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コロナを避けた?
2023/10/10 11:33
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
パラレルな世界を設定して、さらに時間をずらすことで、
書きたい内容の世界にはコロナが無いことにしたのかな。
コロナ禍の中じゃ、秒にの治療もままならなかったかもしれないしね。
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桜庭さんらしい、パラレルワールドのお話だけど、主人公の波間が乳がんサバイバーで、先日読んだ西加奈子さんの著作のこともあって、まさか桜庭さんも?と心配になってしまった。
また、もう一方の世界では新型コロナが蔓延するので「東京ディストピア日記」を思い出して、どっちの世界も辛くて、なかなか読み進めるのに気が重かった。
桜庭さんの頭の中は、私なんかより余程難しい事を考えられてるので、よくわからないままに、感覚だけで読み進めちゃってる部分も多々あるんだけど、だからこそ好きだったりする。
弱そうに見えたり、逆に幸せそうに見えたりすることで、悪意の標的にされちゃう世の中なんだよな…怖いなぁ。
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サバイバーである波間と、
パラレルワールドで生きる中川くん。
イベントの中止、ステイホーム、患者でパンクする病院。波間の世界からみる、コロナ禍を迎えた中川くんの世界はまるでファンタジーだった。
そして、彼女が言わなかった、言えなかった、
言わずにおいた、サバイバーとして感じたこと。
例えば、つらいニュースを知ったときの、
人の目に触れる反応のその奥に、
仄暗い安心や期待が潜んでいること。
そんなことありえないなんて、とても言えない。
みんな、それぞれが抱える事情をできるかぎり隠して、自分の生きる世界にむりやり嵌め込んで、なんとか日々を送っている。
見えないから、どんな言葉に傷ついて、どんなことを諦めているのか、他人にはわからない。
世界はこんなにもあやうい。
彼女が言わなかった言葉が、深く刺さった。
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大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。
この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。
物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せられる言葉だ。
この言葉でふと性犯罪に遭い果敢に裁判に挑んでいる女性に対し、批判的な見方をする人が多くいることを思い出した。
「正しい被害者」でないと、かわいそうではないのか?
そもそも「かわいそう」と当事者達は思われたいのか?
被害者は強くあってはいけないのか、加害者に挑んではいけないのか?
「正しい被害者であれ」とすること自体、セカンドレイプなのだと思う。
パラレルワールドの中川くんがこの物語のキーマンだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。
中川くんも漂う波間と出会った人の1人に過ぎないのかも。
この物語においてのパラレルワールドの中川くんについては、どのような人物だったのかもう少し考えたい。
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パラレルワールド側とのやりとりがワクワクして面白かった反面、いろいろ気になって仕方がない。もうちょっと、あちら側との共通点や相違点を掘り下げて教えて欲しかったな〜!
こっちの中川くんとも仲良くなったらどうなるんだろ?でも、ならないところが、良いんだろうな〜
片胸がなくなってから、無になり楽になったという気持ち。。そうか、そういう人もいるのか。
30代から40代にかけての闘病生活、本当に辛いだろうと思う。
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私が生きている今が、この世界の全てではないかもしれない。
もしかすると別の世界線で、別の人生を生きているかもしれない。
そう思うと、私や私のまわりにいるすべての人のその人生っていったい何なんだろう、って考えてしまう。
別の世界線を生きている友だちと、どこかで交わることができたら。
そして、ここにある私の生きている今と全く違う時間がどこかで流れていることを教え合うことができたら。
そちらの私が今、笑っていなくても、こちらにいるあなたが今、泣いていても、別のどこかで私が、あなたが、笑っている世界線があるのなら、それでいい、ってそう思えたりする。
命に係わる病気に冒され、命に係わる事件に遭遇し、それでも生きている私のその、いや、この人生を支えてくれる人がそばにいてくれる、その幸せがあざやかに描き出される。
病気になると、誰も彼もが心配してくれる。その病気が重ければ重いほど治療が苦しければ苦しいほど、関係のない他人が相対的に幸せになっていくものなのかも。
治ってしまえば、心配や優しさはどこかに消えてしまう。そういう人の心の醜さを日々受け取り続ける人がいるのだ。「不幸な人のことを心配してあげている私の幸せ」、そんな幸せがこの世界には蔓延しているのだろう。
余命宣告されながら治療に耐え寛解をめざす主人公を経済的に支える兄と、精神的に支える友人と、そして時と場所を超えてつながる元同級生の、その三人の存在の尊さよ。
作家が、「今」を描く時、どうしても避けられない「コロナ」という存在。
こういう形で「コロナ」を描くことができるのか、と目からうろこが落ちた思い。
二つの平行世界が一瞬交わったあの瞬間に、波間と中川君が出会えてよかった、と、本当に心から思う。
いま、笑っていない自分がいたら、いま、苦しんでいる自分がいたら、この小説を読んで欲しいと思う。
架空の自分に逃げるのではなく、今この世界で生きている自分の全てを受け入れる、そのためのベースに、この小説はきっとなる、そう思う。
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見覚えのある語句と見覚えのない世界が交わって描写されて、みっつめのパラレルワールドにいるようだった。いやどちらかと言うと波間のいる世界ではなく、向こうの中川くんの世界が読んでいる自分の世界の描写に近い訳だけど……。
波間は年代も近くて、けれどやっぱり経験が違うこともあって、最初はそれがサバイバーだから、病気を経験したひとだからと思ってしまっていたけど、読み終えて改めて深呼吸をしてから考えてみると、べつにそうではないことを、わたしも良い年だしそろそろ考えなければと思った。ひとりひとり言わないことがあって生きていく世界があるのかもしれないなあ、と思った。
おしゃべり好きでひとと過ごすのが好きなわたしとしては「パラレルワールド」に過ごす誰かと実際には会えないことだけじゃなく、想いを共有せずにぐっと心の中に置いて言葉にしないこと自体を寂しく思ってしまったけど、波間が理解したようにそれはもし言葉にしてたら誰かを傷つけたり影響を与えたりするかもしれないんだもんな。沈黙が正しい、というわけではないけれど、わたしは波間とは違う、だからどんな言葉を吐いても構わないんだ、ということには絶対にならないんだなと思った。
あなたもそうでしょ、わたしもこれが耐えられなくって、もしくはこれが欲しくって、と、立ち止まることない思考で自分の快や不快をぶちまけるということは随分と強い凶器にもなる。終盤以降は前向きな波間の暮らしを見守ることが清々しいとともにすこし切なさと寂しさも漂って、最初の病気の部分にはBGMが邪魔に聞こえてしまって止めたのに、中盤以降はカフェで流れるようなジャズがとてもしっくりきた。
これらを、自分の心の中で捏ね回すだけではなく、社会の出来事を受け止めながら咀嚼して、怒ったり落ち込んだりする描写をする桜庭一樹さんを、改めて尊敬するしその文章をずっと読んでいたいと思った。
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桜庭一樹さんの作品との出会いは中学生の夏休みに「荒野」を読んで読書感想文を書こうとしたのがきっかけでした。
それからなんやかんや今も読見続けているわけです。彼女の作品は私に合うみたいです。★★★★★★
今作もとても興味深くて楽しむことができました。
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普段の生活で、私も感じていたような
モヤモヤや言葉にできない違和感を見つめ、
自分なりに言葉にして考えていく主人公に
グッと惹かれました。
人として好き、というよりは
まるで自分の分身を見ているような感覚で
共鳴したり応援したくなるような。
私と主人公は全然違うのに
なんだか重なっても見えてきて
一緒に波間で揺られているような感覚でした。
あまりにも色んなトピックスが組み込まれていて
きっと1度読んだだけでは取りこぼしてたり、
読み込みが足りない部分が沢山あるから
何度も読み返したい作品となりました。
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波間の独白が、なぜか深く心に重しとなって入り込んできた。同じ病気になったわけでもなし、彼女のような思想?に近いわけでもないのに、何かが蠢いていて、苦しかったが、その意味は未だにわからない。
けれど、パラレルワールドを人生と考えると、少し楽に生きれるようになるのかもと一筋の灯りも。
折しも「シュタインズゲート」が出てくる、懐かしい。
もういちど、視点を変えて観てみたい。
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主人公の小林波間32歳は、胸に悪性腫瘍ができたため、摘出手術を前にして腫瘍を小さくする辛い点滴治療を受けていた。
通院の日に波間の目の前で、通り魔が幸せそうな若い女性を刺す事件に直面する。
その混乱した現場で、大学時代の同級生だった中川と偶然に出逢い、LINEのIDを交換して後日逢おうと約して別れるが、何故かその後逢うことができない。
あの出逢いは何だったのか不思議なのだが、ただLINEでのやり取りは可能だった。
そのうちに波間が住む東京と、中川が住んでいる東京とは、どうやら異なる世界らしいことを知る。
異なる東京の同じ場所からビデオ通話を繋げ、映像を観ながら会話を続けていた。
中川との偶然な出逢いから始まったお付き合いは、波間にとって心と身体が癒やされる時だった。
波間の困難な病気などは些細な出来事で、世の中は淡々と日常が進み、個人と社会との繋がりは曖昧で見え難い。
そんな時、世界中に恐怖を巻き起こす感染症が、中川が住む東京でも一挙に流行し、医療崩壊が起こっている事実を知らされる。
そのために2020年開催のオリンピックも、延期が検討されているとのことだ。
その後には大国が小国へ理不尽にも侵攻し、激しい戦いが引き起こされた。
それとは対照的に、波間の住む東京は、何の変化もなく淡々とした日常が続いている。
そして徐々に中川とのLINEも通信が滞るようになり、いっ時は密接にお付き合いをしていた彼の存在も希薄になって行く。
この物語は、パラレルワールドという設定の基、人の心の危うさ、儚さ、意思とは異なる心の動き、そして複雑さがテーマとなっている。
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いろんなパラレルワールドが描かれていた。
コロナになる前と後、コロナのない世界。
病気になる前と後、病気のない自分。
通り魔に刺される前と後。
ラジオで人気の恋恋が選ぶ仕事。
あ~だったらどうだろう。今の自分はどうだろう。
病気闘病中の辛さ、手術して経過観察、胸が片方無くなったけど生きてる。
経験を積んで変わる気持ち。
仕事をセーブして、前の会社に戻れない。
住む場所も安定しない。
それでも自分は自分。
迷いながら、正解を見つけていく主人公の心情がかなり描かれていたと思う。
どう生きるのが正解か、何を選択するのが正解か。
病気になって、健常者とは違って生きにくい。
だけど、生きていく葛藤。
主人公と同じで、自分がこうしたい、これでいいっていう生き方を見つけていきたいなと思った。
難しい、ややこしい内容もあったけど、主人公と重なる部分もあって、この世界線で自分のやりたい生き方をしていきたいなと思った。
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初読。図書館。コロナのある世界とない世界がパラレルに存在し、微妙につながったりつながらなかったり。乳がんのサバイバーとしての生きづらさが細やかに描かれ、他者の苦悩を真に理解することの難しさを感じた。確実にこの世界のどこかにあるはずなのに、見逃していたり知ろうとしなかった新しい世界を発見させてもらった感じ。
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大きな地震があった日、御茶ノ水の路地で起きた通り魔事件の現場に居合わせ、偶然再会した大学の同級生は、自分とは別の時空の東京を生きていた。
乳がんを発症し、人生が変わった30代の女性の、治療の苦しさや周りの人たちとの関わり方、病気友達とのやり取りが淡々と描かれる中、唯一異質なパラレルワールドの友人どの時間が、希望の光のようで胸がぎゅっとなる。どんな境遇のどんな状態の人にも固有の世界があって、他者と交わったり孤立したりしながら生きているのだと思うと、世界の見え方がほんの少し変わるような気がする。
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パラレルワールドのお話。
私たちが経験したコロナ禍の中川くんの世界と、主人公波間の通常の世界が交錯する。
どのように終わるのかと続きが気になって、このパラレルワールドに答えがあるのかとぐんぐん読んだけど、答えはなく、私的にはすごい中途半端に終わってしまった気がする。
コロナ禍こーだったなと、ちょっと懐かしく思いつつも後半ちょっとキツかった。
主人公が癌に侵されており、その独白も考えさせられてちょっときつかった。