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八幡宮の悲喜こもごも
2024/05/04 12:00
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投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
進みが遅くとも確実に歩みは進んでいるが『Web河出』において『【4日連続公開】町田康『ギケイキ』試し読み 第1回』が公開されたのは、なんと八年も前の事で長編とはいえなかなか焦らしてくれるなぁ、という思いを新たにする。
吉野山で義経主従が逃避行を始めてから、静御前が八幡宮で舞を奉納する過程までを描いた本巻は吉川英治の『新・平家物語』にすると「鶴が丘悲曲」のくだりに相当するのだけれど、唐突に吉川英治を持ち出したのは前巻から待たされすぎて時系列を忘れてしまっており、偶然にも電子全集が破格のセールで大安売りされており勢いで買ったのを思い出して唐突に読み始めたのがきっかけである。
難しい言い回しはないけれど、言葉の取捨がいちいち綺麗で大衆向けの分かりやすさと面白さを両立させているのはさすが文豪だなぁ…と関係ない感想を書き始めている。
それにしても梶原はおべんちゃらに口八丁に嫌みな奴である。もっともっと時代が下ると浄瑠璃の『石切梶原』や、歌舞伎狂言の『梶原平三誉石切』(かじわらへいぞうほまれのいしきり)なんて創作も登場してくるけれど、頼朝公の臣というよりはただへつらうばかりで、例えるなら報告書の余白にいちいち嫌みを書いてくるようなオジサンがそこまで持ち上げられるようになった経緯は正直謎であり、義経公を持ち上げようとして梶原が下げられている訳でもないあたりが不思議でならない。
それにしても頼朝公の猜疑心の強さといったら凄まじく、それが幕府や政権というモノの発明につながったのかと思うと恐ろしい話である。このあたりは細川重男や清水克行の本も大変面白いのでおすすめしておきたい。
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読了に時間かかりましたが、良かった。逃げる義経、おとぼけ弁慶、義経達を匿う得業、忠臣佐藤忠信と愛人静の結末。主要メンバーが徐々に舞台から去って行くのが惜しい。あと一巻で完結なのもったいない。
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義経記3。
前回の話はもう忘れてしまったが、今回は義経が追われ忠信を身代わりとして引きつけながら逃げている一方、静御前が義経の子を身籠り捕えられるお話。
実際もこの口語調だったんじゃないかと思えるくらいスラスラ読めてしまう。
6冊目読了。
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11月から読み始めて一気に3冊目まで突入ということでサクッと読了。歴史小説にここまでハマる自分がいるとは想像もつかなかったし、すっかりこの世界に夢中になった。個人的には割と原典至上主義なところがあるけれど、ここまでいくと二次創作に無限大の可能性しか感じない。当然、原典の魅力もあることは理解した上で、他人の解釈も楽しければそれでいいじゃない、と本著のおかげで寛大になれた気がする。
完全に撤退モードに突入した義経サイドの苦しい戦いについて綴られている第三巻。雪の中を必死のパッチで逃げ続ける過程はこれまでに比べるとシビアなシーンが多い。しかし持ち味である関西弁による脱力したゆるーい会話で楽しく読めるようになっている。また義経のあと語り形式によるメタ化は読めば読むほど癖になってきた。特に今回は当時の鎧、兜などの服装を現代のファッション雑誌での紹介のように描写しているシーンがお気に入り。落伍者として貧乏くさい格好になってしまう展開もあるので余計に美しいお召し物シーンが際立っているように感じた。またこのメタ構造があることで著者の考えを逆説的に浮かび上がらせていく手法が見事だと思う。例えばこんな風。
*持続可能性のある社会を目指せ、などと言う人は、現状、いい目をみていて、それを維持したい人で、現状、、食うや食わずの悲惨な目に遭っている人は、「もうなんでもいいから、現状を変えてくれ。いくらなんでもいまよりはマシなはずだ」*
*美しく歌ったところで、根底にあるものは同じ。私は美しい言葉を弄ぶ奴の心の奥底で常に銭と欺瞞のフェスティバルが開催されていることを知っている。*
後半は彼自身のエピソードではなく家来や周りの人たちの話で構成されているのが興味深かった。語り手としての義経はいる一方で、不在の彼がどういう存在なのか、周囲の言動で浮かび上がらせていく。そういった観点で本著のハイライトはエンディングを飾る静による頼朝御前でのギグであろう。音楽が当時の人にとっても、いかに心の安寧をもたらすものであったか。それを現代バンド風アレンジで大胆に描いている。この得体の知れない多幸感は著者自身がバンドの経験があるからこそ書ける音楽の醍醐味だと思う。次の第4巻で完結するらしいので楽しみ。というか古事記も同じ手法で書かれているそうなので、そっちを先に読む。
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3巻も面白かった。
義経達が追い込まれていって辛いけど、笑いながら読みました。
早く続きが読みたいけど、結末が辛いから読みたくないような。でもきっと笑いながら読んでしまう。
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イケイケな意訳の義経記シリーズ3作目。
毎回、間が空いて出版されるのでどんな場面からの続きなのか忘れ去った状態で読み始めますが、前後のつながりとかどうでもいいくらい面白いです。
今回は、前半は主に佐藤忠信、中盤は勧修坊、終盤は静の話で展開します。
義経もたまに登場するものの、ほぼ神の視点からのナレーション役でした。
よく登場する表現は「えぐい」と「えげつない」。
頼朝やその家臣の保身と昇進、自分のことしか考えてない心理描写には爆笑です。
戦中にそんなに喋る?ってぐらい長々と会話したかと思うと、面倒な出来事を人に伝聞するときは「こうこうこうこうこうで」と話をさせたことにして適当に済ますのがジワジワきます。
堀藤次が嬉しくて板や瓦を割りまくる場面がツボで、思い出して何度もニヤニヤしてしまいます。
また続きそうな雰囲気で終わったので、次回作も忘れた頃に読めるのを楽しみにしています。
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時勢は暴力と言葉で築かれていく。暴力は相手を傷つけることで勝敗、優劣、生死を隔てる。言葉にもその要素はあるが、慈愛や救済、共感へと向かうコミュニケーションの素晴らしさも兼ね備えている。そんな言葉を礎にする政治は、武力を行使する武士や僧侶が己の体裁や自尊心によって保身する愚行録でもある。政(まつりごと)は古今東西さほど変わらぬ人の愚かさを露呈する。もちろんそこで悲観して関心を失ってはいけない。人はその恥部をさらけ出し認めてこそ成長する。とその前にあほらしやと踊り出すかもね。
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引き続き町田節炸裂! 擬古文から自由闊達な現代語、そして極めて現代的な口語、砕けまくりのめっさ関西弁、果ては英語まで駆使して、古典を訳すか! 超絶技巧。そして、原文の隙間を独自の解釈とノリで埋めていく凄さよ。町田康こそ日本語の天才。いよいよ次巻で終了か。
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「義経記」全ハ巻のうち、巻五と巻六をカバー。
次の「ギケイキ4」でおそらく完結。
義経の吉野山逃避行とその忠臣佐藤忠信の活躍、静御前の白拍子の舞がハイライト。
そもそもが「口承文学」なのだから、テキストよりもリズムやビート、グルーブ感がキモ。
町田の「新訳」それを現代に伝えようという果敢な試みといえる。
楽しめる人は楽しめるけど、このノリについてこれない人は「ふざけるのも大概にしろ!」と怒るのかも…。
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この3巻目で終わりかと思っていたらまだ4巻目が出る予定なんですね〜、嬉しい。
前2作よりも泣けるシーンが多くて。
あと、家臣の1人が主の義経を逃すために体張って戦うところと、そして彼の死に様が凄まじい。
そして美しく賢い静御前の最期。
この3巻目、余韻がすごい。