紙の本
文理融合の書
2023/05/21 06:19
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者3名は、文学部、社会学部卒業の学識者、俗にいう文系である。本書を手にしたとき、原子力の専門家が含まれておらず、違和感を持ったが、読了後にそれは払拭された。本書では、核のごみとは何か、どう処分しようとしているのか、他国の事例、科学技術的な安全の確保はできるのか、日本の現状についての問題点と課題、討論による国民の合意形成、核のごみを引き受ける受苦圏の問題、について考察している。核のごみ問題は、それが非常に高度な技術を必要とするから難しいだけでなく、科学の知だけでは答えられない様々な問題と深くかかわっているから難しい。さらに1万年から10万年先のことまで、考えなければならないために、誰も責任を追い切れないことが、核のごみ問題を一層難しいものにしている。一方で科学技術だけでは解決できない、例えば合意形成や受苦圏の課題に人文系の知見が活躍できる部分があることが、本書を読むことで明らかになる。原発の賛成・反対を問わず、核のごみは現存するわけであるから、社会の叡智を結集して「答えを出さねばならない問題」であることをあらためて痛感させられる一冊である。
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原発の新書はほとんど読んできましたが、放射性廃棄物に関して一番詳しく書かれてあり、海外の動向含め検討すべきことをコンパクトにまとめてくれていました。
ジュニア新書といえど馬鹿にできない1冊です。
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図書館。原発のことを考える上で外せない課題。ジュニア版があるんだ!と早速借り。昨年、JMOOCSで東北大学の「放射線安全社会入門~リスクの知見を暮らしに~」を受講した。放射性廃棄物の概要と課題にも触れた。その際のラストのレポートで、私は「原発やエネルギーについて考えようとすると、歴史・安全保障・社会課題・技術等、考え出すと不足している知識がどんどん判明して、お手上げになってしまう。学び・思考は長期的なもの。市民が学び、意見交換するためには場が必要だが、各々生活で忙しく、集まって学び合い、意見交換し合い、ということは難しいのが現状ではないか。私自身育児&仕事で家を出て単独行動を取ることはハードルが高い。私はオンライン中に各々の学びを公開し、意見交換できるようなプラットフォームが欲しい。」という内容を述べた。レポートに際し学びの場の事例としてNUMOの対話型全国説明会についても調べたが、開催回数、参加人数ともに少ないというのが現状だった。
本書の第5章では、Web上の討論型世論調査を2013年に(日本学術会議が主導?)実施したことが書かれていた。全国から無作為に選ばれた対象者。オンライン上での専門家のレクチャー。オンライン上での討論。これだ!こういう動きが必要だ!と気持ち高ぶり読み進めたが、残念ながら実施されたのはこの1回きりの様子。10年が経ったが、2回目は実施されていないようだ。うーん。。。
その他読み返したい箇所、今後も参照したい箇所が多々あったので、本書購入した。2023/9/29
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のごみ問題は、長期的な原発計画策定の際、最もプライオリティの高い問題だと思うが、マスコミも野党も大きな問題にせず歯がゆいばかリだ。
本書は 問題の本質を総論的に解説しており、とても勉強になった。
・海外の状況
フィンランド 地層処分場の建設がすすんでいる
スウェーデン フォルスマルクに地層処分場決定
フランス 地層処分前提にピュール県に決定を申請中
可逆性(未来に変更が可能な処分方法)を担保
カナダ オンタリオが候補で適応性のある段階的管理を進める
(60年保管、その後も240年は人間の管理下に)
アメリカ 混乱(ネバダ州のユッカマウンテンは凍結)
ドイツ 脱原子力は決まったが処分方法は混乱
イギリス 地層処分で4つの自治体を調査中
政府から独立な組織が議論を主導
日本 地層処分で北海道の2つの自治体を文献調査中
NUMO(電力会社)と政府が主導
・筆者の提案
現在の科学技術能力の限界を認識(永久保管の安全性は不明)し
50年の地上での暫定保管(その間に技術開発を推進)
核廃棄物の総量管理(保管できる分しか使わない)
答えのない問題の答えを出す責任を社会全体で認知し議論する枠組みが必要
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・核のゴミの放射能が、人間や生物、自然環境に特段の影響を与えない程度まで弱まるには、約1万年かかる
・天然のウラン等が発する放射能と同等まで下がるのには10万年かかる
・そんなものをどう保管してどこに処分するのか。300m以深に埋める(地層処分)しか方法がないという
・なんでこんなどうしようもなものを生み出す物(原発)を人類は作ったのか