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紙の本
「進化論」の変遷が大変よく理解できました
2023/12/03 21:48
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
初期進化論(ダーウィン進化論)からネオダーウィニズム、そして構造主義進化論と、「進化論」の変遷と流れが、著者の語り口(叙述)の面白さもあって、実によく理解できた一書。さらっと書かれているようだが、内容は深い。再読三読に値する一冊だと思いますね。
「mRNAがつくったタンパク質がどうやって最終的な形質なり、行動なりを導き出すのかは、今もなお解明できていません。」(167頁)
「当時はまだ遺伝子という概念がなかったので、ダーウィンにとって進化とはあくまでも「世代を継続して形質が変化すること」でした。ネオダーウィニストたちは進化を「集団中の」遺伝子の変換と増減」だと捉え直しましたが、小進化が長い時間をかけて積み重なっていけば、結果として大進化が起こるというのは、ダーウィンとネオダーウィニストに共通する見立てだったのです。」(167~8頁)
「ネオダーウィニズムの理論では、生物の形質上の違いは、遺伝子の違いを反映しているはずなので、さまざまな生物のゲノムを解析して、それを比較すれば、違いを生み出している遺伝子を突き止めることが多くの人が信じていたと思います。ところが結局、どれだけDNAの解析が進んでも、その生物がどのようにつくられるのかは解明できませんでした。そして、「DNAだけを調べてもどういう形質になるかはわからない」という事実が、「形質は最終的には遺伝子が決める」としていたネオダーウィニズムの根幹を揺るがすという皮肉な結果になっています。」(173頁)
「「生物の形質はどうやって決まるのか」という問いに対して、生物を一つのシステムとして捉える「構造主義進化論」の見地から出せるのは、「遺伝子を取り巻く環境が、その遺伝子をどう解釈するかによって決まる」という答えです。前章でも述べたとおり、発生遺伝子という名の上司遺伝子が、いつ、どのような命令を出すかによって部下遺伝子の働き方は変わります。そして、上司である発生遺伝子がどう働くか、ひいては部下遺伝子がどう働くかは、結局のところ、細胞の環境次第なのです。」(188頁)
「大事なことなので繰り返しますが、大きな形質の変化を引き起こすのは、遺伝子というよりも、「遺伝子を取り巻く環境の変化」です。すなわちそれは、遺伝子の発現を司るシステム(構造)の変更と言い換えることもできるでしょう。このようなシステムの変更は、遺伝子の発現メカニズムを大きく変えるので、形質を一気に変えてしまいます。もちろん、その後の細かな微調整は自然選択により徐々に進むのでしょうが、大進化そのものは、小進化の延長上にあるわけではなく、一気にドカンと起こるのです。」(191~2頁)
「繰り返しになりますが、エピジェネティックな変更、すなわち遺伝子の使い方の変更のほうが重要なのではないかと思います。」(213頁)
「大進化は、環境が卵に作用してエピジェネティックな変化が起こり、それが発生プロセスを変えて、さらにこのエピジェネティックな変化が遺伝するといったメカニズムで起こることはほぼ間違いないと思います。」(235頁)
繰り返しになりますが、文系人間にはぴったりの大変興味深い好著でした。
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