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紀州の山間の小さな町に紅滝という美しい滝がある。その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られた姫の、哀しい伝説があった。だが、彼女と男の、逃れることのできない、さだめの、のろいの恋は、そんな生やさしいものではなかった。現代から、大正、江戸、安土桃山、そして南北朝へと、いびつな螺旋を描きながら、二人の恋は繰り返す。切なく愛しい感動のクライマックスに心の震える傑作小説。
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連作短編集。
「ファウストの苔玉」
「アーム式自動閉塞信号機の夜」
「犬追物」
「緋縮緬のおかげ参り」
「宮様の御首」
瀧口屋という宿屋(茶屋)や望月という男がどの話にも脇役で必ず出てきます。
最初はあらすじなど、全く読まずに読んだのでなぜかと思いました。
最初の「ファウストの苔玉」は現代の話ですが、最終話の「宮様の御首」は鎌倉時代の話で、全部読むと時代が逆行して結末から始まっていたことがわかります。
以下ネタバレしていますので、これから読まれる方はお気をつけください。
すべては「宮様の御首」の望月という宮様を守るために自分の妻子といってもいい、女性の久礼と、お腹の子どもを捨てた男の話でした。
すべては、久礼の望月へのうらみから始まった物語だったということが、あとからわかります。
成就しない悲恋の物語ばかりです。
「犬追物」は中でもとても苦しい話でしたが、出てきた口のきけない、あとりという名の貧しい少女さえも望月と恋仲だったのだと、あとで納得しました。
とても濃くて重たい話ばかりでした。
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怨むほどに心が狂おしくなる人。運命の一言では片付けられない2人。ただ穏やかに2人で過ごす日々はいつの日か訪れるのだろうか。
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邂逅(かいこう)・・偶然に出会うことや運命的に巡り合うこと
本作は「わくらば」と古語表現で読み、滝の美しいデザインが素敵( ´∀`)
そして何より遠田潤子らしからぬストーリー♪
紅滝という紀州の山間にある美しい滝を前に、現代、大正、江戸、安土桃山、南北朝と時代を駆け巡る大長編といっていい物語。
一話目の現代を読み、二話目に入って
「ん?同じ舞台?連作短編?」と思いつつ
三話目で「うわぁ!これ読んでくと悲しい姫の言い伝えがわかるのか?」とグイグイ引き込まれます!
その後は一気読み!遠田潤子が進化してる笑
ラスト南北朝時代の話は実在の人物が登場。
前編に登場する「望月」と言う名の男の終わりであり始まりが明かされます。
こういう構成大好きです‹‹\(´ω` )/››
以下作者・遠田潤子さんのコメントです〜
「この物語が旧式であることは承知している。だが、自分とは違う誰か、ここから遠く離れたどこか、今とは価値観の異なるいつか、自分には理解のできないなにか、を感じさせてくれるのが時代遅れの物語の醍醐味ではないだろうか。そんな非日常の世界に放り込まれる興奮と快感をすこしでもお伝えできればと思う。」
遠田潤子先生!!
このまま独自路線を突き進んでください\(//∇//)
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大阪、奈良、和歌山にまたがる山間にある紅滝という美しい滝。そこにある祠にまつわる哀しい伝説。滝のそばに立つ「滝口屋」という茶屋を舞台に、現代、大正、江戸、安土桃山、南北朝と時を遡りながら描く因縁の男と女の恋と呪いと誓い。
望月という男が素性を変えながら全ての物語に登場する。望月と“くれ”と名のつく女の因縁。生まれ変わりながら繋いでいく怨みと愛情の連鎖。狙いはいいんだけどだんだんお腹いっぱいになって来て読み続けるのが辛い。最終話は歴史の授業みたいで退屈。
そんなこんなでさして感動もせず。もう遠田潤子は卒業かな〜
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大阪、奈良、和歌山にまたがる深い山の中に紅滝という美しい滝がある。
その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られ捨てられた姫の哀しい伝説が残されていた。
瀧口屋は、秘境の宿として雑誌にも取り上げられた。
この瀧口屋の長女が紅姫様を慰めるお祭りをやった年に…。
この現代から次の章には、過去になり大正、江戸、安土桃山、南北朝時代へと〜
二人は出会いを繰り返す。
悲恋物語だが、死と哀しみだけでなく周りも辛くなるほど…。
運命的な出会いだが、決っして結ばれることのないという残酷さにやりきれない。
この絶望感が何度も何度も繰り返されるのはたまらない。
それでも愛する人はただひとり。
泣きたくなるほどのこの想い。
その想いは、怨むほどに募る。
幾度でも生まれ変わって愛しい男を怨み続ける。
いつか赦せるときがくるまで。
熱く、やるせなく、苦しい物語だった。
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何世紀にも渡る悲恋。かつて結ばれることのなかった二人は何百年もお互いを求めあいそれは悲劇へと繋がっていく。現代から時を遡りながらの連作短編集。面白かったけど、なんでか女性側がいつも不遇な状態で不幸を背負わされているのが不憫すぎる。
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うーん。行ったり来たりでこんがらがる。連載、後でまとめるにしても、時系列とか整理してほしいかな。久しぶりの遠田さん期待、勝手に期待膨らませていただけに…。「忠義とは何だ。忠義とはそれほど偉いものなのか。己の妻、己の子を見殺しにしてでも通さねばならないものなのか。果たしてそれが本当に正しい道なのか」ありえませんと、今の時代に生きる小生は言えるけど。
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久々の遠田作品。連続短編。
他の作品と比べると何だろう、
色々とマイルドかなと言う印象。
非恋と言われればそうなのかも知れないが
約束通りぐるぐると巡って
出会えているのだから
これはこれで幸せなのかもしれない。
凍る滝、いつか私も見てみたいな。
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遠田潤子の邂逅(わくらば)の滝を読みました
短編集です。
紅滝という美しい滝があり、その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られた姫の、哀しい伝説。
伝説に纏わる、それぞれの物語ですが、私的にはあまり入り込めなかった。
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紅滝町にある小さな旅館・瀧口屋は、紅姫を祀る滝の祠への参拝客を主な対象としている。息子の瀧口奔は受験生のため宿でのアルバイトを禁じられたが、祠への灯明上げは彼といとこの美鳩の役目だ。そこで知り合った望月と2人は親しくなるが、彼には秘密があった……という導入部から始まる5篇の連作短篇集。
呪いというか悲恋もので、輪廻転生がテーマだ。おもしろいのはその構成だ。現代から段々と時代を遡っていき根源に辿り着く。
2人には輪廻しているという自覚はないにも関わらず、巡り合い、恋に落ち、破滅する。なんと残酷な運命だろう……。
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邂逅と書いて「わくらば」と読ませる。白川道の小説「病葉流れて」を思い出したが、葉っぱが色づいた状態も「わくらば」らしく、そこに邂逅の字を充てる意味のすごさが、読後じっくりしみ込んでくる。
奈良と和歌山にまたがる紀伊山中の深い場所にある紅滝にまつわる切な哀しい恋物語の連作短編集。ここんとこ出会い続けている連作短編集(ex.青山美智子etc)とはかなり味付けが違う。
「望月」姓の男と紅に纏わる女の悲恋が時代を超えて南北朝の時代まで遡っていく。最終話で全ての伏線が回収される。「トレラン会場の場所まで回収するんか!」ってのにびっくりしたのと、「これって火の鳥や、でもそれなら未来編も書いて輪廻をつないで欲しかった」と登場人物たちの辛苦を考慮しない感想を抱いてしまった。
遠田潤子は小説でブルースを奏でる、と思っているのだが、今回のブルースはややレクイエム寄りで土着風味が味わい深い。とはいえ、「アーム式自動閉塞信号機の夜」は期待の遠田ブルース全開やったけど。
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「ファウストの苔玉」
「アーム式自動閉塞信号機の夜」
「犬追物」
「緋縮緬のおかげ参り」
「宮様の御首」
5話収録の連作短編集で全話に共通して望月なる男が登場する。
紅滝という美しい滝に残る哀しい伝説をモチーフに、現代から、大正、江戸、安土桃山、南北朝へと時代を遡りながら、その時代に生きた男女の凄まじい憎愛が描かれる。
時代がどれだけ移り変わろうと、人間の本質は変わらない。
輪廻転生を繰り返しても犯す過ち。
愛情と信頼、哀しみ、嫉妬、怒り、あらゆる感情が渾然一体となって行間から押し寄せて来た。
情念が迸る圧巻の遠田ワールド。
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この装丁の写真が…とても綺麗で…好きだ…。
そして遠田先生が…絵に描いたようなメロドラマしてる…。
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紅滝、紅姫、瀧口屋、その謂れとそれに纏わる数々の逸話。時を超えて縺れ合い、繋がり続ける男と女の物語。古の情念は褪せることもなく、2人を出逢わせては引き離していく。
連作の形で紡がれるこれらの物語は、すべてを読み終えて初めて始まり、そしてさらに続いていくのだ。
本当に素晴らしい筆致と描写、そして物語。著者の作品を読むのは初めてだったが、正直、驚愕した。それぞれの短編の結末も鮮烈で、尚且つすべてを読み終えた時の満足感は言葉に表せないほどで、繰り返し登場する紅滝、祠、もみじの木のイメージが頭から離れない。これはきっと名作と呼ばれるようになるに違いない。
巡りめぐる魂がいつか赦されて完結する時を、願わずにはいられない月曜の午後だった。