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最終巻。やっぱり怒濤の幕末だ。耳鳴りが残るような読後だった。機械みたいな蔵六が中心に置かれて、多くの人と場所と事柄が現れて来て、それをいちいち司馬先生は説明してくれる。はいはい、と拝聴しつつ話は進む。合間に人間蔵六とイネの物語も入る。これにほっとする感がある。読み終わって、さて、自分は自分の才分をわかって生きて行けるものだろうかと思った。それに人が人に出会うことの機微。運命ということかなあ。人生のもつそういういろんなものについて思いをめぐらせさせてくれた本だった。
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う~ん、やっぱり楽しめなかった本。幕末の中で、大村益次郎の演じた役割は大きいのかも知れないけれど、主人公にはなれない。司馬遼太郎さんも相当悩んだみたいだけど、人として捉えどころがない、よくわからないというのが正直な感想。
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幕末、旗本八万旗はまったく機能せず。徳川家は倒幕の勢力と戦うために、各大名に指令をだす。だが、大名にしても幕府を擁護する理由がない。多くの大名は鉢植え大名といい、地域と密な関係は築いていないのだ。当然、財政的にも苦しい。当時は圧倒的に薩長の力が抜きん出ていた理由がある。階級社会は開国により大きく崩れ去ろうとしている。そんな時代の到来を蘭学を通じて蔵六は知る。明治維新という革命後、その先の国づくりまで見渡すことが出来た人物の一生には凄みがある。維新前夜の知識を深めるためには『世に棲む日日』4巻は当然読むべきだと納得する。
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本日読了。名前しか知らなかった大村益次郎ですが、司馬さんの手にかかるとこんな面白い人になるんだ!
百姓医者の出身で、オランダ医学を学ぶためにオランダ語を学び、雇われ翻訳者として兵書類を訳しているうちにそちらの知識が付いて、たまたまその才能も天才的にあったために、なんと革命軍の司令官として明治維新を完成させちゃった人です。
すぐ頭に血が上って剣を抜いたり、または思想や理想を持って革命を推し進める他の維新志士たちとは全く異なるタイプで、無私で超合理的で冷静で不器用な人。
自分の意思や理想で維新に身を投じたわけではなくて、たまたまその才能を木戸孝允に見出されて担ぎ上げられたけれど、相当偉くなってからも、たまたま郷里に帰った時に村医者として求められれば、夜中に村のおばあちゃんのために手間のかかる薬を作ってやったりするような人。
でもあまりにも無愛想で空気読めなくて、すれ違った村人から「お暑うございます」と挨拶されても、仏頂面で「夏は暑いものです」とか答えちゃうものだから、嫌な人だと誤解されやすいのですが、司馬さんにかかると愛すべき人になっちゃう。実際彼を嫌いだった人も多かったようで、殺される原因にもなってしまったくらいです。
シーボルトの娘、イネも出てきます…いい味出しちゃってます。
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村田蔵六という長州出身の百姓身分の医師が蘭学を学び蘭方医になるが、医師としてはいまいちで、蘭語が読めるので宇和島藩や幕府から軍書の翻訳家、教授として重宝されていた。そこを桂小五郎が長州に引き抜いて最初は冷遇されるものの軍師として頭角を表す。幕末の長州と幕府の戦で村田蔵六が軍師になってから、ことごとく幕府に勝ってしまう。この本を読むまでは全くこの人物を知らなかったが、倒幕にかかせない人物だったらしい。司馬遼太郎の本の主人公は徹底した合理主義者が多い。でも武家社会では異端児に相当し理解されず誤解されやすい(現代も?)。この人物もその典型で、薩摩藩の高官から恨みを買いゴロツキに切り込まれてしまい、その傷が原因で死を遂げる。幕末というと志士ばかりというイメージだったが、以外に蘭学を学んだ者の活躍が多いといのは知らなかった。。
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革命の仕上げ人、大村益次郎の物語、最終巻。
鳥羽・伏見の戦いから、江戸彰義隊を討ち、北越と函館戦争は詳細なく、その死より8年後の西南戦争に備えて(なんたる先見の明)、刺客から受けた傷で亡くなるまで。
勝海舟と西郷隆盛による江戸無血開城前後の、おそらく勝の計らいで旧幕軍が江戸から去ったこと、彰義隊との戦い、知らなかったことばかりで、ほお〜と。
志士や思想、イデオロギーにばかり目がいっていたけれど、こうした現実的な知性と行動が積み上げられて、危うい革命が成っていったのだなと感心。
最期のとき、病院にて穏やかそうに描かれているのが心和んだ。
けれど、結局大村益次郎がどんな人なのかわかり兼ねた。
実に謎な人だ。
姉妹作品ともいえるらしい「世に棲む日日」をそのうち読もう。
*****メモメモ*****
・長州藩の経済財政の強固さ
殖産興業、北前船貿易、干拓事業等で早くから財政を安定させていた。
・江戸を火の海にしないよう、彰義隊討伐計画の際、蔵六は江戸大火の歴史を調べ、火の広がり方を研究し尽くし、時期を梅雨時に選んで行ったこと。蔵六の戦略の緻密さ、周到さ。
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(2016.05.01読了)(2003.03.18購入)(1999.07.15・69刷)
幕府は長州に敗れ、徳川慶喜は、大政奉還を受け入れ、鳥羽・伏見の戦いへと進んでゆく。
大村益次郎の出番は、上野寛永寺に立てこもった彰義隊の掃討であった、
戊辰戦争については、江戸で後方支援を受け持った。各所からの要求に対しては、自分で計算して根拠を示し、大村さんがこれぐらいあれば十分という分だけ渡した。
西郷さんが、応援に行くといったことに対しては、つく頃には戦は終わっています、と言ったら、その通りだったとか。
江戸での戦乱を避けるために勝海舟は、新選組を甲州に追いやり、榎本海軍を江戸湾から北へのがれさせたとか。
司馬さんは、村田蔵六を主人公に、よくも三巻にもわたる本を書いたものだと感心してしまいました。勝海舟や桂小五郎についての本は、書かなかったですね。(そうかどうかは司馬さんの本を全部読んだわけではないので自信ないけど)
【見出し】
豆腐
京の風雲
京都占領戦
京と江戸
彰義隊
江戸城
攻撃
あとがき
解説 赤松大麓
●高杉と西郷(50頁)
高杉は西郷を嫌い、時にはこれを奸物視し、さらに驚くべきことには西郷と何度も会う機会がありながら常に避けわざと無視し、ついに生涯会わなかった。
●幕末の長州(51頁)
一言で幕末の長州集団を言えば、小粒の血気者どもが無数に表れ、一つのイデオロギーに動かされて藩の権柄をとり、多分に無統制に騒ぎまわったという印象が濃い。
●造語(162頁)
長州藩は薩摩藩とは違い、言語感覚において優れていたのか、行政上の言葉や社会機構上の言葉で多くの造語を作り、それらの多数が近代日本語として定着した。この病院もそうであった。医院という言葉も、この藩が最初につかった。
軍隊の隊や、総督、総監という言葉を初めて作ったのもこの藩であり、やがて幕府までがまねた。
●軍事(323頁)
軍事というのは元来、天才による独裁以外に成立しないのである。
☆関連図書(既読)
「最後の将軍 徳川慶喜」司馬遼太郎著、文芸春秋、1967.03.25
「新選組血風録」司馬遼太郎著、角川文庫、1969.08.30
「燃えよ剣」司馬遼太郎著、文芸春秋、1998.09.20
「竜馬がゆく(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1975.06.25
「翔ぶが如く(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1980.01.25
「世に棲む日日(1)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
「司馬遼太郎スペシャル」磯田道史著、NHK出版、2016.03.01
「花神(上)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
「花神(中)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
(2016年5月7日・記)
内容紹介(amazonより)
周防の村医から一転して官軍総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげた、日本近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く。
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とはいえ、この種の個人信念によって人間関係を超越し、みずから命令者の位置に立とうというのは、やはりこの男が天才であったと同時に強烈な変人であったとしか思えない。
本文抜粋 20130502
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大村益次郎 村田蔵六物語
江戸時代から 明治への移行。
日本の歴史の転換点に生きる 青年たち。
とほうもなく エネルギッシュである。
蔵六は ある意味で 現実主義
リアリスト である。
自分の生き方に対して 私心なく生きていく。
形式にこだわらず
理想にこだわらず
与えたれたものを確実にやり抜いていく。
自分自身の感情をおさえることによって
自分自身の行動を規定していく。
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村田蔵六ー大村益次郎という人を私はこの本を読むまでほとんど知りませんでした。
かろうじて、高校時代に通っていた予備校の先生が「すごい人だ」と熱弁していた程度で。
読み終わって、あまりにも呆気なく、一方で強い風が通り抜けたような、そんな感覚があります。
まさしく花神。読後に大河のテーマ曲が頭の中で流れ、鳥肌が立ちました。
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明治維新という大きな流れの中で、誰がどのように動いて世の中が動いていったのかという全体像が分かった。
下巻は長州藩と薩摩藩とバランス関係が変わり、いよいよ革命の大詰めとなる。
命をかけて維新を進めたそれぞれの役者たちの考えやその後の経緯などよく分かり、改めて司馬さんの人間観察力に驚いた。
花神という言葉の意味も出てくるが、著者あとがきにあるように、仕事というものに対する捕らえ方を改めて考えさせられた。
著者はこの本と対をなすように吉田松陰・高杉晋作らを中心にした作品を描いているらしい。
こんどはこちらを是非読んでみたい。
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靖国神社に聳え立つ男の物語(下)大村益次郎は花坂爺さんやったんや!!
明治維新のことは事実しか知らなかったから、新政府がこんなにバラバラだったとは思わなかった。大村益次郎がいなかったらきっと維新は成功しなかっただろう。
___
p42 長州毛利は地生え大名
江戸幕府では各藩を国替えして、土着の勢力を築くことができないようにした。しかし、長州藩は戦国時代からずっと毛利が治めてきた(領地縮小はあったものの)。ここで生まれた「藩民族主義」というもののおかげで、領民が国難に対して自国を守る行動に積極的に参加した。挙国一致の体制があったから、長州は長く反幕戦争に臨むことができた。
p45 アヘン戦争が来た!!
いわゆる黒船ショックは、デカい真っ黒な戦艦に脅えたのではなく、その11年前にあったアヘン戦争の可能性に恐怖を覚えたといえる。
鎖国下の江戸時代とはいえ、このアジアの危機をのんきに知らんぷりできるほど日本人は馬鹿ではない。黒船が来てそれにビビビッっと来ているシーンはよくある光景だが、本当は噂に聞くアヘン戦争の情景が連想されてガクブルしていたのだろう。
p124 神:ヒポクラテス
当時の蘭方医の信仰対象はヒポクラテスであった。その画を掲げている医者が結構いたらしい。さすが医学の祖。
p216 長州人は正義が大好き
長州人は議論好きだと何度もこの本の中では出てくるが、それはつまりこれに行き着く。正義という美しい虚構が好きでたまらないから、江戸幕府というぬるま湯でふやけきった世の中で、ここまで攘夷に駆け回れたのだと思う。
元来、多くの日本人は現実主義で、宗教とか儒学などの正義に従うことを信じようとしなかった。戦時中の修身教育では無理やり正義を叩き込まれたが、現代では元に戻って、無宗教であったりしている。
p366 なぜ財閥は抜きんでたのか
明治維新は莫大な戦費を浪費した。幕府は商人から軍資金を借り上げて、負けて不良債権になった。新政府も旧幕軍を追討するために商人から金を借り上げて、外国からどんどん武器を買った。国内資本の流出。
このような商人に厳しい時代に、次々と大商人は没落した。これを生き抜いた少数の大商人がのちに財閥となれた。
p490 花神=花咲か爺さん
中国では花咲か爺さんのことを花神という。大村益次郎は尊王攘夷という名ばかりの枯れ木にみごと花を咲かせた花神である、というのがこの本の意味。
確かに、ストーリーを読めば、蔵六以外の人物は勢いだけで尊王攘夷を達成しようとしているように見える。腐っても武士という誇りだけは死んでも離さないような連中。そこに蔵六は戦略と武器を持ち込んだ。
p492 西郷は足利尊氏ごときもの
蔵六は西郷を最後まで信じなかった。西郷の親分肌は武人気質の強い薩摩の志士に絶大な人気だった。この薩摩藩士の維新のエネルギーは、革命戦争後、建武政権を打ち破った足利尊氏のように新政府を脅かすものになると蔵六は予想し、見事的中させた。
薩摩藩士の維新は、徳川幕府よりうちの親分の方がすご��ことを示したいという意志が強かったらしい。日本のためではなく、ドメスティックな感情だった。だから、維新後の新政府には不満を持つのではないかという得も言えぬ不安があったのではないか。
p497、521 西園寺公望
西園寺公望は蔵六にかわいがられた。それは、蔵六が自分亡き後に新政府を引率できる人材を育てようと思ったからである。
立命館は西園寺公望の開いた私塾が起源。
p523 刺客の登場は江戸時代から
刺客による暗殺が行われるようになったのは江戸時代になってから。鎌倉時代からの武士精神では、闇討ちや討ち入りや辻斬りなどの奇襲は卑怯であり、果し合いや一騎打ちなど正々堂々としたものだった。
江戸の太平の世は、武士を武士でなくしてしまった。いつの世も暴力的なものは尽きないが、それを武士という鞘に入れていた時代が終わったということか。
p539 蔵六は敗血症で死んだ。
暗殺の時に深く切り込まれた右太ももが化膿して、敗血症を起こして亡くなった。この当時、蔵六のような高官に切断手術をするには勅許が必要だった。そのために処置が遅れて死んだとも言われている。
p548 革命の三段階
「大革命というものは、まず最初に思想家が現れて非業の死を遂げる。日本では吉田松陰のようなものであろう。次いで戦略家の時代に入る。日本では、高杉晋作、西郷隆盛のような存在ででこれまた天寿を全うしない。三番目に登場するのが、技術者である。この技術というのは科学技術であってもいいし、法制技術あるいは蔵六が後年担当したような軍事技術であってもいい。」
なるほど。
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つまり、歴史の重要事項は、一に思想家、二に政治家、三に技術家ということか。とはいえ、この三つのどれが欠けても歴史的事件は起きないわけだから、すべて大事。
幕末は面白い。司馬遼太郎は他に吉田松陰や高杉晋作や西郷隆盛の著作があるみたいだ。長いだろうけれど、頑張って読もう。
しかし、司馬遼太郎すごいな。人生変わっちゃうよ。
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大村益次郎を主人公にした司馬遼太郎の小説。全3巻の最終巻で、新政府の軍総司令官となり戊辰戦争に勝利し、明治維新は完成する。これほど軍事に関しては天才的だが、人間関係の下手さから反感を買い暗殺されてしまう。時代に流されながらも自分の役割を全うし、ひっそりと去っていく姿に哀愁を感じました。
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かくありたい、、と思わせてくれる人でした。大村益次郎、司馬遼太郎の作品の中でも好きな人物になりました。幕末は本当にいろんな人が描かれていて面白いですね。次は峠の河井継之助を読みます。
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大村益次郎の生涯を描いた『花神』。大村益次郎の偉大さをじっくり読むことが出来てとても良かった。明治維新を完成させる最大の功労者だったと思う。靖国神社にある大村益次郎銅像を東京に行った際には、必ず見学に行きたい。