられた。
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実際にイギリスで起きた運動をもとに
作られたお話。
ロンドンの社会状況などがよくわかる。
政府補助金の削減により、
住宅の退去を求められたシングルマザー達。
ホームレスになってしまうのか?
抗議行動を起こす。
都市浄化の為に貧しい人々を排除しようとする行政。
デモ活動。運動を起こすとことで、
注目が集まる。
そしてその活動がイギリスの深刻な問題として
大きな広がりになっていく。
弱い立場にある人に勇気を与えていく。
「リスペクトのないところに尊厳はない。尊厳がないところで人は生きられない。」
自分達の正当な権利として、
勇気を持って活動できる人に、それだけでリスペクトを感じる。
日本の新聞記者の史奈子も、インタビューを通して、彼女たちに共感していく。
力強さのある話だった。
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アナーキズムとはトイレの修理、がしっくり来た。
社会で生活していると、いつの間にかシステムのなかで生きていて、自分で壊れたトイレを修理したり、修理できる人を探してくることができなくなってしまっている。社会システムの力を借りずに、自力でなんとかするのがアナーキズム。
どんな人間にも必要なのは尊厳。パンだけでなく、薔薇=尊厳を。話を聞いてほしい、尊厳をもって扱われたい。
運動って会社で働くよりずっとタフ。
仲間割れしたり、うまくいかないと生活できなかったり。
日本だと貧乏なのは自分のせい、貧乏な人が不便な田舎で暮らすのは当たり前、という認識だと思う。それを、お金が無いけどロンドンに住む権利がある、田舎に行ってもいちから生活を立て直せない、と声をあげるのは日本人にはできないだろう。
売却益目的で住める公営住宅に住ませないのは確かにひどい。家は尊厳、安心。
やばい人になるのは案外爽快。
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「あたしたち、多かれ少なかれ、みんな旅の途中で西の魔女に何かを奪われちゃってたんだと思う。自信とか、やる気とか、人を信じる力とか。」
というわけで、1,000冊目はこいつにしておけば綺麗だったかなのひまわりめろんでございます
『リスペクト』です
リスペクトってのは日本語では尊重するとか尊敬するって意味になるみたいですね
重んじる、敬うってことですよね
人は全て生まれながらにリスペクトされるべき存在なのです!
え?本当?
もちろん本当です
生きるってことは尊いんですよ!
だけど時に人は様々な理由で、ある特定の人々に向けて『リスペクト』することを忘れてしまうことがある
『リスペクト』に値しない存在と無意識に切り捨ててしまうことがある
この物語はそんな切り捨てられようとしている人たちが闘う物語である
闘う相手は『リスペクト』を忘れてしまった人々ではない
そんな人々を生み出し続ける社会という名の西の魔女だ!
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住んでいたホステルからの退去命令が出て、行政相手に抗議行動を起こすロンドンのシングルマザーとその仲間達が描かれ、その顛末もおもしろいけど、取材する日本人ジャーナリストが自我に目覚めていく過程もよかったです。
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自分たちでできることを、できないって思い込めば思い込むほど、支配する者たちの力は強大になる。登場人物のこのセリフを読んだときに、雷に打たれたような衝撃が走った。自分の現状を変えたいのならば、自ら動かなければと強く思った。
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やるか?やるべきか?ではなくやらなければいけない時があると立ち上がった、勇気あるシングルマザー
大きなものに流されて人間の尊厳さえも奪われそうになった時、おそらく自分は押し潰されるであろう。
相手をリスペクトする事ももちろん大事だし、あるがままの自分を尊重する事も大事だと思えた作品でした。
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ブレイディみかこさんは、私のなかであくまでも"エッセイスト"や"コラムニスト"のイメージが強いので、本作が小説として好きかと言われると(生意気ながら)言葉にすこし詰まってしまう。
だけど、イギリスでの社会運動について学びたいと思う私にとっては、どんぴしゃすぎるし、多くのことを考えさせられた。
多くの日本人が手にとって、自分たちの"RESPECT"のために行動できる人が増えたら良いな。
P.150
「そう言えばさっき、トイレの修繕講座がアナキーだって言ったじゃない。どこがアナキーなの。さっぱりわからないんだけど」
「あれこそアナキズムじゃん」
幸太はそう答えると、しばらく黙ってから史奈子に聞いてきた。
「史奈子は、アナキズムって何だと思ってる?」
「革命を起こして政府とか倒しちゃうんでしょ。そんで無政府状態のカオスな状況を作って、秩序も何もかも崩壊した瓦礫の上にゲラゲラ笑いながら立ってる。そういうイメージ」
史奈子がそう答えると、幸太は心から意外そうな顔で言った。
「史奈子って、ひょっとして、ずっとそう思ってた?」
「うん、いまもそう思ってる。だって、既成概念を打ち壊すんでしょ。暴れてかわす力がだいじ、っていつも言ってたじゃん。だったらトイレであれ何であれ、修繕しちゃったらダメなんじゃない?それは壊すことの反対だから」
幸太は急に真面目な顔になり、史奈子の目を見て言った。
「反対じゃないよ。むしろ繋がっているというか、表裏一体。人間に何かを強制するものは積極的に壊していくべきだよ。人間の生は自分自身のものであり、他の何者にも支配されるべきではないから。だけど、人間って、実は支配されたほうが楽だと思う部分があって、そうすればもう自分で何も考えなくて済むし、安心だからと思って自分の生を誰かに丸投げにしてしまうんだ。たとえば、国家とか会社とかシステムとかにね。自分から進んで奴隷になりたがる。で、そのうち「より優れた奴隷になりたい」って競争を始めたりして」(略)
「そんなことが当たり前になると、そのうちだれかに支配されないと生きていけないと思うようになってしまう。自分たちの問題を自分たちで解決することなんてできないって思うからだよ。だから解決してくれるお偉いさんにロビーイングをする、とか、解決できる政策を求めてデモをする、とかいうふうになってしまう」(略)
「親子で路頭に迷うっていう切羽詰まった状況のときに、そんなに時間がかかって融通が利かないものにお願いしてもしょうがないだろう。アナキズムはお願いしない。そもそもお上にお願いするってことは、われわれを支配してくださいって言ってることと同じだからね。アナキズムはそうじゃない。自分たちで始める。自分たちの問題を自分たちで解決するんだ。まさにトイレの故障みたいなもんだよ。誰かに来てもらって修理してもらわないとどうしようもないと思い込んでいるから、オロオロして高い修理代とか払って誰かが来るのをじっと待つんだろ。自分自身では解決できないと信じているからだよ」
P.262
「…私、ずっと日本のシステムの中で育って、働いて、こっちに来てからも、それは何も変わらなかったから、どこに行こうが世の中は同じと思ってた。」(略)
「理不尽に思うことや不平等を感じることにムカついたり、これは間違っているんじゃないかと思うことがあっても、しょうがないと思って流してきた。闘ったり、抵抗するなんて愚かだし、そんな面倒なことをしたって、何も変わらないと思ってた」
「無駄だって思うことが賢い大人のすることだって信じてた。だけど、賢く生きることで死んでしまう部分が自分の中にあって、おかしいことをおかしいって言いたい衝動とか、そういうことを抑えつけていると、ここに生きているのは自分なんだけど自分じゃないみたいな変なことになって、自分が自分の人生の当事者じゃなくなってくる」
パンと薔薇。
今の日本にもパンだけ食わしておけばいいっていう考えが蔓延してるように思える。