紙の本
見た目の可愛さで侮るなかれ
2018/06/03 20:01
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投稿者:ころん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルネサンスの芸術家の人間臭いエピソード本の体裁で、エピソードからはビジネス書にも通じる教訓が読みとれる一方、作品ガイドとしても機能しています。絵が可愛くて漫画や図説と文字のバランスも良く各章も手短に纏まっており、隙間時間にでも読めます。
ルネサンスといってもメジャーな画家や作品だけでなく、イタリア半島の作家が中心ですが、デューラーやメムリンクといった北方の画家の話も(イタリア絡みではありますが)含まれています。
とっつきやすいイラストもよく見ると現存する芸術家の肖像画の特徴を捉えていたり、面白エピソードも史料や先行研究の裏付けが取れていたり、可愛い見た目に反して(?)、内容はしっかりしています。
また話の基となる史料への批評的な眼差しが感じられる一方で、作家に対しては良い面も悪い面もバランス良く紹介されていて、過去に過度の賞賛や低評価があった場合にもその評価が下された背景を述べており、個々の作家への敬意が感じられます。
一点だけ残念に思ったのはウッチェロの作品画像がなかったこと。こだわりすぎて当時は評価されなかったためか、あまり知られていない画家かと思いますので、画像データの有無や版権等の問題がなければ掲載していただきたかったと思います。
総じて、さらっとも読めるし深読みもできる、美術館巡りが好きな人間が読んでも面白く、仕事に追われるビジネスパーソンが読んでも共感できる、万人向けの本だと思います。
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クーリエ・ジャポンの連載を書籍化したもの。
そちらで読んでいたが、追加コラムもあるので書籍も読んだ。
分かりやすい、面白い、でも内容がマニアックでとても良かった。
イタリア旅行前に読むとイタリアがより楽しめる。
もっと読みたくなるのでボリュームが物足りなくなる。続編希望!
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読みやすく、内容もパッとわかる本。
ちょい足しコラムが楽しかった。
ふむふむと思いながら読んだ箇所
・自分の有利な舞台は自分で作る
制作が早いが画風がコンペにマッチしなかったティンレット、天井画デザインの素描を出すコンペに完成品を提出し、「もしこの絵の代金を支払いたくないならプレゼントします」というやり方でコンペを事実上中止にし、部屋全体の装飾の仕事をゲット。
・ルネサンスの芸術家たちは注文主の注文に沿った制作をしていたということ。
今では「昔の偉大な芸術作品」として美術展で見るイメージだったので、意外性と面白みを感じた。
面白みを感じた個所
・少し批判されただけで死ぬほど落ち込んでしまった芸術家たちのエピソードも残っているということ。
それを読んで想起されたのが、日本の平安時代の人々もそんな感じ。昔の人は、心の持ちようが命に直結するような、そんな暮らしだったのかもしれない。それは日本も西洋も変わらず。
・現代にまでその名が響き渡るレオナルドダヴィンチの転職活動エピソード
漫画があるので、どれほどデフォルメされた人物像なのかは考える必要があるが、めちゃめちゃ面白いぞ、ダヴィンチ。実績のないことを強みとして履歴書(手紙)を送ってしまうし、インパクトのある楽器を制作し、実演し、最初は宮廷音楽家として新しい国に雇われるって。
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ルネサンス期の巨匠といえど、こんだけ注文やら発注やらに必死だとは。そりゃ現代の営業も必死にやんなきゃだよね。
仕事に対する心構え本としてオススメされていたので読んだけど、確かに良かった。
章タイトルだけでも、その辺のビジネス書より全然いいんじゃないだろうか。
漫画も付いているし、純粋に美術関連の本としてもフルカラーで見ていて楽しい本。
内容もなかなかしっかり書かれていて、勉強になる。本物の作品見てみたいなー。
イタリア行く予定とかある人は、行く前に読んでおくときっと旅行がもっと楽しくなりそう。
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フルカラーで文章も読み易く、導入が漫画だから取っ付き易くて面白い。
『炎上商法』とか『転職活動』みたいな現代用語が盛り込まれているのも、すごく好きだなと思った。美術関連の本って小難しくて途中でだれることが多い(※個人の感想です)けど、この本は全然だれなかった。
「この頃の芸術家は作品を好き勝手描いていたわけじゃ無くて、寧ろ『広告デザイナー』みたいに注文に沿って制作したりコンペに参加していたんですよ」的な一文を読んだ時は「え、そうだったの!?」と驚いた。でも確かに、今まで読んだ本にも似たような事が書いてあったかも……決して『広告デザイナー』なんて表現ではなかったけれど。でも、『広告デザイナー』と言われると、なるほど凄く想像し易い。
この本を読んでからルネサンス期の作品を目の前にしたり、イタリアへ旅行に行ったら、これまでと違った視点でそれらを見る事間違いなしだろうなあ。
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ルネサンスになって、画家や彫刻家が一人の芸術家と認められるようになってくると、個々の逸話にも事欠かなくなってくる。もちろんヴァザーリの「芸術家列伝」の存在も大きい。この本は、作品の鑑賞ではなく、芸術家たちのパトロンや注文主との駆け引き等に注目して描いており、結構そこからルネサンスという時代の様相が浮かび上がってくる。
①公共事業コンペはニーズが命ーギベルティ×ブルネレスキ②自己プロデュースを極めるーティツィアーノ③有利な舞台は自分で作るーティントレット×ヴェネローゼ④独りよがりは失敗のもとーウッチェロ⑤著作権侵害からの炎上商法ーライモンディ×デューラー⑥万能人の自己PRーレオナルド・ダ・ヴィンチ⑦根回しは相手を考えてーミケランジェロ「ダヴィテ」⑧損失が損失を生むスパイラルーアンジェロ・ターニ×メムリンク⑨モンスター注文主の対処法ーイザベッラ・デステ×ベッリーニ⑩敵の敵を味方につけるーラファエロ×ミケランジェロ×セバスティアーノ⑪捨てる神あれば拾う神ありーチェッリーニ⑫お祭りには便乗すべしーコジモ・デ・メディチ×ベノッツォ・ゴッツォリ
章の最初の1ページのマンガも面白いが、それぞれの内容もなんだかいきいきと描かれていて、ほうっと感心したり、笑っちゃったりといいですねえ。
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視点が面白いし、証拠に裏打ちされた確かな知識を示していて、読み応えがある。ルネサンス芸術家たちの世渡り術は、歴史を理解する上でも作品の理解を深めるためにも現代の私生活に活かす上でも勉強になるし、面白かった。
美術に詳しい人もそうでない人も楽しく読める本。
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ブグ友さんの本棚で見かけて図書館でお取り寄せ。
本書はウェブメディア「クーリエ・ジャポン」での連載「リナシタッ ルネサンス芸術やの仕事術」記事を加筆しまとめたものだそう。制作における取組とは別に注文を取るための施策やパトロンの取り入り方、コンペの出し抜き方、炎上商法のような駆け引きなどが繰り広げられていたとは。自己プロデュースって大事だなあと読み進めながら感じつつ、楽しみました。カラー図表や作品紹介が贅沢な構成。まずイントロで漫画での背景紹介がされていて、芸術家の様子が生き生きと愛情たっぷりに描かれている。
ちょい足しコラムがまた面白い。レオナルドの楽譜を使ったことば遊び、すごすぎる。
半分以上知らない芸術家や作品ばかりだけど解説がわかりやすくて親しみが持てた。
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今更なんですけど、マントヴァ候妃イザベラ・デステとイル・モーロの妻ベアトリーチェ・デステがやっと繋がった。実の姉妹だったのねー(笑)
夜景とは彫刻や素描で表現できない絵画の特別なモチーフ…ってのが納得。