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「為政者たちのさまざまな思惑によって国と国、民族と民族の衝突は止まることはありません」が「世界のどの紛争地でも、政治上は対立しているはずの市民同士が、実は心を通い合わせているという場面を何度も見てきました」(あとがき)という白川優子さん。
「平和を願う市民たちを支える一員であり続けたい」との生き様に大きく拍手する。
ガザで驚くほどの惨状を生み続けるイスラエルに心を寄せる日本の為政者よ。恥を知れ!
生命を奪われた人がたった5日で1万1千人を超え、4割の4500人が子どもだ。どうして止めずにいられるのか、どこまでアメリカの犬であり続けるのか。
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「怖いと思う者は帰国したほうが良い。ただし、怖さに麻痺してしまった者は一番に帰国させなくてはならない。」
どんな戦地にも赴いて活動している国境なき医師団。
戦場を恐れない勇敢な人たちのイメージだったけど、彼ら彼女らも恐怖を抱えながら活動しているんだなと。そうか、そりゃあそうだよね。なんて強いんだろう。そして戦地と平和な日常を行き来するってどんな感覚なんだろう。
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瀬谷ルミ子さんの本を読んだときも思ったけど、自分も命の危険にさらされるところに行って、他の人の命を救う仕事をしている人には、頭が下がる。
私を含め、ほとんどの人はできないことだ。
著者がいくら有能で強い人であっても、凄まじいストレスであり、帰国するたび呼吸困難が一ヶ月ほど続く、とある。現地では気を張りつめているから、ほっとしたとたんに発症するのだろう。
そして、こうして実情を伝えてくれることで、私たちは世界を知ることができるし、どうしたら命が奪われない世界を作ることができるのか考えることができる。その程度しかできないのが申し訳ないけど。
安心して勉強できる日常を取り戻すために銃を取ったシリアのムスタファ。
父を殺され、自分も足を打たれた10歳の少年が、退院したらすぐに(仕返しに)「殺しに行く」という世界。
大学を出ても60%は仕事がないガザの若者。
これらの人たちを忘れないでいたい。
満足な設備も薬も、ときには水さえ足りない中、文字通り命がけで治療に当たっている医療関係者がいることも。
読める人には全員読んでほしい本。
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白川さんの本当にすごいところは「東京で働きながら生活する」居心地の良さを認め知りながらも、それでも一度もオファーを断らず、現地で働く選択を重ね続けたこと。
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世界の紛争地域で看護師として働く著者白川さんが現場で経験したことをまとめたノンフィクション作品。まあとにかく読みやすい。読みやすさのあまり、各地での出来事が淡々とつづられているけど、そこで目の当たりにする作者の計り知れない憎しみ悲しみ、ときには喜びもあり、感動のルポルタージュになってます。
ぜひ、ご一読を。
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「国境なき医師団」の手術室看護師として、20回近くにも及ぶ海外への派遣をつとめた白河優子さん、派遣先は、シリア、南スーザン、イエメン、パレスチナ…等の紛争地…。水も電気も充分に使えず、そもそもの医療提供体制が整っていない地ばかり…しかも、いつ空爆がはじまるか不安と恐怖を抱えながらの医療活動…もう何て言ったらいいのか、言葉もありません…。
この作品では医療活動の過酷さだけでなく、紛争地で生きる住民の様子も描かれています。高学歴なのに、女性であるがゆえに、仕事に就けず将来に不安を抱える若者、空爆のない夜間にそれとは知らず時限爆弾で遊び負傷した子どもたち、負傷してもなお早く退院して親の仇を打つために殺しに行きたいと言う10歳の子ども…。
現在勃発しているハマスとイスラエルの戦闘でも、ガザ地区の病院が破壊されました…。ガザ地区での死者は2万人を越え、うち8000人は子どもだと…胸が痛いです。本当は、誰も戦うことを望んではいないのに、一部の為政者の思惑に翻弄されているかのように感じます。平和を願わない人はいません…どうか、世界中どこにいてもすべての人が安心して生活できるような社会に変わっていきますように…。
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こんなにも情熱的な女性がいたのか…!と、感銘を受けた。
自分の暮らしがいかに恵まれているかを再確認しつつ、今の日本の実情を思い、人の幸福とはなんだろう?とも考えてしまった。
自分の視野を広げたい!と思われる方に、強くお勧めしたい1冊。
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白川優子(1973年~)氏は、埼玉県生まれ、高校卒業後、坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校定時制課程を経て、看護師資格を取り、地元の病院に勤務。その後、国境なき医師団(MSF)への参加を目指し、英語を習得するために、2004年にオーストラリア・カトリック大学看護学部へ留学、卒業後、ロイヤル・メルボルン病院で働き、2010年に帰国。帰国後すぐにMSFに参加登録をし、同年にスリランカに派遣されて以来、パキスタン、イエメン、シリア、南スーダン、フィリピン、ネパール、パレスチナ(ガザ)、イラクなど、紛争地を中心に10ヶ国/18回の緊急医療援助に従事。現在、MSF日本事務局で採用業務を担当している。
本書は、白川さんの初の著書で、2018年に出版された。
目次は以下である。
第1章:「イスラム国」の現場から~モスル&ラッカ編~、第2章:看護師になる~日本&オーストラリア編~、第3章:病院は戦場だった~シリア前編~、第4章:医療では戦争を止められない~シリア後編~、第5章:15万人が難民となった瞬間~南スーダン編~、第6章:現場復帰と失恋と~イエメン編~、第7章:世界一巨大な監獄で考えたこと~パレスチナ&イスラエル編、最終章:戦争に生きる子供たち
私は、世界各地で収まることのない、国家・民族・宗教間の対立や紛争に高い関心を持ち、自らプライベートかつ一人でエルザレムに一週間滞在し、公共交通機関を使ってパレスチナ・ヨルダン川西岸地区を訪れたこともあり(ガザは民間人では難しい)、また、そうした世界各地の状況を伝えてくれる、ジャーナリストや国際協力従事者らの著書を多数読んでいる。本書についても、出版当時から気になっており、遅ればせながら今般読んでみた。
読了して、現地で起こっていることについては、既知あるいは想像の範囲ではあったのだが、最も驚いたことは、白川さんが、(失礼な表現になってしまうが)極めて普通の人で、そのような方が、実際に紛争が起こっている場所にこれほど頻繁に赴き、医療活動を行っているということであった。本書には、現地での医療活動のこと以外にも、一旦就職した後で、MSFに参加するためにオーストラリアに留学したことや、恋人ができた後でも、危険の伴うオペレーションに参加したこと(その結果、失恋したそうだ)なども書かれており、白川さんが人一倍強い信念と意志と実行力を持っていることは疑いようがない。
ただ一方では、シリアの病院の近くで空爆があったときに、心臓が破裂してしまいそうだったとか、南スーダンで、まだ敵の兵士たちが残っているかも知れない地域に行ったときに、早く帰りたいと思ったとか、飲料水が枯渇してきたときでも、死体の浮んでいるナイル川の水を飲むことには最後まで抵抗感があったとか、随所に、普通の(日本)人としての感情が綴られている。また、(おそらくこれはMSFの特徴だと想像されるが)個別のオペレーションへの参加の打診から、本人の参加意思の表明、実際の派遣までの期間が非常に短いため、まるで「出張で(東京から)大阪に行ってくる」と言うかのように、「来週からシリアに行ってくる」という調子なのだ。。。
本書に類する本はこれまでもあったし、最近では、作家のいとうせいこう氏が『「国境なき医師団���を見に行く』シリーズを出している(このシリーズは、ノリの軽さに少々違和感を覚えるのだが)が、本書が優れているのは、上記のような理由で、紛争地で起こっていることが、別世界の出来事などではなく、我々が当たり前に過ごしている日常につながった所の出来事なのだということを、極めて強く感じさせる点ではないだろうか。
近年のロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのガザ攻撃、また、日本では取り上げられることすらない世界各地での紛争に対して、日本に住んでいる一般人としてできることは限られているのかも知れないが、関心を持つことは誰にでもできるし、本書は、そのための一助となる良書と言えるだろう。
(2024年5月了)
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国境なき医師団に憧れて看護師になり、英語圏で海外経験を積んでから、実際にMSFから紛争地に派遣されるようになった著者。彼女の人生や、彼女が実際に紛争地で見たものや出会った人々について綴られる。
まっすぐな使命感と情熱、でも人間として当然ある安全を求める気持ち、平和なオフィスでの仕事のやりがい、恋人や家族に心配をかけたくない気持ちなど、相反する要素の中で揺れ動く気持ちについても言及されている。ジャーナリストにキャリアチェンジしようとしたことなども触れられていて、それでも看護師として紛争地に行くことを選び続けることに感銘を受ける。
イラク、シリア、イエメン、ガザなど様々な現場での活動について記録されている。シリア内戦でやむを得ず銃を選ぶ元薬学部学生の若者の姿。自発的に献血に協力してくれるシリアの市民の姿。現地のローカルスタッフの人生、喜びや悲しみ。南スーダンでの国連への避難、撤退せず市民の治療に従事したこと。ガザには高学歴な若者が意外にも多いが、職がないこと。2名の清掃員の募集に300名の応募があり、家族や親戚からの後押しの電話が大量にかかってきたこと。
南スーダンでは、政府軍トップが「街の片付けと復興はNGOたちにお願いする」と言っていたという。そのような国家観の人間にとって、市民の命とは何なのか。何のために政府があるのか。海外からの支援が国家の自立を妨げているかのような状況。医療だけでは紛争は止められない。人道援助の取り組みはもちろん必要である一方、紛争の調停や平和構築についてもきちんと介入しなければ、紛争はなくならず、最も脆弱な人々の苦しみには終わりが来ないということを考えさせられる。
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高校の時、世界史が好きだったからだろう。パレスチナは第二次世界大戦が積み残した悲劇で、不勉強な高校の時でさえ、先進国全体が一致して向き合うべき紛争だと思った。今でもこの思いは変わらない。
この本では中東やアフリカの紛争地で国境なき医師団として活動した著者の素直でまっすぐな記録が読める。
ロシア、中国、北朝鮮、有事をあおる政治家たち。せめて我々市民は、このような書物を読み、戦争をしない決定に向けてクリエイティブな思考を働かせる必要がある。私は殺されたくないので、殺さない判断ができる国の一員でありたい。