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読まないほうがいい。虜になってしまうから……。その国では、物語を語る者が「本」と呼ばれる。一冊につき、一つの物語。ところが稀に同じ本に異同が生じる。そこで開かれるのが市井の人々の娯楽、「版重ね」だった。どちらかの「誤植」を見つけるために各々の正当性をぶつけ合う本と本。互いに目を血走らせるほど必死なのはなぜか。誤植と断じられた者は「焚書」、すなわち業火に焼べられ骨しか残らないからである。表題作の他「痛姫婚姻譚」「金魚姫の物語」「本の背骨が最初に形成る」など7編収録。要注目の新鋭作家にして若きビブリオマニア・斜線堂有紀が、凶暴な想像力を解放して紡いだ、絢爛甘美な七つの異界。あなたも、この物語の一部になる。
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短編集全体を通して想像を絶する痛みが描かれる。グロッキーなのが苦手な人は避けた方が無難という難点はあるものの、痛みと美しさが同時に在ることの不思議さを感じた。作家の想像の果てなさを思い知らされる1冊。
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痛みは美しいのか。
とこの短編種を読んで最初に思ったこと。
表題作を目当てに読んだけれど、華氏451の先、より残酷になった後は腐るだけの世界があって、それがこの街を存続させる理由だと思うと、美しさを感じる何かが残ったのではと感じる。
一番好きなのは痛姫。ありえない世界観にも関わらず頭が拒否をしないのは、装飾ではなく濃さでその世界ができているからのように感じた。
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良い本は書かれていない音が聞こえてくるし、匂いが分かる気がする。この本はいい本だ。短編集、この作者にしか書けない物語。どの短編にも世界観がしっかりとあり、そして読ませる。面白い。
表題作・本の背中が最後に残る…鉄籠が降ろさせる音、人々の声・喧騒、火の匂いがしてくる。本同士の押し問答、舌戦、すごい!耽美でぞくりとさせる。
・死してみる屍知る者なし…この話好き!その事実を知ったら、天地がひっくり返る。
・ドッペルイェーガー…人は残虐性はコントロールできているうちは良い人なのか、考えるだけならOKなのか…
痛妃婚姻譚…悲しい・怖い話。人のエゴとか欺瞞とか、罪悪感とか透かして見える。白粉の匂いとワルツが聞こえてくる。なぜが描写ないのに消毒の匂いもしてくるから不思議
金魚姫の物語…皮膚の描写、心の動きなど丁寧に感じた。
ゼウスエクスセラピー…怖いけど好き
本は背表紙が最初に形成る…耽美で人が本になるその様子はどこか熱に浮かれていて、熱狂に感じる。
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感想
本は思想を広げる。だからこそ市井の人々は愛し、権力者は憎む。紙に載った思想はあっという間に世界に広がる。だからこそ正しくなければ。
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独特過ぎる世界観に最初意味がわからなくて困惑しました。
それでも何とか読み進めるうちに感情移入して夢中で読んでいる自分に気づきました。
とんでもない本に出会ってしまったかも知れません笑
グロテスクで悲しい話ばかりなので読む人をかなり選ぶ作品だと思います。
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The Spine of The Book で「本の背骨」。面白いことばですね。
短編集であることは知っていましたが、帯やあらすじから勝手に表題作の「本」が語る物語が短編扱いになっているのだと思っていました。でも基本的には最初と最後以外は全部独立した物語。
「本の背骨が最後に残る」
紙の本が禁じられたとある国のはなし。紙の本は全て燃やされ、本の代わりに人が口伝で物語を語る。それらの人を「本」と呼び、「本」は基本的に1冊(1人)につき、ひとつの物語しか刻まない。しかし、その原則を破ったことで両目を焼かれたある「本」は、その身に十の物語を刻み「十(とお)」と呼ばれていた。
主観である旅人はその十と、赤毛の三つ編みの「本」の『版重ね』に立ち会うことになる。『版重ね』とは、同じ物語を刻んでいる2冊の本が語る内容に相違があった場合に、どちらが正しいかを判別するために行われる決闘のような物。ただし審判役を務める「校正使」に誤植と見做された方は焼かれてしまう。
十と赤毛の「本」が語り合うのは「白往き姫」。互いに己の身に刻む物語を語りながら、相手の矛盾点をついてゆく。一見攻め手に見えず目立たぬ十の布石は、終盤で一気に赤毛の「本」を攻め立て、見事校正使による「正しい物語」であるという判定を勝ち取った。「本」として生きた敗者の赤毛が焼かれていくが、その様は断末魔の叫びを上げながら焼け朽ちてゆくただの人間だった。
しかし、本が本来の意味を持つ他の国から来た旅人は知っていた。赤毛の「本」が語る「白往き姫」が本当の正しい物語であるということを。なぜなら、旅人は本物の「白往き姫」の物語を赤毛の「本」に語り聞かせていたからだ。旅人は、赤毛の「本」がまだ人間だった頃の知り合いであり、語りで身を立てられないその「本」を憐れんでの行為だった。
結果、旅人は赤毛の「本」を悶死に導いた。『版重ね』で求められるのは正しさではない。読者と校正使の心を掌握し、正しさよりも身を委ねたいと思わせる物語を紡ぐ語り手の力。そして、呆然とする旅人に陶然と十が語るのは、本を焼く愉しみ。そして人を焼く悦び。この国はそんな歪んだ愉悦が充満している。
表題作。さすが、設定がおもしろい。
しかも、いきなりのファンタジーではなく、あくまで本としての「本」が存在したという歴史を経ての、本を担う「本としての存在」である人間。
掴みと世界観が強烈すぎて、内容が短編では物足りない気がするけど、目次のラストを見ちゃってるからワクワクしながら寄り道できる素晴らしい構成。
版重ね自体の流れはちょっと安く感じるけれども……。
シリーズものだって作れるくらいの余力を感じるこの世界観の根底を支えているのは、本というものの「尊さ」なんですよね。
ただの、怖い・グロい・妖しい。じゃなくて。
十の歪みの起点は本が尊いからこそ発生している狂気。強烈な背徳感。そこへさらに命をbetしてムズムズ100倍増しっ!
……斜線堂ファンが多いから選書候補だったけどこれは中学生にこれはちょっとどうなんでしょう……。
「死して屍知る者無し」
人間はいずれ必ず任意の動物に転化するこの世界��は、12歳がひとつの節目とされる。家族の中に、山羊に転化した祖父を持つくいなは兎に転化する予定で、想いを寄せる近所の少年ミカギは驢馬を希望している。転化後も寄り添って生きていきたいと、一緒に兎に転化する約束をした直後、ミカギは不慮の事故により転化を果たすのだが、その姿は驢馬だった。その出来事から、くいなの心には小さな不信感が芽生えはじめ……。
前章の「校正使」といい、今回の「師」といい、世界の軸となるはずのポジションがとにかくきな臭いという。「死」という概念が、心構えもなくいきなり目前に立ちはだかる恐ろしさ。いやーな最後。
「ドッペルイェーガ」
強烈な嗜虐性をうちに秘めた人間が、神経接続したVR空間で欲求を満たす話。加害の対象は、自己の脳波から作り出した意識モデルを自己の3DCGモデルにインストールした、限りなく自己に近い「仮想の自分」。
1話目で「いや…これは…」と思い、ふたつ目で「ちょっとさすがに……」と悩み、この章で「無しだな」と諦めがつきました。
あ、選書の話です。
イェーガーに狩る者の意があることは、もちろん進撃の巨人で知りました。
「痛妃婚姻譚」
首元に「蜘蛛の糸」という器具を装着することで、痛覚を他者に肩代わりさせることができる技術が確立した世界。病院に併設された城に住まい、主に手術等の医療行為で発生する痛みを肩代わりすることを生業とする人間を「痛妃」と呼ぶ。
非人道的であるという世論を避けるため、痛妃を務める人間は絶対的な美しさと豪華絢爛な装い、豪奢な生活を送り、憐れみや不幸と結びつけられないことが求められた。
痛妃を飾り立てる役目を負う者を「絢爛師」と呼び、当代痛妃の頂点に立つ「柘榴」の絢爛師である「孔雀」の視点から物語は語られる。
痛妃の美しさが花開く「舞踏会」で、最も人々の心を奪った通妃に贈られる「紅椿」。その紅椿を百夜通して獲得した痛妃は、城を出ていく権利が与えられる。100人を超える人間の痛みを一身に受けていることを感じさせず、優雅に踊る柘榴は百夜通しの女王の称号を目前に捉えていたが……。
麻酔ってありがたいね。「いたいのいたいの〜とんでいけ〜」のリアル版ということで。美しさと苦悶の競演という大変「らしい」1本。悲恋とかそんなのどうでも良くなるくらいえげつない世界設定。
「金魚姫の物語」
超局地的に、ひとりだけに雨が降り続ける「降涙」という災害が世界各地で起こり始めた。傘をさしても、どこへ逃げようと、服の中まで、水の中にいようとも、その雨は執拗に降り続ける。肌はふやけ、やがて人体はその形を保てなくなり、水死体となる以外にはやむことのないその雨に取り憑かれた「憂」(うい)と、彼女の変化を写真に収め続ける「准」の物語。
憂のバックグラウンドや、崩れる前提の美しさ、またしても斬新すぎる世界設定ゆえの異質すぎる喪失。泡になって死ねた人魚姫は幸せだったのか。醜い終着点しか用意されていないはずのこの物語の終わり方は、この上なく哀しいけれど、美しさも感じさせるものでした。
「デウス・エクス・セラピー」
正常であるにもかかわらず精神病院送りになったフリーデは、いつか正常であることに気づいてもらえるはずと、ドリスフィールドでの最悪の日々をやり過ごす。そこへ、エミリー・ヴァイパスが新たな患者としてやってきた。気性が荒いが、彼女も精神を病んでいる訳ではあるなかった。お互いの存在を支えに外へ出られる日を待ち望んでいたある日、エミリーは"短期転地療養(ヴァケーション)"と呼ばれる、離島での画期的な治療を受ける患者として選ばれ旅立つ。噂によると「精神安置」という治療を受け、エミリーは回復して社会復帰しているという。とうとうフリーデも、その治療の対象者に選ばれ旅立つが、島へ向かう船の上で、ある男から信じがたい話を聞くことになる。精神安置とは、最悪の方法で視覚や聴覚を奪われ、触覚のみを残される拷問であり、きみをエミリーと同じ目には合わせたくないと。真実はどちらなのか。そしてこの男の正体とは。
元厨二病(死語)を患っていたものとしてはデウス・エクス・マキナから来ている話だとすぐに気づくものの、ぶっ飛びすぎてて「えーー」って平たい声が漏れちゃいました。なるほど。しかし、100%の救済が望めないことが確定している限り、セラピーとしての完成度は低いのでは……というか健全な人間がゲームとして送り込まれても、消えないモヤモヤを心に刻みつける結果になるでしょ。治療する側としてはデウス視点かもしれないけれども、俯瞰するとその言葉の意味通り「都合のいい」介入と言えなくもなくて絶妙なタイトルですね。
「本は背骨が最初に形成る」
「〜残る」より前、十の目が焼き潰された頃の話。当時、本屋に身を寄せていた十は、姫物語を得意としていたことから「姫」と呼ばれ、この話の主な視点である本屋の娘「綴(とじ)」は彼女のことを「ひいさま」と読んで慕っていた。目を焼かれたばかりの十を介抱する綴には、疵から溢れる膿すらも神々しく尊いものに見えていた。まだ傷も癒えないうちに持ち上がった版重ねのお題は「姫人魚」。対戦相手は背が高く凛々しい印象の銀髪の本で、「〜残る」の赤毛の本とは違い、絶対的な自信に満ちた本だった。堂々たるかたりくちで群衆を味方につけ、場の空気を制したかに見える銀髪の本だったが、十の戦法はご存知の通り。静かに、人知れず、でも着実に、 滔々と空気を塗り替える。銀髪の本を煉獄へ沈めた十は、目の火傷を忘れさせるほどに精気が溢れ、その美しさ神々しさを目の当たりにした綴にある決意をさせる………。
やはり版重ね自体は相変わらず詭弁に次ぐ詭弁で、銀髪と赤毛への憐憫遣る方無いですが……なんでしょうね。グロさももはや麻痺してきていて、十の妖しさと美しさと狂気が際立っています。そんな妖気にあてられて完全にイッちゃってる綴ちゃんにも憐憫遣る方無し。達磨はないって。あ、片腕残ってたか。いやしかし、装丁て……。しかも、肺のない本、背骨のない本の燃える様をみて抱いた想いの違いから考えると、十と綴ちゃんの世界観はまるで別のものなのではないかとも感じてよりかわいそう……。
この話のみがこの本の書き下ろしだそうで。
カバーはアート感強めなビジュアルですが、描写通りの「本」たちのビジュアルもイラストで見てみたいなあと。あ、もちろん欠損ではなくて装飾の方です。タッセルとかドレスとかヘアスタイルとか。
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なんとも奇妙な世界で描かれる物語たち。
読了後の感想としては、
内容の不気味さに本を読むことを辞めるべきではないかという警鐘が私の脳内で鳴り響く一方で、物語は私が容易にその世界から脱出することを許さず、ページをめくる手を止めることが出来ない。そして遂に最後まで読み終えてしまった。
という感覚がある。
表紙に惹かれて手に取った本だったが、最近読んだどの本とも異なるジャンルで、読み応えのある1冊だった。
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残酷なルールに支配されたどこまでも美しい本に囚われた感じ
物語を体現し自らの存在意義を命をかけて弁論する様は法廷にも似て
正義や規則、信じるべきものが揺らぐ
怖さと美しさに彩られたこの本は印象的で忘れられない
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こんなタイプの小説初めてー! 幻想ミステリー? ホラー? SF? そんな枠組など軽々と超越する世界観です!
「衝撃の度合い」だと、『ハンチバック』と同等くらいのインパクト! (※ミステリーの〝結末の衝撃〟という意ではありません。内容そのものです。)
7話の短編集ですが、どれもが残酷な異界を扱いながら、狂気ではなく甘美な感覚をもたらし、刺激的な内容です。斜線堂有紀さんの想像力と表現力により、このグロテスクと美しさが同居・融合する世界に飲み込まれてしまいます。
他の読み手の皆さんはどう思うのでしょう? 本作は、著者の読み手への挑発か! 読み手を惑わす悪夢か! それとも甘美な夢か! どれもが当てはまる気がし、そのおぞましさで混乱してしまいました。
表紙の装画・装丁も、美しさと不気味さが繊細に描かれ、本作の世界観とよくマッチしています。
全編を通じて、人間の本性、欲望、偽善、それらの境界線‥、いろいろと考えさせられたものの、自分の中では「残虐+甘美=賛辞」とはなり難かったです。ただ、新たな衝撃的な作品との出逢いという点で、大きな収穫を得たことも事実です。
おそらく読後の感想は、相性、嗜好、得手不得手もあり、完全二分と思われますが、ブク友の皆さんのレビューに注目したいと思います。
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痛くて綺麗で切なくて怖い短編集。
最初と最後の話は繋がりがあるけれど、他は全て違う設定で書かれているのに、根底に流れる世界観が一緒なので、長編を読んでいるような感覚で引き込まれる。
痛い(物理的に)描写が多いので、好き嫌いは選びそうだけど、よくこんな設定を思いつくなぁ、という発想力の凄さに、他の本も手に取りたくなってしまうこと請け合い。
グリム童話好きな方は、ぜひ!
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ダークファンタジー。残酷で痛々しいのに読むのをやめることが出来ないそんな本。
斜線堂先生にしか書けない世界観が凄く惹かれた。
好きな話は【本の背骨が最後に残る】【痛姫婚姻譚】【本は背骨が最初に形成る】
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装丁と帯の文に惹かれて買いました。
耽美で残酷な世界観ですが、切なかったり、SF的だったり、私好みの短編集でした。
転化の話が特に好きかな。
それと、本の背骨が〜の十のキャラが好みなので、版重ね対戦や十の物語をシリーズ化して欲しいと思いました、。
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ホラー小説専門レビューで知ったんだけどこれをホラーとひとくくりにしていいものだろうか?
勝手に命名するなら奇想恐怖小説、または奇想痛覚小説とでも呼びたい。
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斜線堂先生の作品を初めて拝読。
確かに死の匂いがするのに、どうしても美しい。
個人的に痛妃婚姻譚が一番好みだった。