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紙の本
道長を押し上げたものとは
2024/01/28 15:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
大河ドラマに先だった文庫書下ろしだが、いつもながら作者の構成、視点の妙に感心し面白く読ませてもらった。
今作では「大鏡」などのエピソードを繋ぐものとして、道長の計画性とその実現力、それを周りの人間たちはどう見たか、という新たな視点を加えたことが特徴だろう。
彼を引き立ててくれた恩人たち、かつて藤原氏の主流だった小野宮流の公任、実資たち、現在のライバルたる道隆、道兼家に属する人々などへの幅広い目配りを怠らない計画性は大したものだが、それでもこの時代の政治に常に付きまとう不確実性に対処するにはどうしても運と超自然の力に頼らざるを得ない。そこの対策として彼が頼ったのが、兼家の隠し玉の「打臥の巫女」だったというのが、やはり偶然の要素が大きい摂関政治の限界かなとも思う。
圧巻なのは、ほぼ勝負のついた感のある公任に自分の傘下に入ることを迫るシーンだ。表面和やかな体を装いながら、相手の影を踏みにじる酷薄さ。これぞ王朝の戦だと戦慄させられた。以後公任は道長の息子を婿に迎えるなど、ひたすら道長の意を迎えることに汲々とする道長派閥の一員と成り下がってしまう。
そして、小野宮流のもう一人の重鎮実資はと見ると、なかなか味のある動きをしている。亡き一条帝の無念を痛いほど知る彰子皇太后から託された、道長への乾坤一擲となるカードをどう使うのか。政治人としての見識と、今後の政界での自家の立ち位置とを天秤にかけた実資は、あえてこのカードを伏せたまま、道長の例の和歌を自らの日記に遺すという高度で長期的な手を打った。
彼のこの選択があったればこそ、千年後の我々は、絶頂期にある道長の権勢を象徴する歌が十六夜に詠まれたことに、早くも欠けゆく摂関政治の行く末をみて感慨を深くするのではないだろうか。
もし実資の娘「かぐや姫」が生きながらえて入内していればどうなっただろう。おそらく「この世をば」の歌は残されることはなかったのではないか。
紙の本
徹底的に
2023/09/25 13:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナムナム - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人は並び立つ者には妬みを抱くも、圧倒する者には頭を垂れる」P265、とあるように、道長はライバルを懐柔することなく徹底的に優位に立つことを信条として、王者として後世に名を残した。
巻頭の、兼家道長を中心に据えた略系図を参照しながら本文を読むことになるが、天皇の即位順が示されているとありがたかったと思う。
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