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ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。
会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。
大きな夢や目標がなくても、「これでいい」と思える日常がある――そんな日常を続けていくことも、ひとつの「幸せ」ではないだろうか? そう気づかせてくれた1冊。
夢を叶えたり、目標を達成することはもちろん素晴らしくて素敵なことだけど、「これでいい」と自分の毎日を肯定できる日々を過ごせることも同じくらい意味のあることだと思いました。
いい会社に就職してちゃんと仕事をして、誰かを好きになって結婚してあたたかい家庭を築く――誰もが正解だと思っている「幸せ」。でもその「幸せ」の形に押しつぶされそうになる時もある。そんな人たちが登場人物で、正解じゃない「幸せ」を見つける物語。ものすごく心に刺さりました。目からウロコが落ちた。
ポイントは「これが」じゃなくて、「これで」いい。「私はこれでいい」――そう言える日常を続けていくのも十分幸せじゃないですか? 思わずふっと微笑んで言える言葉じゃないですか?
でも何かを諦めているわけではないのです。ヒュナム洞書店にやってくる人たちは、「これでいい」と思える日常を見つけて、成長していくんです。大きなことは起こらなくても、ちゃんとみんな成長しているからこそ、物語と最初と最後は違う展開になっている。そこがとても良かった。
好きな本だけ並べる本棚を作るなら、この本も間違いなく加えたい1冊です。
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本屋大賞翻訳部門受賞した当日、図書館より届いた。以前からとても読みたかった上に、巡り合わせも良いタイミング!
心に染みるフレーズが多く付箋だらけ。
こういう時に限って借りた本だからメモしとかなく
ては…
小説なのだが、様々な悩みや個性を持った登場人物が主役であり、読了時は人生の哲学書を一冊読み終えたような気持ちになる。
自分が本を読む意味、仕事の楽しさ辛さなどなど多くの事を気づかせてもらえる本かと。
文庫化されるくらいのタイミングで再読したくなるんじゃないかな。
その時はぜひ手元に用意したい。
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仕事をやめ夫とも別れ今までの自分を捨て生まれ変わっていく、そんな様子を本屋を始めることで成し遂げる。周りの人たちとの交流、本への慈しみと愛、そして生活するため本屋としての在り方経営などの工夫が程よいブレンドで混じり合って読んでいて楽しくまた考えさせられる物語。
バリスタのミンジュンの淹れるコーヒーが香りまでして美味しそうだった。
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20240609
冒頭部分は、この本の世界にぐっと引き込まれる感じはしない。
けど、読み進めていくうちに、
この本のゆったりとしたリズムに合わせられるようになっている自分がいた。
ヨンジュは本屋として空間作りを始めたけど、
人々が集う空間、コミュニティ作りって面白そうだなと思った。
登場人物のそれぞれの悩み・生き方もじんわり伝わってきたけど、そんな人たちで構成された心温まる空間、安心できる空間を作り上げていくヨンジュの成長?過程にとても惹かれた。
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行き過ぎた競争社会、学歴至上主義が「当たり前」の社会に体が、心が、悲鳴をあげた人たちがその流れからはなれて、ゆっくり「再生」していく物語。
美味しいコーヒーを飲みながら、本をただ買うだけではなく、ただぼんやりすることも許されるそんな本屋さん。いろいろ立ち止まりながら、自分が「良し」とするものは何かをひとつひとつ考えながら、それぞれが自分の居心地のよい場所、ものを整えていく。
自分が何を成し遂げたいかということを探求すること合う人もいるだろうが、自分が何をしたいのかはわからないけれど、たまたま思いもがけずに出会ったもの、誰かの「ヘルプ」に応えて、自分の生き方につながっていくというほうが好きだなぁと思った。ミンジュンのように。
なんでもいいから仕事をしようと思っていたミンジュン、たまたまバリスタの募集を見て、そこからコーヒーを美味しく入れることに時間を重ね、ヒュナム洞書店に欠かせない人になっていく。ヨンジュンの「ヘルプ」の声に応えて、それが自分の「天職」になっていく。内田樹さんがよく言っていること。自分が何かを成し遂げようとすると苦しくなることもある。こういう生き方だって大いに意味があるのだということを心に留めておきたい。
『スピノザの診療室』に続き、よき物語に出会えたなぁ。
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今まで読んだ癒し小説の中で1番好き
悩み、それを慰める言葉、一歩踏み出す勇気、そういう温かさに溢れていただけじゃなく、要所要所に出てくる言葉は人生を通して心に取っておきたいと思えるような深いものだった。
登場人物の悩みやその解決方法の全てに共感できるわけではなかったけど、書店の雰囲気、優しい言葉に癒されて、私自身も頑張ろう!って気持ちになった。
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2023年の最後の読書になると思うけれど、最後にして最高の読書経験になった。
終始本への愛情を感じる。押し付ける感じではなく、寄り添ってくれるような優しさなのがとても良い。読み終わるのがもったいないのでゆっくり読みたいという気持ちと、読み進める手が止まらないという気持ちが両方あるのが一番悩ましかった。「息つく間もなく流れていく怒涛の日常から抜け出した空間」「わたしたちからエネルギーを奪っていく一日ではなく、満たしてくれる一日」を描きたかったという著者の思いがすごく伝わってきた。
本は、記憶に残るというよりも、身体に残るという表現はよくわかる。どこかで、何かのきっかけで、記憶ではないけど思い出すという感覚が時々あるのがそういうことかと思えた。
本を読むと強くなると同時に苦しくもなる。世界の楽しさ・溢れ出てくる苦痛を知る。誰かの上に立つのではなく、そばに立てるようになる。それでも、これからの日々が少し楽しみになる。
そんな考えを与えてくれる場所として、ヒュナム洞書店は描かれている。「自分が礼儀を守っている限り、誰も私に無礼な態度をとったりはしない」「路地をきょろきょろしながら目的地を目指して歩いていくときの気分」と感じられる場所だと作中の人物が語っていたけど、そういう場所が1つあるだけでも、生きる上での拠り所になるはず。
そもそも書店運営のためには、本に関するあらゆるものとお金の交換が活発である必要がある。独立書店の運営には独自の個性が必要で、その個性を作り上げるために不可欠なのは店主の勇気と真心。本書の登場人物は、「注意して見ないと分かりにくいけれど、ずっと何かを続けている。細かい部分を少しずつ変えながら、新たに学び、磨いていく」ことをしている。そんな勇気や静かな継続が、ちょっとずつ人生をやさしいもので満たしていくんだなと思い返すことができた。
「どんな展望もほんの些細なことから始まるの。そしてついには、それがすべてを変える。たとえば、毎朝あなたが飲むリンゴジュースとかね」という引用文がとても印象的だった。
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読み始めてすぐに心地よさを感じた
静かに私を受け入れてくれるような安心感
「仕事」をごはんに例えて語っているように、この作品の中で描かれる「仕事」はあくまで生活の一部であるということが強調されている
自分の体と心と精神と魂に影響を与えるご飯。
この世には急いでかき込むご飯もあれば、心を込めて丁寧に食べるご飯もある。
これからは素朴なご飯を丁寧に食べる人になりたいと思っています。
わたしのために。
たぶんずっとこのフレーズは忘れないだろうなあ
映画リトルフォレストやかもめ食堂に影響を受けた作品らしいが、似た雰囲気を感じて納得した
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とても心が温かくなる物語でした。安定したキャリアを離れて、もがきながら日々生きている自分には共感できるポイントがたくさんありました。心に従った(非論理的な)判断や生き方を肯定する、そんな生き方をしてもいいんだなと、改めて思えました。今年1冊目の読書がこの本で良かったです。
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読書が好き。本が好き。書店が好き。本に関するあれこれが好きな人に悪い人はいない、というのが持論です。この物語を読んでいる間、空間としての書店の心地よさにゆったりと身を委ねていました。登場人物の思考、会話、行動、ひとつひとつが丁寧で、きちんと自分と向き合っている人たち。普段はサクサクと読み進めていくタイプですが、今回は登場人物が悩み、考え、じっくりと人生の選択をしていくのと同じように、ゆっくりと味わい、考え、時には戻ってまた読み直して……。そうやって読み終えたとき、「あ、この読み方って人生みたい」と気が付きました。
なんだか好みが似ている友達と対話している気分になるな、と思っていたら、作者あとがきを読んで納得。映画「かもめ食堂」や「リトル・フォレスト」のような世界観を目指したとのこと。どちらもお気に入りの映画です。
今の暮らしに疑問を感じたら、すこし立ち止まって休んでみるのも悪くない。疲れた心と体を癒してくれる温かいお話でした。
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いい話でした。
作品全体から感じられる雰囲気がいい。
韓国の社会状況も少しだけ知れたのもの良かったです。
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外国を旅行してきたような感覚の小説。
街の本屋を始めた女性と、就活に失敗してそこでバリスタのアルバイトを始める青年の話
韓国特有なのか章立てがものすごく多くて話は細切れに視点が変わっていく。話に没頭して読み耽るというよりは、韓国のちょっとした文化に触れながら(ちょくちょく解説も入ってます)、温かいヒュナム書店のエピソードが淡々と流れでいく
うんと経営に苦労して頑張るお仕事小説というよりは、人と人が関わって成長していく、みたいなお話
正社員になりませんか?と何かチャンスが転がってたときに、日本の小説だとでも⚪︎⚪︎が…とチャンスを掴むか悩む展開が多い中、韓国の方はさくっと掴んで軽やかに話が進んでいくのが、国民性なのかなぁと思ったり。
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本屋さんの店主とそこに集う人々のささやかな日常の群像劇。ちょっと疲れた時、立ち止まりたい時に、特におすすめ。あたたかい肯定感で包み込んででくれる。心に残った言葉。「本は、記憶に残るものではなくて、身体に残るもの」「幸せは、遠い過去とか、遠い未来とかにあるわけじゃなかったんです。すぐ目の前にあったんです。その日のビールのように、今日のこのカリン茶のように」「自分の生のすべてを、たった一つ何かを実現するために費やしてしまうなんて、あまりに虚しいなって。だから、わたしは幸福ではなく幸福感を求めて生きようって」「人生は、仕事だけをもって評価することはできない、複雑で総体的な『何か』だ。好きな仕事をしていても不幸かもしれないし、好きではない仕事をしていても、その仕事以外の別の何かのおかげで不幸ではないかもしれない」「どんなことでもいったんやり始めたら、何よりも、心を尽くすことが大事だ、小さな経験を丁寧に積み重ねていくことが大事なんだ」「いい人が周りにたくさんいる人生が成功した人生」「どうやって、映画が公開されるたびにああやって観にいけたんだ?あんなに忙しかったのにどうやって、好きなものを手放さずにいられたのか」コーヒー豆の特徴についても、端的にまとめてあったので付記。コロンビアは味をまとめてくれる。ブラジルは甘味。エチオピアは酸味。グアテマラは苦味。
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途中で、これは哲学書だなと思った。
これから先の自分の人生をどう生きていくか、と悩みながら生きてる人たちが沢山出てて。
現実でも誰しもがそう考えながら生きているのだろうけれど。
店主ヨンジュの休みの過ごし方が私に似てて共感。
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仕事で燃え尽き症候群になり離婚した女性が、書店を開き、徐々に自分を取り戻していく物語。
遠い未来ではなく、10分、1時間、半日、1日と近い未来。その時その時を集中して生きていくことの大切さを教えてくれる。